( ^ω^)ブにも奇妙な物語のようです

6: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:42:43 ID:PPw1Q34Q0
ζ(゚ー゚*ζ

彼女が乗った、列車が行った。
いつもの駅でいつも会う。あの彼女はとても素敵だった。

特に出かける用なんてないのに、彼女を見るために駅前へ毎朝向かう。

( ・3・)「世界中の人間の顔が同じだったらいいのに。そしたら中身で判断されるのに」

今は見守っているだけだけど、いつか付きあいたい。
けれど告白しようたってこの顔だ。出来るはずが無い。

( ・3・)「せめて彼女好みの顔にでもならないかな?」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

(;・3・)「うわ! だれだ!」



7: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:43:42 ID:PPw1Q34Q0



( ・3・)望みの顔のようです



8: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:44:49 ID:PPw1Q34Q0
('(゚∀゚∩「僕は今君が願ったことを叶えにきたんだよ!」

(;・3・)「あなたはだれだ!」

('(゚∀゚∩「君は今顔のことについて願ったね。僕は願いを叶えにきた者なんだよ!」

(;・3・)「いや、だから……頭おかしいんじゃないか?」

('(゚∀゚∩「大丈夫だよ! 僕は他の人には見えないから、おかしく見えるのは君なんだよ!」

(;・3・)「それじゃダメだろ!」

('(゚∀゚∩「ちょっと時間はかかるけど、君の願いを叶えるよ! それじゃ!」

(;・3・)「って…………えー……」

一瞬で姿が消えてくれるならまだしも、その変人は走って去って行った。



9: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:45:36 ID:PPw1Q34Q0
さてそれからのことである。結局一日ずっとその言葉が引っかかっていた。
いつもは見向きもしない鏡を今日は何度も見る。
自分の顔に変化は無いかと気にしてしまう。
いつになったら彼女好みの顔になってれるのだろうか。

( ・3・)「もしかして、今の顔が彼女の好きな顔だったり……」

一日たっても変わらない顔。あらぬ期待をかけてみた。
でも、それはないだろう。僕でさえ気持ち悪いと思うのに。
その前に彼は本当に願いを叶えてくれるような者なのだろうか。
いや、違うのだろう。ただ僕は変な奴に遊ばれただけなのだ。

( ;3;)「……チクショウ」


僕は一晩中泣いた。



10: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:46:25 ID:PPw1Q34Q0
(゜3゜)「……」

そのせいだろう。目が腫れて充血した。
治りそうもないその顔に、また僕はいら立ちを覚えた。

(゜3゜)「クソ……クソ……」


どうしてこんな目に遭っているんだろう。




( ゜゜ω)「……」


たったの二日で、顔立ちが完全に変わってしまった。
もう、何が何だかわからない。
そうだ。これが彼女の好きな顔なのかもしれない。そうに決まってる。



11: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:47:31 ID:PPw1Q34Q0
いつものように、僕は駅前に向かった。

( ゚д゚ )「……」

( ゜゜ω)「?」

(゚д゚ )「……」

誰も目を合わせようとしない。
ただ、僕を少し見ては皆目をそらすのだ。
仕方ない。理解してるさ。こんな顔だもの。


ζ(゚ー゚*ζ

ああ、彼女が現れた。天使のような彼女だ。
きっとこんな僕のことを、彼女はきっと慰めてくれるはずだ。

目が合った。いや、合うように動いた。
僕は彼女から目線が話せない。



12: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:48:15 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)「あの……」

周りから奇怪な光景に不審な目で見られる。
誰かは、警察や駅員を呼ぶ準備をしているだろうか。
そんなことはどうでもいいのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「素敵な顔ですね」

( ゜゜ω)「え……」

ζ(^ー^*ζ「私もなってみたいです」

これは夢だろうか。いや、現実でこの声も幻聴などではない。
初めて耳にした天使のような声。
何も聞いてないのに素敵な顔だと彼女は言った。
彼女は僕の顔が醜いというのがわかっているのだ。

( ゜゜ω)「あの、貴女の顔とかそういうのじゃなくて、人としての中身が大好きです」

僕はついに言ってしまった。
だってそうだろう。
こんな素晴らしい人間がいたものか。
お世辞にも面と向かって目も逸らさないでこんな事が言えるものか。

ζ(゚ー゚*ζ「え……」



13: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:49:32 ID:PPw1Q34Q0
彼女がそう言って、顔を歪ませた。その一瞬のことだった。
顔を歪ませたというよりは、歪んでいったの方が正しいのかもしれない。

ζ゜゜ωζ「うそ……」

彼女の顔が変わってしまった。僕と似たような醜い顔になってしまった。
声はそのまま。けれど天使の声には聞こえない。

( ゜゜ω)「……」

一瞬何が起きたか理解できなかった。
ただ、彼女への気持ちが一気に絶えてしまいそうになった。
だがどうだろう。彼女の中身を好きだと言った矢先、それを否定できるものか。

( ゜゜ω)「それでも好きです!」



僕は一体どこで間違ったのだろう――――



14: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:50:08 ID:PPw1Q34Q0
私はいつものように駅へ向かった。
最近は痴漢に遭ったり、ナンパされたりして、いいことが全くない。
今日の朝も憂鬱なものだった。

( ゜゜ω)

なんだろう、あれは。今まで見たことが無い顔だ。
まるでひょっとこの面をそのまま顔面にくっつけた様なひどい顔。
そんな顔が私を見つめてくる。
今日もいいことが無いどころか気味が悪い。

( ゜゜ω)「あの……」

話しかけられてしまった。こういうのは穏便に済ませないといけない。
とりあえず、場を取り繕っておけば大丈夫なはずだ。

ζ(゚ー゚*ζ「素敵な顔ですね」

( ゜゜ω)「え……」

ζ(^ー^*ζ「私もなってみたいです」

いつも通り、上手くあしらって終わるはずだった。



15: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:50:56 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)「あの、貴女の顔とかそういうのじゃなくて、人としての中身が大好きです」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

一瞬何が起こったのか分からなかった。
私とその異形の変人との間に割って入ってくる人が現れた。

('(゚∀゚∩「君は今顔のことについて願ったね。僕は叶えにきた者なんだよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「え……」

('(゚∀゚∩「これぐらいの願いだから、すぐに叶えたよ! それじゃ!」

ζ゜゜ωζ「うそ……」

顔がグニャグニャと変形していくのがわかった。
そして、今頃どんな顔になっているのかも。

( ゜゜ω)「それでも好きです!」

あの男がでっかく叫ぶ。なんてことだ。
だがどうだろう。素敵な顔だと言った矢先、それを否定できるものか。
それに、こんな醜い顔になった以上、彼以外に誰が相手してくれるものか。

ζ゜゜ωζ「よ、よろこんで……」



16: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:51:20 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)

ζ゜゜ωζ


⌒*リ´・-・リ「ママー見て見て、変な顔が二人もいるよー」

从'ー'从「そんなこと言っちゃいけないよ」

⌒*リ´・-・リ「でも……変だよ?」

从'ー'从「あれは、とても素晴らしい顔なんだよ。ママ達家族も皆出来るものならなりたいくらい」

⌒*リ´・-・リ「本当に?」

从'ー'从「本当だよ」

⌒*リ´・-・リ「なら、私もなりたいな」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

从'ー'从「え?」



17: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:51:59 ID:PPw1Q34Q0
今この世界に蠢くのは滑稽な思いやりの精神だ。
言ってしまった以上引くに引けない。そんな思いやりの精神。
その滑稽さは顔に表れる。悔むとすれば、自分の言葉。
けど悔むべきはその言葉でなくその精神のはずだ。


最近、様々なところで顔がかわる事件が起きている。
家族単位、クラス単位、さらには街単位で。
賛同したものは皆、同じ望んだ顔になる。


全ては一人のため。皆は一人のため。


( ・3・)「世界中の人間の顔が同じだったらいいのに。そしたら中身で判断されるのに」

一人の願いを叶えるため

望みの顔はやってくる――――




( ・3・)望みの顔のようです 終



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