( ^ω^)奇人達は二十一グラムの旅をしますようです
- 178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/19(金) 03:06:41.04 ID:dRjj6WK10
- ―5―
(´・ω・`)「ふうん。そんな事があったんだね。僕は墓参りに行ってたから知らなかったよ。
いや、もしかしたら僕にも呪縛が及んでいたかもしれないんだね。怖い怖い」
数日後。ブーンはデレを連れて、ショボンのところへと足を運んでいた。
ブーンは店内のスツールに腰掛けて、暇を潰せそうな本を探している。
( ^ω^)「そうだお。僕の機転は筆舌に尽くしがたいお。ねえ、デレ」
ζ(>ー<*ζ「はい! ブーンさん、格好よかったですの!」
( ^ω^)「集塵袋を買い忘れて、ツンにはこっ酷く叱られたけどね・・・」
ブーンは本棚から本を一冊取り出した。ペラペラとページを結末まで捲る。
酷いラストが嫌いな、ブーン独自の選択法である。楽しみ方は人それぞれなのだ。
(´・ω・`)「そう言えば、ブーン。郵便受けに本を返却するのは、ひどいんじゃないかい?」
( ^ω^)「君なら良いだろう。今まで、何度かそうして返しているし」
- 180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/19(金) 03:07:42.18 ID:dRjj6WK10
- (´・ω・`)「ぶち殺すぞ。物臭ボーイ。僕はその度に怒りが湧くんだけど」
( ^ω^)「まあ、ものは大事にしなければいかんお。これからは気を付けるお」
(´・ω・`)「なにそのブーンらしくない発言。僕は感動で涙を流しそうだよ。
ああ。この先一年分は感動してしまった。今から酒を呑もうじゃないか」
(;^ω^)「いや、君は仕事をしているのではないかお」
ブーンが突っ込むがしかし、ショボンは奥の部屋からぶどう酒を持ち出してきてしまった。
彼のアルコール好きは異常である。前世は、酒場のマスターなのではないかと思うほどだ。
ζ(゚、゚*ζ「あ」
ショボンの奇行にブーンが目を細めていると、デレが間の抜けた声を出した。
「ん」、とブーンが彼女に視線を向ける。彼女はポケットに手を入れて何か探していた。
- 183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/19(金) 03:08:44.69 ID:dRjj6WK10
- ( ^ω^)「どうしたのだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「これ。これですの。ブーンさんの部屋を掃除していたとき、見付けたのです。
渡すのを忘れていました。はい。玩具のようですが、何なのですの?」
デレのスカートのポケットから出てきたものは、小さな玩具だった。
手のひらに収まるサイズで、赤色青色黄色の三つのボタンが付属している。
それを受け取ったブーンは、懐かしそうな表情をした。そして、静かな声で語る。
( ^ω^)「おお! 見付けてくれてありがとう。これはお母さんに買って貰ったものだお。
ボタンを押すと、それぞれ違ったアニメキャラクターの声が鳴るのだお。
電池が切れているのか、壊れたのかは知らないけど、今は鳴らない」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだったんですの。ブーンさんにとって貴重なものですのね」
( ^ω^)「うむ。これからは大切に、肌身離さず持っておくお」
ブーンはスーツのポケットに大事そうに仕舞い込んだ。彼も随分と性格が丸くなったものだ。
- 184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/19(金) 03:09:34.53 ID:dRjj6WK10
- (´・ω・`)「ラララララー、ラララララー、ラララ、ラーラー♪」
突然、アルコールに浸ったショボンが、胸に手を当てて陽気に唄い始めた。
驚いたブーンは盛大に唾を吐き、額を押さえた。ショボンは本当に奇抜な青年だ。
(;^ω^)「客の前で酔っ払いやがったお。君は一体どうなっているのかね」
ζ(゚ー゚*ζ「どこかで聴いたような歌ですの。何という曲なんですか?」
(´・ω・`)「ゲームをしない君達には分からないだろうね。この曲はねえ――」
と、その時、玄関の引き戸が開かれる音がした。ショボンが慌てて酒瓶を隠す。
そして彼は、居住まいと作務衣のシワを直して、訪れた客に応対する。
(´・ω・`)「やあやあ。いらっしゃい。君みたいな若い人が来るのは珍しいね」
ショボンの演技が上手いが、なにぶん顔が赤い。酒を呑んでいたのがバレバレである。
若い客は店内を見回しながらショボンに近寄る。途中、ブーンとデレに目線が合った。
客は小さく頭を下げた。ブーンとデレは無言で、客を目で追う。客はショボンに訊ねる
- 186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/19(金) 03:10:58.64 ID:dRjj6WK10
- 「私小説を書いているんだけど、どこかの人間が無理難題を押し付けやがってね!
文章力を付けるのに、何か良い小説がないか探してるんだけど」
(´・ω・`)「へえ。小説家志望かい」
ショボンは感心した。目の前の客は見てくれは変だが、小説を書いているらしい。
「いや。単なる趣味だよ。誰にも見せるつもりはない。数人には見られたけど!」
客は後ろを向いた。首からかけた懐中時計が揺れる。ショボンの目に小さな黒い翼が映り込む。
客は影なのだ。ショボンが何か言いかけようとするが、客は店内の空気を震わせる声量で怒鳴った。
ノハ#゚听)9m「こいつらにな! お陰で頭を悩ませる日々が続いてるよ!」
ブーンとデレは笑った。ヒートの物語の行方は、どこに向かうのだろうか。
それは彼女にしか分からない。時間は結末へと向かって、ゆっくりと流れていく。
二十一グラムは物語の行方を知る 了
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