こちらスネーク、ラクーンシティに潜入した。

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 22:27:22.09 ID:gj9rDwrX0
  
「なんてこった、じゃぁ例の新型メタルギアもアンブレラが関わっている可能性が?」
「その可能性はかなり高いね」

スネークは少し考えたあと、おもむろに立ち上がり、オタコンに問う。

「アンブレラの内部情報や何かに詳しい人間はこの周辺にいないのか?」
「一つだけ、該当する機関があるよ」

「なんだ?」

「『S.T.A.R.S』と呼ばれる市の警察特殊部隊だ。多分、今回の件にも彼らが携わっているはずだから、警察署に向かうといいよ」

「判った」

そういうとスネークは足早に公園をあとにした。



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 22:48:32.32 ID:gj9rDwrX0
  
公園の門をくぐりぬけると、スネークの目の前には市街地が広がっていた。
周囲を見渡せば必ずといっていいほど黒煙や緊急車両の行きかう様子が見て取れた。

「おい、あんた!」

最初その声がスネークにかけられたものだとは判らなかった。
声の主がスネークの肩に触れた事でようやくそれだと理解することができた。
「あんた、アンブレラの傭兵か何かか?」
話をかけてきた男は青い制服に身を包んでいた。帽子をかぶり、手にはショットガンが握られていた。
胸には銀色に輝く警察バッヂが輝いていた。
警察官であった。
スネークは警官の質問には答えなかった。
「警察署はどっちだ?」
「あんた、名前は?」
話のかみ合わない二人。
しばらくの沈黙の後、スネークは返答をした。
「スネーク。スネークだ。」
警官は少しにやついた後に頭を左右にふった。
「そうか、名前を言いたくないならいい。俺はレイモンドだ。それと警察署に行く気ならやめておいたほうがいいぞ」
「何故だ?」
「生存者がいる見込みはかなり薄いだろう。行っても無駄死にするだけだ」
レイモンドはそう言うと、思い出したように会話をつなげた。
「それと、あと30分もすれば救難ヘリが来る。俺たち警察とあんたら傭兵はこの公園周辺の死守をまかされてるだろ?違反するわけにはいかんよ」
「・・・いや、俺はS.T.A.R.Sの隊員に用が。」
警官はスネークの返事を聞かないまま、そそくさと立ち去っていった。



54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 23:05:14.36 ID:gj9rDwrX0
  
今まで幾多の潜入を経験してきたスネークであったが、ここまで堂々と侵入できることは初めての経験であった。
スネークは自嘲めいた笑みを浮かべた後、オタコンへと連絡を取った。

「ここから警察署までどれほどかかる?」
「目の前に大通りが見える?そこをまっすぐ行けばすぐにつくはずだよ」
「わかった」

無線をきると、視線を目の前に広がる片側二車線の道路へとやった
スネークは正面の大通りから多数の警察車両が列を成し、公園へ向かってくるのを目視した。
有に10両以上はあるようだった。
車両群はぞくぞくとスネークの横を通過し、園内へと侵入して行った。
荷台から続々と民間人が降りてくるのを見送ると、スネークは市街地へと足を踏み出した。
高層ビルのような巨大なビルこそないが、マンションや雑居ビルなどが乱立していた。
まだ周囲には警官隊や傭兵たちが周囲を警戒しているようであった。

しかしそのような光景も、すぐに影を潜めていった。
先ほどまでとはうってかわって、人影はいっきにまばらになった。警官の姿もまるで見なくなった。
街の奥へいけばいくほど、街の損害は激しさを増し、炎上する車なども目立ち始めた。
周囲には警官のものと思われる死体も転がっていた。
死体は損傷がひどく、何かに噛み切られたような人工的傷が多く見受けられた。
見ているだけで吐き気を催す光景であった。



60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 23:24:59.47 ID:gj9rDwrX0
  
スネークは一人、歩道を歩いていた。時刻はすでに19時を回っている。あたりは漆黒の闇に包まれていた。
頼りとなる明かりは月明かりと炎上する建物や車両のものがほとんどだった。

スネークはT字路に差し掛かった。
そこを通過しかかっていたときであった。スネークの体が車のヘッドライトに照らし出された。
すぐに交差点のほうへと目をやると、そこには大型トラックが猛スピードでスネークのほうへと向かってきていたのだ。
トラックはスピードを緩める事なく、正面にある雑居ビルに突っ込んだ。
スネークは飛び込み前転のようにして体を中に投げ出した。
起き上がり、振り向いたときにはすでにT字路は完全にトラックにより封鎖されたようになっていた。
トラックは火の粉を上げながら、危なげなガソリンの臭いを漂わせていた。
スネークはその場を足早に立ち去った。
その後巨大な爆発音を聞いたが、その正体が大型トラックだったということは言うまでもない。

すぐ着くとオタコンは言っていたが、一向に警察署を思わせる建造物の景色は見られなかった。
スネークは足を止め、周囲を見回したが、風景という風景はさほどかわっていなかった。
また歩みを進めようとしたときだった。
スネークは足首に違和感を感じ取った。
人の手がスネークの足首を完全に捕まえていたのだ。スネークはその傷だらけの手を見たとき、負傷した民間人か何かかと思った。
しかし、その正体は想像とははるかに違う存在であった。
スネークは自らの足首をつかんでいる人物の全身を見たとき、背筋が凍りつくような寒気に襲われた。
手の甲は切り傷のような細かなものが多くあり、腕からは肉がむき出しになり、その肉の間からは骨が垣間見えた。
さらに胴体は銃傷を思わせる弾痕が数多く存在していて、そこは赤黒く染まっていた。
顔面の皮膚もただれ、最早精気を完全に失っていた。



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 23:41:20.40 ID:gj9rDwrX0
  
「なっ・・・」

スネークは思わず声を漏らした。足を持ち上げ、その手を振り解くと、スネークは身を翻し、その場を後にしようとした。
ドン、とスネークは全身に衝撃を感じた。何かとぶつかったようなショックだった。

スネークは顔をあげると、目の前には足元にいた化け物とそっくりの物がたちはだかっているのが見て取れた。
スネークの迷彩服にはぶつかったものの血痕と思われるものがべっとりとこびりついていた。
そのおぞましい生物はスネークの両腕をがっしりとつかんだかと思うと、次の瞬間には顔をスネークの首元へとねじ付け、首にかじりつこうとしていた。


スネークは内心諦めかかっていた。
乾いた銃声のような音を聞くと同時に、スネークはゆっくりと意識を呼び覚ました。
もう一度顔をあげると、目の前にいた化け物は地面に突っ伏していた。
小さく痙攣をしていたが再度立ち上がる雰囲気はないようだ。

「危ないところだったわね」

透き通ったとても綺麗な女性の声が聞き取れた。
声の方へと一瞥をくれると、そこには黒のタイトスカートにブルーのタンクトップ姿の女性が一人、手にはM4A1アサルトライフルを携えたたずんでいた。
「あんたが俺を・・・?」
「そんなことはどうでもいいわ。あなた、アンブレラの兵士?」

スネークはまだ状況が認識できずにいた。

「あっ・・いや、そうではない」
女はそれを聞くと、そう、とつぶやき、肩の力を抜いた。
「ここは危険よ、いつまたゾンビが出るか判らないわ、早く警察署に行きましょう」

「あ、あぁ」
スネークは促されるまま女のあとについていった。



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/23(金) 23:53:46.31 ID:gj9rDwrX0
  
警察署に向かう途中、幾度となく先ほどの生物と遭遇したが、どれもこれもきわめて機動性が低いことがわかった。
知能も著しく低いようで、唸るのみで他に言語を話さないようだった。
だが、防御力は異常なまでに高く、銃弾を撃ち込んだだけでは倒れる気配をまるで見せない。
これが集団になれば警官隊も対処できなくなる訳だ。

「私はジル・バレンタイン、ここの警察官よ」

唐突にジルという女は自己紹介を始めた。
「スネーク、ソリッド・スネークだ」
「スネーク?変な名前ね」
ジルは大してスネークに興味を示す様子もなく、微笑をした後にすぐに向き直った。
「それより、あの化け物はなんなんだ?」
「あれはゾンビ、アンブレラの開発したウィルスに感染した人間よ」
にわかには信じがたい事だった。
既に廃病院での経験があったため、銃弾に耐えうる人間がいることは理解していたが、先ほどの生物の原形が人間だったとは到底思えなかったのだ。
あのような生物が人間と同じ生活を営んでいたとは想像しがたかった。少なくともスネーク自身はそう感じていた。

「そんなおとぎ話みたいな事が」
「あら、現にあなたは襲われたじゃない」

スネークは返す言葉が見当たらなかった。

「あそこよ、あそこが警察署」
ジルは振り向きはせず、警察署を指差した。
ジルの指差す先には現代の建造物とは少し空気の違うものがそびえたっていた。
警察署とは思えないような古風なつくりのものだった。館のような物を連想させる。

二人は警察署の方へと足早に向かった。



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/24(土) 00:33:00.29 ID:b61CCSFi0
  
警察署内はやはり市街地のように荒れに荒れているようだった。

外のつくりと同じように、内装もとてもレトロなつくりになっていた。
まず観音開きの扉を開けると、目の前には吹き抜け式のロビーが広がり、正面には女神の像がある。
そして壁などは全てレンガのようなもので作られている。扉も全てが木製と、凝った作りになっている。
もしゾンビの襲撃がなければとても綺麗な状態で補完されていたであろう署内も今は血痕があちこちにとびしり、銃撃戦を行った跡が壁に銃痕という形で刻まれていた。

だがそれでも署内は警察官たちが多数生存していた。
生き残った警官たちは署内の安全をたもっているようだった。
水道や電気といったライフラインはここだけは動いているようだった。
武器弾薬にしても警察署だけに、地下に厳重においてあるとのことだ。

だが、問題は食料にあった。

二人が署内に入るとあからさまに敵愾心をむき出しにする警察官が数名いた。



73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/24(土) 00:33:23.50 ID:b61CCSFi0
  
「おい、ジル。そいつはなんだ?まさかアンブレラの兵士か?」
スネークは迷彩服を着用しているため、すぐにアンブレラの兵士と間違われるが、本来の目的を隠すということでは好都合だった。
他の傭兵企業からの派遣と思われるだけであろう。
「いいえ、違うわ」
ジルがスネークが傭兵であることを否定しても数名の警官たちはいまだ敵愾心を消す様子はなかった。
「なぁジル。外はあの状況だし、救難のヘリだって随分前に最終が出ちまった。次くるのは1週間後だ」
一人の警察官がジルに近寄りながら話をはじめた。
その警官はタクティカルスーツを着用していて、制服も紺色で通常の制服とは違うものだった。
「俺たちはここで最低1週間は生き延びなきゃいけないんだ。食料だって少ない。それなのに」
警官はスネークを指差した。
「こんなどこからきたかもわからん奴を引きずりこんでくるなんて!俺たちを殺したいのか!?」
ジルは呆れた顔をした。同時に軽蔑の視線を向けた。
「あなたそれでも警官?だからS.T.A.R.Sの試験に2度も落ちるのよ」
ジルは警官を一喝したが、まだ鬱憤を晴らし足りない様子で警官はまたも怒鳴り始めた。
「おいおい、そいつとこれは関係ないだろ?俺が言いたいのは──」
「そこまでだ、ケビン」

ケビンという警官の声は、後ろで腕組をしている黒人警官によってさえぎられた。
「ケビン、お前の言い分も判らないでもないが、俺たちは警官は市民の安全を守る事が仕事だ。たとえ俺たちの身がどうなろうともだ」
「・・・」
ケビンはばつの悪そうな表情をしながら俯いた。



166: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/24(土) 19:29:41.18 ID:b61CCSFi0
  
「隊長、部隊の配備はほぼ終了、いつでも攻撃できます」
白髪で中年の男はそう告げた。年齢、容姿には似合わず、格好はカーキの服に黒の弾帯という厳しい格好をしていた。
「了解した」
ニコライはそう言い、2回頷いた。
「いつでも警察署を襲撃できるように準備していてくれ」
ニコライの命令に男は1度頷き、踵を返して同じような格好をしている兵士たちの中へと消えていった。
ニコライはふいに周囲を見回した。みな、目出し帽にゴーグルを着用し、先ほどの男と同じようなカーキの服に黒の弾帯、M4A1アサルトライフルを携えている兵士が大勢いた。
見渡せば必ずといっていいほど兵士が目に入る。数にすれば30名弱の小隊規模の部隊だ。
全員警察署正面に10名づつの分隊規模でかたまり、一定間隔ごとにちらばっていた。
ニコライは泳がせていた視線を警察署一点に絞り込んだ。
肩からぶら下がる無線に手をあて、スイッチを入れる。
「各班侵入準備」
ニコライが落ち着いた声色で言う。
「B班準備完了」
「C班準備完了」
予想通りの返信が来た。ニコライは満足そうに頷くと、「侵入せよ」と一言、さらりと命令を下した。
各分隊は一糸乱れぬ部隊行動で次々と署内の門前まで接近していった。無論その中にはニコライも含まれていた。
音も無く、静寂のうちに侵入を完了した。
「各班その場にて待機せよ」
ニコライは最期にそう告げ、無線のスイッチを切った。



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