( ^ω^)が競技運転士になったようです

123 : ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU [第一話 汚れた挑戦状] :2006/10/29(日) 20:12:19 O
  
 ジリリリリ……。
 けたたましい金属同士がぶつかり合う音で、私は現実世界に引き戻される。
ξぅ-)ξ「ん……あと5分……。」
 寝ぼけまなこで、騒音を発する機械のスイッチを切る。
 これでまた、夢の世界に……。
ξ;゚听)ξ「って、違━━━━━━うッ!!」
 私はあわてて掛け布団を跳ね上げながらベッドから起き上がる。
 危ない、危ない。危うく寝過ごすところだったわ。
 せっかくブーンと一緒の電車に乗れるように時間調整してこの時間に起きてるのに。
 ベッドから降り、お母さんから譲り受けた三面鏡の前でヘアブラッシングをして、制服に着替えたら1階のリビングで朝食をとる。
 歯を磨いて透明リップを塗ったら、自転車で似井戸(にいと)駅へ。
 午前7時46分発の丹生即(にゅうそく)行きの前から3両目の車輪。
 そこのドア付近に彼、ブーンこと内藤帆頼存くんがいる。



124: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 20:29:21 O
  
 列車がホームに入り停車し、ドアが開くと色とりどりの制服に身を包んだ学生や、スーツ姿のサラリーマン、OL達が吐き出される。
 その波が引いてから私は車内に乗り込む。
 えっと、ブーンは……いたッ!
 ドアから入って右手の吊革につかまり、片手で携帯を読んでいた。
ξ゚ー゚)ξ「おはよう、ブーン。」
( ^ω^)「おはようだお、ツン。」
 ブーンは見ていた携帯を閉じ、挨拶を返してくれる。
ξ゚听)ξ「またVIP?」
( ^ω^)「おっおっ、そうだお。今日もVIPはクオリティが低いスレや高いスレが乱立してるおwwwww」
 そのまま他愛のない雑談に花を咲かせる。



127: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 21:57:35 O
  
車掌「次は〜美府(びっぷ)〜、美府でございます。」
 車内放送の、車掌の抑揚のない声が、次の駅名を告げる。
 美府駅。私達が通う私立美府高等学校の最寄り駅だ。
 列車は次第にスピードを緩め、停車の態勢に入る。
 モーターの唸りが次第に小さくなっていき、列車はプラットホームに滑り込んでいく。
 甲高い、車輪とブレーキ弁が擦り合う音が響き、車輪が軋む音と一緒に列車がガクンと大きく揺れる。
ξ゚听)ξ「キャッ!」
( ^ω^)「おっ?」
 その揺れでバランスを崩し、思わずブーンに抱きついてしまう。
( ^ω^)「おっおっ、ツン、いい匂いがするお。」
ξ#゚听)ξ「…………。いつまで抱きついてるのよッ!!」
 バシーン!
 右の平手がブーンの頬にクリーンヒットする。
(;ω;(#)「痛いお……。ツン、ひどいお……。」
 ああっ、またやっちゃったッ!!



128: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 22:17:13 O
  
ξ(゚、゚;ξ「あ……あんたがいきなりヘンなコト言うから悪いのよ。私は悪くないわ。」
( ;ω;)「うっうっ……ひどいお……。電車が大揺れしたのが悪いんだお。ブーンはわるくないお……。」
 それは充分わかってるわよ……。だって、いきなりブーンと密着して恥ずかしかったから思わずぶっちゃった訳で……。
 ホントは嫌じゃないんだけど、心と体と口は別の命令機関でうごいてるかのように、勝手に動いちゃったのよ……。
 だけど素直に「ごめんなさい」と言えない私は、責任転嫁を図る。
ξ゚听)ξ「まぁ、運転士の運転が荒かったのが一番の原因よね。あんな運転じゃ、70点しかあげられないわよ。」
( ^ω^)「それはあげすぎだお。あんな運転、30点もあげられないお。」
 さすがは現役競技運転士。判定がシビアだ。
ξ゚听)ξ「あ、ドア開いたわよ。降りましょう。」
( ^ω^)「把握した。」
 混雑した車内の流れに沿い、私達はホームに降り立つ。
 NR美府駅は、二本の島型ホーム、4線で構成される、快速停車駅だ。
 私達が降り立ったホームは1、2番線で、丹生即線と新居則(にいそく)線の下り列車が発着し、線路を挟んで3、4番線は上り列車が発着する。



129: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 22:40:40 O
  
 ちなみに1、2番線に丹生即線が発着し、3、4番線は新居則線が発着するの。
(,,゚Д゚)「お、ブーンとツンじゃねぇかゴルァ。」
 向かいのホームに、私達が乗ってきた列車と同時に発着する列車から降りてきたのは……。
ξ゚听)ξ「おはよう、羽仁野くん。」
( ^ω^)「おはようだお、ギコ。」
 羽仁野義己太(はにや ぎこた)くんと……。
(*゚ー゚)「おはよう、内藤くん、玲子ちゃん。」
ξ^ー^)ξ「おはよう、しぃちゃん。」
( ^ω^)「おはようだお、しぃ。」
 しぃちゃんこと、椎名優子ちゃん。
 二人とも私の同級生で、美府高校3年。
 ブーンと羽仁野くんはA組で同じクラスで、しぃちゃんと私はE組で同じクラス。
 ブーンが言うには、羽仁野くんとしぃちゃんは家が隣同士の幼なじみで、付き合ってるらしい。
 ……ちょっとうらやましいな。
(,,゚Д゚)「にしても、二人とも仲いいぞゴルァ。家が近い訳でもないのに毎日同じ列車かゴルァ。」
 ふぇッ!?
ξ///)ξ「べっ、別に時間合わせてきてる訳でもないのに、コイツが毎朝同じ列車、同じ車輪にいるだけなんだからッ!いつもコイツには『一本早い電車に乗りなさい』って言ってるんだけど……。」
(; ^ω^)(……初耳だお。でもなんか言うとまた殴られるから黙ってるおwwwwwwww)
ξ゚听)ξ「…………。」
 バシッ!!
 再びブーンの頬に私の平手が炸裂する。



130: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 22:53:29 O
  
(;ω;(#)「まだ何も言ってないお……。暴力反対だお……。」
ξ(゚、゚;ξ「あ……あんたが心の中で私の言葉を否定するからよ。」
( ^ω^)「エスパーktkrwwwwwwwwwww」
 私は軽く茶化すブーンをねめつけると、ブーンは「サーセンwwwwwwwww」といってガード態勢に入る。
 まったく、お調子者なんだから。
(*゚ー゚)「ほらほら玲子、じゃれあってると遅刻するわよwwwwwwwwww」
ξ゚听)ξ「わかってるわよ。ほら、ブーン!遊んでないで行くわよ!!」
( ^ω^)「原因作ったのは、どうみてもツンです。本当に(ry」
ξ#゚听)ξ「そ の 舌 引 っ こ 抜 く わ よ !」
(; ^ω^)「正直スマンかった……。」
 いつものようにブーンとじゃれあい、しぃちゃん達にからかわれる。
 もはや朝の日常風景と化したやりとりをしながら改札をくぐり、学校へ続く道を4人並んで歩く。
 3年間通い続けたいつもの道。
 だけど、今日はいつもと違う風景が待っていた。



131: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 23:13:51 O
  
 それは、美府高校の校門へと続く並木道でのコトだった。
<#`∀´>「ふざけるなニダ!!何で知らないニカ!?隠し立てしてるとウリの右手のテポドンが火を噴くニダ!!」
 通り掛かりと思われる男子生徒の胸ぐらをつかんだ20代後半から30代前半ぐらいの大柄な男が一人、今にも殴りかからんともしないような剣幕で怒鳴り散らしていた。
男子生徒「そ……そんなコト言われても、知らないものは知らないんです……!!」
 もはや半分涙目になっている男子生徒の姿を見て見ぬ振りで、そっとその脇を通り抜けていく他の生徒達。
 だけど私は弱いものいじめとかが大嫌いで、そういったものを見過ごせなかったから、その男に声を掛ける。
ξ#゚听)ξ「ちょっとアンタ!ウチの学校の生徒に何してるのよ!!だいたいそんなひ弱そうな相手に何をいい気になってるの!?あなたいくつ!?高校生相手にそんなに怒鳴り散らして恥ずかしくないの!?」
 指をビシッと突きつける。
 決まった。
<#`∀´>「ああん?なんだニカ!?このクソチョッパリ肉便器女!!」
 胸ぐらをつかんでいた男子生徒を突き飛ばし、こっちに向かってくる大男。
 う……、少し怖い……。
 だけどここでひるんだところを見せたら負けよ、玲子!!



132: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/29(日) 23:44:46 O
  
ξ;゚听)ξ「な……なによ?女の子に手を上げようって訳?あなた、最低ね!!恥を知りなさい!!」
(; ^ω^)「ツン、もうやめるお……。」
(;,゚Д゚)「そ、そうだぜ。あまり刺激しない方が……。」
 ブーンと羽仁野くんが私をなだめようとする。
<#`∀´>「生意気なチョッパリニダ!!ウリをジョンイルジェネレーションズのニダーだと知ってるニカ!?謝罪と賠償を要求するニダ!!」
 ぶんッ!!
ξ><)ξ「きゃあッ!!」
 大きな拳が私に迫り、思わず頭を抱えてしゃがみ込む私の上で、空を切る音がした。
(# ^ω^)「やめるお!電車の走り屋ならもっと紳士になるお!!女の子に暴力振るうなんて、走り屋として最低な行為だお!!」
<ヽ`∀´>「チョッパリごときがウリに意見するなんて100万光年早いニダ!! ……って、ちょっと待つニダ。貴様、ウリのチームが電車の走り屋だとよく気づいたニダ。」
 えっ……この人、走り屋なの?
<ヽ`∀´>「ダメ元でそこのニヤケ顔のチョッパリに聞いてやるニダ。この学校に『VIPの赤き流星』と呼ばれる走り屋がいるらしいニダ。そいつをここに呼んで来るニダ。」



133: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/30(月) 00:02:25 O
  
 VIPの赤き流星……それはブーンの走り屋としての二つ名だ。
 流星のようにすごいスピードで前行く列車を追い上げ、追い抜くと流星が消えるように、あっという間に視界から消えるコトからつけられた名前。
 そしてブーンの愛車である名鉄7000系の車体は、赤一色の塗装なので、「赤き流星」と呼ばれるのである。
(# ^ω^)「ブーンがお前のお探しの『赤き流星』だお!!ツンの半径5m以内に近づくなお!!」
(;,゚Д゚)「(ヒソヒソ)話が全く読めないぞゴルァ。しぃ、説明してくれだゴルァ!!」
(゚ー゚;)「(ヒソヒソ)ちょwwwwww私に訊かないでよwwwwwwwww私だってなんのコトかちんぷんかんぷんなんだから…。」
<ヽ`∀´>「何?お前みたいな糞チョッパリがニカ?証拠はあるニダか?ないなら謝罪と賠償を要求するニダよ?」
( ^ω^)「証拠なら、ここにあるお!!」
 ブーンがカバンから取り出したもの。
 それは……。



137: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/30(月) 16:33:47 O
  
<ヽ`∀´>「ブレーキハンドルニカ?」
 そう、ブーンが取り出したのは、旧型車両には未だに付いている2ハンドルタイプのブレーキハンドル。
 今やワンハンドルタイプのマスコンとブレーキが一体化したハンドルが主流だけど、地方では国鉄時代に作られた車両が未だ現役で走ってる。
 そういう車両のほとんどが、マスコンとブレーキが別々になっていて、ブレーキハンドルは取り外しが可能になってる。
 ……それはいいけど、ブーンってばそんなのを毎日持ち歩いてたのね。
<ヽ`∀´>「少なくとも貴様が競技運転士なのは間違いないみたいニダ。ならば要件はわかってるニダね?」
( ^ω^)「バトルの申し込みならお断りだお!ツンにひどいコトする奴とは走りたくないお!」
<#`∀´>「ファッビョ―――ン!!頭に来たニダ!!ならばこの糞チョッパリ女は、こうしてやるニダ!!」



138: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/30(月) 16:57:19 O
  
 ニダーという名の男が、私の髪を鷲掴みにする!!
ξ;;)ξ「イヤッ!痛い!痛いッ!!」
 髪が引きちぎれよとばかりに、ツインテールにまとめた髪を強く引っ張られる!!
( ゚ω゚)「ツン!!!!!!!……っこの!いい加減に、するおッ!!」
 ブーンがニダーに向かって殴り掛かる!!
<ヽ`∀´>「動きが単純!!読めたニダッ!!」
( ゚ω゚).・,∵ '「うッ!!」
ξ;;)ξ「ブーン!!!!!!」
 ニダーの蹴りを受けて、地面に倒されるブーン!
<ヽ`∀´>「ウェ―――ッハッハッ……。バトルを受けないとこの女、もっとひどい目に遭わせるニダ!!」
( ゚ω゚)「うう……くそぅ……!!」
 よろめきながらも起き上がるブーン。



139: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/30(月) 17:21:44 O
  
( ω )「わかったお、そのバトル、受けてやるお!!だから、ツンを離すお!!」
<ヽ`∀´>「ふん、初めからそう言っていれば、痛い目に遭わなくてすんだニダ。
今夜の25時30分、丹生即の駅で待つニダ。もし来なかったり、ウリのコトを通報したら、この学校の生徒の安全は保証しかねるニダ。必ず来ないと、一生後悔するニダよ!ウェ―――ッハッハッ!!」
 ニダーは私をブーンの方に突き飛ばすと、乗ってきたとおぼしきバイクに跨り、そのまま高笑いしながら去っていった。
ξ;;)ξ「ごめんね、ごめんねブーン……。私のせいで……。」
( ^ω^)「別にツンのせいじゃないお。ちょうどいい機会だお、ツン達にブーンの秘密を1コバラすお。」
 ブーンは、自分が競技運転士だというコトを羽仁野くんやしぃちゃんにカミングアウトした。



140: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/10/30(月) 17:22:46 O
  
 流石に羽仁野くんやしぃちゃん達は驚いてたけど、でも理解を示してくれた。
(,,゚Д゚)「……けど、津出さんはなんか反応薄いぞゴルァ。」
(*゚ー゚)「言われてみればそうだね。もしかして知ってた?」
ξ゚听)ξ「ええ……まぁ……。」
( ^ω^)「おっおっ、いつから知ってたんだお?必死に隠してたブーンがなんか馬鹿みたいだおwwwwwwww」
ξ゚听)ξ「実際バカじゃない。」
( ^ω^)*゚ー゚),゚Д゚)「ちょwwwwwwww」 私は、初めてバトルに出会った時の話をブーン達に話し始めた……。



第1話おわり



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