( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです

549: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:36 hH+MCRf70

……さて。

(´<_` )「……あぷー。影からは離れてるか?」

(*ノωノ)「大丈夫です。さっきからあまり動いてないので」

敵が攻撃に出たからには、こっちも真面目にやらねば。
弟者はそう思い、周囲の影からできるだけ離れた場所へと移動した。

自身の影があるので安全とは言えないが、影の近い場所にいるよりはマシだ。
出てくる場所を限定できるので、出てきた所をさっきと同じように踏んでやればいいとだけの話。
仮に能力による超常現象的な攻撃をされたとしても、出てくる場所が分かっているなら対処はできるだろう。

弟者はそう考えていた。

(´<_` )「さあ来い。何度でも踏んづけてやろうじゃないか」

言いながら、弟者は思った。

この勝負、勝てる。
現時点でキュートを倒す事ができなくても、何の問題もない――と。

まずは、キュートをある程度痛めつける。
そして後は家に帰れば、家には彼女に対抗できる能力者がいるから。

忍び込もうとした所で、ハインやぃょぅがいるし。
たとえ交戦したとしても、兄者とクーのような戦闘要員もいるし。

だから、今を乗り切ればいい。
弟者はそう考えて、あぷーが影から出てくるのを悠々と待っていた。



550: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:36 hH+MCRf70

そして、それは突然訪れた。

(´<_` )「ッ!? 来るか!?」

来る。
弟者はそう感じて身構えた。踏む準備をしただけなのだが。

もちろん弟者は、気配を読むなんてマネはできない。
ただ単に直感的に「来る」と感じただけであって、それが正しいのかも分からない。

その直感は当たりだった。

弟者が身構えてすぐに、キュートの体の一部が現れた。

それは両の手。

弟者に向けて伸ばされた、彼女の右腕と左腕だった。

弟者はそれを見て、一瞬気を抜いた。
なんだ、ただの手かよ――と思い、攻撃が案外普通だった事に油断した。
この戦いが能力者との戦闘だったので、非現実的な攻撃が来る事を期待していたのかもしれない。

だから、反応が遅れた。
伸ばされたキュートの手に握られているモノを、ただ認識することしかできなかった。かわせなかった。

(´<_`;)「う、嘘、……や、やめッ」

弟者が命乞いをした、その直後。

キュートの手に握られていたナイフが、弟者の肉を切り裂いた。



552: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:12 hH+MCRf70

足に、冷たい金属の感触。
だがそれは一瞬の事で、すぐに激痛に変わった。

キュートの刃が捉えたのは、弟者が振り上げていた右足のアキレス腱。
ブチッ――と、何か太いモノが千切れたような嫌な音を聞いたような気がした。

(´<_`;)「イタッ! めっちゃ痛い! ヤバイってこれ!!」

手で傷をかばい、その場に座り込む弟者。
その時には既にキュートの手は影から消えていたようだが、どうでもよかった。

ただ、痛かった。

傷口から漏れる血の温度が不快だった。

幼い頃から家に籠ってた弟者にとって、これが人生最高の大怪我となった。

それだけだった。
ただ座り込んで、負わされた傷をかばうだけ。

止血?
知らねーよそんなの。

(´<_`;)「クッソ……! まさかナイフとは……!」

最悪だ。
こんな事なら、もっと用心しとくべきだった。

キュートが影に潜ったとき、ナイフを警戒してアキレス腱に雑誌を仕込んどけばよかった。



553: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

(*ノωノ)「弟者さん! 大丈夫ですか!?」

一部始終を見ていたあぷーが、慌てて駆け寄ってきた。
普通に心配してくれてるっぽいからちょっと感動したけど、まあ今はどうでもいい。

(´<_`;)「うっわ、なにこれ!? 右足にものっそい違和感が!!」

(*ノωノ)「弟者さん!?」

(´<_` )「うぇwww動かないwwwwwきめぇwwwww」

(*ノωノ)「……大丈夫ですか? 頭とか」

(´<_` )「切られたのはアキレス腱なんだぜ?」

(*ノωノ)「それは知ってます」

なんだよ。
知ってるなら言うなよ、チクショー。

あぷーの言った事の真意はもちろん分かる。でも、気にしないでおく。

(*ノωノ)「傷口」

(´<_` )「はい?」

(*ノωノ)「傷口、見せてください。私が治療しますから」

そう言いながらも、既に行動中のあぷー。
切られた右足を勝手に引き寄せて、自分の能力で傷を治そうと試みている。

その良心は嬉しいし、この展開も大歓迎だけど。

だけど。
怪我してるのに、思いっきり引っ張らないで欲しかった。

(´<_`;)(ここで痛いとか言ったら負けかなと思ってる)



554: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

光が舞う。

淡い緑色の光が、弟者の傷口を照らす。
傷口は凄まじい速度で修復されてゆき、徐々に塞がってゆく。

それが、あぷーの能力。
傷を高速で修復できる、そんな能力。

(´<_` )「いやー、すごいな。その能力」

(*ノωノ)「褒めても何も出ませんよ。私がすごい訳でもありませんし」

治療を続けながら、あぷーは目も向けずに答える。
そんなあぷーを見て、弟者は新ジャンルの確立を垣間見た気がした。

(´<_` )「……そうか、ならどうでもいいな」

弟者はそう言い、あぷーに視線を向ける。
それは別にあぷーを見てる訳ではなく、ただ目を向けた先がそこだったというだけの話。

弟者は考える。

今の状況。
特にこれといった特技も無い自分と、傷を治す事のできるあぷー。
そして、影に潜って移動し、影から奇襲を仕掛ける事が可能なキュート。

このままでは、まずい。

やられる事がなかったとしても、相手をどうにかする事ができない。
敵は自分達に対していくらでも攻撃できるというのに、こちらから攻撃する手段はまるでない。

だが。
勝利のない勝負を、これ以上続ける訳にはいかない。
勝利のない勝負をこのまま続けていると、いずれはこちらの負けになるだろうから。



555: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

どうにかしなければ。
打開策を考えなければいけない。

しかし、戦いはまだ終わっていない。
このままここに座ったまま、ただ考えているのでは埒があかない。

(´<_` )(相手の能力の性能上、逃げるのも一苦労っぽいしな……)

自分達は走って逃げる。
それに対してキュートは、影にくっついて追いかけてくる。
そんな鬼ごっこをする訳にもいかないし、無論するつもりは毛頭ない。

だから、勝つ方法を考えるしかない。
今、この状況で可能なことだけを組み立て、勝利を作り出さなければいけない。

考える。

(´<_` )(俺は何もできないから、あぷーの能力を軸に組み立てて――)

そして

(´<_` )(――あ)

閃いた。

たったひとつ、シンプルな答えを。



547: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:35 hH+MCRf70

ひとふんじゃった。
ひとふんじゃった。

ひとふんづけちゃったら

o川*゚ー゚)o「ぃいった〜っ! しかも、顔になんかついたし!」

おこってた。

(´<_` )「あら。よく見たら靴の裏に茶色いモノが」

(*ノωノ)「なんと」

なんだかなー。
ある意味追加ダメージだけど、喜んだら負けな気がする。

靴の裏にうんこ付いてたって事は、気付かないうちにうんこ踏んだって事だろうし。

o川;゚ー゚)o「え、嘘!? これってうんこなの!? えぇ!?」

(´<_` )「松崎しげるだ」

そうだ、そう思えばいいんだ。
これはうんこじゃなくて松崎しげる。それでいい。

つーか、この女。
なんかリアクション薄いな。しかも微妙にズレてるような。
もっと「きゃ〜!」とか「ぬわーっ!」とかみたいなのが欲しかった。俺的に。

(*ノωノ)「うんこで喜ぶのは小学生までですよねー」

ヽ(´<_`#)ノ「うんこぉー! うんこうんこおおぉぉぉー!!」

(*ノωノ)「うっわきもっ」



548: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:35 hH+MCRf70

o川*゚ー゚)o「うぅ……顔からアレのにおいがするぅ……」

顔を拭きながら、影から這い出るキュート。
踏まれた事のダメージより、しげるダメージの方が大きいようで。

手早く顔を拭きながら距離を取り、兄者の間合いを出て体勢を立て直した。
痛かったのかしげる臭が鼻を突くのかは分からないが、掌で鼻を覆うような仕草をしている。

o川*゚ー゚)o「もー怒った! 割と本気でやっちゃうぞー!」

鼻から手を離し、弟者を一瞥。
怒ったとか言いながらも顔は笑ってるけど、それはAAの仕様だから不可抗力だろう。

キュートはさっと踵を返して身を翻し、そのまま真っ直ぐ走って行った。

そして。

彼女の後方、彼女の視線の先。
そこに、都合のいい木が1本生えていた。

その根元から伸びる影に足から飛び込み、再びキュートは姿を隠した。

(´<_` )「うんこうんこ言ってる間にバトル再開してて驚いた」

(*ノωノ)「しかも、軽度の敗北フラグ立てちゃってますよ、あの人」

本気を出す。
それはまさに魔法の言葉。
逆転フラグでもあり惨敗フラグでもある、まさに諸刃の剣。

d(´<_` )「モノによっては当然のように逆転したりしますけどねー」



549: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:36 hH+MCRf70

……さて。

(´<_` )「……あぷー。影からは離れてるか?」

(*ノωノ)「大丈夫です。さっきからあまり動いてないので」

敵が攻撃に出たからには、こっちも真面目にやらねば。
弟者はそう思い、周囲の影からできるだけ離れた場所へと移動した。

自身の影があるので安全とは言えないが、影の近い場所にいるよりはマシだ。
出てくる場所を限定できるので、出てきた所をさっきと同じように踏んでやればいいとだけの話。
仮に能力による超常現象的な攻撃をされたとしても、出てくる場所が分かっているなら対処はできるだろう。

弟者はそう考えていた。

(´<_` )「さあ来い。何度でも踏んづけてやろうじゃないか」

言いながら、弟者は思った。

この勝負、勝てる。
現時点でキュートを倒す事ができなくても、何の問題もない――と。

まずは、キュートをある程度痛めつける。
そして後は家に帰れば、家には彼女に対抗できる能力者がいるから。

忍び込もうとした所で、ハインやぃょぅがいるし。
たとえ交戦したとしても、兄者とクーのような戦闘要員もいるし。

だから、今を乗り切ればいい。
弟者はそう考えて、あぷーが影から出てくるのを悠々と待っていた。



550: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 15:36 hH+MCRf70

そして、それは突然訪れた。

(´<_` )「ッ!? 来るか!?」

来る。
弟者はそう感じて身構えた。踏む準備をしただけなのだが。

もちろん弟者は、気配を読むなんてマネはできない。
ただ単に直感的に「来る」と感じただけであって、それが正しいのかも分からない。

その直感は当たりだった。

弟者が身構えてすぐに、キュートの体の一部が現れた。

それは両の手。

弟者に向けて伸ばされた、彼女の右腕と左腕だった。

弟者はそれを見て、一瞬気を抜いた。
なんだ、ただの手かよ――と思い、攻撃が案外普通だった事に油断した。
この戦いが能力者との戦闘だったので、非現実的な攻撃が来る事を期待していたのかもしれない。

だから、反応が遅れた。
伸ばされたキュートの手に握られているモノを、ただ認識することしかできなかった。かわせなかった。

(´<_`;)「う、嘘、……や、やめッ」

弟者が命乞いをした、その直後。

キュートの手に握られていたナイフが、弟者の肉を切り裂いた。



552: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:12 hH+MCRf70

足に、冷たい金属の感触。
だがそれは一瞬の事で、すぐに激痛に変わった。

キュートの刃が捉えたのは、弟者が振り上げていた右足のアキレス腱。
ブチッ――と、何か太いモノが千切れたような嫌な音を聞いたような気がした。

(´<_`;)「イタッ! めっちゃ痛い! ヤバイってこれ!!」

手で傷をかばい、その場に座り込む弟者。
その時には既にキュートの手は影から消えていたようだが、どうでもよかった。

ただ、痛かった。

傷口から漏れる血の温度が不快だった。

幼い頃から家に籠ってた弟者にとって、これが人生最高の大怪我となった。

それだけだった。
ただ座り込んで、負わされた傷をかばうだけ。

止血?
知らねーよそんなの。

(´<_`;)「クッソ……! まさかナイフとは……!」

最悪だ。
こんな事なら、もっと用心しとくべきだった。

キュートが影に潜ったとき、ナイフを警戒してアキレス腱に雑誌を仕込んどけばよかった。



553: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

(*ノωノ)「弟者さん! 大丈夫ですか!?」

一部始終を見ていたあぷーが、慌てて駆け寄ってきた。
普通に心配してくれてるっぽいからちょっと感動したけど、まあ今はどうでもいい。

(´<_`;)「うっわ、なにこれ!? 右足にものっそい違和感が!!」

(*ノωノ)「弟者さん!?」

(´<_` )「うぇwww動かないwwwwwきめぇwwwww」

(*ノωノ)「……大丈夫ですか? 頭とか」

(´<_` )「切られたのはアキレス腱なんだぜ?」

(*ノωノ)「それは知ってます」

なんだよ。
知ってるなら言うなよ、チクショー。

あぷーの言った事の真意はもちろん分かる。でも、気にしないでおく。

(*ノωノ)「傷口」

(´<_` )「はい?」

(*ノωノ)「傷口、見せてください。私が治療しますから」

そう言いながらも、既に行動中のあぷー。
切られた右足を勝手に引き寄せて、自分の能力で傷を治そうと試みている。

その良心は嬉しいし、この展開も大歓迎だけど。

だけど。
怪我してるのに、思いっきり引っ張らないで欲しかった。

(´<_`;)(ここで痛いとか言ったら負けかなと思ってる)



554: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

光が舞う。

淡い緑色の光が、弟者の傷口を照らす。
傷口は凄まじい速度で修復されてゆき、徐々に塞がってゆく。

それが、あぷーの能力。
傷を高速で修復できる、そんな能力。

(´<_` )「いやー、すごいな。その能力」

(*ノωノ)「褒めても何も出ませんよ。私がすごい訳でもありませんし」

治療を続けながら、あぷーは目も向けずに答える。
そんなあぷーを見て、弟者は新ジャンルの確立を垣間見た気がした。

(´<_` )「……そうか、ならどうでもいいな」

弟者はそう言い、あぷーに視線を向ける。
それは別にあぷーを見てる訳ではなく、ただ目を向けた先がそこだったというだけの話。

弟者は考える。

今の状況。
特にこれといった特技も無い自分と、傷を治す事のできるあぷー。
そして、影に潜って移動し、影から奇襲を仕掛ける事が可能なキュート。

このままでは、まずい。

やられる事がなかったとしても、相手をどうにかする事ができない。
敵は自分達に対していくらでも攻撃できるというのに、こちらから攻撃する手段はまるでない。

だが。
勝利のない勝負を、これ以上続ける訳にはいかない。
勝利のない勝負をこのまま続けていると、いずれはこちらの負けになるだろうから。



555: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:13 hH+MCRf70

どうにかしなければ。
打開策を考えなければいけない。

しかし、戦いはまだ終わっていない。
このままここに座ったまま、ただ考えているのでは埒があかない。

(´<_` )(相手の能力の性能上、逃げるのも一苦労っぽいしな……)

自分達は走って逃げる。
それに対してキュートは、影にくっついて追いかけてくる。
そんな鬼ごっこをする訳にもいかないし、無論するつもりは毛頭ない。

だから、勝つ方法を考えるしかない。
今、この状況で可能なことだけを組み立て、勝利を作り出さなければいけない。

考える。

(´<_` )(俺は何もできないから、あぷーの能力を軸に組み立てて――)

そして

(´<_` )(――あ)

閃いた。

たったひとつ、シンプルな答えを。



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