( ^ω`)ブーンが壊れたようです
- 1: 巫女に初詣 :2006/12/13(水) 04:16:34.56 ID:nIXbQzWEO
('A`)「……」
頭が痛い。
一日の始まりとしては最悪の形だと思う。
こめかみに手を当てて布団から抜け出す。
('A`)「って……あれ?」
目の前が……真っ白だ。
それは比喩でもなんでもない。
本当に真っ白だった。
- 8: 猪(委員長) :2006/12/13(水) 04:21:04.88 ID:nIXbQzWEO
白の壁、白の天井、白の床……。
広さは俺の部屋と変わらないが、この雰囲気は今まで味わったことがない。
覚醒しきってない俺の頭には、この事態は少々堪える。
「ようやくお目覚めかお……」
どこからともなく流れる声が、ますます俺を混乱させた。
- 10: 猪(委員長) :2006/12/13(水) 04:29:50.41 ID:nIXbQzWEO
('A`)「ブーン……!? ブーンか!?」
後ずさりながら天井を仰いで叫ぶ。
間違いない。この声はブーンのものだ。
('A`)「おい!! どうなってんだよ!! どこだよここ!!」
「ブーンは頑張ったお」
いまいち成立しない会話に、俺は怒りと恐怖でごちゃまぜになった。
('A`)「コレ……な、何……おい、ブ、ーン……」
唇が震えて上手く言葉に出来ない。
- 13: 巫女に初詣 :2006/12/13(水) 04:38:25.66 ID:nIXbQzWEO
「皆の嫌いなモノを集めるのが一番大変だったお」
('A`)「何言って……」
「お金も沢山かかったお。でも、準備するのは苦じゃなかったお」
「……勘のいいドクオのことだからもう気づいてるかもしれないおね……」
('A`)「はは、は……何言ってんだよ。何もわかんねぇよ……」
「ブーンの口から聞きたいのかお?」
いつもおどおどしていたブーンからは想像出来ない強い声。
それはお互いの立場を認識させるのに充分なものだった。
「復讐、だお」
- 15: 猪(委員長) :2006/12/13(水) 04:50:51.90 ID:nIXbQzWEO
('A`)「何言ってんのお前……」
俺の嫌いなモノ?
そんなのいっぱいある。
虫に、蛇に、蜘蛛……ああ、確かに集めるの大変だな。
早くも現実逃避を選んだ俺の脳は、再びブーンによって引き戻された。
「いっぱい聞いてほしいお。上履き隠された時、教科書破られた時、ゴキブリ食わされた時……」
「その時のブーンの気持ち、皆にはいっぱい聞いてほしいんだお」
('A`)「ま、待てよ。俺はそんな事してな……」
ちょっと待て。
「皆には」……だと?
('A`)「俺以外にもここにいるのか?」
- 18: 妹と初詣 :2006/12/13(水) 05:00:08.38 ID:nIXbQzWEO
「群れなきゃ何も出来ないカス。人と違うことを恐れるカス」
「まるで小さな小さな虫のようだお。そう思わないかお?」
なんだ。なんなんだコレは。
俺は悪い夢でも見ているのか?
頼む、早く目を覚ましてくれ……。
「そんなにお友達が気になるのかお?」
- 19: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:07:37.61 ID:nIXbQzWEO
「後ろを見るお」
('A`)「……?」
背後の壁には、埋め込み型のディスプレイがあった。
白い枠に白い画面。
切り替わった絵には、見知った顔が写っていた。
('A`)「ジョルジュ!!」
(;゚∀゚)「ド、ドクオ!!」
クラスのリーダーであり、俺の悪友でもあるジョルジュの顔は、見たことない程青ざめていた。
……違う。それだけじゃない。
あいつの後ろに見える部屋は、俺のと違い、青で満たされていた。
- 20: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:15:15.03 ID:nIXbQzWEO
(;゚∀゚)「ドクオ……助けてドクオ……!!」
(;'A`)「お、落ち着けよ、俺にも何がなんだか……」
(;゚∀゚)「やだよ!! 俺死にたくねぇよ!!」
尋常じゃないジョルジュの怯えように、俺はいささか違和感を感じた。
もちろん俺だって怖い。
でも、あのジョルジュがこんな情けない声を……。
(;'A`)「……おい。後ろの、何だそれ……」
(;゚∀゚)「いやだああああ!! 出し、出してくれえええ!!」
ジョルジュの部屋は俺のより大分広いようだった。
違うのは色と……後ろに見える巨大な水槽。
- 24: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:21:08.01 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「嘘だろ……冗談じゃねぇぞオイ」
水槽と錯覚したのは、ジョルジュの背後を悠々と泳ぐものがいたからだ。
実際には部屋の半分がガラスで仕切られ、向こう側が水で満たされている。
その中には、巨大な鮫が泳いでいた。
- 27: 妹と初詣 :2006/12/13(水) 05:32:25.10 ID:nIXbQzWEO
- 「ジョルジュは大きい魚が嫌いらしいお」
それは間違っている。
大きい魚が好きでも、この状況に喜ぶ奴はいないはずだ。
「さて……本題に移るお」
('A`)「本題……?」
「二人の仲がいいのは知ってるお!! そこで今日は……」
「友達がいないブーンに、友情ってやつを教えてほしいお!!」
- 28: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:34:44.08 ID:nIXbQzWEO
イヤな予感がする。
漫画や映画などでしか出会うことのない、最悪の茶番劇。
「助かるのは一人だけ。それがどっちかは、ドクオに決めてもらうお!!」
ジョルジュの視線が俺を貫く。
耐えきれない圧迫感に、俺はトラウマになりそうな程の吐き気を覚えた。
- 35: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:45:00.06 ID:nIXbQzWEO
「ぽちっとな」
後ろから機械音がして、俺は身を堅くすくめた。
発信源の方を見ると、部屋の隅の天井からガラスが降りてくるとこだった。
('A`)「……!?」
二枚の分厚いガラス板。
それが完全に降りきると、壁とガラスの間に閉ざされた空間を作った。
「ドクオの嫌いなものがまだだったお」
その空間の天井は、スライドしてぽっかり穴が空いた。
- 38: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:50:01.58 ID:nIXbQzWEO
見たくない。
見たくない。
見たくない。
人間は、本当に恐怖を感じているモノからは目をそらせないのだろうか。
俺の意志に反して、眼球は天井から落ちてくるであろう恐怖を待ち続けていた。
(;'A`)「ひぃ……ぃ!!」
それを認識した途端、俺の口から情けない音が漏れた。
無理もない。生まれてこの方、テレビの中でさえ。
あんな大きな蛇は見たことがなかった。
- 42: 猪(おまっ) :2006/12/13(水) 05:58:46.73 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「ぁあ……ぁああぁあ……!!」
のどがかわく。
ゆびさきもくちびるもふるえる。
なんでおれはここにいるんだろう?
なんでおれなんだ?
なんでなんでなんでなん―――――
(;゚∀゚)「ドクオ!! ドクオ!!」
(;'A`)「はっ、あ、ああ……?」
- 44: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:07:11.50 ID:nIXbQzWEO
(;゚∀゚)「しっかりしろよ!! た、頼むよドクオ!!」
ジョルジュの声で我に返る。
だがこの恐怖は変わらない。
俺はジョルジュと大蛇を交互に見ながら呟いた。
(;'A`)「この声、ブ、ブーンだよな……?」
(;゚∀゚)「ああ、うん……それよりよ……」
俺、病弱の母ちゃんがいるんだよ……。
ジョルジュははっきりと聞こえる声でそう言った。
- 45: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:08:44.51 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「……は?」
(;゚∀゚)「だ、だからよ!! 俺、こんなとこじゃ死ねないんだよ!!」
(;'A`)「……俺はどうなるんだよ」
(;゚∀゚)「いや、ほら……」
(;'A`)「自分だけ助かればいいってか!? こういう時は譲り合うのが友情ってもんだろ!!」
(;゚∀゚)「俺は死にたくないんだよ!!」
(;'A`)「てめぇ……」
- 46: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:17:02.02 ID:nIXbQzWEO
(;゚∀゚)「助けてくれよ!! 頼む!! 帰ったらお前が欲しがってたもん何でもやるから!!」
(;'A`)「帰ったら、って……」
(;゚∀゚)「な!? 頼む、頼むよおおおお」
ジョルジュの目は最早正気のものではなかった。
そう思った俺の頭も、すでに常人のそれではなかったのかもしれない。
(;'A`)「ふ、ふざけんな!! 俺だって死にたくねぇよ!!」
(;゚∀゚)「うるせぇ!! お前が死ね!!」
(;'A`)「……ジョルジュ?」
(;゚∀゚)「死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!!」
(;'A`)「……」
- 49: 彼女と初詣 :2006/12/13(水) 06:22:56.58 ID:nIXbQzWEO
- 「そろそろいいかお?」
(;'A`)「俺は……」
ジョルジュの顔を見つめて、ボソッと呟いた。
(;'A`)「……俺は、死にたくない。俺は死にたくない」
この時の光景を、俺は一生忘れられないだろう。
昨日までバカやって一緒にはしゃいでた友人の顔が、ゆっくりと狂っていく様を。
- 51: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:28:49.67 ID:nIXbQzWEO
「だってお。ジョルジュ、残念残念だお」
(;゚∀゚)「ああああ!! ああああああああああああ!!」
後ろの水槽に、ゆっくりと亀裂が走った。
それはジョルジュが叫ぶ度に、本数を増やしていく。
(;゚∀゚)「あっ!! あああああっ!! ああああああああああ」
やがてヒビで奥が見えなくなった頃。
その断末魔を飲み込むようにガラスは決壊した。
- 57: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:36:53.49 ID:nIXbQzWEO
それはまるでインターネットのグロ動画。
一直線にジョルジュに向かい、彼の腹に食らいつく鮫の牙。
鮫が頭を振る度にジョルジュは人形の様に振り回される。
(;'A`)「あ……ああ……」
一切抵抗することなく、部屋の水を赤に染めながらジョルジュの胴体は食いちぎられた。
- 60: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:44:08.57 ID:nIXbQzWEO
「ジョルジュおいしそうだお」
ひどく無機質に聞こえるブーンの声。
(;'A`)「もう、もういいだろぉ……出してくれよ……」
もうこんなとこはごめんだ。
早くこの悪夢から逃げ出したい。
だが、懇願した俺をあざ笑うかのようにブーンは言った。
「駄目だお。ブーンが見たかったのは友情だお?」
(;'A`)「そんな……!! だってお前これは……!!」
- 68: 猪(ばくち打ち) :2006/12/13(水) 06:54:45.38 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「まぁでも、お前等には最初っから期待してなかったお」
(;'A`)「!! お前、その目……!!」
ディスプレイの画面が切り替わる。
そこに写ったのは、片目が醜く爛れたブーンの顔だった。
( ^ω`)「これは痛かったお〜」
思い出した。
ジョルジュが悪ふざけで突き出した煙草が、こいつの左目に刺さったんだ。
それからこいつは学校に来なくなった。
俺が最後に見たのが、うずくまって、救急車に運ばれるブーンの姿だった。
- 73: 猪(ギャンブラー) :2006/12/13(水) 07:05:43.49 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「……助けて下さい。俺がバカだったよ。謝るから。なぁブーン……」
( ^ω`)「……ドクオ……」
俺は頭を床にこすりつけながら言った。
(;'A`)「いじめ、だったんだよな。ブーンの辛さを少しも考えてなかったよ。ごめんなブーン、ごめんなさい……」
( ^ω`)「……ドクオ」
およそ心にもない言葉の羅列。
(;'A`)「どうすりゃ許してもらえる? 俺、なんでもするからさ……」
俺は、絶対にここから生きて出てやる。
- 76: おみくじ(ひく金ねー) :2006/12/13(水) 07:13:30.48 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「ツン」
(;'A`)「……え?」
( ^ω`)「ブーンはツンの事が大好きだったんだお」
(;'A`)「ブ、ブーン……?」
( ^ω`)「地獄に咲いた一輪の花、砂漠の中のオアシス……」
( ^ω`)「二人に無理矢理書かされたラブレターも、もしかしたらって期待したお」
( ^ω`)「目の前で破られてトイレに捨てられても、今も大事にとってあるお」
( ^ω`)「あれはドクオ達がツンに無理矢理さらせたんだお? 可哀想なツン……」
(;'A`)「いやアレは……あれはアイツの独断っていうか……」
- 83: おみくじ(ひく金ねー) :2006/12/13(水) 07:23:51.99 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「ドクオ達のせいで、ブーンとツンはまともにデートも出来なかったお」
俺の言葉を遮るようにしてブーンは喋り続ける。
怒りも恐怖も忘れて、俺はこの状況下において恐らく最大のタブーを口にした。
(;'A`)「狂ってるよお前……」
( ^ω`)「……狂ってる?」
(;'A`)「あ、いや……」
( ^ω`)「ブーンは狂ってなんかないお!! 特にここ最近調子がいいんだお」
- 90: 猪(ギャンブラー) :2006/12/13(水) 07:32:10.75 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「狂ってるっていうのはこいつ等みたいなのを言うんだお?」
(;'A`)「え……?」
またもや画面が切り替わる。
ディスプレイに映し出された映像に俺は目を見張った。
(;'A`)「何してんだ……こいつ等……」
「ブーンに公開オナニーを強要させた二人だお」
そこには裸のショボンとクーがいた。
- 93: 猪(ギャンブラー) :2006/12/13(水) 07:43:05.37 ID:nIXbQzWEO
(´;ω;`)「はぁっ はぁっ はぁっ 」
川 ; -;)「んんっ んんんっ」
さるぐつわをされ、縄で縛られ自由を奪われているクー。
その股を開き、必死に腰を打ちつけているショボン。
(;'A`)「お、おい……なんだ、何してんだよコレ……」
「クーのまんこに、回虫をうじゃうじゃ入れといたお」
(;'A`)「か、回虫……!?」
よくよく見れば、二人の接合部分から次々と白い紐が溢れだしている。
わざとブーンはその光景をアップにした。
- 102: 猪(ギャンブラー) :2006/12/13(水) 07:49:17.86 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「うぉ、うおえぇぇ……」
こみ上げる胃酸を我慢できずに、俺は床にぶちまけた。
(;'A`)「うぅ……なんで、なんでこんな事……」
「なんで?」
( ^ω`)「なんで、って言ったかお?」
( ^ω`)「お前等は、ブーンにした事に理由があったのかお?」
- 110: おみくじ(ひく金ねー) :2006/12/13(水) 07:57:53.03 ID:nIXbQzWEO
(;'A`)「それは……」
( ^ω`)「答えられないのかお? ブーンは答えられるお」
( ^ω`)「ただの復讐だお。ブーンの気持ちを知ってもらいたかったんだお」
(;'A`)「お前が……お前が壊れたきっかけは……」
(;'A`)「やっぱり、ツンの死なのか?」
( ^ω`)「……」
俺は、この日初めてブーンの顔が歪んだのを見た。
- 120: おみくじ(五回目でやっと吉) :2006/12/13(水) 08:09:06.35 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「……何言ってるお? ツンならここにいるお」
(;'A`)「ブーン……」
( ^ω`)「おかしな事言うドクオだお。この後デートするブーン達に嫉妬かお?」
(;'A`)「……」
(;'A`)「ブーン……教えてくれよ……」
(;'A`)「俺は……生きて、帰れるのか?」
( ^ω`)「……」
- 121: おみくじ(五回目でやっと吉) :2006/12/13(水) 08:11:18.09 ID:nIXbQzWEO
( ^ω`)「そうだおね。他にも見て見ぬフリしたクラスメイト達やシカトした女子共もいるから……」
(;'A`)「……」
( ^ω`)「……ドクオは、もう終わりにするかお?」
(;'A`)「ホ、ホントか!? じゃあ今すぐ……!!」
ディスプレイに詰め寄った時、俺は部屋のガラスにヒビが入る音を聞いた。
( ^ω`)ブーンが壊れたようです〜完〜
戻る