こちらスネーク、ラクーンシティに潜入した。

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:39:41.13 ID:gj9rDwrX0
  
「スネーク、判ってるいるね?今回の潜入はきわめて特殊なものなんだ」
ノイズがかった声がイヤホンを通し、男の耳に入る。
男はイヤホンに指を当てながら言った。
「あぁ。俺も化け物と撃ち合いをするつもりはない」
「スネーク、じゃぁ流れを再度確認しよう、君のいる場所は市のはずれで、メタルギアがあるとされる基地に潜入するには市街地を横断しなきゃならない。今君は──」
無線の音声はスネークと呼ばれる男の声によりさえぎられた。
「俺も子供じゃないんだ。何度も同じ説明はいらない」
「そ、そうだね」
無線越しの男が続けた。
「じゃぁ何かあったら連絡をくれ。周波数は141.12だよ」
「OK」

スネークはイヤホンから手を離すと、迷彩服に装着されているレッグホルスターからベレッタを引き抜いた。
スライドをがちゃりと引き、薬室に9ミリ弾を送り込む。
周囲は鬱蒼とした森に囲まれていた。
ここはラクーンシティのはずれにある森林地帯である。ここから数キロいけば大きな廃病院があり、それを抜けると市街地に出る事ができる。
現在、ラクーンシティは謎の感染症に見舞われ、感染者が続出しているとのことだった。
そのため、周辺地域は警察などによって封鎖され、公道や鉄道などで市内に入る事は不可能だったのだ。
ゆえにスネークはこのような森林地帯からの侵入を余儀なくされたのだった。



2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:42:47.31 ID:gj9rDwrX0
  
鎮圧のために現地最大の企業、アンブレラ社が傭兵を派遣し、鎮圧に協力してくれるとのことだった。
アンブレラ社はそもそも薬品開発に主をおいているが、サイドビジネスとして傭兵業を始めたとの事だった。
イラクにも民間企業の護衛などに一役買って出ているという実業もあげている。
他にもロシアの傭兵部隊が金銭と引き換えに部隊を送り込んだとの情報もある。
情報は現在も錯綜しているため何が真実か見極める事はきわめて困難なことであった。

スネークはベレッタを両手で握り締めながら、鬱蒼とした森林を南東に向かい歩みを進めた。




どれほど歩いただろうか、スネークは不意に時計に目を落とした。
時刻は既に18時を回っていた。日は暮れ、あたりは一層薄暗さ、不気味さを増していた。

ふと目を正面へと戻すと、3、4階立てほどの建物がスネークの視界に入った。
あたりはいまだに森林地帯のため、その輪郭をはっきりと見受け取る事はできなかったが、あれが廃病院というものだろうという予想はだいたいついていた。

病院は築30年以上は立っていると思われるほどの古びたものだった。壁にはつたがへばりついていた。
柵はさび付いていて、標識や案内にもつたが所狭しと多い茂っていたため、文字を読み取ることは不可能に等しかった。



3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:44:51.10 ID:gj9rDwrX0
  
ふっと一つのさびついた鉄製のドアがスネークの目にとまった。
ドアの中央には丸い窓がついていた。まるで船のようなドアを思わせるほど分厚い鉄のドアであった。
スネークはドアに近寄り、円窓を軽くベレッタのグリップで叩き、ガラスの強度を確認した。
確認を終えると、次の瞬間にはグリップはすでにガラスを木っ端微塵に叩き割っていた。

スネーク割った窓から手を入れ、鍵を開けた。銃を構えながら中へと侵入を試みる。
病院内は案の定真っ暗であった。市街地から隔離されたここに病院を作った意図はわからないが、既に電気などのライフラインは全て停止させられているようだった。
スネークは暗視ゴーグルを装着した。
全ての視界が黄緑色に輝いて写る。壁はひび割れ、窓はところどころ割れていてた。
すでにこの病院自体何年も使われていないようだ。

スネークが入ったドアはどうやら裏口のようであった。
この病院を抜けない事には市街地に出る事はできない。スネークは正面入り口を探す事にした。

スネークの正面には壁が広がっていて、T字路になっていた。
ベレッタのみを壁から突き出し、一瞬だけ顔を出す、左右の安全確認をする。
人影はなかった。



5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:46:19.07 ID:gj9rDwrX0
  
向かって左側は20Mほど先にドアがあり、右側も同様に20Mほど先に同じようなドアがあった。
地図も何もない建物だ、しらみつぶしに行く以外方法はないようであった。
外から病院を回るという方法もあったが、病院向かって右側には流れの速い川が流れ、反対側には鬱蒼と茂る森林がひろがっている。森林側はすでに病院の一部を破壊している。
一度迷ってしまえば戻ってくることはほぼ不可能だろう。
人間は標識や目印などがなければ利き手のほうへと自然に寄ってしまうという習性がある。
自分でまっすぐ進んでいると思っていても実際はぐるぐると円を描きながら回っているということがよくある。
冬山で行方不明になり死んでしまう場合はこのような状況がほとんどだ。
そこまでリスクを負う必要はない、スネークはそう判断したのだ。
スネークはベレッタを構えながらも、歩みを進めた。
まずは右側から探索を開始した。

スネークがドアノブに手をかけたときだった、後方で何かをうちやぶるような騒音がスネークの耳に届いた。
きびすを返し、物音のほうへと銃口をやる。



6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:47:55.00 ID:gj9rDwrX0
  
暗視ゴーグルを装着してはいるが、完全にその被写体を写しきれているわけではなかった。
ゴーグルを通して目に入ってきた映像は一人の大男の姿だった。
確認できることはその大男は上半身には衣服を着用しておらず、中肉中背、頭には黒い頭巾のようなものをかぶっていて、手には巨大な斧が握られているというものだった。
一見すると、原始人のような格好をしていた。
そして既にこの大男はスネークにとって十分脅威になりうる存在となっていた。

男は絶叫し、斧を振りかぶりながらスネークの方へと猛進してきた。
「止まれ!撃つぞ!」
スネークの警告はまるで聞いていないようであった。そもそも言葉自体を理解できているのかが疑問であった。
スネークは床に一発、威嚇発砲をしてみせたが、大男はまるでひるむ様子も見せず、いまだに猛進してきている。
「クソッ」
スネークは毒づいた。

パンッパンッパンッ

ベレッタの乾いた銃声が院内の静寂を打ち破った。
弾丸はみごとに大男の胸部に2発、頭部に一発を見舞った。

しかし大男は倒れるどころか、いっそう勢いを増していた。距離はすでに5Mもなかった。
スネークはドアを開け、中に入ると同時に後ろ手に鍵を閉め、ひたすらその場から逃げるようにして走り出した。



8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:49:51.41 ID:gj9rDwrX0
  
スネークは開けたロビーのような場所に出た。
周囲を一瞥すると、「受付」の文字が目にとまった。
長いすは床に固定されているのだろうか、一定間隔おきにずれることなく数列並んでいた。
スネークはその長いすと長いすの間に体を滑り込ませるようにして身を隠した。

「オタコン、聞こえるか」
一拍置いて、聞きなれた声がイヤホンを伝わり耳に届く。
「なんだい?スネーク」
「銃弾がきかない化け物がいた」
スネークの声からはあからさまに焦りの色がにじみ出ていた。
「落ち着いてくれ。銃弾が効かないなんてことがあるはずが──」
スネークはオタコンの声をさえぎった。
「現に俺は頭部と胸部に計3発の銃弾を食らわせたが、まるでひるむ様子も見せなかった」
スネークは無線交信をしている間にもしきりに周囲を警戒していた。
「・・・少し調べる時間をくれ。判り次第連絡をするよ」
「ああ、早くしてくれ」



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 21:51:22.03 ID:gj9rDwrX0
  
無線を終えるとスネークはゆっくりと立ち上がった。
まだあの大男はスネークを見つけてはいないようであった。

スネークはふっと肩の力を抜いた。
きびすを返し、振り返るとそこにはそびえたつようにして仁王立ちしているあの大男がいた。

「うおおおおおおおお!」

大男の叫び声がロビー内にこだまする。
同時に斧がスネークめがけて左から右にかけ、円を描くようにして振りかざされた。
スネークはしゃがみこみ、間一髪のところで斧をかわす事に成功した。斧はスネークのつけているバンダナを軽くかすめていったが、スネークの頭上を素通りしていった。

スネークは体を翻し、男の頭部に銃撃を加えた。連続する銃声、そしてその弾のコースもしっかりと大男の体を捉えていた。
弾は頭部、胴部にしっかりと着弾していたが、やはりいつものように雄たけびをあげるだけで全くきいている様子はない。



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 22:01:05.39 ID:gj9rDwrX0
  
スネークは体を大男に向けたまま数歩、あとずさる。
周囲を見渡すが身を隠すようなものは数列あるイスのみだった。
大きな観音開きのドアがあったが、木製の板が幾重にも釘うちされていて、数発銃撃を加えただけでは到底開きそうにはなかった。
大男はそれを知ってか知らずか、膝辺りにある長いすを両手でつかみ、それを引っ張りあげた。
長さ2M強はあろう長いすがあっという間に、まるでサツマイモでも彫るかのようにしてタイルからはがされた。
大男は長いすをスネークめがけ、投げ飛ばしてきた。
スネークは身を縮め、回転して受身を取った。
長いすはスネークの後方にあった観音開きのドアに直撃、見事に打ち破られた。

ドアから広がる光景は裏口のジャングルを思わせる森林とはうってかわり、整備された公園の木々を思わせるものだった。
まだ夕刻時なのだろう、空がオレンジ色に染まっていた。
スネークは久しぶりに日の光を仰いだような気分に浸った。
だが、まだ安心をすることはできない、スネークそう自分に言い聞かせると今までにないほどのスピードでドアに向かい走り出した。



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 22:25:00.20 ID:gj9rDwrX0
  
後方を何度も振り返りながらも全速力で走る。
そのつど腰の弾帯から金具のぶつかり合う音が耳に届いた。

徐々に木の本数が減ってくるのがスネークにも判った。
周囲を見渡すといつの間にか街路灯が灯っていた。どうやら公園のようなところに出てきたようであった。
先ほどの病院とは違う、出来たばかりの錆のない案内標識がスネークの目にとまった。

『ラクーンシティ公園』

標識にはそう刻まれていた。下には色々と公園についての説明があるようであったが、スネークは黙殺した。
公園といっても、周囲は木々に覆われ、中央は1周400Mはあろう、グラウンドが広がっていた。

だが、普通の公園と違うのは園内の大きさだけではなかった。

人が一人としていなかったのだ。



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 22:26:18.32 ID:gj9rDwrX0
  
スネークはその場にしゃがみこむと、いつものようにイヤホンに指をあて、怒鳴りつけた。
「オタコン!この街はおかしすぎる!さっきの化け物といい、ゴーストタウンのような街といい、一体どうなっているんだ!?」
オタコンの焦ったようなびくついた返答が帰ってきた。
「す、すまない。どうやら・・・アンブレラ社の開発したT−ウィルスというものが原因らしいんだ」
「T−ウィルス?」
スネークは鸚鵡返しをする。
「あぁ、それに、色々と面白い情報が手に入ったんだ」
オタコンはそう言うと、さらに続けた。
「アームズテック社、覚えているかい?」
スネークは一瞬考え込んだが、すぐに記憶の引き出しからその単語を探り当てた。。
「メタルギアレックスを開発した、あのアームズテック?」
「そうだよ。どうやら、アンブレラとあのアームズテックが業務提携の話を最近持ち上げていたらしいんだ・・・」
スネークは顔をしかめた。
「おかしいな、アームズテックはアラスカの事件以後兵器業界から手を引いたって話じゃ・・・」
オタコンは待ってましたとばかりに声を張り上げた。
「そうなんだよ!実はさっき、有力情報を入手したんだ!アームズテックの傭兵や武器をアンブレラに流してるっていう話なんだ!」
「だからアンブレラは最近傭兵業を始めたって訳か・・・」
スネークは苦虫を噛み潰したような表情になった。



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