( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです
- 7: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:36:37.95 ID:NmNm5LDm0
- 第八話『水面下』
ショボンの腕がプギャーの頭蓋を完全に砕き、戦いは終結した。
ショボンと同様にドクオも幾量かの返り血を浴びるが、不思議と彼は嫌悪感を示さなかった。
このグロテスクな状況にも拘わらず、吐き気を催すどころか眉を顰める素振りすらなかった。
('A`)「……」
彼はその意思の無い目で、それでも確かに砕かれたプギャーの死体を凝視していた。
まるで何かを考えるように……。
無感情といえば簡単だが、ここまで無感情の人間など普通存在するわけが無い。
ジョルジュはドクオという存在に違和感を覚えた。
自分ですら未だ慣れないこの惨事、それを傍観者として見る事のできるこの青年に。
川;゚ -゚)「……ジョルジュ」
(;゚∀゚)「ああ、気持ち悪い奴だな……」
クーも同じように思ったようだ。
この青年はおかしいと。
- 9: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:38:01.11 ID:NmNm5LDm0
- (´・ω・`)「さて、とりあえずこれからどうする? ブーン君でも探すかい?」
あの激しい戦いの後にも拘わらず、何事も無かったのように話をするショボン。
合わせて他の三人も『今の戦い』については話せず、すぐにこれから先の行動に頭を移す。
余韻に浸りたくもなるが、やるべきことはまだ残っているのだ。
川 ゚ -゚)「そうか、ドクオ、ブーンの携帯に電話するんだ」
('A`)「……」
ドクオは考えた、きっと自分が電話したならブーンは電話に出ると思ったから。
しかし渋っていてもどうしようもないことだろう。
彼は抗う事をせずに、言われたとおり電話をした。
プルルルル......プルルルル......
無機質な電子音だけが耳に響く。
ブーンが果たして考えて電話を取らないのか、それとも偶然電話に気付かないのか……分からない。
それでも結果的に彼は電話に出なかった。
('A`)「出ませんね」
ドクオは電話を切ると、素っ気無くそう返した。
- 14: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:39:30.68 ID:NmNm5LDm0
- (´・ω・`)「出なくてもいいよ、大体の位置は分かったから」
('A`)「ああ、なるほど」
そうか、魔女の力があるんだ。
ショボンはその聴覚を最大限に強め、ブーンの携帯電話の大まかな位置を突き止めた。
ドクオも一瞬でそれを理解すると、なるほどとしか返せない。
(´・ω・`)「それじゃ皆僕に捕まって。一気に移動するよ?」
ショボンは促すと、三人を自分の体に掴まらせた。
皆がしがみ付いたのを確認すると、さらにその上から大きく三人を抱擁する。
ショボンは一気に地面を蹴り加速した。
- 15: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:40:57.98 ID:NmNm5LDm0
- それは音速の世界だった。
全ての音がドップラー効果のかかった異質な音となり、風景はパラパラ漫画のように瞬きの暇もなく姿を変えていった。
秋風が鋭く顔にぶつかってくるので、薄目を開けるだけで精一杯だ。
闇夜に映る黒と藍色のコントラスト。
まるで絵の具を撒けたか、筆で掠れるまで一気に線を引いたような、そんな残像。
体の揺れがスローに感じるほどに、周りの描写が素早く動いていった。
何一つと正しい形のものは見られない、これが昼間だったらどれだけ素晴らしい光景だったことだろうか。
気が付けば彼らは公園の池の淵にいた。
- 19: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:42:57.14 ID:NmNm5LDm0
- (;'A`)「……これはすごいな」
ショボンから離れると同時、僅かに手足が震えた。
ここまでドクオが感情を露にするのも珍しい。
魔女の登場といい、今日ばかりは彼の常識も通用しなさそうだ。
と、ここで突然嘔吐を示し、ドクオは公園の端に腹中をぶちまけた。
グロテスクな場面で平気な面をしていた彼とて、物理的な衝撃相手では流石に我慢できないようだ。
ジョルジュやクーは慣れた様子で、ふぅと一息ついたくらいの反応を見せただけに留まった。
(´・ω・`)「多分この辺りだね」
( ゚∀゚)「それじゃドクオ、大丈夫か?
もう一回電話鳴らしてもらえるか?」
(;'A`)「んー」
適当な返事をして口元を拭うと、青白い顔でドクオは再びブーンへと電話をかける。
〜〜♪ 〜〜♪
川 ゚ -゚)・ω・`)゚∀゚)'A`)「……」
そんな彼らの足元、池岸にその携帯電話は無造作に置かれていた。
- 21: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:44:31.02 ID:NmNm5LDm0
- (;゚∀゚)「……もしかしてオレらがはめられた?」
川#゚ -゚)「アイツ……もう許さない、絶対に撃ち抜いてくれる……」
余程不真面目な人間が嫌いなのか、クーは銃をしかと構えた。
(;゚∀゚)「落ち着けよクー、ショボンさんからも何とか言ってやって下さいよ」
ジョルジュがショボンの方を見ると、彼はその目を池に向けていた。
辺り一帯は暗い、その藍色に輝く池を見ていた。
(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……? どうしたんですかショボンさん」
ジョルジュの声に、ハッと気付いたようにふり返る。
(´・ω・`)「ううん、何でもないよ。とりあえず手当たり次第探してみようか?」
( ゚∀゚)「あー、魔女を倒してその感動に浸ったりボロボロの体を一段落させたりしたかったが……そんな暇も無いか」
そう言いながら四人は思い思いの方向へブーンを探しに動き出した。
すぐそこにいるとも気付かずに……。
- 22: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:45:58.81 ID:NmNm5LDm0
月明かりが差し込む水面下では、とても神秘的な世界が広がっていた。
清らかとはお世辞でも言えない、不透明な緑色の水が煌々しさに拍車をかけていたといえば皮肉にしかならないか。
しかし今のブーンにはそれを堪能する余裕などありはしない。
(;゚ω゚)「!! ……!!」
ブーンがもがけばもがくほど水は彼に纏わりついて池の底へと引きずり込んだ。
なぜ?
何故この少女がこんなに重いのだ?
何故水がこうも自分を捕らえるのだ?
反射的に水中に引っ張られる際空気を吸ったから良かったものの、このままでは地上に出られず溺死してしまう。
放せ。
その手を放せ。
(;゚ω゚)(離すお、その手を離すおっ!!)
振り解こうとするも、子供の女性とは思えぬ力でツンはブーンに捕まり続ける。
ξ゚听)ξ(……さぁ、いつまでもつかしら?)
- 24: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:47:28.39 ID:NmNm5LDm0
- 上に向かって泳ごうとするも、まったく水を掻くことが出来ない。
焦れば焦るだけ、心拍数は高まっていく。
酸素を求める、呼吸が荒くなる。
(;゚ω゚)(もう苦しくなってきたお、もう死ぬお、死ぬおッ!!)
苦しさで思わず死を連想してしまう。
まだ余裕はあろうとも、この状況で死を連想しない訳にもいかないだろう。
ツンはそんなブーンを見ながら、不敵な笑みを更に強めた。
下劣な人間が。
もがけ、苦しめ。
そして死ね。
そしてツンは自分の胸に手を当てる。
ξ゚听)ξ『酸素の肥大』
- 25: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:48:56.48 ID:NmNm5LDm0
- 彼女の体の中にはいくらかかの酸素が作られ、苦しさを和らげる。
自分はまだまだ水中にいることができる。
だが相手はそうもいかない、しっかりとその死に様を拝んでやろうではないか。
誰が人間が怖いだって?
誰が魔女のおちこぼれだって?
私だって出来るんだ。
魔女として人の一人くらい簡単に殺せるんだ。
ほら見ろ、討伐隊の一人は今にも死にそうじゃないか。
ξ゚ー゚)ξ(私だって……やれば出来るんだから)
死にそうな相手の顔を前にして、いい気味とふいに笑顔が出た。
(;゚ω゚)「!!」
そしてブーンはその『笑顔』を見逃さなかった。
- 27: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:50:32.43 ID:NmNm5LDm0
- ξ゚ー゚)ξ【私……ここでアナタと死ねるのなら本望かもしれない……】※ブーン脳内
(;゚ω゚)(ダメだお、諦めちゃそこで試合終了なんだおッ!!)
ξ゚听)ξ「!!」
再びブーンはツンの手を引っ張って水面へ上がるべく泳ぎ出した。
ツンが微動だにしないのでなんとも滑稽な姿であったのだが。
ξ;゚听)ξ(……何コイツ、まだ私を助ける気なんかでいるの? バカじゃない?)
ツンは呆れた。
一人で逃げればいいじゃないか、初めのように彼女を振り切って逃げようとすればいいじゃないか。
ほら、そうやってもがいてみろ。
どうして最後までそうやって綺麗面するんだ。
他人を助けようとしてなんの意味があるんだ。
ツンは『怒り』を露にしてブーンを睨んだ。
- 29: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:52:24.73 ID:NmNm5LDm0
- ξ#゚听)ξ【私の事はいいから一人で逃げてって! あなただけでも助かって、ブーン!】
(;゚ω゚)(そんな事はさせないお!)
随分と勝手な妄想でツンの考えをカバーしながら、ブーンはひたすらにツンと供に水面へ出ようとした。
そう、ブーンには久しぶりの感覚だったのだ。
誰かに好まれること(それが妄想だったとしても)。
誰かに頼られること(それが妄想だったとしても)。
ニートとしてプライドを固持した彼が、今本気で人の役に立とうとしているのだ。
彼女を助けようとしているのだ。
ただ皮肉か、それは彼女を怒らせる行為にしかならなかった。
ξ#゚听)ξ(格好つけて死んで何の意味があるのよ!
自分勝手に生きなさいよ、私なんて放っておいて無様に生きようとしなさいよ!!)
(;゚ω゚)(絶対に助けるんだお、絶対に助けるんだお……!)
- 32: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:54:01.63 ID:NmNm5LDm0
- 既にブーンは苦しさで思考を失っていたのかもしれない。
ただこの少女と一緒に逃げよう、そういう思考しか思いつかなくなっていた。
それ以外何も考えていなかった。
考えることが出来なかった。
しかし……もう限界だ。
これ以上は息が続かない、もう生きれない。
死ぬんだ。
その時がきたんだ。
(;'ω`)(もう……ダメだお……)
- 33: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:55:31.56 ID:NmNm5LDm0
- 苦しい、足掻くのも疲れた。
もう無駄なんだ、それが分かった。
抵抗もせずに死にたい、出来る限り苦しまずに死にたい。
そう思うと同時、足掻く気持ちが自然と消えていった。
痺れる手足がだらんと力を失った。
とうとうブーンは無抵抗となった。
ξ゚ー゚)ξ(ようやくか……結構長かったわね)
ツンはブーンを見てにやりと笑いながら、頭では別の事を考えていた。
おそらくこの男が意識を失ったとしても、しばらくは生き続けるだろうと。
うつ伏せに池に浮かせておけば死ぬだろう。
だが誰かに見つかる事も考えると、この池の底にもうしばらくいて確実に相手を殺した方がいいだろう。
相手の死を目前に、『笑顔』で彼女は今後の算段をしていた。
- 34: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 21:56:50.39 ID:NmNm5LDm0
- (;'ω`)(チン……って名前だったかお……。ゴメンだお、助けられなくて……ゴメンだお……)
最後に見開いたブーンの目の前で……彼女は笑っていた。
ξ゚ー゚)ξ【あなたと一緒に死ねるなら……本望かもね……】
(;'ω`)(チン……さよならだお……)
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