( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです
- 635: ◆wUOiOOQQF. :04/19(土) 21:52 sikeoyICO
読み終え、そのまま手紙を引き裂く。
一時の感情に身を任せ、できる限り細かくなるように。
( ´_ゝ`)「さよなら、って………訳分かんねーよ!」
なんだよそれ。
釣りにしては捻りもないし。何の冗談だよ。
あまりにも突然すぎるだろ。
どうしてそんな打ち切りみたいな展開になるんだよ。
こんな、一方的に。
顔も見せないで「さよなら」なんて、一体何考えてんだよ。
( ´_ゝ`)「ねえよ、そんな展開……! 」
叫び、走り出す。
目指す先は彼女の元。
目指すモノは彼女、そして彼女の意思。
彼女の言葉を聞かなければならない。
そして伝えなければならない。自分の言葉を。
- 636: ◆wUOiOOQQF. :04/19(土) 21:53 sikeoyICO
〜 「( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです」 〜
たぶん最終章
- 637: ◆wUOiOOQQF. :04/19(土) 22:16 sikeoyICO
普段の兄者なら、ここで何も考えずに走り出すのだろうが。
しかし、今の兄者は違った。
行動する前に頭を働かせ、より効率良く動く術を考える。
それは兄者がこの事態を真に深刻だと捉えた上で、これが最良と判断して行ったものだった。
( ´_ゝ`)「千里眼!」
詠唱は適当に済ませ、能力を発動させる。
対象とする能力は、千里眼。
一秒でも早くクーの居場所を確認する方法としては最適だと思われる能力。
しかし。
たしかに彼女を探すという事だけを考えれば最適だったかもしれないが、その選択には盲点があった。
( ´_ゝ`)「……よし、千里眼に変換完了っと。これでクーを――」
バルトアンデルスの能力が千里眼へと変わる。
その効果で兄者は周囲にいる人間の数、そして個々の状態までも知る事ができる筈なのだが――
( ´_ゝ`)「……おいおい、一体どれがクーなんだよ」
兄者は、その能力の使い方を知らなかった。
- 642: ◆wUOiOOQQF. :05/04(日) 22:37 CMThHRICO
だが、しかし。
漢字で書くと駄菓子菓子。特に意味はない。
千里眼の扱い方を知らない兄者がその能力を発動させた時、兄者はその使い方をなんとなく理解した。
頭の中に周囲の地図が浮かび、そこで無数の点が蠢いている。
大多数が赤色の点か青色の点だったが、ほんの僅かではあるが別の色のモノもある。
地図上に点、という表現と能力“千里眼”の効力から、兄者は千里眼の使い方を導き出したのだった。
(;´_ゝ`)(なんつーか……コレって……)
ぶっちゃけ、モンハンだった。
地図+自動マーキングにそっくり――というか、むしろそのものでしかない。
あえて違う点を挙げるとすれば目標の色の種類が多いという程度で、残りはそっくりそのまま。
そして。
その些細な相違点の意味を、普段よりKOOLな兄者は瞬時に理解し
( ´_ゝ`)(この色の違いは……おそらく、能力者と一般人の違い!)
理解すると同時に判断し、一瞬の間もなく行動していた。
- 643: ◆wUOiOOQQF. :05/04(日) 22:51 CMThHRICO
力の限り地を蹴り、風を切ってひた走る。
目指す先はクーのいる場所。
できるだけ速く。できるだけ早く彼女の元に辿り着くために。
自分でも驚く程の速度で明らかに体力の限界を越えている運動をしているが、そんな事は気にしない。
いい歳の男が全力で駆け抜けるその光景に周囲の人が妙な視線を向けてくるが、そんな事を気にかけている余裕はない。
( ´_ゝ`)(……こんなに一生懸命走るのって、小学校のマラソン以来だな)
このネタ、前にも使った気がする。
しかしそんな事を気にする余裕もある訳がなく。
兄者はただひたすら、千里眼の示した“クーと思われる人物”を目指して走り続けた。
その、クーらしき存在がクーである証拠はないのだが。
兄者はその雰囲気と反応の大きさ、それと自分の直感から「それがクーだ」と確信していた。
- 644: ◆wUOiOOQQF. :05/04(日) 23:08 CMThHRICO
だが、いくら兄者が覚醒状態でよく分からない能力補正がかかっているとしても。
自分の限界を越えた運動をしているのだから体力は底をつき、それに伴って思考力も低下してきていた。
極度の疲労と思考力の低下は兄者の意志を鈍らせ、走る足を止めようとする。
追い詰められた肉体は走る事を拒み、脳はそれを促すかのように無駄な事ばかり考えてしまう。
(;´_ゝ`)(……今にもリバースしそうだわ。なんか喉まで上がってきたし)
嘔吐感までも現れた。つーかむしろ微妙に吐いた。
喉まできたけどなんとか飲み込んだ。正直おいしくないです。
反芻するなんて俺は牛かよー、とか心の中で突っ込みつつも、重い足を動かし続ける。
(;´_ゝ`)(なんで俺は……こんなに……頑張ってんだろうか……)
第一、クーがいる保証はないのに。
向かう先に辿り着いた所で、別人だった――なんてオチもあるかもしれないのに。
なのに。
それなのに。
それでも兄者は、決して速度を落とす事なく走り続けていた。
- 645: ◆wUOiOOQQF. :05/04(日) 23:31 CMThHRICO
走り至った先で何を言うのか。
言ってどうにかなるのか。それで何が変わるのか。
無論変わる保証なんてある訳がなく、それと同様に変わらない保証もない。
ただ、会いたかった。
会って伝えなければならない事がある気がしたから。
それを伝えて、何が変わるのか。
ひょっとしたら、クーを止められるかもしれない。
あるいは否定され、これが彼女との今生の別れになるかもしれない。
どうなるかは分からない。
それでも、どうしても今伝えなければならない。
今伝えなければ、全てが終わる気がしたから。
だから。
川 ゚ -゚) 「……そんなに走って、どこに行くつもりだ? 体力のないヤツが急に走るとロクな事がないぞ」
だから兄者は、彼女の元に辿り着いた。
- 668: ◆wUOiOOQQF. :11/02(日) 22:49 XvaLsPQ60
彼女は立っている。
いつもと変わらない無表情で。
それが、あまりにも普段通りで。
普段通りすぎるその表情が、逆に兄者に不安を掻き立てた。
このまま、ごく自然に、彼女がいなくなってしまうような気がして。
( ´_ゝ`)「……ったく、誰のせいで走ってたと思ってんだよ」
それでも、兄者は普段通りに振舞おうと努める。
彼女がいつも通りだったから。
自分もいつも通りに振舞えば、全てがいつも通り。
そうすれば。
いつも通りになる。なってくれる。
そんな祈るような願いを込めて。
川 ゚ -゚)「誰のせいで……か。そんな事を私が知る訳がないだろ」
無表情のまま彼女は答える。
自分を追ってきたなんて事は分かってるだろうに。
それでも敢えてこんな台詞を吐くのも、彼女にとってのいつも通り。
兄者からしてみれば、彼女はいつも通りだった。
- 669: ◆wUOiOOQQF. :11/02(日) 22:51 XvaLsPQ60
しかし。
川 ゚ -゚)「――だから、教えてほしい」
( ´_ゝ`)「……え?」
兄者からすればいつも通りだったとしても。
それがそのままクーがいつも通りだという事には繋がらないわけで。
いつも通りを願った兄者に対し、彼女のイレギュラーな発言。
多少混乱気味の兄者の脳は、クーの言葉の意味が理解できなかった。
正確には、しなかったのかもしれない。
終わってほしくなかったから。
だから事実を先延ばしにして、できるだけ今を続けようとして。
川 ゚ -゚)「知らないから、教えてほしい」
それでも、彼女は続ける。
川 ゚ -゚)「お前が、誰のせいで走ってたのか。なんでここに来たのか」
川 ゚ -゚)「なんで――ええい、まどろっこしい。そうじゃなくて――」
- 672: ◆wUOiOOQQF. :11/03(月) 00:20 ekbrYaDq0
――そして、彼女は口を閉ざした。
彼女自身の言いたい事は言ったから。
だから彼女は、後はただ兄者の返事を待つのみ。
真っ直ぐな目で、兄者を――兄者だけを見据えて、待っている。
( ´_ゝ`)「……………えーっと」
対する兄者は、脳がフリーズ気味だった。
ただ自分の気持ちを伝えようと思って追ってきたのに。
それがこんな、なんだかよく分からない展開になるとは思ってもいなかったから。
ただ、必死だったから。
あまりにも必死で、何かを考える余裕なんてなかったから。
まあ、なんというか。
「これなんてエロゲ?」というのが、兄者の正直な気持ちだった。
( ´_ゝ`)「んー……なんていうか……その。アレだ、アレ」
川 ゚ -゚)「アレってなんだ」
( ´_ゝ`)「『まあ、ジョジョったら、いけないひとッ!』――みたいな?」
川 ゚ -゚)「意味が分からん」
( ´_ゝ`)「ごめん適当に言った」
- 673: ◆wUOiOOQQF. :11/03(月) 00:21 ekbrYaDq0
川 ゚ -゚)「……そうか。なら――改めて答えてもらおうか」
川 ゚ -゚)「お前は私にどうしてほしいのか。それを聞かせてくれ」
仕切り直し。
――そして、彼女は口を閉ざした。
彼女自身の言いたい事は言ったから。
だから彼女は、後はただ兄者の返事を待つのみ。
( ´_ゝ`)「どう……って、言われてもなあ……」
兄者はそう言い、ポリポリと頭を掻く。
正直、どうと言われても困る。
その質問にどう答えればいいのか、いまいち分からないから。
例えば。
「服を脱げ! スカーレット!!」とかいった場合。
そしたら本当に脱いでしまうのだろうか。スカーレットじゃないけど。
……まあ、一応、ちゃんとした答えもあるのだが。
ここでそれを言うのはあまりにも恥ずかしいので、言わないでおく事にした。
そして、その代わりに。
( ´_ゝ`)「そもそも、クーのその質問おかしくね?」
いつも通りに、あくまで自分らしく答えようと決めた。
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