( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

350: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:34:04.36 ID:lpA65W140
  

('A`)「なぁ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「……いや、さ――」

と、いきなり軽快な着メロが流れ出した。ドクオはそこで喋るのを止め、携帯を取り出し耳に当てた。

('A`)「もしもし?」
('A`)「あぁ、はいはい。どうした?」
( ^ω^)「誰だお?」
('A`)「ジョルジュからだ。はいはい、聞いてるぞ」

ジョルジュといえばさっきショボンと屋上へ向かったはずだ。良い返事が聞ければいいのだが、と
ブーンは少しばかり身を強張らせる。

('A`)「は? ……おう。……あぁ、わかった。待ってろ」

ドクオの声のトーンが下がったかと思うと、通話はそこで終わった。ブーンは何かが起こったのだと
薄々感じながらもドクオに尋ねる。

(;^ω^)「ジョルジュはなんて?」
('A`)「兄者たちに捕まった」
(;^ω^)「え……」

交渉の事とばかり考えていたブーンの思考に思わぬ方向から打撃が加わり、一時混乱した。



352: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:35:32.46 ID:lpA65W140
  
('A`)「なんかわからんが、とにかく俺たちがご指名らしいぜ」
(;^ω^)「……」
('A`)「どーするよ、5分以内に来なかったらジョルジュを殺すとか言ってたぜ。ありえねぇよ」
(;^ω^)「殺すって、そんなことをしない為に今……」
('A`)「あいつらには関係ないんだろ……さすがにクーがジョルジュを助けてくれるとも思えないし」
(;^ω^)「でも僕たちが行っても……」

2人は時計を見ながらも沈黙してしまう。仲間を助けるべきだと分かっているのだが、ただ
無駄死にしてしまう恐怖には抗えない。

('A`)「あのよ」
(;^ω^)「?」
('A`)「俺、ずっと考えてたことがあるんだ。聞いてくれ」
(;^ω^)「何だお」
('A`)「この……これ弟者の鍵なんだけどよ、お前が持って上の階に行くんだ。で、そのまま
    10分経てば少なくとも弟者は消える」
(;^ω^)「でもあの2人相手に10分逃げ延びるなんて無理だお」
('A`)「俺が囮になる」
(;^ω^)「オトリ?」
('A`)「俺があいつらの、少なくとも兄者の足止めをする。だからお前も頑張ってくれないか」
(;^ω^)「無理だお! 僕もそうだし、ドクオだってあの兄者の足止めなんて――」
('A`)「でもよ!」
(;^ω^)「……」

ドクオの叫びが保健室に静寂をもたらした。



353: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:37:23.06 ID:lpA65W140
  
何回か秒針の音を聞きいた後、ドクオが呟く。

('A`)「……二人とも死ぬよりマシだろ」
(;^ω^)「ドクオ……」

そしてドクオはポケットから小さな鍵を取り出すと、ブーンにその掌をいっぱいに広げて差し出した。
その掌をじっと見つめるとブーンは頷き鍵を受け取った。

('A`)「頼んだぜ」
( ^ω^)「……わかったお」

涼しい顔なんてとても出来たものではないが、2人は不安な未来に対して目一杯冷静な自分を
見せ付けた。これから起こることは大したことではないと、運命に嘯くために。



354: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:38:38.69 ID:lpA65W140
  
('A`)「あのよ」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「明日学校サボってゲーセン行こうぜ。それ位許されるだろ」
( ^ω^)「ドクオ、あんまりカッコいいこと言ってると死ぬお」
('A`)「ここは俺に任せて早く行け! とか?」
( ^ω^)「それは完璧アウツだお」

そうして笑いあい、二人は廊下に出た。

('A`)「……死ぬもんかよ」
( ^ω^)「……だお」

そう言ってブーンはドクオが向いている方向とは反対の東階段へと走っていく。
その足音に振り返る事無くドクオは走り出す。

('A`)「――でもよ」

走りながらドクオは独り言を呟く。

('A`)「誰かの為に死ぬってのも悪くねぇかなって、そんな気分だ」



355: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:39:46.36 ID:lpA65W140
  
 勝負は一方的な展開を迎えていた。
あまり大きい勝負をしないショボンだったが、決断の遅さや不慣れな勝負に少しずつその
時間を失っていき、気付けばシャキンと23分もの差がついていた。

(`・ω・´)「はぁ……なんだかゲームバランスの悪いフリーソフトをやってるみたいだよ」

ショボンがどのブロックを抜こうかと選んでいるとき、少し遠くからシャキンはそう言って
わざとらしく溜息を吐いた。

(´・ω・`;)「そんなこと言われても……」
(`・ω・´)「……ショボンにはまるで危機感が足りないからだ」
(´・ω・`)「ぼくだってそれくらいは感じてるよ」
(`・ω・´)「……じゃあぼくと話してるような時間は無いんじゃない?」
(´・ω・`;)「あ、いや、でもそれは……」
(`・ω・´)「ほら、手が止まってるよ」

シャキンに言われてショボンは更に眉尻を下げ、やや上段寄りのブロックを人差し指でゆっくり
何度も突付いて、後ろ側から引き抜いた。
そのブロックを手に持ったままショボンはつぶやく。

(´・ω・`)「シャキンは助かりたくないの?」
(`・ω・´)「え? なんでさ」

ブロックを見つめながら、それを積む事無くショボンは更に話を続ける。



357: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:41:39.63 ID:lpA65W140
  
(´・ω・`)「だって、じゃないと僕にアドバイスなんて……」
(`・ω・´)「言ったじゃん。バランスが悪いとつまらないんだよ」
(´・ω・`;)「つまらないとか……」
(`・ω・´)「ドキドキするその先に、僕が酔いしれるものがあるんだ」
(´・ω・`)「え?」
(`・ω・´)「続けよう。話はゲームをしながらでも出来るしね」

そう言ってシャキンはどこか消化不良のショボンにゲームの続きを促した。



(`・ω・´)「さて……ショボン。このタワーあとどれくらい遊べると思う?」

シャキンが自分のターンでそんなことを訊いてきた。
言われてショボンは目を細めてジェンガのタワーを眺める。至る所に穴が開いており、バランスが
保たれたとしても縦に伸びる以上、これ以上は積めないというポイントが生まれるのは容易に
予想が出来た。

(´・ω・`;)「う〜ん……10回無いかもね」
(`・ω・´)「まぁ、それくらいだろうね。そこら辺はいくらでも調整できるんだけど…・・・」

何を思ったかそう言うとシャキンは立ち上がり、窓の方へと歩いていった。
その間にもシャキンのタイマーは少しずつその残り時間を減らしていく。



358: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:42:40.72 ID:lpA65W140
  
(´・ω・`;)「何してるのさ。は、早くしないと」

ショボンの言葉にシャキンが振り返り、笑った。

(`・ω・´)「ショボンと同じ位置にまで行こう。きっとドキドキするよ。あの感覚が欲しいんだ」
(´・ω・`;)「……何を言ってるんだよ……今倒れたら……」
(`・ω・´)「ショボン、自分で言っといてアドバイスしてるじゃん」
(´・ω・`;)「何言ってるんだよ。関係ないじゃない」
(`・ω・´)「じゃあさ、ショボンは負けてくれるの? ぼくの代わりに死んでくれる?」
(´・ω・`;)「……それは……違うというか……」
(`・ω・´)「ごめんごめん、意地悪だったね」

少しだけ笑うとシャキンはもう一度ゆっくりと席に戻った。

(`・ω・´)「ショボンは2人とも助かったらいいのにって感じなんでしょ?」
(´・ω・`)「それは勿論だよ! なんでぼく達のどっちかが死ななきゃならないんだよ」
(`・ω・´)「……やっぱりそこだなぁ」

シャキンは携帯を取り出し何か操作するとそれを耳に当てた。
電話のようだったがその相手は勿論ショボンには分からない。



359: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:43:37.15 ID:lpA65W140
  
(`・ω・´)「もしもし? 兄者? ドクオ捕まえた? ちょうど良かった。あのさぁ今ショボンと
      遊んでるんだけど、僕が勝ったらもう1回電話を入れるからさ、そしたらドクオ
      やっちゃってくれない? 早く帰りたいんだよね」
(´・ω・`;)「シャ、シャキン! 何してるんだよ!」
(`・ω・´)「うん、うん。オッケー。僕から電話入らなかったら、まぁとりあえず何もしないと言うことで」
(´・ω・`;)「シャキン!」
(`・ω・´)「じゃあね。……ショボン、電話中は静かにしてよ」
(´・ω・`;)「静かにって……何してるんだよ」
(`・ω・´)「何って、ショボンが全然やる気出してくれないから、やる気出そうとしたんだよ」
(´・ω・`;)「……めちゃくちゃだよ」
(`・ω・´)「はい、積んだっと。そろそろショボンと同じくらいかな。お互い残り12分。目一杯遊ぼうよ」

電源の入っていない電話をポケットに仕舞うとシャキンは目を細めて笑った。



360: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:45:05.44 ID:lpA65W140
  
(´・ω・`;)「……」

穴だらけのタワーを前に、ショボンは何度繰り返したか分からない作業を行う。
観察して、ブロックを抜き、上に乗せる。それだけだと言ってしまえばそれだけなのだが、
人の命を背負っているというプレッシャーはショボンにはかなり大きなものだった。

(´・ω・`)「……ふぅー」

なんとかバランスを崩す事無くブロックを乗せ終えると、ショボンは一目散にタイマーを止める為
装置の元へと歩いてくる。

(`・ω・´)「……いくらか真面目になったね」
(´・ω・`;)「あんなことしといてよく言うよ」
(`・ω・´)「でもまだまだだよ。防御だけじゃ駄目さ、攻撃をしなきゃ」

シャキンは椅子に座ると、まるで最初の一手のように軽くブロックを抜き、乗せ終えてしまう。
そして早々に作業を済ませるとシャキンは携帯電話を取り出し、なにやら操作をし始める。
またどこかへ電話するのだろうかとショボンがそれを止めようとした時、シャキンは何故か
その携帯を机の教科書を仕舞うスペースへゆっくりと入れると、ショボンの元へと戻って来て
腕輪を装置へとはめた。



362: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:47:17.75 ID:lpA65W140
  
(´・ω・`;)「?」
(`・ω・´)「攻撃、さ。手が使えなくても、何故かぼくはあの机を揺らすことが出来るんだ」
(´・ω・`;)「…………あ!」

漫画のような分かりやすいリアクションを取ってショボンはゲームテーブルへと駆け寄り、
シャキンが入れた携帯を慎重に取り出す。
そして携帯を開けようかと手をかけた瞬間に、携帯が震えだした。

(´・ω・`;)「シャ、シャキン……」
(`・ω・´)「あぁ、あはは、ごめんごめん。アラーム付けっぱなしだったみたいだねぇ」
(´・ω・`)「…………」

ショボンの中で暗い感情が動き始めた。
それと同時にショボンの手に持っていた携帯電話の電源が落ち、真上の蛍光灯だけが教室を
照らすことを止めた。

(`・ω・´)「へぇ……なるほど、やっぱりショボンは僕の反対なんだね」

その言葉と同時に今度はシャキンの頭上にあった蛍光灯が一瞬眩しく光り、そして消えた。

(`・ω・´)「ムーディーになったね」
(´・ω・`)「シャキン、僕は……」
(`・ω・´)「説明するよ。だから早く続けなよ」

ショボンはしばらく両手を見つめシャキンの携帯をポケットに仕舞うと、チラチラとシャキンの方を
気にしながらも椅子に座りジェンガと睨めっこを始めた。



364: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:49:10.88 ID:lpA65W140
  
(`・ω・´)「ぼく達は力を得た。それはしぃや兄者達だけでなく、ぼくも、そしてショボンも」
(´・ω・`)「……」

やっと取り出せそうなブロックを見つけたショボンは、返事をする事無くブロックを取り出す
作業をしながら話に耳を傾ける。しかしその手つきはどこか危なげだった。

(`・ω・´)「勿論ショボンの力はぼくの予想の範囲でしかないんだけど。しぃが言ってたんだ、
      ぼく達兄弟は逆の力を持ってる、って」
(´・ω・`)「……」

ブロックを掴んだまま、ショボンは1度目線をシャキンに向ける。
それを見てシャキンはさらに話を続ける。

(`・ω・´)「ぼくの力は……何と言うか言葉では非常に言い表しにくくて、促進というか……うん、
      触らない触媒みたいな物なんだよ」
(´・ω・`)「触媒……」
(`・ω・´)「触らないのに触媒ってのも変な話だね」

そう言って目を細め笑うシャキンに釣られて笑うことも無く、ショボンはブロックを置く先を
しっかりと見て、その指先に神経を集中させる。



366: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:50:30.38 ID:lpA65W140
  
(`・ω・´)「そしてショボンもまた触媒なんだ」

その言葉に一瞬ショボンの動きが止まったが、一呼吸置いてブロックを慎重に積むと、
倒れないのを確認してシャキンの方を向いた。

(´・ω・`)「それじゃあ同じじゃない」
(`・ω・´)「いや、種類が違うって事だよ」
(´・ω・`)「……種類?」
(`・ω・´)「そう。速くするのが僕で、遅くするのがショボン。正触媒と負触媒ってとこなのかな?」
(´・ω・`)「シャキン、僕はあんまり化学が得意じゃなくて……良く分からないよ」

そう言いながらショボンは席を立ち、装置に腕輪をはめたそれを確認してシャキンは眉を上げ、
テーブルへと向かう。

(`・ω・´)「簡単に言えば僕は周りのやる気を出して、ショボンはやる気を失わせるって事だよ」
(´・ω・`;)「やな力だなぁ」

そこで一旦会話が終わり、シャキンは真剣な面持ちでジェンガに向き合う。
首を伸ばしていろいろな角度から眺めながらあれこれとブツブツ呟く様は先ほどとは打って
変って真剣なものだった。
心なしかその黒目が小さく鋭くなって、辺りの空気を縛り付けているかのような錯覚を抱く。
整列させられた空気の粒子がシャキンに従いその様子をそっと見守っているような感覚。
まるで全てがシャキンに握られているような感覚をショボンは感じていた。



367: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:51:46.54 ID:lpA65W140
  
(`・ω・´)「……ショボン、焦ってるね」
(´・ω・`)「なんで?」
(`・ω・´)「『なんで?』か。そうだな、なんとなく」

そう言ってシャキンは、ふふと鼻で笑っていつの間にか抜き取ったブロックを指先で握り直し、
ペンを回すようにくるりと回した。

(`・ω・´)「寒いなぁってさ」
(´・ω・`)「……そう言えばそうかも」
(`・ω・´)「あははは」

たしかに指先は幾らか冷えていて、それを確かめるようにショボンは指の背を首に当てたのだが、
それの何が面白かったのかシャキンは笑い出してしまった。それもいつもとは違って、少しばかり
わざとらしく。

(´・ω・`;)「なんだよ気持ち悪いなぁ」
(`・ω・´)「まだまだ、お楽しみはこれから」

ブロックを乗せ終わったシャキンが笑っていた。心が温かくなる類のものではなく、冷たくなる方だ。
楽しいなぁ、と呟くシャキンが隣で装置に腕をはめる。一体何が楽しいものかとショボンはそれに
答えることなくテーブルへと向かった。



369: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:52:57.66 ID:lpA65W140
  
 穴だらけのタワーはこれ以上の搾取に耐えられないといった感じに頼りなさげに立っていた。
それでもとショボンは隙を探し続ける。

(`・ω・´)「ショボン、僕を追い詰めてよ」
(´・ω・`)「……」
(`・ω・´)「追い詰めるだけじゃつまらないな。スリルを頂戴」
(´・ω・`)「……」

心の中に黒い物を抱え、険しい顔で黙ったままのショボンだったが、シャキンを追い詰める
方法を考える気にはなれなかった。
まず一体どうしたらこのゲームを2人無事に終えられるだろうか。そして勿論友達も。
シャキンが憎いという感情とは別に、助けたいという感情があった。それらは決して混ざり合う
ことなくショボンを突き動かす原動力となる。
しかし表示されている残り時間は既に3分を切り、のんびりと考えている時間は無かった。
やはり思いつかない、まるで2人が一緒に助かるなんて方法が思いつかないのだ。
結局ショボンはゲームをこなすのに精一杯なままターンを終えるのだった。

(`・ω・´)「……ふぅ、駄目か」

一方のシャキンも残り時間は4分程度と少なめではあったが、まるでゲームに集中していない
様子からして、ゲームとは別な何かについて考えることに夢中なようだった。



370: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:55:13.88 ID:lpA65W140
  
(`・ω・´)「どうしたら真面目にゲームしてくれるのかな」
(´・ω・`)「大真面目だよ」
(`・ω・´)「嘘だね。じゃあそこからぼくの手にあるブロックを落として見せてよ」
(´・ω・`;)「どうやってさ。そんなこと出来るわけ無いよ」
(`・ω・´)「……そうか、待てよ……うん……ぼくが……」

なにやら思いついた風にブツブツと呟くと、シャキンは無造作にブロックを積んだ。
倒れてしまうのではないかと焦るショボンを尻目にシャキンは俯き加減で何かを考えているようだった。
考えている間にもタイマーは更に時を刻み、見る見る内に1分を切る。

(´・ω・`;)「シャキン!」
(`・ω・´)「うん、ゾクゾクしてきた」

そわそわするショボンを置き去りにしてシャキンのタイマーはどんどんと減り続け、ついには
20秒を切ってしまう。
そしてそれを確認し頭を振りリズムを取ると、シャキンはゆっくりとショボンのほうへ歩み寄り、
ゆっくりと腕輪を装置にはめた。
シャキンのタイマーの残りは僅か2秒になっていた。



371: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:57:09.71 ID:lpA65W140
  
(´・ω・`;)「何考えてるんだよ……これじゃあ次の番が来ても」

自らのタイマーなど気にする事無くショボンはシャキンを見ながら呆然としていた。
しかし、当のシャキンはと言うとそんなショボンを見て口の端を吊り上げるとこう言った。

(`・ω・´)「ショボン、ぼくを殺しに来てよ」

――ぼくが、シャキンを殺す。
聞き、考えて、そういうことになるのかと理解した。
何をバカな、殺せるわけが無い。そう思いながらもタイマーの残り時間はショボンの心を締め上げる。

(`・ω・´)「ショボン、自分の命に友達の命がかかってるんだよ。ぼくを殺さなきゃ」
(´・ω・`;)「出来ないよ……」
(`・ω・´)「……そうだ」

シャキンが暗く低い声で呟いた。

(`・ω・´)「ショボン、良い事を教えてあげるよ」

気だるそうに息を吐き出すとシャキンはシャツの中に手を入れ、みぞおちの辺りを掻きながら
言葉を投げ捨てた。

(`・ω・´)「この前の火事、あれさぁ、火点けたのぼくなんだよね」
(´・ω・`;)「――――」



373: ◆HGGslycgr6 :2006/12/15(金) 21:58:51.89 ID:lpA65W140
  
その眩めくような告白の内容と、なんてことはないといった口調に、時が止まった。
心臓が裏返って目の血管がギュッと絞られた感覚に陥る。

(`・ω・´)「家が燃えるってどんなのかなってさ」
(´・ω・`)「シャキン、冗談でも言って良い事と悪いことがあるよ」
(`・ω・´)「正直そんなに面白くなかったけどね。皆普通に生き残ったし」
(´・ω・`)「ねぇ、シャキン、ちょっと止めてよ」
(`・ω・´)「1人くらい死ねばよかったのにさ。経験値少な目」
(´・ω・`)「いや、止めてって。シャキン、いい加減に……」
(`・ω・´)「そうそう、あついよぉ、あついよぉ……って、僕、名演技だったでしょ?」

 あまりの事にプラズマで出来た槍の先端のような物が見えた気がした。
脳味噌と心が同じならば今間違いなく潰れた。
そして潰れたショボンの心からは暗褐色の粘液がじゅる、と溢れ出る。
それは体中を侵し、ついには耳や目、鼻から零れ、空間の色さえも塗り替えてしまう。
それがショボンを決意へと導くのだ。その先を確認したわけでもないのに。

(´・ω・`)「シャキン」

ただ名前だけを呼び、ショボンはゲームテーブルへ向かった。



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