( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:34:19.39 ID:kqYzcm9bO
- 初めは、人柱に関わった内の、ある1人の男。
- 隣町へ行く途中、突然橋から飛び降りたそうだ。
- 彼の妻が涙ながらに語るには、
- はっとした顔になったかと思うと、橋を乗り越え、そのまま底へ吸い込まれたと。
- 遺体の引き上げは難しいため、本人のいないまま葬式は行われた。
- 12月も中旬に差し掛かった頃。
- 兄者が消えた日から、丁度1ヶ月後のことであった。
- 第六話:エクスト様 後編
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:37:44.94 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「こんにちは、エクソシスト様。今日も寒いわね」
- <_プ−゚)フ「んー」
- ('、`*川「……元気ないわねえ」
- 男の葬式が終わった翌日、何故かペニサスが教会へやって来た。
- 聖堂の椅子に腰掛け、エクストに話しかける。
- 対するエクストは、ペニサスの隣に座り聖書を読んでいた。
- ('、`*川「再来週辺りだよね、あれ、あの、クリスマス」
- <_プ−゚)フ「ん」
- ('、`*川「今年も何かやるの?
- 去年はお菓子配ったんだっけ」
- <_プ−゚)フ「んー」
- ('、`*川「……」
- <_プ−゚)フ「……」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:40:28.28 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「……なんか、流石さんの家の人、ぜーんぜん見なくなったのよ」
- <_プ−゚)フ「ん」
- ('、`*川「デレも、流石さんがいなくなったって落ち込んでるし」
- <_プ−゚)フ「んん」
- ('、`*川「……エクソシスト様、最近デレと会った?」
- <_プ−゚)フ「昨日の葬式のときに見た」
- ('、`*川「見ただけね」
- <_プ−゚)フ「ん」
- ('、`*川「……デレ、お葬式の途中で、具合が悪くなっちゃって席を外したのよ。
- 私がついてたんだけど……突然、吐き始めちゃって」
- <_プ−゚)フ「病気でもしたのか?」
- ('、`*川「何かね、ここ最近吐き気が酷いんだって。
- 食欲もなくなって、食べられる物が減ってきたし、
- ちょっとした匂いだけで気持ち悪くなっちゃうって言ってた」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:45:13.98 ID:kqYzcm9bO
- ペニサスの声は、沈んでいる。
- 風邪か何かじゃないか、と言おうとして。
- エクストは、聖書から目を上げた。
- <_プ−゚)フ「……それって」
- ('、`*川「つわりみたいだよね。
- ――妊娠してるのかも」
- <_フ;゚−゚)フ「……冗談言うなよ」
- ('、`*川「気になって訊いてみたら、アレ、月のものも全く来てないっていうし。
- まだ確定したわけじゃないけどさ、びっくりしたわよ、もう。
- 相手は流石さんの弟だってね?」
- それは、間違いなく弟者の子供だ。
- 「あの日」、出連神社を訪ねた際、子供を作るのだと弟者は言っていた。
- そのときにはもう、デレの中に新たな命が宿っていたのかもしれない。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:49:14.25 ID:kqYzcm9bO
- <_フ;゚−゚)フ「……ペニサス、それ、他の誰かに話したか?」
- ('、`*川「話してないわよ。あ、別に誰彼構わずべらべら喋ってんじゃないからね。
- エクソシスト様は事情知ってるってデレが言ってたから。
- それに、デレん家に流石さんが住んでたことも、殆どの人は知らないんでしょ?
- なのにデレが流石さんに孕まされたなんて聞いたら、みんな卒倒しちゃう」
- <_フ;゚−゚)フ「これからも話さないでおいてくれるか?」
- ('、`*川「勿論。
- ――でさ、デレ、神主様に近々相談しなきゃって言ってたんだけど。
- ……危ないと思わない?」
- <_プ−゚)フ「危ないっていうと?」
- ('、`*川「神主様、流石さん達のこと大嫌いじゃない。
- そのくせに何で出連神社に住まわせてたのかは知らないけど。
- んで、デレが流石さんの子供を身篭ったなんて知ったら、
- 激怒しちゃうんじゃないかなって」
- <_フ;゚−゚)フ「……それは、まあ、……そうだな」
- ――流石の血を根絶やしに。
- それが彼らの目的。
- なら、弟者の血が入ったデレの子は。
- ('、`*川「最悪、堕胎されちゃうかも」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:52:45.41 ID:kqYzcm9bO
- ペニサスが顔をしかめる。
- 有り得ないとは言い切れない。
- それくらいのことも、平気でやりかねないのだ。
- <_フ;゚−゚)フ「……少し、相談は待つように言っておいてくれ」
- ('、`*川「もう言った。あと、相談するときは私も同席することにしてる」
- <_フ;゚−゚)フ「任せたぞ」
- ('、`*川「了解。――それと、他にも気になることがあるの。
- デレから聞いた話なんだけどね、
- 流石さんが出連神社からいなくなった次の日、
- 神主さんとデレが離れの部屋に行ったら……」
- 手付かずの膳が二つ。
- そして、呪術に関する本が数冊。
- ('、`*川「昨日のお葬式の人って、神主様や町長達と一緒に、
- 流石さん家を大々的に非難してた人でしょ?
- まさか呪いをかけたんじゃないかって、神主様が苛々してたみたい」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:56:01.64 ID:kqYzcm9bO
- <_プ−゚)フ「……」
- 呪い。
- それが、エクストも気になっていたのだ。
- ただの偶然だと思い込もうとするが、兄者の真剣な顔と言葉の記憶が邪魔をする。
- 本当に兄者のかけた呪いが効いたのかと、そう考えてしまう。
- ('、`*川「……流石さんがいなくなった日、
- エクソシスト様、流石さんに会いに行ってたでしょ。
- 何か知ってるんじゃないの?」
- ペニサスはエクストの顔を覗き込んだ。
- じっと見つめ合う。
- ペニサスの唇が、弧を描いた。
- ('ー`*川「分かりやすぅい」
- 細い指の先が、エクストの鼻をつつく。
- ('、`*川「動揺してる。
- 知ってるんだ、流石さんについて」
- <_フ;゚−゚)フ「……う」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 20:59:45.88 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「エクソシスト様」
- ペニサスの指が、エクストの胸元に伸びた。
- 黒いキャソックの襟を掴み、あまり強くない力で、ゆるりと引っ張る。
- ('、`*川「別に、私はエクソシスト様が何を知っていようが何をしていようが構わないわ。
- 何にせよ、私とデレは、自分の父親よりも貴方を信頼してるの。
- ――全ての決着をつけられるのは神主様でも父でもなく、エクソシスト様よ」
- エクストの目を見つめてペニサスが言う。
- その瞳からは、彼女の意図が読み取れない。
- ('、`*川「どうしてデレに関わりにいかないのかは分からないけれど、
- デレを救ってあげて。
- 流石さんを救ってあげて」
- 救う――
- <_フ − )フ「俺は誰も救えないよ」
- ('、`*川「……」
- ペニサスが片眉を上げた。
- 襟から手を離す。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:04:00.03 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「自信が無くなってる? 神父としての。
- だからデレに会えないのね」
- <_フ − )フ「自信が無いだけじゃない」
- ('、`*川「ふうん」
- <_フ − )フ「……人を殺したんだ」
- ('、`*川「あらまあ」
- 適当なペニサスの相槌を気にすることなく、エクストは言葉を続けた。
- 口が、勝手に動く。
- <_フ − )フ「寺の石段から落として殺した」
- ('、`*川「うちの敷地内でかよ」
- <_フ − )フ「それで……兄者の言葉に甘えて、俺はその罪を兄者に被せた。
- 兄者が神主様や住職様を呪ってやると言っていたのに、
- 俺はそれを阻止しなかった。
- 兄者が町長を殺したのは俺のためだった。
- 俺には何も止められなかった。誰も救えなかった」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:07:56.69 ID:kqYzcm9bO
- 初めてだった。
- 初めて、エクストは人間に、自分の罪を話した。
- もう何度も神へ懺悔してきた。
- しかし、その神は何も答えてくれない。
- 赦してくれると言わないし、赦さないとも言ってくれない。
- きちんと目の前に存在して、きちんと答えてくれる人に、全て話したくて堪らなかった。
- <_フ;−;)フ「それに、デレと弟者を見て、俺は逃げたんだ。
- 苦しくて苦しくて、何もできなくなって、
- デレが追い掛けてきてくれたのに、それでも逃げた。
- 俺は誰にも救いの手を伸ばさなかった。
- そのくせ、後から悔やむんだ……」
- 人柱のことを知ったとき。
- 弟者とデレに会ったとき。
- どちらも、既に事は終わった後だった。
- それを非常に悔いていたのに。
- なのに、プギャーを殺し、兄者を止められなかった。
- 結局、また終わってから後悔したのだ。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:11:17.60 ID:kqYzcm9bO
- 自分は、過ぎたことを深く慚愧するばかりで。
- 情けなくて、憎らしくて、嫌で嫌で。
- もうデレの前に現れることすら億劫で仕方がない。
- そうしてまた、デレが追い詰められているのを知る。
- 何も出来ない自分を置いて、事態はどんどん泥沼に沈んでいく。
- それにつれ、自分の出来ることがますます分からなくなってしまう――
- ペニサスの手を握りしめ、涙を零す。
- 彼女に話したって仕方がないのは分かっていても、止められない。
- ペニサスは頭を掻いて、大きく溜め息をついた。
- ('、`*川「うーん、話はさっぱりだけど、深い深い事情があるみたいね」
- 彼の独り言にも思える呟きから分かるのは、エクストが人を殺めてしまったこと、
- 流石家とデレ、エクストの間に何かがあったこと、
- 本当に兄者が呪いを実行していたこと、
- そして、エクストが自分自身を必要以上に責め立てていることだった。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:14:41.71 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川(しっかしまあ、人を殺したとは……)
- 人殺しだと告白した男を前にしておきながら、ペニサスは恐怖を抱きはしなかった。
- それもそうだろう、こんなに悲しそうな人間に対して、怯えられよう筈もないのだ。
- さらに、エクストがそこまで仕出かすということは
- それなりの理由があったのだろうと彼女は理解していた。
- 勿論人を殺すなど、あってはならないことだ。
- だが、事情も知らずに糾弾する気はない。
- ('、`*川「まあ落ち着きなさんなエクソシスト様。
- 後悔なんて、いくらしたって終わらないよ」
- 指で涙を拭ってやると、エクストは幼い瞳でペニサスを見た。
- <_フ;−;)フ「……でも」
- ('、`*川「私には何が起こってんだかよく分からないけどね。
- エクソシスト様、何か全部自分が悪いと思い込んでない?
- そういうところがエクソシスト様らしいっちゃらしいけど、
- そんな落ち込んでどうするの?
- 落ち込んで、無気力になって、また何も出来なくなっちゃうでしょ」
- 今は、一旦過去を忘れなさい。
- そう言ってペニサスが腰を上げる。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:21:30.28 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「そりゃ、そこまでめっためたにへこんでるんだから
- 簡単に置いておけるもんじゃないだろうけどさあ。
- かといって、ずーっと引きずってても悪化するだけよ」
- 必死で言葉を探す。
- 他人を励ますとか、説教するとか、
- そういったことに、彼女はあまり慣れていないのだ。
- ('、`*川「1人でうじうじ閉じこもってたら、また後悔するようなことになるよ。
- エクソシスト様にとって、現状で一番何とかしなきゃいけないことって何?
- 誰のために、真っ先に何をどうしなきゃいけないと思う?
- まずはそれを考えてみようか」
- 伸びをして、ペニサスはエクストの肩を軽く叩いた。
- ('、`*川「さっきも言ったけど。
- 私もデレも、一番信じてるのはエクソシスト様なの。
- 全てを解決出来るのは、エクソシスト様だと思ってるのよ」
- よろしくね、とウインクをして。
- 彼女は、教会を出ていった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:25:07.03 ID:kqYzcm9bO
- <_プ−゚)フ(……現状……)
- 気付けば涙は止まっていた。
- 罪の意識はまだ消えないけれど、その奥底に光が覗き始めている。
- ――自分にとって、するべきことは何なのか。
- 償いと、救い。
- ――誰のために。
- 皆のためだ。
- 自分は、この町を守る神父。
- じゃあ、具体的に何をすればいい?
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:28:23.81 ID:kqYzcm9bO
- 「エクソシスト様!」
- 先程閉まったばかりの扉が開く。
- ペニサスが、息を切らして、そこにいた。
- ('、`;川「かっこよく助言して出ていっときながら戻ってくるのは恥ずかしいけど……。
- 今、そこで聞いた話によれば、
- ……また、谷に飛び込んだ人がいたって……」
- <_プ−゚)フ「……今度は誰だ?」
- ペニサスが、飛び込んだ者の名を告げる。
- それは、またしても、人柱に協力した1人の男であった。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:31:32.08 ID:kqYzcm9bO
- ――償いをし、皆を守るために、何をするべきか。
- そんなもの、一つしかない。
- エクストが、兄者の「呪い」を止めるのだ。
- これ以上誰も巻き込まないように。
- これ以上兄者が命を奪わぬように。
- これまでの自分の行いを償うために。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:35:03.88 ID:kqYzcm9bO
- 偶然といえるほど、簡単なものではない。
- 兄者がいなくなってから一ヶ月、人柱に関わった男が2人も谷に飛び込み、死んだ。
- 首謀者の荒巻は殺され、プギャーも行方不明。
- これで残るは神主と住職、そしてもう1人の男のみだ。
- ( ゚∋゚)「……」
- 神主は、橋の前に立ち、じっと谷を見下ろした。
- 吐く息は白く、闇に広がり消えていく。
- 今は、二人目の男が谷に飛び込んでから数日後の夜。
- 葬式を終えて、神主はすぐに、この谷へ向かった。
- 確実に、流石は呪いをかけた。
- 離れにあった本、そして実際に出た犠牲者が何よりの証拠。
- ――「あの化け物共、とんだ置き土産をくれたものだ」。
- そんな怒りを腹に抱え、神主は決意した。
- 自分が呪いを解いてやる、と。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:38:25.46 ID:kqYzcm9bO
- 装束を身に纏い、神具を持ち。
- 谷に巣くっているであろう悪霊を――流石を、1人で祓ってやるつもりだった。
- その、つもりだったのだ。
- ( ゚∋゚)「……何という」
- 呪いの存在を確信したとき、神主には怒りしか沸き上がらなかった。
- ここに来るまで、彼は流石への憎悪だけを感じていたのに。
- どうしたことか。
- 谷を前にした瞬間、彼の体は冷え渡り、足が震え始めたのだ。
- この震えは、決して寒さのせいではない。
- 月明かりに照らされる山、そこからこちらに伸びる橋。
- その間の、ぽっかりと口を開ける谷。
- 暗い暗い深淵が、暗い暗い思念で一杯になっているように感じられる。
- 今にでも、淵から何かが這い出てきて自分の足を掴むのではないか。
- そしてそのまま、底に引きずり込まれるのではないか。
- 怖くて怖くて、仕方がない――
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:41:25.96 ID:kqYzcm9bO
- (‘_L’)「神主様」
- ( ゚∋゚)「!」
- 右腕を掴まれる感触で、神主は我に返った。
- 足元を見て――ぞっとする。
- 知らない内に、左足の半分ほどが淵の向こうへはみ出ていた。
- 後退り、右腕を掴む者に振り返れば、住職と目が合った。
- ( ゚∋゚)「……住職様。何故ここに」
- (‘_L’)「神主様が橋の方へ歩いていったと妻が言っていましたので。
- ――何をなさるつもりでしたか」
- ( ゚∋゚)「……お祓いを」
- (‘_L’)「お祓い?」
- (;゚∋゚)「人柱の関係者が次々死んでいく。
- どう考えても『奴ら』の仕業だ! 呪いをかけていったに違いない!
- だから、私はその呪いを解きに……っ」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:44:37.33 ID:kqYzcm9bO
- (‘_L’)「呪いですか」
- (;゚∋゚)「今だって……住職様がいなければ、私は真っ逆さまに落ちていた」
- 思い返し、神主は身震いする。
- 自分は今まさに、呪いに吸い込まれかけていたのだ。
- (‘_L’)「たしかに、ここは酷く空気が淀んでいる。
- この場にいるだけで気持ちが悪い……」
- (;゚∋゚)「……私には、呪いをどうにも出来そうにない。
- 気を抜くと、あの谷の中へ踏み出してしまいそうだ」
- あまりにも、ここに渦巻く気は強大だった。
- 未だかつて出会ったことがないほどの怨念。
- 立っているのがやっとだ。
- 住職が眉を寄せ、神主を引っ張り橋を離れる。
- (‘_L’)「私も、その呪いとやらを解くのは不可能だと思います。
- ――もう、どうしようもないほどに怨みが成長しすぎている」
- (;゚∋゚)「このままじゃあ、また新たな犠牲者が……」
- (‘_L’)「……業……」
- (;゚∋゚)「業?」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:48:07.92 ID:kqYzcm9bO
- (‘_L’)「我々のしてきたことを考えれば、これも当然の結果ではないですか」
- 住職の言葉は、神主には想像もつかないものだった。
- 自業自得だと。
- 自分達が悪かったのだと、住職は言う。
- (‘_L’)「己の平穏のみのために、彼らの命を奪った。
- 彼らの平穏なんて考えずに」
- (#゚∋゚)「あっ……、あなたは、何を言っているか分かってるのか!?
- 今更反省していると? 私達が間違っていたとでも!?」
- (‘_L’)「あのときは、私だって望んで流石家を追い込んでいた。
- 間違っているなどと思いもしなかった。
- けれど、いざ終わってみれば、いざ望んだ結果になれば、
- ……なんと愚かなことか」
- 神主の頭に血が昇る。
- 彼からすれば、流石家は害をなす化け物の集まりであり、
- 自分はそれを滅した英雄であった。
- それを突然、仲間だと思っていた男に否定された。
- 自分自身まで、否定された。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:51:48.36 ID:kqYzcm9bO
- (#゚∋゚)「貴様……!」
- (‘_L’)「先程、彼らの呪いに屈しかけていたのはどなたです?
- 自ら招いた結果に取り殺されようとしていたのは?」
- (#゚∋゚)「私達は間違ってなどいないのだ!
- 奴らが逆恨みして――」
- (‘_L’)「――最近」
- 胸倉に掴み掛かろうとする神主の手を押さえ、住職は俯いた。
- (‘_L’)「最近、夜になると、何かに呼ばれている気がするのです」
- (#゚∋゚)「……呼ばれている……?」
- (‘_L’)「布団に入り、目を閉じる。
- 隣で眠る妻の寝息以外には何も聞こえないような静寂の中。
- 遠くから、呼ぶような声がするのです」
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:54:41.96 ID:kqYzcm9bO
- ――声は、男のもののようで。
- 日が経つにつれ、近付いている気がする。
- 自分のもとにやって来ているのだろうと、何故か理由もなく確信する。
- (‘_L’)「そして勝手に、流石の長男坊の姿が頭を過ぎる。
- 橋の下から現れて、私を呼びながら近付いてくる姿。
- 恨み言を呟いて、憎悪に顔を歪ませる。
- ――その姿が、恐ろしくて、哀れで」
- 彼を、そんな姿になるまで追い詰めたのが外ならぬ自分であるのを思い知らされる。
- そうやって罪悪感が胸を満たし始めると、
- 今度はひどく悲しい気持ちが込み上げてくるのだ。
- 家族を奪われ、崩れていく世界。
- 狂っていく自分。
- それは、きっと彼の心だ。
- 彼の苦しみが、痛みが、自分に侵食する。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 21:57:48.40 ID:kqYzcm9bO
- ( ゚∋゚)「……」
- (‘_L’)「呪い殺されても仕方がないと思えるのですよ」
- ( ゚∋゚)「……あなたが、弱いからだ……」
- 精一杯の虚勢を張ってみるも、神主の手からはすっかり力が抜けていた。
- 決して反省をしたわけではない。
- 彼は未だに自分の行いを正しいと信じている。
- ただ、呪いに抗えないことを悟ったのだ。
- (‘_L’)「それで……どうなさいますか、神主様」
- ( ゚∋゚)「――どうしようも、ないでしょうが……」
- 死を待つしか、ない。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:00:47.30 ID:kqYzcm9bO
- 一方、教会。ある一室。
- ランプの揺らめく光に照らされる狭苦しい一室で、蠢くものがいる。
- かと思えば、それはぴたりと止まり――
- <_フ;゚д゚)フ「だぁーあああっしゃああああぁぁぁぁぁあ!
- あったー!」
- 奇声をあげて立ち上がった。
- エクストである。
- 彼の手には、掌ほどの大きさの、乳白色の石。
- その石を抱え、エクストは部屋の片隅にある机に駆け寄った。
- 机の上には、英語の文章が綴られているノートと、英和辞典。
- ノートと辞典を交互に見て、エクストの口元が弧を描く。
- <_フ;゚ー゚)フ「色は白、大きさは掌くらい、表面はつるつる……これだ!」
- ――そのノートは、前任の神父がつけていた日記。
- そこには、今エクストが抱えている石について書かれていた。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:03:44.89 ID:kqYzcm9bO
- そもそも。
- 何故、エクストが石を探していたのか、その理由から説明する必要があるだろう。
- 兄者の呪いをどうにかしなければならないと決心したものの、
- エクストにはなかなか方法が浮かばなかった。
- 祈るだけで済むものではない。
- 朝から晩まで悩んで悩んで、ふと、ある男の言葉を思い出した。
- 前任の老いた神父がエクストに教会を預ける際、彼はエクストに告げたのだ。
- ――「奥にある部屋には、私の大切なコレクションが収められている。
- 若い頃から集めてきたものだが、どうせ私もこの先長くない。
- どうぞ、君の好きに使ってほしい」――
- それは、ガラス棚に飾られた大量の石であった。
- しかし、ただの石ではないことは見ただけで分かる。
- 大小様々、色とりどりの石達は、そこらに落ちているようなものではない。
- その全てに、見る者を圧倒させる何かが潜んでいる。
- 石に関することは日記に書いてあるから参考にしてくれ、とも言っていた。
- エクストは、すぐさま神父の日記を開き、辞典を用いて一文ずつ翻訳していった。
- 運気の上昇だの悪魔を封じただのと説明だけ読めば眉唾物にしか思えないが、
- 実際に石に触れてみると、何とも言い難い感覚に襲われる。
- 本物であると信じるよりなかった。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:08:36.66 ID:kqYzcm9bO
- ――日記の翻訳を始めてから3日後の今日。
- ついにエクストが最も必要としているものを発見した。
- 魔を鎮める石、だとか。
- 怪しさ満点である。
- 日記を書いた神父自身は、その石を使ったことはないらしい。
- 何でも祖父から譲り受けたそうで――その祖父が、本物のエクソシストだったと。
- 「だから嘘というわけでもなさそうだ」という神父の意見が付け足されていた。
- 不透明な真っ白な石で、大きさは掌ほど。
- つるつると滑らかな表面。
- ずしりとした重量感。
- 触れると、指の先から全身へ心地良い感覚が巡っていく。
- 記された特徴とぴったり合う。
- エクストは、逸る気持ちに任せ、日記のページをめくった。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:11:59.39 ID:kqYzcm9bO
- ――この石を活用するために必要な準備。
- まず石に月光を浴びせる。
- 次に火に焼べて、水にさらし、木の皮で包み、純金と共に土中へ埋める。
- 最後に日光を当てる。
- これを三ヶ月かけてじっくり行えば準備は整う。――
- <_フ#゚д゚)フ「待てるかああああああああああああああああああああ!!!!!!」
- <_フ#゚д゚)フ「いざ必要になってから三ヶ月も待たされちゃたまったもんじゃねえよ!」
- <_フ#゚д゚)フ「あと純金の用意からして無理があるわ!!」
- <_フ#゚д゚)フ「俺の訳が間違ってんのか!? 間違ってんのか!?」
- <_フ#゚д゚)フ「……間違ってねえし! 寧ろ間違っててほしかったけど!!」
- ノートを引きちぎろうとする己が両手をなんとか押さえ込む。
- というより思った以上にノートが分厚く頑丈だったのでちぎれなかった。
- 少し情けなかった。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:16:24.28 ID:kqYzcm9bO
- 心を落ち着け、もう一度日記に目を向ける。
- ――それは時間がかかり過ぎではないかと私が祖父に問うと、
- 祖父は意地の悪い笑みを浮かべ、
- 「実はもっと早く済ませる秘訣がある」と答えた。――
- <_フ#゚−゚)フ「……もっと早く?」
- ――祖父は私に7つの石をくれた。
- あまり大きくないものだ。
- 桃色、赤色、紫色、橙色、緑色、黄色、青色。――
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:21:48.26 ID:kqYzcm9bO
- ――桃色の石は月、赤色の石は火、紫色の石は水、橙色の石は木、
- 緑色の石は金、黄色の石は土、青色の石は日の力を司っていると祖父は言った。
- 件の白い石を、この7つの石に囲ませ3日ほど置くだけで充分らしい。
- ただ、この場合だと、効果が弱い。
- 三ヶ月かける方法ならば、
- 僅かな時間で魔を消し去ることが出来るほど強力な聖具となるが、
- 七色の石を使った方法では、ひとまず対象を押さえ込み、そのまま長い時間をかけて
- 浄化していくことしか出来ないという。
- その浄化の過程で邪魔が入ってしまえば失敗に終わるため、リスクが高い。――
- <_プ−゚)フ「……7つの石……」
- 振り返り、ガラス棚の中を覗き込んだ。
- 床から天井まで届く棚が3つ並んでいる。
- その中にあるたくさんの石を見て回るのは大変に思えたが、
- 存外早く見付けることが出来た。
- 棚の中央に小さな台座があり、そこに七色の石が乗せられている。
- ――ランプの光しか明かりがない室内で、それらは、ひどく輝いて見えた。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:25:49.47 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「お父さんなら、なんか、どこかに行ったみたいだけど」
- 3日後の夕方。
- エクストが鬱紫寺を訪ねると、ペニサスが出てきて、そう言った。
- <_プー゚)フ「……そうか、分かった。ありがとう」
- ('、`*川「エクソシスト様、隈が出来てるよ?」
- <_プー゚)フ「最近あんまり寝てないんだ」
- ('、`*川「そう」
- <_プー゚)フ「まー、今日からゆっくり寝られるけどな!」
- ('、`*川「ふうん……」
- ペニサスの視線がエクストの腕に下りる。
- ('、`*川「それ、何?」
- <_プー゚)フ「内緒だよー」
- 子供のような口調で答えて、エクストは笑った。
- ペニサスが訊ねたのは、彼が大事そうに抱えるものについて。
- 黒い布に包まれているそれが石だと知ったら、ペニサスはどんな反応をするだろうか。
- そう考えると、エクストの笑みがより深くなった。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:28:42.55 ID:kqYzcm9bO
- ('、`*川「……エクソシスト様、今日は元気ねえ」
- <_プー゚)フ「そうか? ――じゃ、俺行くわ。じゃあな!
- デレのこと、よろしく頼む!」
- ('、`*川「じゃあね。……」
- 踵を返し、少々早足で去っていくエクストの背を見送りながら、
- ペニサスはそっと溜め息をついた。
- ('、`*川「……それしか、方法なかったのかね」
- 彼女は他人のことに必要以上に関わるのを嫌っている。
- 自分の行動は必ず何かしらの結果となって返ってくると、昔、父に教わった彼女は、
- それならば何もせず、なるべく何も変わらずに、
- ただ流れに乗っている方がいいと自分なりの結論を出した。
- だから、流石家の問題にだって自ら関わる気はなかったし、
- デレが退学すると聞いても、止めようとすらしなかった。
- そんな彼女も、デレの妊娠が発覚してしまったときには居ても立ってもいられず
- ついエクストの元を訪れ、彼を激励したが、結局それが彼女の限界だった。
- きっとエクストはこれから命を犠牲にするのだろうとうっすら感づいても、
- 彼女は、わざわざ止める気にはなれなかった。
- それが所詮、責任から逃れようとする自らの幼さの表れであると分かっていても。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:31:43.68 ID:kqYzcm9bO
- <_プー゚)フ「デレ!」
- ζ(゚、゚*ζ「!」
- 鬱紫寺を後にして、次に出連神社へ行った。
- 石畳に散る枯れ葉を箒で集めていたデレが、その腕を止める。
- ζ(゚、゚*ζ「エクスト様……」
- 無意識に腹を右手で押さえ、デレはエクストに駆け寄る。
- 言いたいことはたくさんあるが、どれから言っていいのか分からなくて
- デレはぱくぱくと口を開閉し、
- ζ(゚ー゚*ζ「……お久しぶりです」
- 最終的にその一言に落ち着いた。
- <_プー゚)フ「久しぶり」
- ζ(゚、゚*ζ「あ、あの、どうかなさいましたか?
- お父さんなら、お出かけしてますけど……」
- <_プー゚)フ「俺な、しばらくいなくなるから」
- ζ(゚、゚*ζ「……え……?」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:35:07.36 ID:kqYzcm9bO
- ぽかんと口を開けるデレに、エクストはにっこり笑って返す。
- 彼の屈託のない笑顔を久々に見たな、と、デレは整理しきれない頭の片隅で
- そんなことを思った。
- <_プー゚)フ「ちょっとお別れ」
- ζ(゚、゚;ζ「そ、それ、どういう……」
- <_プー゚)フ「……俺、お前を一度も助けられなかった」
- ζ(゚、゚;ζ「……な、なんですか……?」
- <_プー゚)フ「……ごめん」
- ζ(゚、゚;ζ「……そんなこと、ないですよ……」
- デレは、一度もエクストを恨んだことはない。
- 救ってもらえなかったなどと考えたこともない。
- ζ(゚、゚*ζ「私、エクスト様を見るだけで、気が楽になるんです。
- 声をかけてもらえなくったって、後ろ姿を見るだけでも、
- ……ど、どきどき、して……顔が熱くなって、胸があったかくなって……。
- 私、まだまだ元気だなって、思えるんです……」
- <_プー゚)フ「……」
- デレの瞳が潤んでいく。
- 両手で、箒を強く握りしめた。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:39:46.07 ID:kqYzcm9bO
- <_プー゚)フ「デレ」
- エクストは、右腕に石を抱え直し、左手を伸ばしてデレの肩を掴んだ。
- <_プー゚)フ「もしも全部終わって、それでも俺が――俺の魂が残っていたなら」
- 魂。
- その単語で、デレは、エクストがどうなるのか気付いてしまった。
- ζ(゚、゚;ζ「エク、……!」
- <_プー゚)フ「お前の傍に行ってから、眠ってもいいかな」
- ζ(゚、゚*ζ
- ζ( 、 *ζ
- ζ(;ー;*ζ「……約束ですよ」
- 完全に消えてしまうその前に。
- 一度でいいから傍にいたい。
- エクストの言葉が、デレは、嬉しくて、悲しくて――それでもやはり、嬉しかった。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:42:28.33 ID:kqYzcm9bO
- 橋に着く。
- そこにいた2人の男に、エクストは少々驚いた。
- ( ゚∋゚)「……エクソシスト様」
- (‘_L’)「どうも」
- 神主と住職が、立っていたのだ。
- <_プー゚)フ「お二人とも、何を?」
- (‘_L’)「……最近、気付くとここに立っているんですよ」
- ( ゚∋゚)「確実に、呼ばれているんです」
- <_プー゚)フ「呼ばれている……?」
- ( ゚∋゚)「『流石』にです」
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:46:14.92 ID:kqYzcm9bO
- ここ数日、神主と住職は、ふと我に返ると橋の前に立っていた。
- 歩いてきた記憶はない。
- だが、絶対に歩いてこなかったという記憶もない。
- 操られているようだった。
- きっと、呼ばれているのだ。
- 谷の底から。
- 恐怖は日に日に増していく。
- いつか、正気に返った頃には既に足を踏み出しているかもしれない。
- それならばいっそ、意識がある内に自分から飛び込んでしまいたい。
- そして、そう考えている己に気付き、また恐怖する。
- (‘_L’)「先程正気に戻りましたらば、またここに。
- ……もう時間の問題です」
- ( ゚∋゚)「……」
- <_プー゚)フ「……あなた方は」
- 歩み寄り、エクストは問う。
- <_プー゚)フ「人柱のことを、悔いていますか。
- 申し訳ないと、思っていますか」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:49:35.86 ID:kqYzcm9bO
- (‘_L’)「……ええ」
- 伏せ目がちに答える住職の姿が、意外だった。
- <_プー゚)フ「神主様は?」
- ( ゚∋゚)「――私は、後悔などしていません」
- <_プー゚)フ「……そうですか」
- 強がってはいるが、逸らした瞳が、怯えている。
- エクストは、もう彼らを悪魔だ何だと非難する気になれなかった。
- 全てを赦し、全てを受け入れ、そして全てを守る。
- 自分がするべきことはそれなのだから。
- <_プー゚)フ「――とにかく、今から、私が終わらせます」
- ( ゚∋゚)「……は……?」
- 出し抜けに宣言された内容が理解出来なくて、神主と住職は怪訝な表情をした。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:52:29.84 ID:kqYzcm9bO
- <_プー゚)フ「今が改心のときです。
- これまでを悔い改め、もう二度とあのようなことはしないで下さい。
- ――同じ過ちを繰り返した、そのときこそ。
- あなた方はもう助かりません」
- (‘_L’)「エクソシスト様?」
- <_プー゚)フ「……私が『呪い』を鎮めます」
- (;゚∋゚)「な、何を……! 分かっていないのか? 気付いてないのか!?
- この辺りに流れている気の淀みを感じられないのか!?
- 鎮めようもないほど巨大な――」
- <_プー゚)フ「まあ、一か八かなんですけどね」
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:55:44.85 ID:kqYzcm9bO
- (‘_L’)「……何故呪いのことを知っているのかは、この際訊きませんが。
- 一か八かということは、失敗するかもしれないのですか」
- <_プー゚)フ「でも成功するかもしれない」
- (;゚∋゚)「馬鹿げている……!」
- <_プー゚)フ「これで駄目だったなら、
- ――あなた方の行いは、どうやっても救いようがないほどの
- 大罪だったということです」
- (‘_L’)「……」
- (;゚∋゚)「……っ」
- 住職が目を閉じる。
- 「分かりました」と、彼は呟いた。
- ( -_L-)「……どうか、よろしくお願いします」
- <_プー゚)フ「ええ」
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 22:58:54.45 ID:kqYzcm9bO
- ――『これは試すべきではないことだが。
- 祖父が言うには、七つの石を使った方法の効果に不安があるならば。
- 仕上げに、神に仕える、そう、我々神父のような聖徒の体を石の補助として
- 捧げれば、強い効果を望めるらしい。』――
- 包みを放ると、つややかな、真っ白い石があらわになる。
- <_プー゚)フ
- それを大事そうに胸に抱え。
- エクストは、谷へと飛び込んだ。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:01:58.47 ID:kqYzcm9bO
- エクストが落ちた後。
- 淀みきっていた空気は大きく揺らぎ、完全に消えるとまではいかなくても、
- 僅かに感じる程度へと変わった。
- それはまるで、大きなものに上から押さえつけられているようだった。
- 成功した、何よりの証である。
- 進んで犠牲になろうとしたエクストを止める間など、
- 神主と住職には与えられなかった。
- 何をするつもりか2人が察するより早く、彼は谷へと沈んでいったのだ。
- (; ∋ )「……」
- ふらつきながら神社へ戻った神主は、娘が石畳の上に座り込んで泣いているのを発見した。
- どうした、と問う。
- ζ(;、;*ζ「……何でも、ないよ……」
- 85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:04:49.79 ID:kqYzcm9bO
- 神主は、目の前で泣きじゃくる娘の腹に、
- 忌まわしい流石の子が宿っているのに気付いていた。
- 自分の妻が娘を身篭ったときと、様子がまるで一緒だったから。
- 近い内に堕胎させるつもりだった。
- 娘を傷物にし、そして浅ましくも出連家に血を残そうとする流石を許せる筈がなかった。
- だが――
- ――同じ過ちを繰り返した、そのときこそ。
- あなた方はもう助かりません――
- エクストの言葉が甦る。
- もし、娘の腹に潜んでいる「流石」を手にかければ、
- エクストが抑えてくれた呪いが再び襲い掛かってくるかもしれない。
- 死が、再びやってくるかもしれない。
- (; ∋ )「……家に、入れ。体を冷やしてはいかんぞ」
- 神主は、その恐怖に屈するより他になかった。
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:08:49.24 ID:kqYzcm9bO
- 鬱紫寺。
- 石段の上で、ペニサスは父を出迎えた。
- ('、`*川「父さん」
- (‘_L’)「何ですか、ペニサス」
- ('、`*川「おかえり」
- (‘_L’)「……ただいま」
- ('、`*川「……エクソシスト様に会わなかった?」
- (‘_L’)「……会いましたよ」
- ('、`*川「……」
- (‘_L’)「――とても優しい、方ですね」
- ('、`*川「……でしょう」
- 父の顔が、今にも泣いてしまいそうで。
- ペニサスは全てを悟り。
- 唇を、痛むほど噛み締めた。
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:11:37.03 ID:kqYzcm9bO
- それ以降、橋の下へ飛び込む者はいなくなった。
- ただ、新たな問題が発生したのである。
- (;ФωФ)「勘っ弁、してほしいのであるー!!」
- ある雪の降る昼下がり。
- まだ50代ほどで、ちゃんと生きている理事長、杉浦ロマネスク。
- 彼は校庭で頭を抱えて絶叫した。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:14:44.85 ID:kqYzcm9bO
- というのも、つい先日から、大事な大事な学校に
- 今までにないほど霊や妖怪が溢れ始めたからだ。
- 生徒と教員には既に正月明けまでの休業を言い渡しているから校内に人間はいないが、
- 悪戯好きの妖怪や悪霊が校舎を破壊して回っているので、
- 被害があることに変わりはない。
- (;ФωФ)「もぉおおお嫌になっちゃうであるううううう!」
- ( ∵)[落ち着いて]
- 数少ない心優しい学校霊、二宮尊徳像のビコーズが理事長を励ます。
- ちなみに、当時、この学校にいる二宮尊徳像は彼1人だけだった。
- 理事長に協力的な学校霊など、彼ぐらいなもの。
- 校内に蔓延るビコーズ以外の霊達は、好き勝手に校内を徘徊し
- 気に入れば居座る、という自由ぶりであった。
- 生徒が怪我をするような被害は未だ出てないが、
- このままではいつか必ず大変な事態が起こるだろうと理事長は常々心配していた。
- 早々に手を打たなければならない。
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:18:03.64 ID:kqYzcm9bO
- (;ФωФ)「そもそも何でこんなことになったであるかあああああ!」
- ( ∵)[教会を守る人がいないからじゃないですか]
- (;ФωФ)「……む……な、なるほど、そうかもしれん」
- 先日、南の教会の神父が亡くなった。
- そのせいで教会側の結界が弱り、中心の学校に霊が流れてきているのではないか、
- とビコーズは考えている。
- ちなみに、理事長は、この町の住人ではない。
- 橋があるのとは反対の方角に大きな川がある。
- その川のずっと向こうの、少し大きな市街に住んでいた。
- そこから毎朝、川を船で渡ってこの町に来ている。
- だから、寺、神社、教会の人間ともあまり関わりを持っていなかったし、
- 流石家の問題なども、全く知らないでいる。
- ( ФωФ)「となれば……ふむ、とりあえず町長殿に会いに行くである」
- 理事長は意気込み、新しい町長の元を訪ねることにした。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:21:44.83 ID:kqYzcm9bO
- そして町長に、教会に新しい神父は来るのかと問えば。
- (`・ω・´)「なかなか都合が合わなくてですねえ。
- 早くても、来るのは二ヶ月先になるそうで」
- と、絶望的な答えを返された。
- 二ヶ月など待てるものか。
- あと数日で授業を再開させるのだ。
- それから二ヶ月先まで生徒の無事が保証できないなんて、たまったものではない。
- (;ФωФ)「そっ、それは困る! ともかく結界を早く何とかしないと……」
- (`・ω・´)「ううん……その結界とやらを、ひとまず学校で作れませんかねえ」
- ( ФωФ)
- ( ФωФ)「お前頭いいな」
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:24:56.63 ID:kqYzcm9bO
- 町長と共に教会を訪れる。
- 何か使えるものがないか探すためだ。
- ( ФωФ)「しかし、勝手に持ち出してもいいのであるか?」
- (`・ω・´)「エクソシスト様……前の神父様は、身寄りがなくってですね。
- 彼の私物を引き取る人もいませんから」
- ( ФωФ)「むう……ならば、失礼して」
- 教会の奥、居住スペースに移動する。
- いくつか部屋を見て回り――窓もない小さな部屋に、足を踏み入れた。
- (;ФωФ)「――おおう」
- ずらりと立ち並ぶガラス張りの棚、
- その中に飾られた色とりどりの石に理事長は圧倒される。
- (`・ω・´)「これは、さらに前の神父様が残したものです。
- 好きに使っていいと許しも出ています」
- いかがですか、と問う町長に、理事長は唸る。
- ( ФωФ)「ううむ……石が結界に使えるかどうか」
- そうは言いながらも、理事長の中に期待が膨れ上がった。
- この部屋に満ちる不思議な空気。
- 決して悪い感じはしない。
- 結界を張れるかは分からないが、校内を清めることぐらいなら出来る筈。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:29:26.36 ID:kqYzcm9bO
- ( ФωФ)「む?」
- ふと棚から視線を外すと、あまり大きくない机が目に入った。
- 近寄ってみると、広げられたノートと辞典が一冊ずつ、それと、
- (`・ω・´)「おや、綺麗ですね」
- 七色の石。
- 理事長が目を奪われていると、町長がノートを取り、読み始めた。
- (`・ω・´)「英語だ。意味は……七つの色、の、石。これのことですか」
- ( ФωФ)「ちょっと、貸してほしいのである」
- (`・ω・´)「どうぞ。私にはさっぱりだ」
- 理事長は町長からノートを受け取り、目を通す。
- 英語に特別堪能というわけではないが、杉浦財閥の長である彼は、立場上、
- 外国語を学ぶ機会が他の者よりも多かった。
- ノートの内容は、主にコレクションの説明。
- 読む者がいるのを前提とした手記のため、複雑な言い回しは無い。
- 理事長はその文を読み込み、やがて、こくりと頷いた。
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:33:36.93 ID:kqYzcm9bO
- ( ФωФ)「町長、この石を七つ、それとノート貰っていってもよろしいか」
- (`・ω・´)「人のためとなるなら、誰も文句は言わないと思いますよ」
- 町長の答えに、理事長は小さく声を漏らして笑う。
- 前に町長を務めていた荒巻という老人よりも、彼の方が好感を持てるなと
- 理事長は思った。
- ( ∵)[おかえりなさい]
- ( ФωФ)「うむ、ただいまである」
- ビコーズは、校門で理事長を迎えた。
- 雪が積もっている。ずっと待っていたのだろうか。
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:36:21.22 ID:kqYzcm9bO
- ビコーズの上の雪を払い、理事長は鞄から包みを取り出した。
- ( ФωФ)「学校自体に結界を作ってはどうかと助言してもらった。
- そのために、とても良さげなものを頂いてきたであるよ」
- 掌の上で包みを開く。
- 七色に輝くそれを見るビコーズの表情は変わらないが、
- とても関心を引かれたようだった。
- ( ФωФ)「それで――ほれ」
- 理事長が、青い石を持ち上げる。
- その瞬間、石は、まばゆいほどの青い光を放った。
- 数秒で光は収まる。
- ( ФωФ)「我輩が青い石を持つと、このような反応がある。
- そして、体中に力が漲るような感じがするのである。
- 多分、相性が良いのであろう」
- 試しにビコーズの手に乗せてみるが、何の反応もない。
- ビコーズは驚いた様子で、こくこく頷いた。
- ( ∵)[清らかな力がありますね。
- 他の石も併用すれば、きっと良い結界が出来るかと]
- (*ФωФ)「うむ、ビコーズ君がそう言うならば間違いないであるな」
- 106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:40:14.74 ID:kqYzcm9bO
- ふと、ビコーズが他の石を見る。
- そのまま、何気なく黄色い石を手に取った。
- (;ФωФ)「うおっ!」
- (;∵)[!]
- 途端、石と同色の光が溢れる。
- それも数秒で消えた。
- ――理事長が青い石を持ったときと同じ反応だ。
- (;ФωФ)「……黄色い石はビコーズ君と相性が良い、ということであるか」
- ( ∵)[そうかも]
- (*ФωФ)「――これは……これは良い!
- ビコーズ君、その黄色の石は君が守るである!
- つまり! 君に、この学校を守る結界の一端を担ってほしいである!」
- (;∵)[えっ、そんな大役……]
- (*ФωФ)「この石は君を選んだ。君にしか出来ないである!」
- ( ∵)
- 力強く言い切られ、ビコーズは戸惑ったように石を見下ろした。
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:43:24.11 ID:kqYzcm9bO
- 少し、考えて、
- (`∵)) コクン
- 頷いた。
- 彼だって、この学校が大好きで、大事なのだ。
- (*ФωФ)「きっと他の石にも相応しい者がいる筈!
- ちょっと探してくるである!」
- 興奮した理事長が校舎へ走り出す。
- 何だか、石が導いてくれている気がした。
- 石に引っ張られるままに辿り着いたのは、2階の男子トイレ。
- ここにいるのはたしか――
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:46:46.51 ID:kqYzcm9bO
- ( ФωФ)「おーい、女の子やーい」
- 川 ゚ -゚)「……何だ?」
- 適当な呼び名で呼ぶと、個室から少女が現れた。
- この学校に通う生徒達と大して歳は変わらないようだが、
- 妙に大人びた雰囲気を湛えた娘の霊。
- 素直クール。
- ぼろぼろのセーラー服を着ている。
- スカートの裾には焼け焦げた跡。
- 白かったであろう靴下も煤に汚れていた。
- 靴は、履いていない。
- 以前、トイレで靴下だけなんて汚くはないかと理事長が訊ねたら、
- 床から浮いているから問題はないと返された。
- それもそうかと納得した記憶がある。
- ( ФωФ)「何か気になるものはあるか?」
- 理事長が青と黄を除いた五つの石を掲げる。
- クールは気怠げに一瞥し、ぷいとそっぽを向いた。
- 115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:49:35.32 ID:kqYzcm9bO
- 川 ゚ -゚)「ない。……帰ってくれ。
- 私は今、機嫌が悪いんだ」
- ( ФωФ)「何故?」
- 川 ゚ -゚)「あちらこちらを野蛮な化け物共が闊歩している。目障りで仕方ない」
- ( ФωФ)「――それを何とかするために、君に協力してほしいのである」
- クールは、顔をそのままに、目だけを再び石に向けた。
- 興味は引けたようだ。
- 理事長が、結界と石の説明をする。
- ふうん、と生返事をして、クールは、
- 川 ゚ -゚)「……」
- 桃色の石を取った。
- 116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:53:44.65 ID:kqYzcm9bO
- 男子トイレを後にし、石に引かれるに任せて走り出す。
- 走るなど何年ぶりだろう。しかし不思議と疲労感はなかった。
- どれほど行ったか――
- (;ФωФ)「うおっ!?」
- ――突然、後ろから細長い布が首と顎、額に巻き付いた。
- ぎりぎりと締め付けられ、後ろへ引っ張られる。
- 視界の端に映るのは、青い布。
- 「青いマントはいかがかな?」
- 耳元で囁かれる、掠れた声。
- 首が締まり、息が出来なくなる。
- (; ω )「っ、……か、ぁ……っ」
- 視界がぼやけ始め、理事長が助けを求めるように手を伸ばす。
- そこに。
- 「赤いマントの方が良いと思うがね!」
- 凛とした声が聞こえた。
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/06(土) 23:59:04.86 ID:kqYzcm9bO
- そして、後ろから上がる悲鳴。
- 投げ出されるように理事長は床に倒れた。
- (; ω )「ぶぇっ、げふ、げほっ!」
- 咳き込みながら振り返る。
- まず目に入ったのは、真っ赤な色。
- そして、その赤に包まれてもがく何か。
- (-@∀@)「大丈夫ですか?」
- (;ФωФ)「き、君、は……」
- 「何か」の傍に立つ美青年。
- その青年は、もがく赤を引っ張った。
- (-@∀@)「怪人赤マント仮面、モララーと申します。
- そこの女子トイレに住まわせてもらっています。
- こいつは青マント。マントと言えるほど立派なもんじゃないが」
- 赤――赤い布を引っぺがすと、その下から青いボロ布を身に着けた男がいた。
- その男に、モララーは再び自分のマントを被せる。
- すると、それは途端に生き物のように動き、男を締め付けた。
- 濁った悲鳴は段々弱々しくなり、対称的に赤いマントは一層強く収縮し、
- やがて声は消えた。
- モララーがマントを拾い上げる。
- 青布の男は、すっかりいなくなっていた。
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:02:37.13 ID:v8IcxITmO
- しばらく固まっていた理事長は、はっとして辺りを見渡した。
- 脇にはモララーが住んでいるという女子トイレ。
- そして、床に散らばる四つの石。
- 青マントとやらに襲われた際に落としてしまったようだ。
- (;ФωФ)「石!」
- 慌ててそれを拾い、布に包み直す。
- やっと安心して、理事長はモララーに礼を言った。
- (;ФωФ)「助かったである、ありがとう」
- (-@∀@)「いえいえ。――最近あんな輩が増えてきましてね。
- 女の子達が登校してくる前に、何とかしたいんですが」
- ( ФωФ)「うむ……」
- しばし考え、理事長は布を開く。
- そして、モララーに石を見せた。
- ( ФωФ)「何か気になるものはあるか?」
- (-@∀@)「気になるもの?」
- モララーは顎に手をやって考え込み、
- (-@∀@)「……綺麗な石だ」
- 赤い石に触れた。
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:05:36.56 ID:v8IcxITmO
- 音楽室のドアを開く。
- 騒がしい音に、理事長は耳を押さえた。
- (;Фω+)「う、うるさいのである……」
- 音楽室中の楽器がひとりでに喚き散らしているのだ。
- さらに、壁にかかる作曲家達の肖像画は揺れ放題。
- それにより発する音が、またうるさい。
- (;ФωФ)「……む」
- よく見れば、端っこに、一つだけ動かない肖像画がある。
- 近付いてみると、それは作曲家モナーのもの。
- ( ФωФ)「もし、そこな物静かなお方」
- ( ´∀`)「……何モナ?」
- ( ФωФ)「いや、一番話が通じそうだったもので」
- 123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:08:12.74 ID:v8IcxITmO
- 呼び掛けると、モナーは口元だけを動かし、返事をした。
- ( ´∀`)「こいつら喧しくてかなわんから閉口してただけモナ」
- ( ФωФ)「たしかに喧しい……。
- 静かにさせたいであるか?」
- ( ´∀`)「それはまあ、出来れば」
- ( ФωФ)「君が『選ばれた』ならば、きっと静められるである。
- 直感で、気になったものを取ってくれ」
- 三つの石。
- モナーは、額縁から前のめりになるように上半身を出す。
- じっくりと石を眺め、
- ( ´∀`)「ちょっと、お借りするモナよ」
- 紫色の石に手を伸ばした。
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:11:36.77 ID:v8IcxITmO
- 保健室はさらに酷い有様であった。
- 棚は倒れ、薬品は散らばり、敷布はぼろぼろ。
- 薬臭い上に足の踏み場もない。
- 恐る恐る一歩ずつ進むと、泣き声がするのに気付いた。
- 耳を澄ませば、壁にかかる鏡から聞こえてくる。
- ( ФωФ)「どちら様であるか?」
- 鏡に訊ねると、少しの沈黙の後、少女が現れた。
- ミセ*; -;)リ「……あなたは……理事長様でしたか……」
- 10歳になるかならないかという幼い少女だ。
- そんな子供が泣いているのを、放っておける筈がない。
- ( ФωФ)「いかにも。君は?」
- ミセ*; -;)リ「ミセリと申します……」
- 126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:14:31.92 ID:v8IcxITmO
- ( ФωФ)「ミセリ君。何故泣いているであるか?」
- ミセ*; -;)リ「皆さんを癒す場所なのに……怖い方達がたくさん来て、暴れていくんです。
- 私、この部屋を守れなかったのが申し訳なくて……」
- ( ФωФ)「君は優しい子であるな。
- ……きっと、その優しさが、石に選ばれたのであろう」
- ミセ*; -;)リ「石……?」
- 二つの石をミセリに差し出す。
- ( ФωФ)「好きな方を選ぶである」
- ミセ*う -;)リ「……」
- ミセリは涙を拭い、
- ミセ*゚ー゚)リ「……こちらを」
- 橙色の石を指差した。
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:18:05.72 ID:v8IcxITmO
- 早足で歩きながら、理事長は、あることに気付いていた。
- ( ФωФ)(男子トイレ、女子トイレ……音楽室、保健室、校庭……)
- ――そして、今、足が勝手に向かっている体育館。
- 自分の学校だ、わざわざ見なくても地図を正確に脳内に思い浮かべられる。
- その地図に、石に選ばれた者達の居場所を示す点を打つ。
- 一階と二階に分けて考える。
- 一階の保健室、体育館、校庭。これで正三角形。
- 二階の男子トイレ、女子トイレ、音楽室。これで逆向きの正三角形。
- 三角形が重なり、
- ( ФωФ)(籠目……!)
- 籠目、とは、昔から存在する籠の編み方。
- その模様は邪気を祓うといわれている。
- 果たして、偶然だろうか――。
- 131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:21:54.99 ID:v8IcxITmO
- 体育館。
- ミセリと同い年くらいの少年が、木製のバットを振り回していた。
- (#゚д゚ )「やめろ! お前らの玩具じゃない、みんなが使うものなんだよ! 触るなあっ!」
- 体育館にある備品や運動用具をいたずらに壊す妖怪達に、バットで殴り掛かる。
- しかしあっさりと吹き飛ばされ、少年は床に体を打ちつけた。
- それでも立ち上がっては、再びバットを構えて駆けずり回る。
- 見れば、少年の体は傷だらけだ。
- もう何度同じことを繰り返しているのだろう。
- (#゚д゚ )「触るなって言ってんだろうがぁあああ!!」
- ――この少年の霊は、校内で有名だ。
- 学生達に害を与えず、一緒に遊びたがる少年、ミルナ。
- 弟のように皆から可愛がられている彼は、
- 同様に、学生を兄弟のように思っているのだろう。
- だから、学生が使うための備品と体育館を――
- 自分と彼らを繋いでくれる場所を壊されることに、怒りを感じているのだ。
- 133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:25:03.25 ID:v8IcxITmO
- ( ФωФ)「ミルナ君!」
- ( ゚д゚ )「!」
- (#ФωФ)「ちょっとこれ持って、その場で我慢しているであるううううう!」
- 理事長が勢いよく振りかぶり、残った最後の石を投げた。
- ミルナは状況を理解しないままバットを床に置き、
- (;゚д゚ )「うわっと!」
- 緑色の石を受け取った。
- 籠目の中心は、自分の部屋――理事長室。
- 偶然だろうと、必然だろうと、構わない。
- 絶対に、結界が出来る。
- 学生を、心優しい学校霊を、この学校を、守ってくれる結界が。
- 135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:28:56.95 ID:v8IcxITmO
- (#ФωФ)「頼むであるぞぉおおおおおおお!!」
- 理事長室の前に立ち、青い石を掲げる。
- その瞬間――
- 校内に七色の光が走った。
- 悪霊達が、光に触れた瞬間に消えていく。
- 無害な浮遊霊達は、光の心地良さに顔を綻ばせる。
- 光が校内を全て巡り、天に昇って。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:31:24.01 ID:v8IcxITmO
- 川 ゚ -゚)「……おお」
- (-@∀@)「ふむ、素晴らしい」
- ( ´∀`)「随分静かになったもんだモナ」
- ミセ*゚ー゚)リ「……理事長さん」
- ( ゚д゚ )「――消えた……」
- (*∵)[成功だ!]
- 結界が、完成した。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/07(日) 00:47:24.41 ID:v8IcxITmO
- 後日、理事長は前神父へ連絡をとり、石の利用について改めて許可を得た。
- その際に前神父の祖父がつけていた手記等も送ってもらい、
- 石についての詳細を学ぶ。
- こうして、学校を守る七大不思議が結成された。
- ――全ては、今から何十年も前のことである。
- 第六話:終わり
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