( ^ω^)ブーン系にも奇妙な物語のようです
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:31:38.23 ID:LfHZrTcY0
- とある夜。あるビルの屋上ではこの時間にフットサルが行われている。
その一角では即席で作られた五人五人の二チームが楽しみながら、それでも真剣にフットサルをやっていた。
全員上手いのだが、ある一人は傑出して上手いのだ。年齢も他の人よりも秀でてはいるが。
見せものでもなく、また皆フットサルをやりに来ているのにそれを観戦してしまう人がいるほど。
( ><)「とても上手いんです。プロの人かと思ったんです!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ……そうか。ありがとよ」
試合が終わりこの中で一番若い青年が煙草を吸う彼に話しかけた。
心から褒められてはいるが全く嬉しそうではないのだ。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:33:07.80 ID:LfHZrTcY0
_、_
( ,_ノ` )y━・~サッカーは不可能なようです
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:35:04.70 ID:LfHZrTcY0
- ( ><)「サッカー、やっているんですか?」
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( ,_ノ` )y━・~「いいや、ちゃんとやれたことなんて一度もないさ」
( ><)「こんなに強いのにおかしいんです」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、そうか。そうだよな。おかしいよな」
彼のプレーは卓越したものだった。ドリブルもパスもシュートも。
敵をひきつけ味方をフリーにさせるのが、特にうまかった。
今作ったばっかりのメンバーとは思えないほどに素晴らしいコンビネーション。
プロよりもうまいのではないかと疑った人もいるだろう。
( ><)「なにか事情でもあるんですか?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「訊きたいか?」
( ><)「是非訊きたいんです」
彼は煙草を携帯灰皿に押し付けた。
闇へと上りゆく紫煙を見ることすら辛そうに下を向きながら話し始めた。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:39:04.07 ID:LfHZrTcY0
- ( ,_ノ` )「俺は子供の頃からサッカーをやっていた」
( ><)「やっぱりそうなんです」
_、_
( ,_ノ` )「やっていたと言っても父親の監視の下。園児でやれたのは基礎トレとリフティングだけだ」
( ><)「へぇ」
_、_
( ,_ノ` )「父親は俺に最高のトッププレイヤーになることを期待していた」
( ><)「もう充分そうなんです」
_、_
( ,_ノ` )「俺には確かにその才能があった。小一なのにサッカークラブで上級生と一緒に練習をやるほどに、だ」
( ><)「それはすごいんです」
_、_
( ,_ノ` )「父親はドリブルもまともにできない人たちとやると腐ると言われて一年で辞めさせられた」
( ><)「上級生よりも強かったんですか……」
_、_
( ,_ノ` )「三年のころにはみんな簡単にトッラプに引っ掛かり完全に中学生をただの棒にさせていた」
( ><)「小学三年生で中学生と張り合うなんて驚きなんです!」
_、_
( ,_ノ` )「試合は残念ながら小学生と。試合の時だけクラブに入るんだ。歯ごたえがなさ過ぎて困っていたさ」
( ><)「はぁ」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:42:01.69 ID:LfHZrTcY0
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( ,_ノ` )「勿論ハットトリックなんて毎回のようにやっていた。何度も優勝した」
青年は毎回のように間の手を入れる。それをお構いなしに彼はしゃべり続けた。
_、_
( ,_ノ` )「小五。その辺りで異変が起きた」
( ><)「ケガか何かなんですか?」
_、_
( ,_ノ` )「フィールドにいる奴ら全員の動きが視えるようになったんだ」
( ><)「ふつうはありえないんです!」
_、_
( ,_ノ` )「動きだけじゃない。この人間が何を考えているかが、どう動くかが理解できるようになった」
( ><)「なんという超能力……」
_、_
( ,_ノ` )「他にもフィールド自体を上から眺めた感じがつかめた。そのあたりでサッカーをやめた」
( ><)「どうしてですか? わかんないんです!」
_、_
( ,_ノ` )「いや、父親に一旦やめさせられたんだ。その感覚を磨くために」
( ><)「ひどいお父さんなんです」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:46:21.67 ID:LfHZrTcY0
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( ,_ノ` )「あとは高校まで、ずっと一人で練習やサッカーの鑑賞をさせられたさ」
( ><)「それでそれで」
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( ,_ノ` )「多分試合中ずっと自然にその感覚を掴めているようになったと思ったさ」
( ><)「駄目だったんですか?」
_、_
( ,_ノ` )「その感覚は完ぺきだった。後ろにいる人の手や目の動きまで視えるほどだ」
( ><)「それじゃあ、なんで……」
_、_
( ,_ノ` )「高校に入ってサッカー部に入部。すぐに試合に出る機会があった」
( ><)「話の落ちが体力が衰えていたというのはなしなんです」
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( ,_ノ` )「するとその感覚が暴走した。スタメンで出場したけれど何も動けなくてすぐに交代だ」
( ><)「そんなに頑張ったのにかわいそうなんです!」
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( ,_ノ` )「小学の時よりもはるかに人数が多くて気持ち悪くなったのさ。吐きそうなほど……な」
( ><)「そういうことなんですか……」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:50:24.72 ID:LfHZrTcY0
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( ,_ノ` )「他人の動きが気になってずっと仁王立ちさ。そればっかりに集中してしまって」
( ><)「可哀そうなんです」
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( ,_ノ` )「だから今度は一年間、それを徹底的に修復しようとした。メンタル面を鍛えるしかないんだ」
( ><)「これはまた大変なんです」
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( ,_ノ` )「勿論基礎トレとは別にさ。自分を含めず二十一人、それを視てしまっても大丈夫なよう」
( ><)「……」
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( ,_ノ` )「一年後、やっとそれに成功した。感覚が暴走するからこれ以上の人数が介入すると無理だったけどな」
( ><)「すごいんです」
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( ,_ノ` )「だから、観客のことを把握してしまうのをやめるメンタルトレーニングも頑張った」
( ><)「そんなことまで……」
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( ,_ノ` )「フィールド内だけを感じとる。そうなるように頑張ったんだ」
( ><)「やっぱりすごいんです!」
_、_
( ,_ノ` )「部活のゲーム練習では数年ぶりの大活躍だ! あの時は本当に嬉しかった」
平坦にしゃべっていたがその時だけ声に抑揚があった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:53:47.61 ID:LfHZrTcY0
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( ,_ノ` )「そして本番、意気揚々としてゲームに臨んだ。それがどうなったと思う?」
( ><)「わかんないんです……」
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( ,_ノ` )「感覚が暴走したんだ」
( ><)「どうしてなんです!?」
青年には理由が分からなかった。なぜ本番になってまた感覚が暴走するのか。
自分を除けば、フィールドにいるのはちょうど二十一人のはずなのに。
ちゃんと練習での試合のときには成功したのに。
ここまで頑張ってきた人に対する神様からの扱いの怒りも口から出ていた。
彼は新しい煙草を手に取り、口にくわえた。
そして火をつけ、一服し、空しそうに今までの独り言を終えた。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/08/09(日) 17:56:39.48 ID:LfHZrTcY0
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( ,_ノ` )y━・~「審判の事が気になって仕方無かったんだ……」
彼は他の人に一緒に試合をしてくれと頼まれた。
まだ長い煙草を携帯灰皿へと押し付け、彼が一番輝ける場所へと戻った。
皆、彼に対して憧れを抱いていた。
しかし、青年には彼がとても虚しく映っていた――――
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( ,_ノ` )y━・~サッカーは不可能なようです 終
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