こちらスネーク、ラクーンシティに潜入した。

167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/24(土) 19:32:17.66 ID:b61CCSFi0
  
ロビー内には相変わらず重苦しい空気が漂っていた。
沈黙をやぶったのは警察署屋上からの一本の無線だった。
「こちらエリック・エリオット組、マービン、応答を願う」
署内にはまだ数十名の生存者がいたため、署内の各地に警備として警官を交代性で配置していた。
屋上には屋上から地上へ繋がっている階段があるため、ここだけは2人の警官を配置していた。
先ほどケビンを一括した黒人警官があわてた様に無線に駆け出した。
「こちらマービン、どうぞ」
「屋上から今ヘリを確認した。徐々に接近している。」
マービンは眉間にしわを寄せた。
「おかしいな、救難ヘリはあと1週間近くはかかるって話じゃ。」
「判らんが、確実にヘリだ。ライトを点している」
マービンはそうか、と言うと少し考える素振りを見せた
「すぐにそっちに向かうから待っていてくれ」
「了解した」
無線交信を終え、マービンは腰のホルスターからベレッタを引き抜き、マガジンの弾を確認し始めた。
すると今までパソコンと格闘をしていた金髪で小柄な婦警があからさまに不服の表情を浮かべていた。
「マービン、私も行くわ」
「だめだ、リタ」
マービンは続けた。
「リタにはここに残って署内の監視を続けてもらわないとならない」
リタはまだ納得がいかないようだった。
「心配はいらん。屋上に行くだけだ」
一拍置いてからリタは口を開いた。
「気をつけて」
「ああ」
そう言ってマービンはリタに笑いかけると、オフィスへ通じるドアを開け、中へと消えていった。



168: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/24(土) 19:32:51.15 ID:b61CCSFi0
  
ヘリの爆音はとうとう署内でも聞き取れるほどになっていた。
エリックとエリオットは上空のヘリに目をやった。
双発で巨大なヘリコプターだ。署内上空をぐるぐると旋回しているようだった。
ヘリまでの距離は10メートルもないように見えた。
「救難ヘリか!?」
エリックがヘリの爆音に負けずと声を張り上げた。
「判らん!だがあの大きさなら40名以上は乗れるはずだ!」
突然、ヘリの機首につけてあったライトが屋上を照らし始めた。
「うおっ」
エリオットが間の抜けた声を出す。
「まぶしっ」
大型ヘリのライトは強烈な光を発していた。生身の人間が直視できる訳がなかった。
二人は目を細めながらも未だにヘリに視線を投げかけていた。
筒状になっているヘリの後部ハッチが徐々に下がり、機内を露にした。
そして数秒でそれは全開にまでなった。
するとハッチからすべり落ちるようにして棺桶のようなものがエリックたちめがけ、投下された。
2人はそれをただそれを見守っていた。
コンクリートを突き破らんばかりに轟音を立て、長方形の鉄かごは屋上に直撃した。
それと同時にヘリは急上昇をしたかと思うと、漆黒の闇に機体を消していった。



169: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/24(土) 19:33:43.26 ID:b61CCSFi0
  
先ほどの騒音はまるで幻だったかと思わせるほど、屋上は静まり返っていた。
エリオットはゆっくりと鉄のかたまりに近づいていった。
「おい!よせ!危ないぞ!」
エリックが注意を促した。
しかしエリオットはまるで聞き耳を持とうとはしなかった。
杞憂に終ればいいんだが・・・エリックはそう抱懐した。
『タイラント』、鉄のかたまりにはそう記入されていた。他にもアルファベットと数字の羅列が確認できた。
その文字の下にはアンブレラのロゴが刻まれてあった。
エリオットは鉄のかたまりを銃のグリップで数回叩いた。
すると、それからはくぐもった音が返ってきた。どうやら中は空洞のようだった。
「中になにかあるのか?」
エリオットはそういうと、長方形の上面部と側面部の凹凸を発見した。
ちょうど手のひらが入るほどの隙間だった。
エリオットはそこに手を入れると、無理に開けようとした。
しかし、それは全く動く気配を見せなかった。
こじ開けようと、エリックは何度も同じ動作を繰り返したが、やはり一向に開く様子はない。



170: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/24(土) 19:34:18.03 ID:b61CCSFi0
  
呆れ顔でエリックが見守る中、ふっと鉄の重量が軽くなるのをエリオットは感じ取った。
ドアのように鉄の上面部が開けていたのだ。
エリオットは鉄の中身に目を落とす。
中には全身を濃厚な緑色のコートで全身を包み込んだ体長2Mはあろう大男が仰向けに横たわっていた。
大男の手は上空に向けられていた。扉を開けたのは他でもない、この大男本人であった。
男の胸にはやはり『タイラント』という文字とアルファベットと数字の羅列が記入されてあった。
エリオットは背筋に寒気を感じた。
顔からさーっと血の気が引いていくのをエリックはしっかりと見ていた。多分、自分も同じような表情なのだろうとエリックは思った。
その『タイラント』なるものがアンブレラの開発した兵器だと理解したのは、エリオットが頭を鷲掴みされてからだった。
「くそっ!待ってろ!今助ける!」
エリックはタイラントに接近し、エリオットに被弾せぬように、ベレッタを発砲した。
近くで見ると、タイラントの大きさはさらに増大したような気がした。既にエリオットの体は宙に浮かび、足をばたつかせていた。
タイラントはエリックを一瞥すると、開いている左手をぎゅっと握り締め、弾丸のように早いパンチをエリックに見舞った。
エリックの頭部に岩のようなタイラントの拳がねじ込まれ、潰れたトマトのごとくエリックの頭部がはじけとんだ。
頭部を粉砕された胴体は膝からゆっくりと崩れ落ちた。
エリオットはまだ息があるようで、果敢にも抵抗をしていた。
が、次の瞬間、タイラントは渾身の力をこめ、エリオットの頭部を握りつぶした。
ばたつかせていた手足は途端に力がぬけ、糸の様にぶらさがった。


ニコライはヘリが消えていくのを見届けると、無線のスイッチを入れ、命令を下した。
「突入」
号令と共にいっせいに兵士たちが窓を割り、署内に侵入していった。



224: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:05:07.47 ID:FK2SIfJ50
  
ロビーに残されたのはスネーク、ジル、ケビン、リタの4名になった。
ケビンは苛立っている様で、マービンが消えてからはしきりにたち歩いている。
ふとケビンは立ち止まり、空虚に目をやった。何かを考え込んでいるようにスネークの目には写った。
「何か、聞こえなかったか・・・?」
唐突にケビンが言う。
「あぁ」
スネークがそれに同調した。
ケビンはレッグホルスターからガバメントと呼ばれる45口径もする大型拳銃を引き抜いた。
スネークも同様にベレッタを両手でしっかりと握っている。
二人の様子を察してか、ジルも肩から吊るしていたM4A1のボルトを手前に引いた。
「そことそこから来る気がする」
ケビンは正面扉の左右に等間隔に設置されている左右のドアを指差した。
「あそこは外と接している窓がいくつかあるから、入ってくるとしたらそこからだ」
3人はテーブルを盾にするようにして、銃口をテーブルから突き出し、身構えた。
リタは頭を両手でかかえながらその場にしゃがみこみ、おびえたように隠れてしまった。



225: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:05:23.73 ID:FK2SIfJ50
  
正面の扉から向かって右側のドアが、きい、と軋む音を立て、ゆっくりと開いた。
扉からは最初に銃口が飛び出していた。次に銃身が写り、カーキの服を着用している兵士の姿が露になった。
一人が侵入すると一人目の兵士は小走りに一番端の壁まで移動し、壁によりかかるようにして小銃を構えた。
続々と兵士たちがドアからなだれ込んできた。
そのうち一人の兵士が中央にある扉を開けた。
観音開きになった扉から、先ほどと同じような格好をした兵士たちが次から次へと侵入してきた。
その中で一人、ベレー帽をふかぶかとかぶっている指揮官とおぼしき中年の男に話しかける兵士がいた。
「報告、階段下、オフィス、東通路、外階段にいる警官を処分しました」
ベレー帽の男はにやついた。
「まだ中にいる連中をくまなく探せ。生き残っている連中は全員始末しろ!警察署は後ほど焼き払う、処分するのは生存者だけにしろ!」



226: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:06:24.44 ID:FK2SIfJ50
  
「こいつぁやばいぜ、ジル」
ケビンが茶化したように言う。
「ふざけないで」
スネークは二人のやり取りをよそ目に、オタコンへと連絡を取り始めた。
「オタコン、まずいことになった」
「どうかしたのかい?」
「アンブレラの傭兵が生存者の一掃を始めた」
「やはり・・・。スネーク、早くそこから脱出するんだ」
「できたらとっくにそうしている」

「おい!あそこに誰かいるぞ!」
正面扉の方から兵士の怒鳴り声が響いた。
すぐ後には4人のいるあたりには雨のような銃弾が降り注いだ。
「オタコン!一度無線を切るぞ!」
スネークはそう言い放つと、一方的に無線を終了させた。
ジルとケビンは2人で果敢に数十名の武装集団に銃撃を加えていたが、敵は徐々に、そして確実にその距離を縮めていた。
「くそ!どうする!どうする!」
ケビンが落ち着きをなくしはじめた。この間にも、銃撃は止む事無く降り注いでいた。



228: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:11:09.91 ID:FK2SIfJ50
  
アンブレラの兵士たちはじりじりと詰め寄り、既に後少しの所まで迫っていたが、兵士たちは不意に足を止めた。
彼らは突然そろいにそろって踵を返したかと思うと、正面扉に向かい銃口を向け始めた。

スネークはゆっくりと、静かに体を起こし、テーブルから身を乗り出した。
正面にある扉に視線をやると、ドアからは迷彩服に身を包んだ兵士がうっすらと目視できた。
アンブレラの兵士とはまるで違う軍装であった。
手にはAK74が握られていた。迷彩もREED(アシ)迷彩というロシア軍の白黒の市街地用の迷彩であった。

スネークの脳裏にはふっとオタコンの説明がよぎった。ロシアの一部隊が参加しているとの情報があるという報告のことだった。
スネークはすぐに理解した、彼らがそのロシアの傭兵部隊だったのだ。

アンブレラの指揮官とおぼしき男はすでに身柄をロシア傭兵により拘束されているようだ。
すると今度は小太りの男が、先ほどまでアンブレラの指揮官が陣取っていた場所に立ちはだかった。

「セルゲイ大佐!まだ署内には多数のアンブレラ兵士がいると思われます!」

ロシア軍装の傭兵がセルゲイと呼ばれる小太りの男に報告をする。
するとセルゲイはそうか、と一言漏らすだけで、すぐ後には撤退の号令をかけた。
ロシア傭兵たちはそのまま命令に従い、アンブレラの指揮官をまるで米俵のようにかついで署内を後にしていった。
ロシア傭兵たちは嵐のごとく去っていった。
残されたのは数々の薬きょうと銃殺されたアンブレラの兵士の死体のみだった。



238: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:51:28.54 ID:FK2SIfJ50
  
スネークを含め、4人全員は何が起きたかわからないという表情をしていた。

しかしスネークの頭には『セルゲイ』という単語が焼きつき、離れなかった。
「まさか・・・あのセルゲイか・・・!?」
思わず声をあげる。

「オタコン、聞こえるか!セルゲイだ!ロシアから参加した傭兵部隊はセルゲイの部隊だ!」
オタコンは話の脈絡をまるで理解できていないようだ。
「スネーク、もっと詳しく話してくれないかい?」
「シャドーモセスでリキッドと合流をする予定だった旧ソ連の傭兵部隊だ!」
オタコンはしばらくの間だんまりを決め込んだ。
それから一拍おいて、思い出したかのように言葉を発する。
「そうか・・・彼らもメタルギアを使いロシアの再建をもくろみ、リキッドと手を組んだ・・・だから今回こそ彼らは新型メタルギアを狙い・・・」
「そういうことだ。話が厄介になってきたな。奴らより早くメタルギアを発見せねば」

「おい、あんた。あの連中を知ってるのか?」
その声からはあからさまに疑念の色がこめられていた。声の主の方へと振り返ると、案の定そこにはケビンの姿があった。
明らかにその目から疑念の視線が投げかけられていた。
「・・・」
「答えられないか」
ケビンはふん、と鼻を鳴らした。
暫くの間考え込んだが、不服そうにスネークは重い口を開いた。



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