( ^ω^)ブーンはかえってくるようです

101 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/12/14(木) 21:33:50.56 ID:jpnEBPOY0O
  

          ―― 終 ――



普段は閑散としている夜の土手。だが、今日はひとのわらいごえで埋め尽くされている。

前日雨が降り、土がぬかるんでいるというのに、元気に走りまわる子供たち。
そんな子供を、呆れるように、心配するように、そして、うれしそうに眺める親たち。

ふたりで楽しそうにしゃべる男女。腕をからめて、少しだけ頬を赤らめている。
会話もせず、ふたり並んで歩くだけの男女。男は、ポケットから手を出し入れし、女は、指をもじもじさせている。

数人の女の子の群れ。きゃいきゃいとしゃべる彼女らの空気で、そこだけ明度が上がっている。
その空気を、虎視眈々と狙っている、男の子の群れ。彼らの周りだけ、熱気で温度が上昇している。

みんな、誰かと共に、誰かと一緒にここに来ている。

そんな中、彼女だけはひとりだった。
背中まで流れるような黒髪を結い上げ、空色の浴衣を着ている。
花火の絵が描かれたうちわを持って、ふわり、ふわりと扇いでいる。

「な、なぁアンタ! ……い、今ひとりかゴラァ!」

ひとりの男が、彼女に声をかける。しどろもどろになりながら、威嚇するように声を張り上げる。
物陰から、その様子をにやにやしながら眺めている男たちの姿があった。

彼女は一瞬びっくりしたような顔をし、次いで、やさしい瞳をくすりと細める。

「残念だけど、今日はふたりで来てるの」
「そ、そうか……。……そいつ、どこにいるんだ?」



102 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/12/14(木) 21:35:51.11 ID:jpnEBPOY0O
  

「さぁ、どこかな。案外、ここにはいなかったりしてね」
「ハァ? なんだそりゃ! 約束すっぽかしてんのか、そいつぁ!」

男が本気で怒る。物陰に隠れている男たちが、すぐにでも飛び出せるよう待機している。

「ううん、そんなことないよ。約束、したもの……」
「……そうか」

彼女があくまで微笑を崩さず答えるので、男はものすごい勢いでしょんぼりしてしまった。
そんあ男の姿を見て、彼女はくすくすとわらう。

「わらうなゴラァ……。……そいつは、そんないいやつなのか?」
「そうだね。ちょっと抜けてたけど、誰よりもやさしいひとだったな……」

男が一瞬たじろぐ。そして、意を決したように声を出す。

「も! ……もし、よかったらさ。……オレと……」

男の声を掻き消すように、空に大きな花が咲く。

「きれいだね……」
「……そうかね」

男がすねたような表情を見せたのを見て、彼女はまたくすくすとわらう。
そして、空を見上げ、天に届くようなささやき声を上げる――。

「たーまやー……





103 : ◆y7/jBFQ5SY :2006/12/14(木) 21:37:51.22 ID:jpnEBPOY0O
  















                         かーぎやー














( ^ω^)ブーンはかえってくるようです ―― おわり ――



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