('A`)ドクオが壁を乗り越えるようです
- 188 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:30:38.24 ID:xjxwKROr0
※
('A`)「お前、二回叩いたろ! 反則!」
(*゚ー゚)「知らないよ〜だ」
しぃは子供のように舌を出して逃げる。
運動不足のせいか、追いつけない・・・。
('A`)「ちょ、ちょっとタイム・・・」
(*゚ー゚)「もう、運動不足だなぁ」
乱れた息を整える。
その時、前にいたしぃが誰かとぶつかった。
(*゚ー゚)「いたっ!」
( ,,゚Д゚)「ってぇ!」
大柄な男にぶつかり、しぃがよろける。
- 189 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:36:46.54 ID:xjxwKROr0
(*゚ー゚)「あ、ごめんなさ・・・」
( ,,゚Д゚)「ゴラァ! てめぇどこ見て歩いてんだゴラァ!! あぁ?」
男は大声を張り上げ、威嚇する。
見るからにチンピラ風の男。
まずい、因縁つける気だ。
('A`)「ちょ、ちょっとすいません」
( ,,゚Д゚)「あぁ? なんだゴラァ!!」
怖ぇ! ・・・なんでこんな人が動物園にいるんだ。
俺は見上げるような大男に軽く頭を下げる。
('A`)「ぶつかっちゃってほんとすいません・・・ほら、いこうしぃ」
(*゚ー゚)「う、うん」
俺はしぃを隠すようにその場を立ち去ろうとするが、男はそれを許さない。
- 190 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:37:56.86 ID:xjxwKROr0
( ,,゚Д゚)「はぁ? ふざけてんじゃねぇぞ。ぶつかっといてその態度はなんだぁゴラァ!!」
('A`)「危ない!」
(*゚ー゚)「キャッ!」
男の拳が振り下ろされ、とっさにしぃをかばう。
鈍い音と共に、頬に激痛が走った。
(*゚ー゚)「ドクオ!!」
・・・久しぶりに殴られた。
口に血の味が広がる。
- 193 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:39:37.92 ID:xjxwKROr0
- ※
(`・ω・´) 「ねぇ、誰なのあいつ!? ミルナ君の知り合い!?」
( ゚д゚ )「い、いえ。私の通ってるジムにはあんな男いませんが・・・」
(`・ω・´) 「まずいよ、早くあのチンピラ倒しちゃってよ! しぃが危ない!」
( ゚д゚ )「え、ええ!? 私がですか!? 勘弁してくださいよ! あの男ちょっとでかすぎワロタ!」
(`・ω・´) 「ええい、ムエタイやってるんだろ!! なんとかしろ!」
( ゚д゚ )「はい、先週から始めました」
(`・ω・´) 「・・・」
( ゚д゚ )
- 203 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:43:06.07 ID:xjxwKROr0
( ,,゚Д゚)「ゴラァ。黙ってんじゃねえぞ?」
(*゚ー゚)「ドクオ、大丈夫? ねぇ、ドクオ!」
俺はゆっくりと立ち上がり、相手を見る。
・・・怖い。逃げ出したい。
でも、しぃを守らなくちゃ。
('A`)「すんません、これで気はすみましたか?」
( ,,゚Д゚)「あぁん? ふざけんなカス!! すむわけねーだろーが!!」
('A`)「じゃあ、気が済むまで殴ってくださいよ」
俺は一歩前に出る。
・・・近づくと、男との身長差がよくわかる。
まともに殴り合ったら、絶対勝ち目は無い。
- 206 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:45:13.29 ID:xjxwKROr0
('A`)「その代わり、彼女には手ださないでくださいね」
(*゚ー゚)「ドクオ・・・!?」
男の口がにやりと笑う。
( ,,゚Д゚)「じゃあそうさせてもらう、ぜ!!」
男は拳を振り上げ、俺の顔面に向かって振り下ろした。
- 207 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:46:46.46 ID:xjxwKROr0
- ※
(*゚ー゚)「ドクオ・・・!」
('A`)「はぁ・・ぶはっ・・・!」
口の中の血の味が、さらに濃くなった。
頭がグラグラと揺れる。もう何発貰っただろう?
( ,,゚Д゚)「はぁはぁ・・・しつこい野郎だゴラァ・・・」
男も息を切らし、疲労している。
絶対、倒れない。喧嘩は殴り合いの強さで勝敗が決まるわけじゃない。
( ,,゚Д゚)「いい加減、寝ろ、よ!!」
大振りなフックが俺の頭を打ち抜く。
一瞬、ふらついたが体勢を立て直し相手を睨みつける。
( ,,゚Д゚)「野郎・・・」
- 211 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:48:17.42 ID:xjxwKROr0
(*゚ー゚)「もう、もうやめてよドクオ! 死んじゃうよ・・・」
('A`)「黙ってろ・・・しぃ。大丈夫だから」
しぃの涙声も、聞き取るのが精一杯だ。
男の苛立ちが頂点に達したのか、奇声をあげて襲い掛かってくる。
その手には・・・ナイフ?
( ,,゚Д゚)「ゴラァァ!!! ふざっけんな!!」
やばい。刃物は予想してなかった。
避けようにも、もう足に力が・・・
- 217 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:51:14.99 ID:xjxwKROr0
(`・ω・´)「社長キーーック!!!」
( ,,゚Д゚)「ぶほぅ!?」
突然、横からから現れた人が男にとび蹴りをかます。
あれは、お父様?
(`・ω・´)「このチンピラが!! うちの娘に因縁ふっかけやがってぇぇ!!!」
( ゚д゚ )「そうだそうだ!」
お父様は男に馬乗りになってパンチを何発もぶち込む。
もう一人・・・の人は遠くから見てるだけ。
(*゚ー゚)「ドクオ、ドクオ!! 大丈夫? ねぇ・・・」
('A`)「・・・はは、強ぇや。かなわ・・・ね・・・」
- 227 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:54:06.14 ID:xjxwKROr0
(*゚ー゚)「バカ! なんで・・・なんでそんなになるまで!」
しぃの目が涙で溢れる。
('A`)「俺・・・しぃの彼氏だから・・・だから、守らなきゃ・・・」
(*゚ー゚)「!!」
視界が歪み、力が抜けてしぃにもたれかかる。
俺の体はもう、言うことを聞いてはくれなかった。
(*゚ー゚)「・・・バカ。かっこよかったよ・・・ドクオ」
しぃは俺の背中に手を回す。
しぃに抱きしめられたまま、俺は意識を失った。
- 236 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:02:46.96 ID:xjxwKROr0
- ※
('A`)「いてて、痛ぇ!」
(*゚ー゚)「ほら、動かない! 今、消毒液塗るから」
(;'A`)「けが人なんだから、もっと大事に扱ってくれよ」
俺は医務室で治療を受ける。
あの後、警備員も駆けつけて大変な騒ぎだったらしい。
男の方が重症だって。・・・娘を想う父は強し。
(*゚ー゚)「はい、終わり!!」
('A`)「いてぇ!!」
しぃは俺の背中をバーン、と叩く。
- 239 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:08:21.24 ID:xjxwKROr0
('A`)「ったく、一応、今は彼氏なんだぞ?」
(*゚ー゚)「ばーか、自惚れすぎw」
('A`)「く・・・なんて恩知らずな」
お互いに笑いながら話す。
時計を見ると、もう午後8時になっていた。
・・・ずいぶん長い時間、気絶してたみたいだ。
(*゚ー゚)「ま、でもさ」
しぃはふっと、俺の目を見る。
(*゚ー゚)「今日はありがと・・・かっこよかったよ、ドクオ」
素直にお礼を言われる。
・・・恥ずかしいけど、嬉しい。
- 240 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:09:56.49 ID:xjxwKROr0
('A`)「・・・べ、別に彼氏として当たり前のことしただけだよ」
(*゚ー゚)「へへ、その台詞、なんか嬉しいな」
言った自分も恥ずかしくて赤面する。
・・・なんだろ、俺。しぃとすごく気持ちが通じ合ってる気がする。
('A`)「・・・しぃ、あのさ!」
(*゚ー゚)「ん?」
振り返った、その仕草にすらドキッとする。
俺はしぃともっと一緒にいたい。
もっと知りたい。
ずっと――彼氏でいたい。
- 245 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:12:39.67 ID:xjxwKROr0
('A`)「俺・・・しぃのことが――
瞬間、唇がふさがれる。
しぃの唇が俺の言葉を、キスという行為で抑える。
(*゚ー゚)「―っぷは」
('A`)「・・・あ」
ファーストキス、しぃに奪われちまった。
(*゚ー゚)「ど、ドクオは私がいないと危なっかしいんだから、こ、これからも・・・」
('A`)「これからも?」
ふっと、しぃが微笑み、言った。
(*゚ー゚)「これからも、私の彼氏としていっぱい愛してもらうんだから!」
オーケイ、契約成立。
色々あったけど、なんだかんだでこうなる運命か。
それなら、喜んで受け入れよう。彼女を、これからの未来を。
- 249 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:14:29.78 ID:xjxwKROr0
('A`)「俺も、いっぱいしぃのこと愛するから、覚悟しろよ!」
(*゚ー゚)「ん――」
そう言って、俺はしぃにキスをする。
愛おしい恋人は、俺のキスを静かに受け入れてくれた。
互いの気持ちが、唇を通して伝わってくる。
俺の、大切な人。
しぃの為なら、俺はどんな壁だって乗り越えられる。
そう、思った――
- 252 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:15:50.64 ID:xjxwKROr0
- ※
(*゚ー゚)「いってきまーすw」
(`・ω・´) 「ん、しぃ。どこにいくんだね?」
(*゚ー゚)「今日はドクオとデートする約束してるんだ」
(`・ω・´) 「むぅ、わかっているな。6時までには帰ってきなさいよ!」
(*゚ー゚)「はいはい、それじゃいってきまーす」
ドアを開け、いっぱいの朝日を浴びて外に出る。
約束の時間、向こう側を見ると自転車に乗ったさえない彼氏がやってくる。
('A`)「おっす」
(*゚ー゚)「うん、時間通りでよろしい!」
('A`)「まったく偉そうに・・・ほら、早く後ろ乗って」
(*゚ー゚)「了解!」
- 255 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:17:39.69 ID:xjxwKROr0
自転車の後ろに乗り、ドクオの腰に手を回す。
ドクオがゆっくりとペダルを漕ぎ、自転車は動き始める。
(*゚ー゚)「今日はいっぱい服買うから、ちゃんと似合うの選んでね」
('A`)「また買うの!? もー、荷物持つのすごく大変なんだけど・・・」
(*゚ー゚)「彼氏はそういうこともしなきゃいけません」
('A`)「うう、そんな決まりいつ作ったんだよ・・・」
いつものように話しながら、自転車は道をスイスイと走る。
そのやや後ろに、ゆっくりと追跡してくるバイク。
- 257 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 21:18:51.24 ID:xjxwKROr0
(`・ω・´) 「まだ私は認めたわけでは無いのだぞ・・・ふふ」
( ゚д゚ )「ショボンさん、どうですこの運転! この間免許取ったばっかなんす!」
(`・ω・´) 「・・・いささか不安だが、このスピードなら君でも大丈夫だろう」
( ゚д゚ )「あ、でもでも。ガソリンがもう無いです。サーセン」
エンジンの音が少しづつ小さくなり、失速していく。
(`・ω・´) 「な、なぜ入れておかないんだーー!!」
( ゚д゚ )(ドクオさん・・・お嬢さん、頑張ってください。サーセンw)
自転車はやがて小さくなっていき、見えなくなる。
夏が終わり、秋の風が吹き始める。
ドクオとしぃを乗せた自転車は、静かに川沿いを走っていった。
fin
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