( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです
- 164: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 21:55:55.02 ID:AsLz3T460
- 第十三話『風雲児』
川 ゚ -゚)「なあツン、どうして我々は魔女にそんなひどい事をしたんだ?」
ツンの過去の話を聞いてクーがそう尋ねるも、ツンはドクオとの会話で苛立ったままに叫んで返した。
ξ;凵G)ξ「知らないわよ、私が聞きたいくらいよ……!
あいつらは……あなた達はもう人間じゃない、感情のない人間なんて人間じゃない!」
かの昔、有名な人が「人は考える葦」と説いた。
そういう事だ、考えを止めた人間は人間にあらず。
人である事を止めた、人の仮面をかぶったもののけだ。
ツンはその場に泣き崩れた。
クーは目でブーンに合図すると、その部屋を出て行く。
ブーンにツンの事を任せたのだろう。
(;^ω^)(選択肢が出てこないお……)
そう思い、ブーンは何も言わずに抱擁してツンが泣き止むのを待っていた。
- 166: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 21:57:53.64 ID:AsLz3T460
( ゚∀゚)「なあドクオ」
('A`)「なんですか?」
ジョルジュはドクオの後を追い、結局は部屋で向かい合って座り込んでいた。
ドクオはまるっきり先程のツンへの台詞を詫びた様子もなく、特に居心地の悪さはない。
ジョルジュはゆっくりと言葉をかけた。
( ゚∀゚)「どうしてあんな事を言ったんだ?」
あんな事……辛い記憶を話したツンへの、辛辣な言葉のことだ。
ドクオは僅かに嫌そうな顔をした。
余計なお世話だ、表情はそう語っていた。
('A`)「どうせ言っても無駄ですよ」
( ゚∀゚)「分からんだろ、言われなきゃ分かるモンも分からん」
('A`)「……だったらアイツの言っていた死ぬってどういうことですか?」
( ゚∀゚)「……ん?」
ジョルジュは止まった。
死ぬ事がどういう事かと?
- 168: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:00:10.91 ID:AsLz3T460
- ( ゚∀゚)「哲学か? 死ぬっていうのはこの世から存在が消えることじゃないかな?」
('A`)「肉体は残ります。何が消えるんですか、その言葉の『存在』とは何ですか?」
(;゚∀゚)「精神……魂?」
('A`)「つまり生きているのは魂ですか?」
(;゚∀゚)「うーん……良く分からん。魂がこの体を動かしているとかそう言いたいのか?」
ジョルジュは困りながらも何とかドクオの考えを知ろうと頑張って会話を続けた。
しかしどこかで自分などでは話をしても無駄だとわかっていたのかもしれない。
相手の考えが周りを逸脱した確固たるものだと、何となく分かっていたから。
('A`)「魂は何のために生きているんですか?」
( ゚∀゚)「あー、それは困る質問だな……」
('A`)「死ぬ事が魂が消えるとして、魂が消えたら何も感じる事は出来ない。
どれだけ素晴らしく生きても、どれだけ黒く生きても結局死んだ先は一緒です。
死んだ先には何もないんだ、なのにどうして生きようとするんですか?」
ドクオの表情は一向に変わらなかった。
どうして生きようとするのか?
何故か、何故なのか?
- 169: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:02:14.26 ID:AsLz3T460
- ( ゚∀゚)「オレが死んだら少なからず悲しんでくれる人がいると思うんだ。
それに死んだ後に何か残せたら……いいと思わないか?
魔女と戦ってオレが死んでも、平和を人々に与えられたら幸せだと思わないか?」
('A`)「誰が幸せに思うんですか?」
( ゚∀゚)「だから俺だ、自己満足だがな」
そうジョルジュが言うと、ドクオは目を逸らした。
完璧に興味をなくした瞬間だった。
ジョルジュとドクオは分かり合えない、それを相手が悟った瞬間だった。
('A`)「魂が死んだ人間がどうやって何を思うんですか?」
(;゚∀゚)「!! それは……」
('A`)「悲しんでくれる人がいるとして、それが死んだ人にどんな影響を与えるんですか?
あなたはそれを嬉しいと思うんですか?
思えないです、死んだ人間が思えるわけないですよね」
- 172: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:04:35.11 ID:AsLz3T460
- 死ぬという事、生きるという事。
たった二つの質問でドクオはジョルジュの浅はかさを露にした。
('A`)「俺気付いたんですよ、なんで死ぬ事を怖がらなきゃいけないのだろうって。
後悔も懺悔も無い、そんな中で何を怖がっているのだろうって。
どれだけ死にたくないって思っても、死んだ時には魂がないから「死んだ」事が分からないんですよ?」
(;゚∀゚)「……」
('A`)「人間は生きることしか感じられないんです、死んでも死んだ事は分からないんです。
それからですかね、悲しみながら嫌な事をしてまで生きる意味が分からなくなったのは。
物事に無関心になって、死ぬ事を別段恐れなくなったのは……」
ドクオの考えは彼自身の言ったとおり異端だった。
そして……彼は間違いなく天才だった。
- 174: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:06:12.38 ID:AsLz3T460
その町でも一際大きくそびえ立つビルの屋上で、二人の魔女は対峙していた。
(;*゚ー゚)「……テキーラをいらないかですって? いりません」
(´・ω・`)「それは残念だ」
そう言ってショボンはテキーラの入ったビンに口を付けた。
(*゚ー゚)『反射神経の増強、集中力の増強、判断力の増強』
身構えるしぃを傍目に、ショボンは口からビンを放す。
ビンの中にテキーラはまだ残っているみたいだ。
(*゚ー゚)「戦いの前に飲むとは、ちょっと余裕が過ぎませんか……?」
(´・ω・`)「どういたしまして、これは譲れないんでね。
して、戦うとは……?」
とぼけるのは顔だけにしてもらいたい。
しぃはキッと睨んだが、ショボンはおやおやといった様子で肩をすくめた。
敵か味方かは分からない。
いや、少なくとも味方ではないだろう。
- 176: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:08:00.93 ID:AsLz3T460
- しぃは一瞬で近づくと足払いを仕掛けた。
が、同時ショボンは後方に軽くジャンプして避ける。
互いに追撃はない、改めてしぃは間合いを空けた。
(;*゚ー゚)「何気に反射神経をアップさせてるじゃないですか」
(´・ω・`)「うん、魔女と会う以上油断は命取りだからいつでも戦えるようにはしているよ」
しぃが攻撃した事について言及しない。
この時点で相手が敵だと判断できた。
そんなしぃの感情をよそに、ショボンはもう一度ビンに口をつけた。
しぃの眉間に皺が寄る。
常に油断をしない……?
そんなヤツが口にアルコールを含むはずがない。
(*゚ー゚)『油断の増強、衝撃の増強』
再び瞬間でショボンに近づくしぃ。
ショボンは口にビンを当てながら、その眼球をしぃに向けた。
- 179: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:09:52.55 ID:AsLz3T460
- (*゚ー゚)(手遅れだ……ッ!)
しぃが拳をショボンの胴に打ち込むが、その相手のあまりの硬さに驚く。
魔女は能力の倍加しか出来ないため、元来体躯の違う男と女では男の方が断然有利である。
何より女とは感情豊かな動物だ、感情を操作できる魔女同士の戦いでは当然それはディスアドバンテージとして働く。
そのため常に女は男よりも卑下た扱いを受けるんだ。
ただ、ここまで明らかな差が出来ることはなかった。
しぃは思わず突いた腕を引っ込め、再び距離を空けようと後退する……が、ショボンがそれをさせない。
逃げるしぃへ一瞬で間合いを詰めた。
(;*゚ー゚)(パンチか、キックか……!)
受けるか避けるか、どうすればいいか?
さっきのしぃ自身の攻撃を諸共しない感じだと、ショボンの攻撃を一発でも受けたら堅さを増強しようとも致命打になりかねない。
相手の手足の動きに細心の注意を払う。
- 180: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:11:30.51 ID:AsLz3T460
- ぶうぅ
(;*゚ー゚)「きゃぅ!」
ショボンはそこで、口に含んだテキーラを霧状に噴き出した。
意外な攻撃、驚いて目を背けかけるが……いけない、相手から目を逸らしてはいけない。
案の定その隙にショボンはしぃの胴へ蹴りを放ってきた。
避けないと。
しかし突然テキーラを吐き出された困惑で、体が硬直して動こうとしない。
まずい、直撃する。
(;*゚ー゚)『堅さの増強』
骨のきしむ音、体がくの字に曲がっていくのが自分でも分かる。
何も抵抗できない、体が勝手に動くさまをスローモーションのように感じてだけいた。
- 182: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:13:08.34 ID:AsLz3T460
- ドォンッ
屋上から斜め下に吹っ飛ばされ、隣のビルに突っ込むしぃ。
それでも地上からは十階程度はあろうか、突然の爆音に驚くビル下の人々は米粒のようだった。
(´・ω・`)「やれやれ、野次馬が多いね……」
それを肴にショボンはもう一度テキーラを口に含むと、衝撃を強め、しぃが突っ込んだビルへと跳び入った。
(;*゚ー゚)「くっ……」
しぃは何とか平常を取り戻すと、身体に踏ん張りを利かせた。
様々な能力を増強させ、真直ぐに立ち構えた。
オフィスの一室、アルミ製の机はいくつも吹っ飛ばされ僅かな人々は我先にと逃げ惑う。
書類などは大切な物もそうでない物も入り混じり、風に吹かれて辺りを舞っていた。
逃げ惑う人々の声が聞こえない。
大丈夫だ、しっかりと集中できている。
二三度目配りをして辺りを見回したが、残念ながら良い武器になりそうなものはない。
- 184: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:15:05.00 ID:AsLz3T460
- と、隣のビルの屋上からショボンが飛び下りてくるのが見えた。
それは一瞬でしぃのいるフロアへと着地すると、瞬きする暇も無くもう一度床を蹴って襲い掛かる。
のべつ幕なしな攻撃。
(´・ω・`)「……」
(;*゚ー゚)「ッ!!」
そして彼のその左足に目が釘付けになる。
固まりきっていて、同時に恐ろしいほど筋肉で隆起していた。
一撃で決める気なのだろう。
しぃは身構えた。
その相手の攻撃を避ければまだ希望はある、勝てる望みはあるだろう。
いつ来るか分からない相手の一撃に全神経を集中させる。
逆にその攻撃を喰らってしまっては負けだろうから。
ショボンはしぃの目前でキュッと停止した。
- 186: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:17:16.90 ID:AsLz3T460
- 攻撃か、それともフェイントか?
目線を右にずらしたがショボン本人は動かない。
しぃもピクッと反応しかけたが、何とか持ち堪えた。
ショボンが足をその場で二度三度動かす、しぃはその度体を微かに震わせた。
ぶぅう
(;*゚ー゚)「!!」
まただ、再びショボンはその口の中に含んだテキーラをしぃに浴びせた。
緊張の糸が切れるか切れないかというくらい、再び意標を突かれた。
タッ
と僅かなステップ、直後回転するショボンの体。
回転力を高めたかみるみる加速した左足がしぃへと振られた。
- 191: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:26:09.74 ID:AsLz3T460
- (;*゚ー゚)(回転蹴り!?)
一瞬反応が遅れた。
回転蹴りは体を回すだけ若干のロスが発生する、だから威力は上がれどよほどの事がない限り避けれる自信があった。
しかし吹かれたテキーラ、そして魔女同士の戦いでそのロスのある攻撃を仕掛けるなど想定外だ。
しぃも反応が一瞬遅れた。
そして魔女対魔女ではその一瞬が命取りになる。
体が固まって動かなかった。
動け、動け、動け。
早く動かねば……回し蹴りを直で受けてしまう。
動け、動け!
ショボンの足はもうすぐそこだ……!
- 192: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:27:49.88 ID:AsLz3T460
- と、ようやく自由を取り戻した体。
しかし避けれるのか、相手のこの攻撃を避けれるのか?
(;*゚ー゚)『衝撃の増強』
そしてジャンプした。
避けろ、避けろ、避けろ!
この攻撃を避ければ勝ちなんだ、この攻撃が当たれば……間違いなく負ける。
なんとしてでも、避けろ、避けろ……!!
そしてショボンの回転した足は……跳んだしぃのすぐ下を空切った。
しぃは避けた。
鎌鼬が発生しそうなほどの切れ味を持ったその蹴りを、紙一重避けたのだ。
ショボンの懇親の一撃は彼女を捉える事は出来なかったのだ。
(;*゚ー゚)(勝った!)
そう思って顔を上げた先の光景に、言葉を失った。
- 193: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:29:33.08 ID:AsLz3T460
- (;*゚ー゚)「――ッ!!」
直後の腹部への痛み。
体を堅くしたがそれすら意味を成さないほどの強烈な一撃。
ショボンの左足のかかとが彼女の横脇を突いていた。
剃刀のキックは、確実にしぃの胴をとらえていた。
骨が軋むだけでは済まない、間違いなく折れた。
体はくの字に折れ曲がるだけでもまだ済まない、そのまま上半身と下半身で真っ二つに裂かれるかのような衝撃だった。
勢いで首すら千切れそうになった。
体の中の器官が全てぐちゃぐちゃに砕けた感覚に襲われた。
そのまましぃはそのビルを突き抜け、さらにもう一つ小さな建物を突き抜け、次のビルに突撃してようやく止った。
体全体が麻痺していた。
血がまったく循環していないように感じた。
ここは……給湯室のようだ、しぃが大きく激突したことで辺りからは水が噴き出してきた。
ボイラーか、低い音が鳴り響く。
温かいお湯が体を伝う。
それが自分の血だと分かると、皮肉に笑う元気すら失った。
- 197: ◆7at37OTfY6 :2006/11/22(水) 22:33:41.14 ID:AsLz3T460
- そんなしぃの前に、ショボンが表れた。
しぃの目にもう闘志はなかった。
ここで……自分は死ぬんだ。
(´・ω・`)「大丈夫かい、テキーラでも飲むかい?」
笑う余裕も無く、意志の無い目だけをショボンに向けていた。
ここでまた彼は肩をすくめる。
(´・ω・`)「悪いね、僕の回し蹴りは2回転するんだよ。
いずれにせよ攻撃を避けただけで油断しているようじゃダメだね、
増強したとはいえあそこまであからさまに安心されるとはガッカリだ」
油断してはいけない、それくらい分かっている。
ただそれすら忘れさせるほどショボンが強いのだ。
その素振り全てが余裕あるように見えて、そして隙が無いようにも見えて……。
考えていたらまた身震いした。
そんなしぃにショボンは手を掛ける。
(´・ω・`)「それで、悪いけどまだ僕は勝った気ではいない。
当然君に同情もしていないし、情けをかける気も無い」
頷くとしぃは目を瞑った。
そしてショボンはその頭を掴み潰した。
戻る/第十四話