( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:11:03.16 ID:wiywb1KmO
- ( ´ω`)
- _
- ( ゚∀゚)「あー、んー、その、な?
- 俺じゃあどうにも出来ないし……」
- (,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」
- _
- ( ゚∀゚)「こいつもこう言ってるし……」
- ( ´ω`)「……『ゴルァ』が人に頼む態度なのかお」
- ξ゚听)ξ「いいじゃない。
- 引き受けてあげれば?」
- ( ´ω`)「嫌だお」
- ξ゚听)ξ「即答ね」
- 第二話:聖徒会最初のお仕事
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:13:57.27 ID:wiywb1KmO
- 放課後。元、生徒会室。現、聖徒会室。
- 聖徒会長、内藤ホライゾンの前に2人の男子生徒。
- _
- ( ゚∀゚)「気持ちは分かる。俺だって嫌だ」
- 凛々しい眉毛が特徴的な、ジョルジュ長岡。
- (,,゚Д゚)「俺が言うのもアレだが、俺も断ると思う」
- 精悍な顔付きをした、羽生ギコ。
- 2人共、内藤のクラスメートだ。
- ( ´ω`)「分かってるなら、お引き取りお願いするお」
- _
- ( ゚∀゚)「でもなあ……こんなん、頼むとしたらお前らしかいないだろ? 聖徒会」
- ξ゚听)ξ「あたしの家なら安心よ。
- 料金は高くつくけど」
- (,,゚Д゚)「……こうやって金要求されても、払う金がねえし」
- (;´ω`)「……うー……」
- ギコとジョルジュが頭を下げる。
- _
- (;-∀-)(;,-Д-)「頼む!!」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:16:57.82 ID:wiywb1KmO
- (;´ω`)「でも、でも……」
- ξ゚听)ξ「嫌だわ、キリストって、困ってる人を助けるな、なんて教えでも説いたの?」
- (; ω )「……」
- 聖徒会副会長兼会計、出連ツンの言葉がぐさりと刺さる。
- 仮にも信心深い教会の息子。
- それを言われちゃあ、黙ってなどいられない。
- 騒動や面倒事は避けたいが――
- (;,-Д-)「……もう、どうしていいか分かんねえんだよ……」
- ――こうして困っている人が、目の前にいるのだ。
- ( ^ω^)「……僕に、任せるお」
- 救わねば、首から下げた十字架に泣かれてしまう。
- _
- ( ゚∀゚)「!」
- (,,゚Д゚)「ほ、本当か!?」
- _
- ( ゚∀゚)「良かったな、ギコ!」
- (*,,゚Д゚)「ああ!」
- (;^ω^)「そ、それじゃあ……」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:19:15.43 ID:wiywb1KmO
- 内藤が震える手を伸ばし、ギコが持つ物に触れる。
- 固く、がさがさした感触。
- そこに一本飛び出る細長い釘。
- どう考えても「使用済み」の藁人形を――内藤は受け取った。
- ( ФωФ)「この、五寸釘が突き刺さった藁人形がギコ君の下駄箱に入っていた、と」
- ギコたちが帰った後。
- 入れ違いになるように聖徒会室へやってきた理事長、杉浦ロマネスクは、
- 藁人形を眺めながら、ふむ、と感嘆の声を漏らした。
- (;^ω^)「そうなんですお」
- ここ最近、藁人形がギコの元に届くのだという。
- そして、そのせいかは知らぬが、身の回りで「呪い」めいたものが起きているらしい。
- それをどうにかしてほしい、というのがギコの頼み事だった。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:22:31.82 ID:wiywb1KmO
- (*ФωФ)「むふふふふ、いい、実に面白い。
- 怨念が詰まっておる。
- 我輩のコレクションに加えたいのである」
- (;^ω^)「いや、それは事件を解決してからですお」
- ξ゚听)ξ「幽霊の癖にオカルトマニアって……」
- ( ФωФ)「幽霊がオカルト好きでも良いではないか。
- して、ギコ君が呪われている原因に心当たりは?」
- ( ^ω^)「……いえ、それが、どうやら――」
- 呪われているのはギコではないそうだ。
- ( ^ω^)「どういうことだお?」
- (,,゚Д゚)「俺の彼女、いるだろ?」
- ξ゚听)ξ「しぃ?」
- (,,゚Д゚)「ああ……」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:25:20.56 ID:wiywb1KmO
- ギコには、猫田しぃ、という恋人がいる。
- どうやら呪われているのは、そのしぃの方らしいのだ。
- (,,゚Д゚)「この藁人形、これで3つめなんだ」
- ξ゚听)ξ「前の2つは?」
- (,,゚Д゚)「捨てた」
- _,
- ξ゚听)ξ「……あのね、あんた、重要な手掛かりと証拠を……」
- (;,゚Д゚)「す、すまん、その……」
- _
- ( ゚∀゚)「俺が『気味悪いから捨てた方がいい』って言っちまったんだ。
- 俺が悪い」
- ( ^ω^)「悪くないお。
- 誰だって、そんなもの持っていたくないに決まってるんだから」
- だから誰も悪くない、と言い切る内藤に、ツンは何か言いたげに口を開いたが、
- 結局何も言わずに口を閉じた。
- (,,゚Д゚)「……ありがとうよ。
- それでな、一回目が、二週間前の月曜日で。
- 朝、下駄箱開けたら入ってたんだ」
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:28:17.77 ID:wiywb1KmO
- _
- ( ゚∀゚)「教室に入るなりギコに相談されて、俺が捨てればいいって言った。
- すぐにゴミ捨て場に置いて、おしまい。
- ……のはずだったんだが」
- ( ^ω^)「……しぃさんが?」
- (,,゚Д゚)「ああ。
- その日の放課後、合唱部で――ああ、しぃは合唱部なんだ。
- 練習してたら、急に転んだんだと」
- ξ゚听)ξ「何かにつまずいたの?」
- (,,゚Д゚)「いや。転んだ場所には何もなかったらしい。
- いつもの立ち位置につくために歩こうとしたら片足が急に動かなくなった、っつってた。
- 足は擦り傷程度で、あまり大事には至らなかったから良かったが……」
- ( ^ω^)「うーん……二回目に藁人形が入ってたのは?」
- (,,゚Д゚)「先週の月曜日――」
- _
- ( ゚∀゚)「いや、先週の月曜は休みだったから、火曜だ」
- すかさずジョルジュが訂正を入れる。
- その日にどうしたの、とツンが続きを促した。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:31:33.46 ID:wiywb1KmO
- _
- ( ゚∀゚)「またギコの下駄箱に藁人形が入ってたんだよ。
- ただ、しぃちゃんが怪我したのは前の日、月曜日だった。
- 聞いた話なんだが、散歩してたしぃちゃんが車に……」
- (;^ω^)「ひ、轢かれたのかお!?」
- _
- ( ゚∀゚)「……轢かれかけて、転んだ拍子に右腕を打ち付けて痣が出来た」
- ξ゚听)ξ「足を怪我したときは左右どっちだった?」
- _
- ( ゚∀゚)「左……だったっけ?」
- (,,゚Д゚)「ああ、そのはずだ」
- ξ゚听)ξ「あんたら、2人じゃなきゃ満足に説明もできないの?」
- _
- (;゚∀゚)「うっせー、俺らは頭良くないんだよ。
- つーか左右とか何か関係あんのか?」
- ξ゚听)ξ「あるにはあるわね。まあ、気にしないで。
- で、3回目が……一昨日かしら?」
- ツンは手元にあったプリントを裏返し、
- そこに2人が話した内容を簡単にメモしながら問う。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:34:20.21 ID:wiywb1KmO
- 一度目、二度目、共に事が起きたのは月曜日。
- それが決められた法則に従ったものなら、一昨日の月曜日に藁人形が入れられたはず。
- そして、しぃに何か起きたのだろう。
- ギコが頷く。
- (,,゚Д゚)「ああ」
- ( ^ω^)「その日は何があったんだお?」
- (,,゚Д゚)「しぃが階段から落ちた。
- ……怪我は、右足を酷く捻ったぐらいで、骨には異常なかったんだが」
- ギコが、痛々しい顔をして俯く。
- (,, Д )「そのとき、しぃが呪われてるって確信したんだ。
- なのに藁人形が俺の所に来るってことは、俺にも関係あるって意味だろ?
- ……きっと、俺のせいでしぃがこんな目に遭ってるんだ」
- ただ、自分がどうして関係あるのか分からない。
- 自分がどうして彼女を傷付けているのか分からない。
- (,, Д )「俺、ジョルジュが言う通り頭良くねえから。
- 誰が、どんな奴が、俺に何を思ってしぃを呪ってんだか、分かんねえんだよ。
- ……だから、内藤」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:37:36.81 ID:wiywb1KmO
- ギコが両手を握りしめて拳を作る。
- 力をどれほど入れているのか、ぎり、と音が鳴った。
- 辛いのを我慢するような仕草だった。
- (,,゚Д゚)「呪いを解いて――犯人を突き止めてくれ。
- 俺には出来ない。お前達に頼むしかないんだ」
- ( ^ω^)「……ということですお」
- ( ФωФ)「ふむ」
- ξ゚听)ξ「予想はつくけどね」
- 溜め息をつき、ツンは首を振った。
- ξ゚听)ξ「ギコ、顔も性格も良いってんで、女子から人気あんのよ。
- 大方あいつに片思いでもしてる女の仕業じゃない?」
- 嫉妬は恐いわね、とツンが呟く。
- ――直後。
- 川 ゚ -゚)「まったくだな」
- どこから現れたのか、素直クールが内藤の隣に立ち、しみじみと同意した。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:40:17.32 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)
- ξ゚听)ξ
- ( ^ω^)ξ゚听)ξ「び、」
- (;^ω^)ξ;゚听)ξ「びっくりしたあああああああああああ!!!!」
- 数秒のタイムラグを経て、内藤とツンが飛び上がる。
- 理事長といい、クールといい、幽霊は突然現れるのが好きなのだろうか。
- クールは2人の反応に構うことなく言葉を続けた。
- 川 ゚ -゚)「女だろうと男だろうと、嫉妬というのは恐い。
- たとえば、こーんなことすると……」
- ギュッ川 ゚ -゚)(;*^ω^)そ
- クールが内藤を後ろから抱きしめる。
- 異様に柔らかい2つの膨らみが内藤の背中に押しつけられた。
- いい匂いが鼻をくすぐる。
- 幽霊だからだろうか、温かみがないのが惜しいところだ。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:43:12.90 ID:wiywb1KmO
- とはいえ、露出狂かと疑ってしまう格好をした美女に抱き着かれるというのは、
- 日頃の振る舞いだけで「うぶ」という言葉を体現しているような内藤には刺激が強すぎる。
- (;//ω//)「 」
- 川 ゚ -゚)「固まってしまった。
- ブーン可愛いよブーン」
- ξ )ξ「ただちに除霊を開始する」
- 動かなくなった内藤に頬擦りをするクール。
- その後ろで、ツンが殺気を放ちながら玉串を取り出した。
- ( ФωФ)(wwwwwwwwwwww)
- ξ )ξ「悪霊め。
- 色情霊め。
- 雌豚雌猫雌狐め」
- 川 ゚ -゚)「……と、まあ、嫉妬はこれぐらい恐い。
- 落ち着けツン、ほんの冗談だ」
- クールは内藤から離れ、降伏した犯人のように両手を上げた。
- それでもツンの目は、クールをきつく睨みつけている。
- ( ФωФ)(おもれえwwwwwwwwwww)「ツン君wwwおちwけつwww」
- 「おい何笑ってんだ」ξ#゚听)ξ⊃))ωФ)「ごめりんこ」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:46:21.47 ID:wiywb1KmO
- (##)ωФ)「……して、クール君、何故聖徒会室にやって来たのであるか?」
- 川 ゚ -゚)「ああ、そうそう。
- それがだな、私のところにドクオが来てるんだが、
- 彼が遊びに来てからかれこれ一時間になる。
- そろそろ飽きてきたんで、逃げるついでに――」
- そのとき、勢いよく聖徒会室のドアが開かれた。
- そこに立つのは喜色満面、いや寧ろキショく満面の男子生徒。
- (*'∀`)「クールさーん! あっそびーましょーっ!!」
- 聖徒会副会長兼書記、鬱田ドクオ。
- 川 ゚ -゚)「――ここで保護してもらいたくてな」
- ξ゚听)ξ「きもっ」
- ('A`)
- (;^ω^)「……ま、まあまあ……」
- ドクオのあまりの気持ち悪さにか、ツンの怒りが、すうっと引いた。
- さらに内藤が我に返る。
- ドクオの気持ち悪さのおかげで聖徒会室にいつもの空気が戻ってきたのだ。
- ('A`)「死のう」
- <_プー゚)フ「死ぬならお前の体ちょうだい」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:49:19.24 ID:wiywb1KmO
- 急速にテンションを落としたドクオの後ろから、霊魂が現れた。
- あれ以来、聖徒会のメンバーにすっかり懐いてしまったようだ。
- 未だに、何故死んだのか、何故生きた女に執着するのか、といったことは分からない。
- 本人いわく、忘れてしまった、とのことだ。
- それでも先日、彼は自身の名前だけを思い出すことができた。
- ――エクスト。
- 「そう呼ばれていた気がする」と、彼は言っていた。
- エクストというのが本当に名前なのかは知らないが、
- とりあえず内藤たちは彼のことをエクストと呼んでいる。
- <_プー゚)フ「なー、体くれー」
- 川 ゚ -゚)「死んだら私とドクオが同類になるのか? 勘弁してくれ」
- ξ゚听)ξ「祓うの面倒だから、死んだらおとなしく成仏してよ」
- (*ФωФ)「心霊写真を撮ってオカルト雑誌に送るから、
- 幽霊になったらまず我輩のところに来るのである」
- (;^ω^)「みんなやめてあげて! ドクオ、死んじゃダメだお!」
- ('A`)「俺の中の抱かれてもいい男ランキング1位にブーンが君臨した。
- ……ん、何だこれ?」
- ドクオの死んだ目が、机の上の藁人形を見付けた。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:53:03.60 ID:wiywb1KmO
- ('A`)「藁人形? ツン、ついに呪い屋稼業にまで手を出したのか」
- ξ#゚听)ξ「どういう意味よ」
- 川 ゚ -゚)「ツンはそれで私を呪い殺すつもりなのさ」
- <_プー゚)フ「もう死んでんじゃん」
- ( ^ω^)「誰のものかは不明だお。
- 僕のクラスにいる、ギコっていう男子の下駄箱に入ってて……」
- 内藤はクールたちを無視し、ツンが書いたメモを見せながらドクオに説明した。
- ギコの下駄箱に入っていたこと。
- 恐らく呪われているのはギコの恋人であること。
- 犯人を探し出し、呪いを解かなければならないこと――
- 聞き終えたドクオは、首を傾げた。
- ('A`)「この藁人形で、呪われてるって?」
- ( ^ω^)「そうだお」
- (*ФωФ)「ほれ、こうも深々と釘が藁人形の腹に突き刺さっておる。
- なんとも深い怨念が伺えるのである」
- ('A`)「……変だな」
- ( ФωФ)「むっ?」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:56:17.88 ID:wiywb1KmO
- 嬉しそうに藁人形を見せびらかす理事長から藁人形を奪い取ると、
- ドクオはそれを解体し始めた。
- (;^ω^)「アッー!!?」
- ('A`)「釘、藁、糸、藁……」
- 藁と糸を一本一本ばらけさせ、机の上に並べていく。
- ――祟られる。
- 内藤の脳裏にそんな言葉が過ぎった。
- (;^ω^)「ドクオ! やめっ……」
- ('A`)「藁、藁……おしまい」
- (;^ω^)「あっ、あああああっ!
- 何てことを!」
- 止める内藤の言葉もむなしく、すぐに「解体」は終わってしまった。
- 原型を留めていない、元藁人形。
- 慌てふためく内藤を尻目に、ドクオはいたって普通にそれを眺める。
- ツンも興味深そうに覗き込んではいるが、内藤のように祟りに怯える様子はない。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 20:58:44.44 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「どっどどどドクオ、謝るお、藁人形さんに謝るおっ」
- ('A`)「やっぱ変だ」
- ξ゚听)ξ「あーららら……本当ね」
- (;^ω^)「何が変なんだお、変なのはドクオだお!?」
- ('A`)「藁と糸しかない。他には刺さってた釘一本だけ」
- (;^ω^)「そりゃあ藁人形なんだから――」
- ( ФωФ)「ほう、成程。
- 誰も呪っていないのである」
- (;^ω^)「……へ?」
- ξ゚听)ξ「そういうことね」
- 川 ゚ -゚)「たしかに変だな」
- <_プー゚)フ「だな!」
- 内藤が、わけが分からない、とでも言いたげな顔をした。
- 彼以外は全員、ドクオの言う「変」に気付いているようだ。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:00:42.53 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「え、えっと……みんな、どういうことなんだお……?」
- 川 ゚ -゚)「藁人形で人を呪う際、必要なものがあるだろう」
- ξ゚听)ξ「髪の毛とか、写真とか」
- ( ^ω^)「……あ」
- クールとツンの言葉のおかげ、内藤はようやく気付いた。
- 呪う相手の髪の毛、写真、名前を書いた紙。などなど。
- そこに細かな違いはあれど、しかし
- 「藁人形に、相手に関するものを入れる、あるいは貼りつける」
- という点は変わらない。
- 改めて見てみれば、たしかに藁と糸と釘しかないのは妙だ。
- 髪の毛にしろ写真にしろ名前にしろ、しぃと関わりのあるものが見当たらないのだ。
- ( ^ω^)「なるほど……」
- ξ゚听)ξ「それに、やり方も何だか変なのよ」
- <_プー゚)フ「やり方?」
- ξ゚听)ξ「基本的に期間は7日間。
- で、藁人形の右手、右足、左手、左足、心臓の順に釘を打つんだけど。
- これ、藁人形のお腹に一本刺さってただけでしょ。
- それに7日どころか、一昨日で3週目だし」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:03:58.87 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「右手から……」
- ξ゚听)ξ「じわじわといたぶるつもりなら、一カ所ずつ怪我してくのはまだ分かるけど。
- だったら釘を打つ順番通り、まず右手を怪我するわよ。
- でも始めは左足だった」
- ( ФωФ)「めちゃくちゃであるな。
- ということは、呪った人間は丑の刻参りについての知識がない?」
- ξ゚听)ξ「まあ、やり方を調べても、本によって内容はバラバラなんだけど……。
- それにしたってこれじゃあ、とてもじゃないけど呪えないわ」
- 川 ゚ -゚)「最初から藁人形で呪う気がないのだと思うぞ。
- タチの悪い悪戯じゃないか?」
- ('A`)「ギコは女からモテる分、男からの嫉妬も激しいからな。
- 俺みたいな男からの嫉妬が」
- ドクオの物凄く説得力のある言葉に全員が納得する。
- 呪いが成立しない。
- ギコ本人が妬まれている可能性もある。
- ――つまり、これは。
- ( ^ω^)「……ただ単にギコに対する嫌がらせだっただけ、ってことかお?」
- ξ゚听)ξ「多分ね。
- しぃは関係ないと思うわ。
- 怪我もただの偶然じゃない?」
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:06:28.22 ID:wiywb1KmO
- 内藤の推測にツンが同意する。
- 一気に内藤は脱力した。
- (;^ω^)「な、何だお……僕、引き受けた意味ないのかお……」
- ξ゚听)ξ「でも、あんたに任せたことでギコたちは安心したでしょ。
- それぐらいには、意味あったわよ」
- ( ФωФ)「とはいえ、この藁人形の方は意味などなかったのである……。
- 残念である」
- 川 ゚ -゚)「理事長、不謹慎だぞ」
- <_プー゚)フ「でもさー」
- 緊張感のカケラもなくなった聖徒会室に、和やかなムードが流れる。
- しかしそれも、エクストの一言で崩壊した。
- <_プー゚)フ「もし本当にコレが呪いの効力持ってるんなら、
- 呪われてる奴、今頃バラバラかもしれないなー」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:09:23.80 ID:wiywb1KmO
- 沈黙。
- 空気が、内藤たちが固まる。
- ――この藁人形が無意味であるなんて、断定は出来ない。
- 呪いのやり方など様々。念が強ければ、それだけでも力となり得る。
- 髪の毛など入っていなくても、この藁人形は、しぃやギコであるかもしれないのだ。
- とすれば、この、ただの藁と糸に成り果てた藁人形は――。
- (;゚ω゚)「うっ、うわあああああああああああああああああああああああ」
- ξ;゚听)ξ「どどどどどドクオ、あんたぁあああああああああああああああ」
- (;゚A゚)「ごめんなさあああああああああああああああああああああああああ」
- (,,゚Д゚)「何ともねえぞ」
- (*゚ー゚)「元気だよ?」
- ( ;ω;)「よがっ、よっ、良かったぁぁあああああ……」
- 音楽室。
- ぴんぴんしているギコと、ギコの彼女、猫田しぃを前にして、
- 内藤は、へなへなと座り込んだ。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:12:11.32 ID:wiywb1KmO
- (;,゚Д゚)「何だ何だ、どうした?」
- ξ;--)ξ「……気にしないで。
- ところで、あんたが何で合唱部に混じってんのよ」
- (,,゚Д゚)「しぃが心配で」
- (*゚ー゚)「別にいいのにー」
- ('A`)(いざカップルを前にすると本気で死にたくなる)
- <_プー゚)フ「何もなくて良かったな!」
- 部活の時間なので、合唱部と吹奏楽部の面々も揃っている。
- みんな、何事かと内藤たちに視線を向けていた。
- (゚、゚トソン「生徒会……いえ、今は聖徒会でしたっけ。
- 聖徒会の皆さんどうしたんですか?」
- (´・_ゝ・`)「また練習の邪魔に来たか?」
- 合唱部部長と吹奏楽部部長が声をかける。
- 内藤達は「気にするな」としか言えなかった。
- 呪いがどうこう、と説明出来るはずもない。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:15:17.25 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「何でもないですお」
- ( ´∀`)「モナモナ。
- 人が増えれば賑やかになるモナ」
- 額縁から上半身を乗り出させ、指揮棒を持ったモナーが笑う。
- それから、モナーは内藤に手招きした。
- 内藤がモナーの前に立つと、モナーは声をひそめた。
- ( ´∀`)「……しぃさんに、何かあったモナか?
- ギコ君が来るならまだしも、聖徒会まで来るのは怪しいモナよ」
- ( ^ω^)「……まあ……。
- でも、多分僕たちの思い違いかも――」
- ( ´∀`)「蛇がいたモナ」
- ( ^ω^)「――お?」
- モナーが、一層声のトーンを落とす。
- 内藤は耳を寄せた。
- ( ´∀`)「蛇モナ。
- 二週間前。しぃさんが転んだとき、彼女の足に蛇が巻き付いてたモナよ。
- しぃさんは、そのせいで転んだモナ」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:18:19.30 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「蛇……?
- でも、そのとき足元には何もなかったって言ってましたお?」
- ( ´∀`)「モナにしか見えてなかったモナ」
- (;^ω^)「……へ、蛇の、幽霊……ですかお?」
- ( ´∀`)「恐らくそうモナ。
- しぃさんを転ばせた後すぐに消えたから、
- 悪戯したかっただけの浮遊霊だと思ってたモナ。
- ――もしかして、これ、何か関係あるモナ?」
- (;^ω^)「……」
- ――蛇。
- ( ´∀`)「もしもあの蛇がしぃさんだけを狙っているのなら、
- 早く何とかした方がいいかもしれないモナ」
- ( ^ω^)「……それは、勿論。
- 教えてくれてありがとうございましたお」
- 内藤がモナーに深々と頭を下げるのを、ツンとドクオは首を傾げながら眺めていた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:21:29.67 ID:wiywb1KmO
- (*゚ー゚)「……蛇……」
- (,,゚Д゚)「ただの蛇じゃねえんだな?」
- ( ^ω^)「多分、その蛇がしぃさんに怪我をさせているお」
- 聖徒会メンバーと理事長、ギコ、しぃは聖徒会室にいた。
- クールが見当たらない。男子トイレにでも戻ったのだろう。
- しぃとギコを音楽室から連れて来た内藤は、モナーから聞いたことを2人に説明した。
- ( ФωФ)「呪いなんて無いものだと思っておったが。
- ……別の呪いだったか」
- (*゚ー゚)「誰かから恨まれてるんだね、私」
- 寂しげに、しぃが俯く。
- 人から呪われていると聞いて、何とも思わぬ者はいないだろう。
- 内藤の胸が、ちりりと痛んだ。
- 話さない方が良かったかもしれない。
- しかし、しぃから細かい情報を引き出すには、本人の状況を把握させておくべきだ。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:24:42.45 ID:wiywb1KmO
- (,,゚Д゚)「そもそも、どうしてしぃが恨まれなきゃいけないんだ?
- しぃが何かしたとは思えねえ」
- しぃは人を傷付けるようなことはしない。
- ギコがそう言うと、しぃの表情が和らいだ。
- バカップル死ね。ドクオが呟き、エクストがドクオの背中を慰めるように叩いた。
- ( ^ω^)「僕は、しぃさんは何も悪くないと思うお。
- いや、むしろ悪い人は誰もいないお」
- (,,゚Д゚)「……分かるのか。
- 呪う理由」
- ( ^ω^)「推測だけど、多分当たってるお」
- (,,゚Д゚)「言ってくれ」
- ( ^ω^)「音楽室に行く前にもみんなで話してたけど、
- ――嫉妬、だと思うお」
- ギコがきょとんとする。
- しぃも、似たような表情だ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:27:20.32 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「キリスト教には七つの大罪というのがあって、その中の1つが『嫉妬』なんだお。
- そして嫉妬の象徴として、よく蛇が用いられるんだお」
- ('A`)「……ああ、日本の昔話にも、嫉妬に狂った女が蛇になるってのがあるな」
- ξ゚听)ξ「ふーん。
- 嫉妬と蛇は結び付きが強いわけね」
- (,,゚Д゚)「……何で、しぃに嫉妬するんだ?
- しぃが可愛いからか?」
- (;//ー/)「ぎっ、ギコ君の馬鹿っ」
- ('A`)(こいつらうぜぇ……)
- ξ゚听)ξ(うぜぇ)
- <_プー゚)フ「ドクオとツンからやる気がなくなる!」
- ( ФωФ)(でも実際うぜぇ)
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:30:24.10 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「えーっと、まあ、もしかしたら可愛いのもあるかもしれないけど……。
- 考えられるもので一番可能性が高いのは、ギコと付き合ってることだお。
- 多分、ギコを好きな女の子が、ギコの恋人のしぃさんを呪ってるお」
- ξ゚听)ξ
- (,,゚Д゚)
- ξ゚听)ξ「……あんた、しぃを可愛いって思ってるのね」
- (;^ω^)「えっ、そこそんなに注目するとこ!?」
- _,
- ξ゚听)ξ
- (;^ω^)「何で機嫌悪いの!?」
- (,,゚Д゚)「……俺か」
- <_プー゚)フ「ん?」
- 今度は、ギコが俯いた。
- (,,゚Д゚)「やっぱり俺のせいなのか。
- ……俺がしぃと付き合ってるから……」
- (;^ω^)「あ、いや、だから……誰も悪くないし、誰のせいでもないお」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:33:24.28 ID:wiywb1KmO
- (,,゚Д゚)「でも、俺としぃが別れれば、しぃは安全になるんだろ?」
- (*゚ー゚)「……別れるの?」
- (,,゚Д゚)「だって――」
- (*゚ー゚)「だめだよ。
- ギコ君が私に飽きたとか嫌気がさしたっていうなら、諦めるけど。
- そんな理由で別れるのはだめ、嫌だよ」
- (,,゚Д゚)「……」
- (*゚ー゚)「私ね、怪我するよりも、人に嫌われるよりも、
- ギコ君と離れるのが一番傷付くよ。
- まだまだギコ君の傍にいたいもん。
- ギコ君のこと、大好きだから」
- (,,゚Д゚)「……し(゚A゚)「リア充イケメンビッチ共は死ねええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
- (;^ω^)「ついに爆発した!」
- ξ;゚听)ξ「クサい展開でもう限界だったんだわ!!」
- <_プー゚)フ「台なしだな!」
- ( ФωФ)「wwwwwwwwww」
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:38:13.39 ID:wiywb1KmO
- (;*゚ー゚)(;,゚Д゚)
- (#゚A゚)「そんなんじゃあ男女からの嫉妬買いまくりじゃボケエエエエエエエエエ!!!!!
- イケメンと美少女がイッチャイッチャイッチャイッチャとよおおおぉぉぉぉぉ」
- (;*゚ー゚)(;,゚Д゚) ゴメンナサイ
- (#'A`)「俺は断言出来る!
- 呪ってる奴よりも、俺の方が強く嫉妬していると!」
- (;^ω^)「はいはい、落ち着くおー」
- 喚くドクオを宥めすかしながら、内藤はギコとしぃに目をやった。
- (;^ω^)「えーっと、ギコ、あまり思い詰めないで、しぃさんの傍にいてあげてほしいお。
- 僕たちが犯人探しをする間、しぃさんを守れるように」
- (,,゚Д゚)「……ああ、分かった!」
- (*゚ー゚)「ギコ君……」
- (,,゚Д゚)「悪かったな、しぃ。
- 別れないぞ。ずっと一緒にい(#゚A゚)
- (,,゚Д゚)「……続きはまた今度言う」
- しぃがくすくすと笑う。
- もう、2人に暗い表情など見当たらない。内藤はホッと息をついた。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:41:45.65 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「――それじゃあ、しぃさん」
- (*゚ー゚)「なあに?」
- ( ^ω^)「怪我をしたときの状況を教えてほしいお。
- きっとどこかに手掛かりがあるから」
- (*゚ー゚)「うーん……。
- 何から話せばいい?」
- ( ^ω^)「じゃあ二週間前に転んだとき、何か妙な感覚とか雰囲気はなかったかお?」
- (*゚ー゚)「んー……」
- ツンが、ギコとジョルジュが話していたときのように、近くにあったプリントを裏返した。
- ペンを持ち、しぃの話を待つ。
- ('A`)「そのプリント、先生に提出するやつじゃなかったか」
- ξ゚听)ξ「バスケ部に渡すプリントだからいいわよ。大事な書類でもないし」
- (;'A`)「そうかい」
- (*゚ー゚)「つまずくようなものはなかったよ。
- 歩こうとしたら……、右かな?
- 右足が持ち上がらなくて、バランス崩して転んじゃったの。
- 蛇か何かが巻き付いてたような感触は……しなかったかなあ」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:45:09.31 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「んー……転ぶ直前には?」
- (*゚ー゚)「なんにもなかったと思うよ。
- そのときは休憩時間で、吹奏楽部の子に楽器見せてもらったり、
- ミネラルウォーター飲んだり……普通に過ごしてたなあ。あんまり覚えてないけどね」
- ξ゚听)ξ「一週間前、車に轢かれかけたときは?」
- (*゚ー゚)「あのときは……んっと、お散歩してて、
- なんとなーく立ち止まって空を見上げたの。天気良くってね。
- そしたら急に足を引っ張られて」
- ( ФωФ)「それも蛇がやったのであるな、きっと」
- (*゚ー゚)「かもしれないです。
- それでよろけたところに、車が迫ってきたの。
- あんまりスピード出てなかったらしくて車はすぐに止まったんだけど、
- 私、そのまま転んだのね。右腕を下敷きにして。
- 骨とかは大丈夫だったけど」
- ほら、と、しぃが制服の袖を捲る。
- 彼女の右腕には、紫色の大きな痣が出来ていた。
- (;^ω^)「痛々しいお……」
- (*゚ー゚)「もうそんなに痛くないから大丈夫」
- _,
- ξ゚−゚)ξ「痕が残ったらどうするのよ。
- 犯人取っ捕まえたら、ぶん殴っときなさい」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:48:34.71 ID:wiywb1KmO
- 嫁入り前の乙女の肌を傷付けるのは重罪よ、とツンが言うと、
- しぃは笑ってギコの左腕と自分の右腕を絡めた。
- (*^ー^)「ギコ君のお嫁さんにしてもらうから気にしてないよ」
- (*,゚Д(゚A゚#)
- <_プー゚)フ「もう喋ることすら許さないのか」
- ドウドウ(;^ω^)つ(#'A`)コロスコロス
- ξ゚听)ξ「はいはいごちそうさま。
- 次は……一昨日ね」
- (*゚ー゚)「おそまつさまでした。
- 一昨日は、休み時間に、友達と話しながら階段を下りてたの。
- それからはさっきと同じ。
- 足を引っ張られて、階段踏み外して、真っ逆さま。
- 大して高くない所で落ちたから、軽い捻挫ぐらいで済んだよ」
- 靴下を脱いで右足を伸ばす。包帯が巻かれた足首に、ツンは手を伸ばした。
- ξ゚听)ξ「ちょっと包帯取っていい?」
- (*゚ー゚)「いいよ」
- (*'A`)「生足ハァハァ」
- (;*゚ー゚) ξ゚听)ξ≡⊃A`)「目が!」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:51:21.11 ID:wiywb1KmO
- 右目を押さえて転げ回るドクオに唾を吐き捨て、ツンは包帯を丁寧に解いていった。
- 包帯がなくなると、そこにあるのは、足首の外側に貼られた湿布。
- ツンは足首を優しく持ち、内側の方を見た。
- 湿布の貼り方から見るに、痛めたのは外側、踝の辺り。
- しかし――
- ξ゚听)ξ「やっぱり蛇ね」
- (;^ω^)「……おっ……!」
- ( ФωФ)「むぅ」
- 内側には、薄紫の線条が数本あった。
- 指二本ほどの幅のそれは湿布の下から伸びている。
- 恐らく湿布を剥がしてみれば、足首にぐるぐると巻き付く蛇のような形が見えてくるだろう。
- (*゚ー゚)「……お医者さん、『これは何の痕なんだ』って言ってた。
- 分からなかったから答えられなかったけど、
- 蛇だったんだね」
- ξ゚听)ξ「ねえ、左足を怪我したとき、右足が動かなかったんでしょう?」
- (*゚ー゚)「うん」
- ξ゚听)ξ「そのときは、右足にこういう痕が出来てた?」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:54:19.44 ID:wiywb1KmO
- しぃは少し考えてから、首を横に振った。
- (*゚ー゚)「覚えてないや。
- でも覚えてないってことは、なかったんじゃないかな」
- ξ゚听)ξ「そう……」
- ツンが眉を寄せる。
- エクストは、ツンの顔を覗き込んだ。
- <_プー゚)フ「なんだ、どうしたんだ?」
- ξ゚听)ξ「一度目に痕がなくて、三度目に痕が出来てるってことはよ、
- 多分――蛇が段々強くなってるんだわ」
- (,,゚Д゚)「……強く……?」
- ξ゚听)ξ「怪我が酷くなっていくし、巻き付いた痕が出来てるし……。
- このままじゃあ、最悪の場合……」
- その先は口にはしなかったが。
- 全員が、理解していた。
- 擦り傷や捻挫程度では済まない、大怪我をして。
- 最悪の場合は、命まで――
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 21:57:44.63 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「……」
- ξ゚听)ξ「……早くしなくちゃ、危ないわ」
- ギコとしぃが青ざめる。
- 理事長は、うーん、と唸ると、内藤の肩を叩いた。
- (;^ω^)「何ですかお?」
- ( ФωФ)「我輩、明日から数日ほど、他県にオカルトアイテム漁りに行く予定なのである」
- ( ^ω^)「……それが今何の関係あるんですかお」
- ( ФωФ)「我輩がいない間に何かが起きてしまったときのために、」
- 理事長が真剣な顔をする。
- 内藤は首を傾げてみせた。
- ( ФωФ)「いいことを教えてあげるのである」
- _
- (;゚∀゚)「しっ、死んじまうかもしれねえってマジかよ!?」
- 翌日の放課後、体育館。
- バスケ部のユニフォームに身を包んだジョルジュが、驚愕した様子で叫んだ。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:00:35.58 ID:wiywb1KmO
- ξ#゚听)ξ「声がでかい!」
- (;^ω^)「他の人にはなるべく聞かれたくない話なんだお」
- ツンがジョルジュを叩く。
- 内藤とツンが何故こうして体育館でジョルジュと話しているのか。
- 別に、わざわざ彼に昨日分かったことの報告をしに来たわけではない。
- 単に、男子バスケ部に渡すプリントを持って体育館にやって来てみれば、
- バスケ部部員であるジョルジュがそこにいたというだけのこと。
- ついでなので、内藤は、藁人形が関係ないことと、
- 呪いが、しぃの命にまで関わるものであることを簡単に説明した。
- それに対するジョルジュのリアクションが上記のものだ。
- _
- (;゚∀゚)「悪い悪い、びっくりしたもんでよ。
- しっかし、呪い殺しちまうたあ……やりすぎというかなんというか」
- ξ゚听)ξ「たかだか嫉妬ぐらいで人を殺すつもりだなんてね……」
- _
- ( ゚∀゚)「嫉妬ぉ?
- なんだ、ギコを好きな女の仕業なのか」
- ξ゚听)ξ「その可能性が高いわ」
- _
- ( ゚∀゚)「と、なると……、容疑者多くて大変だな」
- (;^ω^)「そうなんだお……」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:04:00.58 ID:wiywb1KmO
- _
- ( ゚∀゚)「まあ、あれだ。
- しぃちゃんが死んじまう前に、早く犯人捕まえてやってくれ」
- ( ^ω^)「お」
- ξ゚听)ξ「そのつもりよ。
- というわけで本題。
- ミルナどこにいるか知らない?」
- ぎらぎらした目でツンが体育館を見渡す。
- このショタコンは体育館に入れば真っ先にミルナを探すのだ。
- _
- ( ゚∀゚)「お前が入ってきた瞬間に消えたぞ」
- ξ#゚听)ξ「shit!!」
- (;^ω^)「いや、本題はそれじゃないお」
- ξ゚听)ξ「ああ、そうだったわ。
- これ、バスケ部への連絡だから、顧問か部長に渡しといて」
- _
- (;゚∀゚)「めっちゃ落書きしてあんだけど!?」
- ξ゚听)ξ「落書きじゃないわ、しぃから聞いた情報のメモよ。
- 一番近くにあった紙がそれだったんだから仕方ないでしょ」
- _
- (;゚∀゚)「仕方なくねーよ!
- 他の奴に聞かれたくない話ならこれに書くなよ!
- 思いっきりみんなに見られるわこんなもん!」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:07:26.25 ID:wiywb1KmO
- ξ゚听)ξ「大丈夫よ、話を知らない奴が見たって理解できないわ」
- たしかに、メモは「蛇」「足引っ張った」「楽器とミネラルウォーター」というように、
- ひどく簡略化されている。
- ジョルジュは呆れたような顔をして、そのメモを見ていた。
- そのときである。
- <_プー゚)フ「ツンー! ブーンー!」
- ( ^ω^)「エクスト?」
- ξ゚听)ξ「しぃについてなさいって言ったじゃないの」
- エクストが2人の名前を叫びながら体育館に飛び込んできた。
- ドクオとエクストには、ずっとしぃを見ていろという命令がツンから下されていた。
- 何故ここに来たのだ、とツンが顔をしかめる。
- 嫌な予感がした。
- <_プー゚)フ「しぃが怪我した!」
- (;^ω^)「!」
- ξ゚听)ξ「……まさか」
- _
- (;゚∀゚)「なっ……!」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:10:32.08 ID:wiywb1KmO
- 瞠目するジョルジュを置いて、内藤とツンは駆け出した。
- エクストが2人の前を飛んで案内する。
- <_プー゚)フ「ドクオとギコが保健室に連れてったぞ!」
- (;^ω^)「どうして怪我を!?」
- <_プー゚)フ「いきなり物凄い勢いで窓を殴って、その破片が腕に刺さったんだ」
- ξ;゚听)ξ「また蛇ね……!」
- 保健室に駆け込む。
- そこには、ドクオとギコ、しぃ、そして
- 鏡から腕を伸ばして、しぃの左腕に薬を塗り込んでいるミセリがいた。
- (;^ω^)「しぃさん――」
- ミセ;゚ー゚)リ「あっ、会長さん、ツンさん」
- ξ;゚听)ξ「怪我は?」
- ミセ*゚ー゚)リ「破片は全部取りました。
- あとはこの薬を塗って、私の力を少し使えば3日ほどで傷はほとんど消えるはずです」
- (;^ω^)「なんという医者いらず」
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:13:17.69 ID:wiywb1KmO
- ミセ*゚ー゚)リ「それよりも、これが……」
- ミセリが、しぃの左腕に困惑した眼差しを向ける。
- 内藤たちもそこを見て――う、と声を漏らした。
- (*゚ー゚)「……」
- 左腕に巻き付くような痕。
- まだ時間が経っていないのだろう、毒々しささえ感じられるほどに真っ赤なそれは、
- 足につけられたものよりも太くなっていた。
- ξ;゚听)ξ「……成長してる……」
- (;,゚Д゚)「……なあ」
- ギコの声は、震えそうになるのを抑えるような、いやに低いものだった。
- (;,゚Д゚)「怪我をするのは、月曜日じゃないのか……?」
- その問いに答えるのは、ドクオ。
- (;'A`)「呪ってる奴が焦り始めたか――、
- ――蛇が暴走し始めたか……」
- 暴走。
- ギコとしぃが、怯えた表情を見せた。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:16:24.65 ID:wiywb1KmO
- 次に何かが起きるのは、いつなのか。
- どこにいれば安全なのか。
- まったく分からない。
- (; ω )「どうすれば……!」
- ミセ*゚ー゚)リ「……あの、何があったんですか?」
- 崩れ落ちそうになった内藤に、ミセリが、しぃの腕にガーゼをあてながら恐る恐る訊ねた。
- 内藤は一瞬迷ったが、ミセリなら何か分かるかもしれない、と思い、話すことにした。
- こんなときのための「契約」なのだ。
- ポケットに入れている生徒手帳とバッジを服の上から確かめ、内藤は口を開いた。
- ( ^ω^)「――事の始まりは2週間前だったお」
- 全てを話す。
- 藁人形、しぃの怪我、蛇。
- 説明が終わる頃には、腕の手当ても完了していた。
- ミセ*゚ー゚)リ「……蛇ですか」
- ( ^ω^)「だお」
- ミセ*゚ー゚)リ「なら、きっと、鏡です」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:19:36.55 ID:wiywb1KmO
- ('A`)「鏡?」
- 鏡といえば、今まさにミセリが入り込んでいる、それだ。
- しぃの怪我と、どう関係があるのだろう。
- ミセ*゚ー゚)リ「『かがみ』――『かが』と『巳』、どちらも蛇を表す言葉です。
- 恐らく、呪いに使った物は藁人形ではなく鏡。
- 鏡にしぃさんの写真か何かを映し、呪いをかけたんだと思います」
- ξ゚听)ξ「鏡は、そういう力があるって言うからね。
- なるほど、鏡の呪い……」
- ミセ*゚ー゚)リ「鏡は……蛇は、しぃさんの顔を覚え、しぃさんへの呪いを引き受けました。
- しぃさん、車に轢かれそうになる直前、空を見上げたそうですね?」
- ミセリが問うと、しぃはこくりと頷いた。
- ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ……そこに、カーブミラーはありましたか?」
- (*゚ー゚)「カーブミラー……うん、あった。
- 私、カーブミラーの前で立ち止まって空を見たの」
- ( ^ω^)「その鏡から蛇が?」
- ミセ*゚ー゚)リ「きっとそうです。
- 鏡は蛇の目。蛇の目がしぃさんの顔を真っ正面から捕らえたとき、
- 蛇はしぃさんをはっきりと認識し、襲い掛かるんではないでしょうか」
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:22:43.12 ID:wiywb1KmO
- (,,゚Д゚)「でもよ、それじゃあ一回目はどうなんだ?
- しぃ、音楽室で鏡は見たか?」
- (*゚ー゚)「見てない、かも。
- 音楽室に鏡はないし、たしかその日は教室に手鏡忘れてたし……」
- ミセ*゚ー゚)リ「水鏡という言葉があるように、目の前のものを映し出せるならば、
- それは鏡と言えるんです。
- 吹奏楽部の方に見せていただいた楽器は何でした?」
- (*゚ー゚)「バリトンサックス……ぴかぴかの。
- ――あっ!」
- それのせい? しぃの言葉をミセリが肯定する。
- 綺麗に磨かれた楽器は、鏡となるに十分だった。
- それを正面から眺めたとき。
- 蛇の目は、しぃを見付けたのだ。
- ('A`)「っつーことは、さっきのは……」
- <_プー゚)フ「窓が鏡になったんだな!」
- ミセ*゚ー゚)リ「はい。
- そして、蛇はしぃさんの腕に絡み付いて、その腕をガラスに……」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:25:47.24 ID:wiywb1KmO
- (,,゚Д゚)「じゃあ、つまり、しぃが鏡や、鏡になりそうなものから離れれば……」
- ミセ*゚ー゚)リ「蛇はしぃさんに近付けなくなります」
- 内藤の顔が明るくなる。
- 応急処置程度とはいえ、しぃを危険から遠ざけられる方法があった。
- (*^ω^)「ミセリちゃん、ありがとうだお!」
- ミセ*゚ー゚)リ「いえいえ。
- ――ただし、蛇はどんどん成長しています。
- 安心は出来ません」
- (*゚ー゚)「えっ……」
- ミセ*゚ー゚)リ「蛇が大きくなれば、それに伴って蛇の力も強くなりますから。
- 今よりももっともっと大きくなったら、
- いつか鏡から完全に抜け出して、直接しぃさんを探し始めます。
- そうなる前に何とかしないと……」
- ξ;゚听)ξ「蛇の成長を止める方法は!?」
- ミセ*゚ー゚)リ「……多分、止められません」
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:28:32.78 ID:wiywb1KmO
- ξ;゚听)ξ「どうして――」
- ミセ*゚ー゚)リ「この蛇は、嫉妬から生まれました。
- 恨みや嫉妬の感情が増えれば増えるほど蛇は大きくなり続けますし、
- それに何より、関係のない方の嫉妬も取り込んで成長しているはずです。
- 妬みの気持ちは、恋愛に限らず、どんな人の心にも生まれるものですから、
- 食い止めることは不可能です」
- <_プー゚)フ「その嫉妬って、しぃやギコに対するもの以外も含まれんの?」
- ミセ*゚ー゚)リ「……多分。そうでなきゃ、蛇の成長の速さが説明できません……」
- このスピードは異常だとミセリが言う。
- その話を聞いてドクオはしばらく考え込んでいたが、急に狼狽し始めた。
- (;'A`)「なっ、なあっ!」
- (;^ω^)「……どうしたお?」
- (;'A`)「もしかして、昨日、俺がギコたちを妬んだせいか!?」
- ξ゚听)ξ「それもあるかもね」
- (;'A`)ナンテコッタイ
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:31:37.81 ID:wiywb1KmO
- バカップル死ね。
- そんなドクオの妬み嫉みが、蛇の成長を促した。
- しかし、それを言うならば。
- ξ゚听)ξ(……私も原因なわけね)
- クールに嫉妬したツンも同じ。
- しぃを救うべき聖徒会の役員が、逆にしぃを苦しめることになろうとは。
- ξ゚听)ξ「ねえブーン」
- (;^ω^)「おっ」
- ξ゚听)ξ「私とドクオが呪ってる奴を捕まえるわ。
- だから、あんたはギコと一緒に、しぃを蛇から遠ざけて」
- (;^ω^)「え……」
- ξ゚听)ξ「あんたは、人に嫉妬なんてしないでしょう?」
- ――馬鹿みたいに素直な内藤は、他人をそのまま受け入れる。
- 自分より優れている者は、そのまま、自分より優れている者だと。
- 尊敬や羨みこそすれ、憎く思うことはない。
- そんな内藤ならば、しぃたちの傍にいても大丈夫だろう。
- ドクオは絶対に無理だ。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:34:24.68 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)「……分かったお」
- ξ゚听)ξ「じゃ、行くわよドクオ!」
- (;'A`)「あっ、はい」
- <_プー゚)フ「俺も行くぞー!」
- 言うやいなやツンはドクオを引き連れて保健室を飛び出し、エクストもそれに続いた。
- ミセリは鏡の中に引っ込み、内藤に言う。
- ミセ*゚ー゚)リ「私は校内の鏡の中を回って、蛇を探してみます」
- ( ^ω^)「……大丈夫かお?」
- ミセ*゚ー゚)リ「はい。さすがに蛇をやっつけることは難しいですが、
- 捕まえておくくらいはできるかもしれません」
- それでは、という言葉を残し、ミセリは消えた。
- 鏡の中の少女は、校内にある鏡の中を自由に移動できるのだ。
- 保健室に残されたのは、内藤とギコ、しぃ。
- ( ^ω^)「……聖徒会室に行くお」
- (,,゚Д゚)「ああ」
- (*゚ー゚)「うん……」
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:37:42.73 ID:wiywb1KmO
- 今日中に呪いを何とかしなければならない。
- 蛇はさらに力をつけ、大きくなっている。
- 明日――いや、今日の夜にでも、蛇が鏡から抜け出すかもしれないし、
- それにしぃが鏡を前にしないとも限らない。
- 次に蛇が襲い掛かってきたらどうなるものか。
- ぞくり、と内藤の背中に冷ややかなものが走った。
- (-@∀@)「私に靡かない女子生徒?」
- ξ゚听)ξ「そう。いない?」
- 赤マント仮面、ことモララー。
- 彼目当ての女子生徒がちょくちょくやってくる女子トイレ。
- その女子トイレで、ツンとドクオ、エクストはモララーに対面していた。
- モララーに熱を上げる女子生徒および女性教師の数は凄まじい。
- とはいえ、非常に好いた相手がいる、いわゆる「恋する乙女」には
- モララーの美貌も甘い言葉も効き目がない。(その眼鏡を外せばまた違った結果にはなるだろうが)
- しぃを呪うほどにギコを愛している者ならば、モララーなどに見向きもしないだろう、
- というのがツンの考えだ。
- 虱潰しに探すより、こうして消去法であぶり出す方がまだ効率がいい。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:40:37.29 ID:wiywb1KmO
- (-@∀@)「そうだなあ、たとえば君とかね。
- こうして向き合っているのに無反応だなんて寂しいな。
- 頬を赤らめた君は大層可愛らしいだろうに……」
- ξ゚听)ξ「ふーん。他は?」
- (;-@∀@)(くっ、悔しい!)
- するり、とツンの頬を撫でる、シルクの手袋に包まれた細く長い指。
- それを振り払い、ツンはどうでもよさそうな声で話を進めた。
- ('A`)(あれをブーンがやったなら、ツンも死にかけるほど真っ赤になるかもな)
- <_プー゚)フ(あと、体育館のミルナがやっても喜ぶと思う)
- ('A`)(あー、そりゃあ喜ぶだろうなあ、あのショタコンは)
- <_プー(⊂≡ξ゚听)ξ≡つ)A`)
- ξ゚听)ξ「ほら早く言いなさいよこちとら急いでんのよ糞マント眼鏡」
- (;-@∀@)「なに糞マント眼鏡って!? 赤マント仮面ね!?」
- ナグラレタ<_プー(#)フ(#)A`)ジゴクミミダ
- ξ゚听)ξ∩グッ「早く……」
- (;-@∀@)「えーっと3年生のトソンくんとか2年生のしぃくんとか、あと他には――」
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 22:58:32.64 ID:wiywb1KmO
- ξ゚听)ξ「もしやとは思ったけど、あんた、全女子生徒把握してるの?
- じゃあさ、好きな男がいる女とか分かる?」
- (-@∀@)「へ?」
- ξ゚听)ξ「 分 か る ? 」
- (-@∀@)「分かりません」
- ξ゚听)ξ「糞が」
- (;-@∀@)「なんか君は私に対して随分辛辣じゃないかな!?」
- いいから続き、とツンはモララーの額を玉串でぺちぺち叩いた。
- 理不尽さを感じながら、モララーは名前を羅列する。
- それから10人程の名を挙げたところで、モララーは、ふと思い出したようにツンを見た。
- (-@∀@)「――そういえば」
- ξ゚听)ξ「なに?」
- (-@∀@)「前はよく来ていたのに、先月に入ってから来るのをぱたっとやめた子がいたな。
- こういう場合も数に含めるべきかい?」
- ξ゚听)ξ「……そいつ、どうして来なくなったの?」
- (-@∀@)「いやあ、そもそもね、私のところに来るようになったのがだいたい3ヶ月前……
- 入学式から2週間後くらいでね。
- 私に会いたいというよりも、私に相談したくて来ていたようなんだ」
- 91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:00:41.03 ID:wiywb1KmO
- <_プー゚)フ「相談?」
- (-@∀@)「治りが早いな君は。
- ――相談の内容は、恋愛についてだった。
- どうやら同性にも異性にも親しい人がいなかったらしくてね、
- 女性に優しい私ならば相談にのってくれるんじゃないかと思ったそうだ」
- ξ゚听)ξ「で、相談にのったの?」
- (-@∀@)「女の子の悩みを無視出来るわけがないじゃあないか。のったさ。
- 好きな人が出来たのだけれど、その人には恋人がいる。
- そう言っていたよ」
- ('A`)「……恋人」
- ツンとドクオが視線を交わす。
- その好きな人とは、もしや――。
- (-@∀@)「――っと。私としたことが、恋する少女の悩みをべらべらと。
- すまないが聞かなかったことに……ぅぐっ!?」
- ξ゚听)ξ「話しなさい」
- 玉串でモララーの顎を押し上げ、命令する。
- ツンの瞳には、有無を言わさぬものがあった。
- ξ゚听)ξ「話さないと、その子の好きな人の『恋人』とやらが危険な目に遭うわよ」
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:03:45.44 ID:wiywb1KmO
- ――入学から間もない日に、先生にプリントを運ぶように頼まれたんだって。
- そしたら廊下で転んじゃってプリントをばらまいちゃって。
- 誰も手伝ってくれないし、くすくす笑われるしで、泣きそうになったときに、
- 通り掛かった男子生徒が拾うのを手伝ってくれた。
- その人は拾い終わると、「気を付けろよ」って笑いかけてくれた。
- 漫画みたいにベタだったけど、それでも恋に落ちるのに十分だった。
- その人について調べていく内に恋人がいるのを知って、絶望したらしい。
- 可愛くて、彼によく似合う素敵な恋人。
- その『恋人』が邪魔で邪魔で仕方がないと言っていたよ。
- ……殺してやりたいぐらいに、とも。
- 何か良いおまじない知りませんか、ってよく訊かれたな。
- 邪魔者を消せるおまじない――
- ξ゚听)ξ「おまじない……『お呪い』、ね」
- (;'A`)「問題は、誰があの『お呪い』を教えたか、だな」
- <_プー゚)フ「学校の奴なのかな?」
- モララーから話を聞き終えた2人と1体は、件の女子生徒を探していた。
- 部活に入っていないらしいので、もしかしたらとっくに帰宅しているかもしれない。
- 薄暗くなり始めた窓の外を見遣り、ツンは内心舌打ちした。
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:06:39.00 ID:wiywb1KmO
- ――相談を始めてから1ヶ月半……今から1ヶ月前だね。
- ふらっと私のところに来て、嬉しそうに言ったんだ。
- 「もう大丈夫です。良いおまじないを教えてくれる人が見付かりました」
- ってね。
- 止めたんだけど、まったく話を聞いてくれなかったよ。
- 名前? 流石にそこまで教えるのは……あ、はい、言います。ごめんなさい。
- 1年生の、山村貞子くんだよ――
- 1年生の教室を回っても見当たらない。
- すれ違う生徒に訊いても誰も分からないと言う。
- それどころか、あんな気味の悪い奴のことなど知らない、と笑う輩が数人ほど。
- ('A`)「……ちょっと優しくされただけでコロッといくわけだよ」
- ξ゚听)ξ「あれじゃあ捻くれるわ」
- 1人の生徒が言うことには、貞子は長い前髪をそのまま垂らして、
- まるでホラー映画に出てきそうな外見をしているらしい。
- 性格も暗く、みな不気味がって、彼女と関わりたがらないのだと。
- げらげら笑いながらそう教えてくれた生徒を殴り飛ばしたのが10分前。
- ツンとドクオは、貞子という少女に少しだけ哀れみを覚えていた。
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:09:33.60 ID:wiywb1KmO
- まるで幽霊のような見た目の少女を馬鹿にしておきながら、
- 学校に蔓延る本物の幽霊達のことは受け入れる。
- そんな彼らに疎まれて、貞子はどう思ったのだろうか。
- ξ゚听)ξ(……そいつらを呪わずに、恋敵を呪うとはね。
- 周りからの扱いに関しては諦めてたのかしら)
- 「――……!」
- ('A`)「んぁ?」
- <_プー゚)フ「誰かいるぞ」
- 外から声が聞こえてきて、ドクオは足を止めた。
- 先を歩いていたツンも立ち止まり、窓を見る。
- 「――、――」
- ツンたちがいるのが2階の東棟。
- 声は、窓の外、下から聞こえる。
- 見下ろせば、男子生徒と女子生徒が1人ずつ。
- 女子生徒は地べたに座り込み、その前に立つ男子生徒が何かを喚いている。
- 日頃から人気の少ない場所だ。
- 不良か何かにでも絡まれているのだろうか。
- 100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:12:33.27 ID:wiywb1KmO
- ツンは窓を開けた。
- 声がはっきり言葉となってツンたちの耳に突き刺さる。
- 「――月曜だけだって言っただろうが!
- それに、命まで狙うなって約束しただろ!」
- 怒鳴り散らす声。
- その声がした後、女子生徒の方が体を僅かに震わせながら何かを言った。
- 小さな声。聞き取れず、ツンは身を乗り出した。
- 危ないぞ、とエクストがツンの制服の裾を引っ張る。
- 「ああ? 暴走?
- てめえの意思が弱いからそうなんだよ!
- ギコが好きなんじゃねえのか!
- しぃが憎いんじゃねえのかよ!」
- (;'A`)「! ギ……――」
- ギコ。
- 男子生徒が口にした名前に驚いたドクオは、さらなる驚愕に目を丸くさせた。
- ξ゚听)ξ「見付けたわ!」
- ツンが、飛び降りたのだ。
- 窓から。
- <_フ;゚ー゚)フ「ぎゃばっ!?」
- 制服を掴んでいたエクストも巻き添えにして。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:15:55.03 ID:wiywb1KmO
- (;'A`)「ちょっ……!」
- ドクオが手を伸ばしかけた、が、その手は非常に無意味だった。
- ツンが飛んだのは、すぐ近くの木の上。
- その木の枝に一度しがみつき、そこから地面に飛ぶ。
- 華麗に着地したツンは、驚きに固まっている男子生徒と女子生徒を睨みつけた。
- ξ゚听)ξ「しぃを呪ってるのはあんたたちね。
- 山村貞子。
- ――ジョルジュ長岡」
- 川;д川
- _
- (#゚∀゚)
- (;'A`)「えーっとえーっと……ええいっ、俺も!」
- ドクオもツンの真似をして木に飛び移る。
- ……つもりだったが、枝に鳩尾部分を勢いよく叩きつけてしまい、
- 痛みに身悶えながら地面に落ちた。
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:19:11.90 ID:wiywb1KmO
- カーテンを閉めた。
- 蛍光灯を外した。
- 棚や机を廊下に出した。
- 携帯電話や、金属、プラスチックで出来たものも廊下に置いた。
- からっぽになった聖徒会室の床に、保健室から勝手に拝借したシーツを数枚広げて、3人で座る。
- ( ^ω^)(これなら蛇は来れないお)
- しぃとギコは、手を握り合って黙りこくっていた。
- ここまですれば鏡になるものはなくなるが、それでも安心しきれないのだろう。
- 2人の頭には、鏡から抜け出た大蛇がしぃを探して校内を這いずり回る光景が、
- 妙なリアルさを湛えて思い描かれていた。
- ( ^ω^)「2人共、大丈夫だお。
- 蛇はしばらく来られないお」
- そうは言うものの、あとどれほど経てば蛇が成長しきるのか、 内藤には皆目見当がつかない。
- しかしそれでも多少の慰めにはなる。
- ギコとしぃは、こくりと頷いた。
- 沈黙が訪れる。
- カーテンが閉められ、蛍光灯が外された今、聖徒会室を照らすのはカーテン越しに差し込む光のみ。
- その光だって、時刻も時刻、消え果てる直前だ。
- 暗闇が広がっていく。
- 107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:22:17.44 ID:wiywb1KmO
- 視覚と聴覚への刺激がほとんどなくなり始めた中、内藤は先程のミセリの話を思い返していた。
- そこに生まれる疑惑に、首を傾げる。
- ( ^ω^)(……三度目の蛇は、どこから現れたんだお)
- 階段から落ちたとき、しぃの足を引っ張った蛇はどの鏡から来たのだろう。
- 階段に鏡はないし、しぃはただ友人と話していただけ。
- しぃを映せる何かがあった。
- どこに?
- 目の前の風景を反射させる何か。
- 目の前――
- しぃが恐怖と不安に震えそうになる。
- 左腕の包帯が、それを助長した。
- (*゚−゚)「……ギコ君……」
- (,,゚Д゚)
- ぎゅう、と。
- ギコがしぃを抱きしめる。
- (,,゚Д゚)「……大丈夫だ。内藤達が助けてくれる」
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:25:12.63 ID:wiywb1KmO
- しぃの背を、ぽんぽんと叩いた。
- 俺は何もできない、とギコは前置きする。
- (,,゚Д゚)「これぐらいしかできねえ。
- きっと俺は何の役にも立てない。
- ……悪いな」
- (*゚ー゚)「……ううん」
- しぃは、くすりと笑ってギコを抱きしめ返した。
- (*゚ー゚)「抱っこだけで私を安心させてくれるのは、ギコ君だけだよ」
- ギコを見上げる。
- 見つめ合う。
- ほぼ真っ暗な部屋の中でも、これほど近ければ相手の顔もよく見える。
- ギコの瞳に。
- しぃが映り込んで。
- (;^ω^)「ギコ!
- しぃさんを見たら駄目だお!!」
- (;, Д )「っあ゙、あぁあっ!!?」
- 内藤が叫ぶと同時に、ギコは自身の目を手で覆った。
- 何かが目から抜け出るような、奇妙な、薄気味悪い感覚。
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:28:32.09 ID:wiywb1KmO
- (;^ω^)(遅かったかお……!)
- 瞳も、鏡になっていたのだ。
- しぃが友人に顔を向けたとき、友人の瞳――鏡を通して、蛇が現れたのだろう。
- 気付くのが遅かった。
- 蛇は既にギコの目に映ったしぃを見付けてしまった。
- (;* − )「ひっ……!?」
- 足に何かが絡みつくような感触がする。
- それは足から胸までに巻き付いて、しぃの体から自由を奪った。
- ――見える。
- 暗闇の中に突然現れたそれの姿。
- 今までは一度も目にできなかったもの。
- 大蛇の顔が、しぃの顔の目の前にあった。
- (;,∩Д゚)「しぃ!!」
- (;^ω^)「しぃさん!」
- 内藤とギコの目にも、しぃの足から胸までを覆い尽くす蛇がはっきりと見えている。
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:31:18.31 ID:wiywb1KmO
- 蛇は、ぎりぎり、じわじわ、しぃの体を締め付け始めた。
- しぃが苦しげな声をあげる。
- (;* − )「うっ、うああっ!」
- (;,゚Д゚)「くそっ、やめろ!!」
- 床に倒れ込み、のたうつしぃに――蛇に、ギコは手を伸ばした。
- 愛しい人を苦しめているそれを引きはがそうと。
- しかし。
- (;, Д )「ぐっ!?」
- 蛇に触れかけたギコは、突然その体ごと弾き飛ばされた。
- 床に体を打ちつけて、その痛みに呻く。
- (;^ω^)「ぎっ、ギコ! ――っ……」
- 内藤は狼狽える。
- 蛇には触れないのか。
- ならどうすればいい。
- どうすれば助けられる。
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:34:51.87 ID:wiywb1KmO
- 誰か、誰か。
- ――いいことを教えてあげるのである――
- (; ω )(……お)
- 不意に蘇る、理事長の言葉。
- ――七大不思議の霊達を、君の所に一瞬で呼び付ける方法であるよ――
- 内藤は、ポケットに手を入れ、バッジを取り出した。
- 必死に目を凝らし、目当てのバッジの色を探す。
- ――呼び出したい者のバッジを掲げ――
- 右手にピンク。左手に赤。
- ――呪文を唱えるのである――
- 123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:38:56.66 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「聖徒会執行部に告ぐ!
- VIP高等学校聖徒会室において事件発生!
- 至急現場に来られたし!
- トイレのクールさん、赤マント仮面モララー、
- ――召喚(ウェルカム)!!」
- 暗闇を照らすピンクの光と赤の光。
- 蛇は鎌首をもたげ、しゅうしゅうと威嚇するような音を吐いた。
- 光が強くなる。
- そのまま弾けたかと思うと、光はバッジへと収束していった。
- 川 ゚ -゚)「はーあーいっ」
- (-@∀@)「やれやれ、今度は聖徒会長君かい?」
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:41:14.93 ID:wiywb1KmO
- 内藤の両隣に立つ素直クールとモララー。
- 内藤は、深く安堵の息をついた。
- 実は、半信半疑で試したのだった。
- あの理事長ならば、内藤をからかうために嘘をついてもおかしくないからだ。
- (;^ω^)(ほっ、本当に来てくれたお……)
- 川 ゚ -゚)「うわなにあれ」
- (-@∀@)「おやおや大きな蛇だね」
- (;^ω^)「あっ、あの蛇をなんとかしてほしいんですおっ!」
- 川 ゚ -゚)「気味が悪いが合点承知」
- (-@∀@)「任せてくれたまえ。
- おや、どうしたね。大丈夫かい?」
- (;,゚Д゚)「お、おお……」
- モララーが床に倒れているギコに声をかける。
- ギコはといえば、何が起きているんだか把握しきれていないようで、
- クールとモララーを見て目を丸くさせていた。
- 127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:44:46.73 ID:wiywb1KmO
- (;* − )「ぐ、ぅあ、う……!」
- もはや意識がなくなりかけているしぃを、さらに強く圧迫する大蛇。
- みしり、骨が軋む。
- 川 ゚ -゚)「あまり調子に乗るなよ爬虫類」
- クールが右手を天に向けた。
- そこにあるのはピンクのバッジ。
- バッジは発光しながら浮き上がる。
- 川 ゚ -゚)「それに、絡みつくならば、
- ただの女子高生よりもこちらのボン・キュッ・ボンの方が良くないか?」
- クールの頭上で静止したバッジは、自身と同じ色の光で、真下のクールを照らし出した。
- クールは妖艶な笑みを浮かべ、左手でスカートの裾を持ち上げ、しっとりとした唇で誘う。
- 川 ゚ー゚)「いっしょに……あ・そ・び・ま・しょ?」
- (;*∩Д∩) アワアワ
- (;*∩ω∩)アウアウ
- 薄桃色に包まれた、露出の激しい美女。
- 彼女の口から流れる男を惑わす声音は内藤とギコまで揺さぶった。
- 2人は手で顔を覆って何とか誘惑から逃れたが、蛇には手足がない。
- クールの誘惑を――魔力を遠ざける術がない。
- 蛇は、しゅるり、と、しぃから離れ始めた。
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:47:58.28 ID:wiywb1KmO
- 川 ゚ -゚)(よっしゃこいつオスだ)
- 他者を魅了する力においては、クールよりもモララーの方が強い。
- モララーは眼鏡を外せば老若男女関わりなく自分の虜にできるのだが、
- クールの魅力は異性にしか通用しない。
- この蛇がメスだったら効いていなかった。
- (;* − )「ふ……うぅ……」
- ついに、蛇が完全にしぃを解放する。
- それに気付いたギコは、しぃの元へ駆け寄った。
- 体を抱き上げ、名前を呼ぶ。
- (;,゚Д゚)「しぃ! しぃ!!」
- (;* ー゚)「……ぎ、こくん……」
- (;,゚Д゚)「しぃ……!」
- (-@∀@)「女の子をこんな目に遭わせるなんて感心しないな」
- クールに向かう蛇。
- その前に立ち、モララーは分厚い眼鏡の奥から蛇を睨めつけた。
- 130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:51:00.65 ID:wiywb1KmO
- (-@∀@)「女性を苦しめるための体なぞ、炎で焼き尽くしてしまおうか!」
- ばさりとマントを翻す。
- 燃えるような赤いマントが起こした風に乗り、本物の炎が蛇めがけて飛んでいった。
- 蛇の体に、一気に火が回る。
- (;゚ω゚)「火事!」
- (-@∀@)「私が狙ったもの以外は燃えないから安心したまえ」
- 悲鳴のような音をあげ、蛇はのたうった。
- 火は激しくなる一方だ。
- 川 ゚ -゚)「お」
- ――暫くすると、炎が大きくなっていくのに対し、蛇が小さくなり始めた。
- 火の中で悶える黒い影は、もはや蛇であることすら分からないほどに小さくなり。
- やがて、蛇は消えた。
- 炎も縮んでいき、消滅する。
- (;,゚Д゚)
- (;*゚−゚)
- (;^ω^)「……えーっと?」
- (-@∀@)「燃え尽きたようだ」
- 132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:54:33.37 ID:wiywb1KmO
- ( ^ω^)「……じゃあ」
- (,,゚Д゚)「……蛇、いなくなったのか?
- もうしぃは大丈夫なのか!?」
- (*゚ー゚)「本当……?」
- 川 ゚ -゚)「ああ、何だ? お前たちが呪われてた奴か」
- ( ^ω^)「そうなんだお。
- 後は、呪った人を捕まえないと――」
- (-@∀@)「……なるほどね。
- ツン君が言っていたのはこのことか」
- ( ^ω^)「お?」
- 「――ぅさん――会長さん!」
- モララーに振り返った内藤の耳に、聞き慣れた声が届く。
- ( ^ω^)「ミセリちゃん?」
- その声は、聖徒会室の扉の向こうからしていた。
- 扉を開ける。
- 133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/08(金) 23:57:39.49 ID:wiywb1KmO
- ミセ;゚ー゚)リ「会長さん!」
- 廊下に出していた備品や私物。
- その中の、普段ツンが使っている鏡にミセリはいた。
- ( ^ω^)「どうしたお?
- あ、蛇なら今クールさんとモララーさんが――」
- ミセ;゚ー゚)リ「それが、蛇を探して鏡の中を移動してて、とある女子生徒の手鏡の中に入ったんですが、
- その生徒が、ツンさんたちと一緒にいて……」
- ( ^ω^)「ツンが?」
- ミセ;゚ー゚)リ「ツンさんが言うには、その生徒が呪いをかけていたらしいんです。
- 東棟の外です、そちらへ向かって下さい!」
- ミセリにしぃを預け、ミセリが言っていた場所に着いたとき、内藤は自分の目を疑った。
- ξ゚听)ξ「あら。お揃いで」
- (-@∀@)「……貞子君」
- 134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:00:26.34 ID:8EUbJWwaO
- 仁王立ちをするツン、座り込んで腹をさすっているドクオ、その上に浮かぶエクスト。
- そして地面に倒れている髪の長い女子生徒と、それを見下ろす、
- _
- ( ゚∀゚)
- ( ^ω^)「……ジョルジュ……」
- ジョルジュ。
- (,,゚Д゚)「……何でジョルジュがいんだよ」
- 内藤についてきたギコは、呆然と立ち尽くした。
- 友人が何故ここにいるのだ。
- しぃを呪ったのは――
- ξ゚听)ξ「こいつらが呪いがどうのこうの話してるのを見付けたのよ。
- それで捕まえようとしたら逃げ出したんだけど」
- (;'A`)「急に貞子――この女子が苦しみ始めて、気絶しちまったんだ。
- ……いてて……」
- 川 ゚ -゚)「どうしたドクオ、腹がどうかしたのか」
- <_プー゚)フ「その辺は格好悪すぎるから訊いてやるな」
- 138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:03:48.40 ID:8EUbJWwaO
- _
- ( ゚∀゚)「……蛇、倒しちまったんだろ?」
- ジョルジュが言う。
- 内藤は、無言で頷いた。
- _
- ( ゚∀゚)「やっぱりな。
- 貞子が倒れたのでなんとなく分かったよ。
- ……ま、出連たちに見付かった時点で、もう諦めてたんだけどな」
- 自嘲気味に笑うジョルジュを見つめる内藤の瞳は、どこか寂しそうだった。
- ( ^ω^)「……道理で変だと思ったお」
- _
- ( ゚∀゚)「変?」
- ( ^ω^)「体育館で話したとき、ジョルジュは、
- しぃさんが死ぬ前に、って言ったお。
- でも、『次に怪我する前に』って言うのが普通じゃないかお?
- 死ぬ前に、だなんて、まるで死にさえしなければいいとでも言ってるみたいで、
- あまりしぃさんを心配してないように感じたんだお」
- _
- ( ゚∀゚)「……。
- ははっ」
- 140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:06:53.13 ID:8EUbJWwaO
- 嘲るような笑みが、深くなった。
- ギコは、戸惑った顔でジョルジュを凝視している。
- _
- ( ゚∀゚)「そうだな。ああ。
- 生きてるんなら、怪我してよーが、まあ構わないんだわ。
- 生きて、俺を好きになってくれるんだったらさあ」
- (,,゚Д゚)「……あ……?」
- _
- ( ゚∀゚)「俺な、好きなんだよ。しぃちゃんが。
- 大好きだ。
- 俺のものにしたいって思ってた。
- なのにギコと付き合うんだもんよ。
- どーしようって、ずーっと考えてたらさ」
- こいつがいたんだ、と言って、ジョルジュは気絶している貞子を指差した。
- _
- ( ゚∀゚)「ある日、俺に話しかけてきてよ。
- 『ギコ先輩としぃ先輩について教えてください』って。
- ギコだけならまだしも、しぃちゃんのことも訊くなんて、なんか怪しいなと思ったんだ。
- それで、こいつがしぃちゃんを恨んでるのを知って、利用することを思いついた」
- (-@∀@)「……おまじない、かい?」
- _
- ( ゚∀゚)「おう?
- なんで知って――ああ、赤マントに相談してたっつってた気がすんな。
- ……そう、おまじないだよ」
- 143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:10:03.09 ID:8EUbJWwaO
- ――鏡のおまじない?
- 川д川『……どうやって……?』
- _
- ( ゚∀゚)『鏡にしぃの写真を映しながら、恨みごとを呟くんだ。
- どういう風に恨んでるのか。どんな目に遭ってほしいか。
- 毎日毎晩それをやれ。自分の気が済むまで。
- 5分でも1時間でも、全身全霊恨みを込めれば呪いは成功する。
- 写真はなるべく正面のもの。
- それと、命まではとろうと思うなよ。
- せいぜい怪我する程度で……週一で事故に遭うぐらいでいい。骨折までなら許す』
- 川д川『はい。
- ……でも、あの、……それは、本当に効くんですか……?』
- _
- ( ゚∀゚)『効くさ。何たって、』
- 本物から聞いた方法だからな――
- _
- ( ゚∀゚)「しばらく経ったら、貞子が大喜びで報告に来たんだ。
- 『夢に蛇が出てきて、しぃが映った鏡を割ってくれました』ってな。
- その夢を見たらおまじない成功だって、教えてくれた奴が言ってたから、
- 蛇は貞子に任せて俺がするべきことに移った」
- 146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:12:58.78 ID:8EUbJWwaO
- ( ^ω^)「……するべきこと?」
- _
- ( ゚∀゚)「藁人形さ。適当に作って、適当に釘打って。
- んで、それをギコの下駄箱に毎朝入れる。
- ギコはいつも俺より遅く登校してくるから楽だったな」
- 川 ゚ -゚)「何でそんなことを……」
- _
- ( ゚∀゚)「藁人形を使って呪いをかけてると思わせとけば、ある程度のカムフラージュにはなるかな、と。
- それに、ギコの下駄箱に藁人形突っ込んで、しぃが怪我すりゃあ、
- 馬鹿で優しいギコのこった。しぃが呪われている原因は自分にある、
- だからしぃから離れよう――こう考えるだろうと踏んだんだ。
- 後は、ギコがしぃと別れるまで続けるつもりだった。だが……」
- ぐしゃぐしゃと髪の毛を掻き回し、ジョルジュは深い深い溜め息をついた。
- _
- ( -∀-)「聖徒会に相談するとは思わなかった――
- っつーか、貞子と計画を立てた時点ではまだ『生徒会』だったからな。
- 予想外だった。
- 藁人形のこともすぐにバレちまったし。
- 相談して2日目でこうなるとはなあ……」
- 148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:16:31.02 ID:8EUbJWwaO
- (-@∀@)「……ジョルジュ君」
- _
- ( -∀゚)「んぁう?」
- (-@∀@)「色々訊きたいけれども、私にはどうしても確認したいことがある」
- 赤いマントをたなびかせ、モララーはジョルジュの前へ踊り出た。
- ジョルジュが怪訝な顔をする。
- _
- ( ゚∀゚)「何だよ?」
- (-@∀@)「君は、好きな子を手に入れられるならば、その子や、他人を傷付けても構わないのかい?
- 人を利用するのを厭わないのかい……?」
- _
- ( ゚∀゚)「ああ。しぃが手に入るなら、その過程はどうだっていい」
- (,,゚Д゚)「っ!」
- ξ゚听)ξ「……下種」
- (-@∀@)「ギコ君。どうする?
- 一度だけなら、殴るのを止めないよ」
- (,,゚Д゚)「……殴ったら、一回だけじゃ済まないと思う」
- (-@∀@)「そうか。
- じゃあ、私1人で思う存分やらさせてもらおうか」
- 150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:19:21.05 ID:8EUbJWwaO
- (;^ω^)「も、モララーさん、まさか燃やす気じゃあ……」
- _
- (;゚∀゚)「燃やす!?」
- (-@∀@)「そうだね。ある意味、燃やしてあげるよ」
- _
- (;゚∀゚)「燃やすの!? 俺燃やされるの!?」
- 川 ゚ -゚)「生きたまま火葬ktkr」
- ('A`)「なんという火葬代いらず」
- <_プー゚)フ「人の恋路を邪魔する奴は、もららに焼かれて死んじまえってか」
- ξ゚听)ξ「あら、じゃあ貞子も燃やさなきゃいけないわね」
- (,,゚Д゚)「呪い返しってレベルじゃねーぞ」
- 待って! 待って! と叫ぶジョルジュに構うことなく、モララーは一歩近付く。
- 異常なほどに整った顔が間近にあり、ジョルジュは息を飲んだ。
- 155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:22:37.46 ID:8EUbJWwaO
- 男女共に見惚れてしまう美顔。
- その顔の本領が発揮されるのは。
- _
- (;゚∀゚)「……な、なんだよ」
- (-@∀@)「燃やしてあげよう」
- ( ・∀・)つ-@-@「――君の心を」
- (;*^ω^)(;*'A`)(;*゚Д゚)「それらめええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
- 眼鏡を外したとき。
- ξ゚听)ξ「あーあ」
- 川 ゚ -゚)「アッー!」
- <_プー゚)フ「女2人に効いてないのに野郎共には効いてる不思議」
- ξ゚听)ξ「あたしのショタに対する執念なめんな」
- 川 ゚ -゚)「七大不思議の私をなめんな」
- 157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:25:58.31 ID:8EUbJWwaO
- (*∩ω∩)「僕男の子なのにぃい!」
- 川*゚ -゚)「ふふふ、ブーン、ノンケに戻りたいだろう?
- ほうら、私の乳でも揉めば正気になれるぞ」
- ξ#゚听)ξ
- (*∩ω∩)「そんなことしたら僕おかしくなっちゃうのおおおおおお」
- (*'A`)「俺に揉ませてくりゃひゃい!!」
- 川 ゚ -゚)「きもい無理」
- ('A`)
- <_プー゚)フ(彼女持ちのギコが動揺するぐらいなのに平気なツンどんだけー)
- 先程までの緊張感はどこへやら。
- 阿鼻叫喚の地獄絵図、あるはずのない薔薇がモララーの周りに咲き乱れる幻覚。
- やや離れてた場所から横顔しか見ていないブーンたちですらこれならば、
- 真っ正面、しかも超至近距離で見てしまったジョルジュはどうなるか。
- _
- (* ∀ )「あ……あ……」
- 158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:28:32.09 ID:8EUbJWwaO
- ( ・∀・)「しぃ君のことなど忘れてしまえ。
- 君が更生するまでは、女性はおろか他人を愛することも許さない」
- _
- (* ∀ )「……もら、らー……アニキィ……」
- がくり。膝が折れ、ジョルジュは地面に倒れた。
- 気を失ったジョルジュの表情は恍惚としたもので、時折びくんびくんと体を震わせている。
- モララーは眼鏡をかけ直し、ジョルジュを見下ろした。
- (-@∀@)「君の歪んだ根性が、もう少しマシになったときに魔力はちゃんと切れる。
- まともに女性と恋愛をするのは、それからだ」
- <_プー゚)フ「つまり根性曲がりが直らなかったら、ずっとモララーを好きなまんまなのか?」
- (;-@∀@)「……そうならないことを祈るよ。心から」
- ははは、と空笑いをしながらモララーはジョルジュを跨ぎ、貞子に歩み寄った。
- 未だ倒れたままの貞子の傍にしゃがみ込み、声をかける。
- (-@∀@)「貞子君」
- 川д川「……ん、」
- (;^ω^)そ「あっ、わ、忘れてた……!」
- ようやく回復したらしき内藤が貞子とモララーの元に駆け寄った。
- ドクオとツンもそれに続く。
- 162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:32:10.83 ID:8EUbJWwaO
- (;^ω^)「えーっと……さ、貞子さん、大丈夫かお?」
- 川д川「……え……へ……?」
- (-@∀@)「どこか痛むかい?」
- 川д川「あれ……赤マント仮面様……。
- ……大丈夫ですけど……。
- ――何だか、胸が熱い気が、――あ」
- ぼんやりとした声で答えていた貞子は、何かを思い出したのか、勢い良く上半身を起こした。
- 川;д川「そ、そうだ、私、捕まりそうに……」
- ξ゚听)ξ「もう捕まってるわよ」
- ツンが、玉串で貞子の額を小突く。
- 貞子はツンを見ると、青白い顔をさらに青くさせた。
- 川;д川「――う、うぅ……」
- ξ゚听)ξ「んで? 胸が熱いって?」
- 川;д川「……逃げようとしたとき、急に胸が熱くなって……。
- 中から燃やされてるみたいに、熱くて、苦しくて……。
- も、もう、ほとんど熱くないですけど……」
- 163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:35:22.17 ID:8EUbJWwaO
- ( ^ω^)「それは多分、モララーさんが蛇を燃やしたからだお」
- 川;д川「燃や、した……?」
- 内藤の言葉を聞き、貞子は己の右手にある手鏡を見た。
- ――鏡の縁に、焦げたような跡がある。
- 川;д川「へびは?」
- (-@∀@)「消えたよ。君の呪い……おまじないは、失敗だ」
- 川д川「……嘘」
- (-@∀@)「嘘じゃない」
- 川д川「それじゃあ、またやらなきゃいけないの?
- また始めから、鏡にしぃさんの写真を貼って、恨みをこめて……」
- ぶつぶつ、貞子が呟く。
- 彼女の顔は真剣なものだったが、不意に呟きを止めると、首を横に振った。
- 川д川「……んー……。
- もー、いいやぁ……」
- 165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:38:44.28 ID:8EUbJWwaO
- どうせ。
- どうせ無理なんだ。
- そう言って、鏡を放り投げる。
- 鏡はドクオの頭にぶつかったが、ドクオは一応空気を読んで無反応を貫いた。
- 川д川「失敗する運命だったんですよね。
- そもそも成功したって、私に振り向いてもらえるはずないのに。
- 馬鹿みたい。うふふ。あはは。ばぁか。ばぁーか」
- 私の馬鹿、と何度も繰り返す。
- 10回目の馬鹿を口にした後に、貞子は膝を抱え、そこに顔を伏せた。
- 川д川「……もうやだぁ……」
- 震えた声。
- 頼りなくて、弱々しい。
- 内藤は、少し困った顔をして貞子を見つめた。
- 怪我をしたしぃよりも。恋人を傷付けられたギコよりも。
- 友人の恋人を欲しがったジョルジュよりも。
- 誰よりも、貞子は悲しみに塗れている。
- 168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:41:48.18 ID:8EUbJWwaO
- 川д川「みんなに嫌われるの、もうやだよ……」
- ξ゚听)ξ「……モララーには嫌われてないんじゃないの?」
- 川д川「……好きな人の恋人を呪った女なんて、嫌われるに決まってるじゃないですか……。
- 女の子に優しい赤マント仮面様でも、流石に嫌になりますよ……」
- (-@∀@)「そんなことは――」
- 川д川「冗談とか、いらないですよ。
- ……あー……いずれギコ先輩に知られるんですよね。
- あは、どうしよ、生きてる人で私に優しくしてくれたの、ギコ先輩だけなのに。
- ギコ先輩にも嫌われちゃうや……」
- 声だけでなく、体までもが震えだす。
- 時折鼻をすする音がする。
- 川д川「ふ、ぁ、はは、はぁ……。
- ……うー……」
- ( ^ω^)「――……」
- 内藤が手を伸ばす。
- 貞子を慰めようと。
- 169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:44:52.21 ID:8EUbJWwaO
- しかし、内藤が触れるよりも先に、大きな手が貞子の頭を一撫でした。
- 川д川「……?」
- 貞子が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。
- そして、目の前の男を見て、引き攣ったような声を漏らした。
- 川;д川「ひ、っ、え、なっ、なん……」
- (,,゚Д゚)「……俺は」
- いつの間に近付いていたのか。
- ギコは貞子の前に胡座をかいた。
- (,,゚Д゚)「俺は確かに、しぃを呪うような奴は嫌いだ」
- 川;д川「……っ」
- (,,゚Д゚)「でもな」
- 今度は、ぽん、と軽く貞子の頭を叩いた。
- ギコには怒る様子も嫌悪する様子もない。
- むしろ、優しげな瞳で貞子を見る。
- (,,゚Д゚)「それをちゃんと反省して、謝れるような奴は好きだぞ」
- 172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:47:27.25 ID:8EUbJWwaO
- 川д川「――……」
- 貞子を取り囲んでいた悲しみが霧散する。
- 少しの沈黙の後。
- 貞子は、口を開いた。
- 川д川「……ごめんなさい……」
- (,,゚Д゚)「おう」
- ぽつり。言葉が漏れる。
- ぽつり。涙が落ちる。
- それをきっかけに、言葉が、涙が、一気に溢れ出した。
- 川;д;川「……ほんとに、ほんとに、ごめ、なさ、
- わ、わた、し、あ、あああ、ひどいこと……。
- こんなに優しい人、き、傷つっ、う、うーっ……!
- おねが、します、きらわないで、好きになってくれなくてもいいから、
- ……きらわないで……」
- こんな優しい人にまで嫌われたら、もう誰からも好かれない。
- すべての人から嫌われたら。
- 死んでしまう。
- 比喩でも過剰表現でもなく。
- きっと自分は死んでしまう。
- 174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 00:51:22.47 ID:8EUbJWwaO
- (,,゚Д゚)「ちゃんとしぃにも謝るか?」
- 川;д;川「もちろ、謝、ます、ふ、ぅ、うああっ、う……」
- (,,゚Д゚)「そうか、偉いな」
- くしゃり。再び頭を撫でられる。
- 川;д;川「っ、うー、う、うわああああん!」
- 酷いことをしてごめんなさい。
- 優しさに甘えてごめんなさい。
- ――嫌わないでくれて、ありがとう。
- ( ^ω^)「おっ!」
- ξ゚ー゚)ξ「……ふん。甘いんだから」
- ('A`)「これが俺とイケメンの差か……」
- <_プー゚)フ「もっと根本的な所にデカい差が出来てると思うぞ!」
- 177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:00:07.64 ID:8EUbJWwaO
- (-@∀@)「やはり慰めるのも反省させるのも、本人が愛する男じゃないと駄目だったようだ。
- ……少々残念だね」
- 川 ゚ -゚)「何だ、もしやあの女子に惚れてたか?」
- (-@∀@)「ははは、まさか。
- ただ、いくら好きな男がいるとはいえ、何度も何度も私に会いに来るのに
- 私にまったく靡かない女性というのが物珍しくて、興味があっただけさ」
- 川 ゚ -゚)「試しにあの子の前で眼鏡を外してみればどうだ」
- (-@∀@)「やめておくよ。それで見向きもされなかったら空しいし――
- 私は、彼女の一途なところが好きなのだからね」
- こうして。
- 事件は解決したのであった。
- 180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:03:33.25 ID:8EUbJWwaO
- ――あれから、しぃは、あっさり貞子を許した。
- 人の良いカップルだ。
- (*゚ー゚)「あ、貞子ちゃん!」
- (,,゚Д゚)「おう」
- 川д川「こ、こんにちは……」
- (*゚ー゚)「そのプリントどうしたの?」
- 川д川「先生から、教室に運ぶように言われて……」
- (*゚ー゚)「運ぶの手伝おうか!」
- 川;д川「えっ、えぇっ!
- い、いいですよ、そんな! クラス……っていうか学年違いますし!」
- (*゚ー゚)「まあまあ、いいからいいからー」
- (,,゚Д゚)「そうだぞ、遠慮すんな。この前みたいにばらまいても知らねえぞ」
- 川д川そ
- 川*д川(……覚えててくれたんだ……)
- 183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:06:26.86 ID:8EUbJWwaO
- (*゚ー゚)「隙あり!」
- 川;д川「あっ」
- (*^ー^)「うふふー、半分持っちゃったー。
- さ、行こうか貞子ちゃん!」
- 川*д川「……はい! あっ、ありがとうございます!」
- (*゚ー゚)(貞子ちゃん可愛い)
- (,,゚Д゚)(しぃkawaeeeeeee)
- 「女子トイレに居座っている奴を何とかしてくれ」という、女子多数から寄せられた依頼。
- 来てみれば。
- _
- (#゚∀゚)「男子が女子トイレに来るなって言ってるけどな、
- ここは用を足すところじゃねえ、アニキの部屋なんだよ!
- アニキの部屋に俺が入んのが何か悪ぃのかよ!
- ねっ、アニキ!」
- (;-@∀@)「……ははは」
- ξ゚听)ξ「何よ、助けを求めるようにこっちなんか見て」
- (;-@∀@)「うん、まさにそうなんだよ?」
- 185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:09:59.15 ID:8EUbJWwaO
- <_プー゚)フ「でもお前それ自分でやったんじゃんか」
- (;-@∀@)「……うーん……」
- ('A`)「えーっとー、あのな長岡、他の女子の迷惑になるから、」
- _
- (#゚∀゚)「あん?」
- ('A(;^ω^)「ドクオ、もうちょっと頑張れお。
- ……とにかく、みんなと仲良く、モララーさんを独占せずに――」
- _
- (#゚∀゚)「ああん?」
- ('A( ^ωξ;゚听)ξ「あんたら……」
- ξ゚听)ξ「……長岡。
- あんたが他の女と一緒になって赤マント仮面にきゃーきゃー群がるのはいいの。きもいけど。
- 誰もいない時間に2人きりで過ごすのも構わないわ。きもいけど。
- ただね、わざわざみんなを追い出して赤マント仮面を独り占めするのは駄目よ」
- _,
- (#゚∀゚)「あああん?」
- ξ#゚听)ξ「は?」
- _
- ( ゚(;-@∀@)
- ξ゚听)ξ「……あんたのその根性早く直さないと、そろそろ赤マントのケツが危ないわね」
- (;-@∀@)「ひぃいいっ!」
- 187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:13:05.48 ID:8EUbJWwaO
- ( ФωФ)「我輩が居ぬ間に解決出来たのであるか」
- 聖徒会室。
- お茶を啜りながら、理事長は「見逃すとは惜しいことをした」と悔しそうに首を振った。
- 川 ゚ -゚)「事件があったとき、ブーンから私にご指名が入った。
- 嬉しかったよ」
- ( ^ω^)「恋とか嫉妬に関することだったから、
- 何となくクールさんとモララーさんが思い浮かんだんだお」
- ( ФωФ)「うんうん。そういう咄嗟の判断が大事なのである。
- 流石聖徒会長」
- ( ^ω^)
- ( ^ω^)「いやいやいやいやいやいやいや」
- ( ФωФ)「何であるか」
- ( ^ω^)「……」
- ( ФωФ)「だから何」
- (;゚ω゚)「しまったあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
- 188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:17:05.72 ID:8EUbJWwaO
- 頭を抱え、転げ回る。
- 聖徒会など、ましてや自分が聖徒会長などとは認めていない。
- 認めたくない。
- なのに――進んで聖徒会の仕事を遂行してしまった。
- (;^ω^)「違うお! 違うお! 僕はそんな――」
- ( ФωФ)「しかし、君が聖徒会長だから、この件が解決したのであろう?」
- (;^ω^)「――つもり、じゃ……」
- ( ФωФ)「他の者ではきっと出来なかったのである」
- 川 ゚ -゚)「同意」
- (;^ω^)「……でも、僕が教会の息子だってだけで聖徒会長にされたわけであって」
- ( ФωФ)「たとえ教会の息子だろうと、困っている人を助けないような者だったら
- 聖徒会長になんぞしないわ」
- 川 ゚ -゚)「私だってそんな奴にバッジを預けたりしないさ。
- お前だからだよ」
- ( ^ω^)「……そんなこと、ないお。
- 僕はただ普通の……」
- 川*゚ -゚)「ふふふ、謙虚なブーンかわいいよブーン」
- (;^ω^)「あっ、あの、ちょっと近っ」
- 190: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:20:27.41 ID:8EUbJWwaO
- 川*゚ -゚)「照れ屋なブーンモエス」
- ξ#゚听)ξ
- (;'A`)「このままじゃツンから蛇が生まれる!!」
- <_プー゚)フ「……なー、前から思ってたんだけど」
- ('A`)「ん?」
- <_プー゚)フ「なんでツンはショタコンのくせにブーンが好きなんだ?」
- 「別に好きじゃねーし!」ξ#゚听)ξ≡⊃)ー゚)フ「そこ否定すんの!?」
- ('A`)「んー、なんつーか、あれだ。
- 好みのタイプと好きな人は違う、みたいな」
- <_#)ー゚)フ「へー」
- ('A`)「ツンは昔からブーンが好きだしな。
- ブーンとツンと俺は幼馴染みなんだよ」
- 「別に幼馴染みじゃねーし!」ξ#゚听)ξ≡⊃)A`)「いやそれ否定すんのはおかしいだろ!!」
- ξ#゚听)ξ「人のことべらべら喋ってんじゃないわよ!」
- (#)A`)「ごめんなさい……。
- そーいや、エクスト」
- 194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:23:57.36 ID:8EUbJWwaO
- <_プー゚)フ「なんだ?」
- (#)A`)「お前、初めはよ、女女って騒いでたじゃん」
- <_プー゚)フ「おう!」
- (#)A`)「なのに、あれ以来全然女のこと気にしてねえよな。
- しぃさんがいたときも、纏わり付くでもなし、セクハラするでもなし」
- <_プー゚)フ「あー。なんかなー、ツンに会うまでは、手当たり次第、女に近付いてたんだけど」
- ふわりと飛んで、ツンの頭の上に乗る。
- ツンの盛大な舌打ちが聞こえたが無視した。
- <_プー゚)フ「ツンを見たらな、他の女がどうでも良くなったんだよ」
- ('A`)「ツン一筋宣言出ましたー」
- ξ*゚听)ξ「……馬鹿じゃないの」
- <_プー゚)フ「好きなのかなー、よく分かんねーや」
- ('A`)「女好きが1人の女に惚れ込んで浮気性を直すのはよくある展開ですな、ラブコメ的に」
- <_プー゚)フ「でも、何であんなに女追い掛けてたのかも分かんねーんだよ」
- ξ゚听)ξ「童貞のまま死んだとか」
- <_プー゚)フ「かもしれないなー。気付いたら幽霊になって女追い回してたんだぜ」
- 197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:26:16.62 ID:8EUbJWwaO
- ('A`)「あ、じゃあさ。
- 探してる奴がいたんじゃないか?」
- ドクオが、思いついた、と人差し指を立てた。
- エクストはツンの頭から下りて、ドクオの頭上を回る。
- <_プー゚)フ「探してる奴?」
- ('A`)「そう。んで、そいつの特徴を『女』としか把握してなかった。
- だから女が気になってたんだ」
- ξ゚听)ξ「その理屈で言うなら、その探し人が私ってことになるんじゃないの。
- あるいは私に似てるとか」
- ('A`)「つまり……」
- 立てた人差し指をエクストに向ける。
- そしてドクオは目を見開き、叫んだ。
- (゚A゚)「エクストは生きていた頃、ツン、もしくはツンに似た女のストーカーだったんだよ!!!!!」
- ξ゚听)ξ「ナンダッテー」
- <_プー゚)フ「すげえ棒読み」
- 200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:30:23.92 ID:8EUbJWwaO
- ( ^ω^)「何の話だお?」
- 川 ゚ -゚)「ドクオたちの話に興味を持つふりして私から逃げる気か。
- そうはさせん」
- (;*^ω^)「あ、む、胸がっ」
- ξ#゚听)ξ「そろそろ男子トイレ帰れや」
- ('A`)「ブーンが羨ましいです」
- ( ФωФ)「我輩の胸板で良ければ……」
- ('A`)「NO THANK YOU」
- <_プー゚)フ「……」
- 探し人。
- 女。
- <_フ ー )フ「……い、ってぇ……」
- じくり。
- 頭が痛んだ。
- 203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:33:59.28 ID:8EUbJWwaO
- ――エ……ト様
- ――エ、……スト様
- エクスト様。
- 『エクスト? エクソシストじゃなくて?』
- 『えくすとさま! なのじゃ!』
- <_プー゚)フ『えーくーそーしーすーとー』
- 『えくす、すぃ、と? え、えくす、と!』
- <_プー゚)フ『……エクソシストって言ってくれないんだよ』
- 『だって言いづらいのじゃー! エクストなら言いやすいのじゃ!』
- 『うふふ。じゃあ、私もエクスト様って呼んじゃおう』
- ね、エクスト様。
- 209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/09(土) 01:38:13.30 ID:8EUbJWwaO
- <_プー゚)フ
- <_プー゚)フ「……?」
- ( ^ω^)「エクスト、どうしたお?」
- <_プー゚)フ「んー。ちょっと、ちょっとだけ、思い出した、かも」
- ξ゚听)ξ「何を?」
- <_プー゚)フ「……よく分かんない。まあ気にすんな」
- ('A`)「何じゃそりゃ」
- えくすとさま。
- えくすとさま。
- たすけてください。
- 第二話:終わり
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