こちらスネーク、ラクーンシティに潜入した。

239: 1 ◆uOC5Omg9jw :2006/06/25(日) 03:52:00.44 ID:FK2SIfJ50
  
「・・・奴らは旧ソ連崩壊後、孤立した軍隊の一部だ。今回やつらは・・・ウィルス事件のどさくさに紛れ、この市のはずれにある新型兵器を奪うつもりだ」
「新型兵器?」
ジルが問う。
「ああ。全てを話すと長くなるが、以前兵器業を営んでいた大企業が情報をそのままアンブレラに流し込み、今度はアンブレラが取って代わり兵器産業をそのまま受け継いでいる」
ジルが反抗の色を見せた。
「そんな話きいた事無いわ」
スネークは当然だという表情を見せた。
「無論水面下で行われていた取引だ、世間が知るわけも無い。アンブレラが資金提供をするかわりに、その企業は技術と情報を渡した」
「じゃぁ何であいつらはニコライを連れて行ったの?」
「ニコライ?誰だそれは」
ケビンが横槍を入れる。
「さっきの中年男の名前よ。彼の部隊はアンブレラの私的な問題処分のために活動しているの。だからさっきスネークが言った新型兵器についても何か知ってるんじゃないの?」
セルゲイたちはニコライという男からメタルギアの場所を聞きだすつもりだ。スネークは確信した。
早く見つけなければ確実にメタルギアはセルゲイたちの手に渡ってしまう。増産されれば第三世界をはじめ、さまざまな紛争地域へと拡散することになる。
それだけは防がねばならない。

しかしスネークの思考は、強制的に停止させられた。
マービンが屋上へ行くという言葉を残し、入っていったドアから体長2Mはあろう大男が頭をぶつけぬようにして、ゆっくりとドアを潜り抜けてロビーに入ってきた。
タイラントだった。
右手には全身血まみれのマービンが頭部を鷲掴みにされ、引きずられる形でタイラントと共にロビーに現れた。



347: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/25(日) 23:26:09.85 ID:FK2SIfJ50
  
真っ先に声を上げたのはリタだった。
「マービン!」
マービンは完全に事切れている。その事は火を見るより明らかだった。
言うまでも無く、マービンから返答はない。
リタの目じりにはたまりにたまった涙があった。
タイラントは肉塊と化したマービンを握ったまま、立ち止まった。

直後、がちゃりという銃のスライドを引く音が聞こえたかと思うと、リタがタイラントに向かい発砲をしていた。
何発も撃ち込んだ。緑色のコートには十数発の弾痕が刻まれる。
だが、タイラントは何食わぬ顔で空虚を見つめている。
タイラントが死体を手から離した途端、4人の方へと突進してきた。
4人は蜘蛛の子を散らすようにして散り散りに逃げ回った。
タイラントはそのままロビーのテーブルへと激突し、テーブルは見事に砕け散った。
あんなものが人間に直撃しては、まず生きていることはできないだろう。
スネークは自分の横に転がる兵士の死体からM4A1を拾った。
セレクターをセミオートからフルオートに変更すると、スネークはトリガーを引き絞った。
乾いた銃声と共に、銃床を伝わって肩に振動が押し寄せる。
M4から発射された弾は一直線にタイラントに向かっていき、着弾した。
だが、やはりこれにも動じる事無く仁王立ちをしている。

「クソっ!弾の浪費だ!撤退したほうがいい!」
ケビンはそう言い放つと、一目散に退散していった。
ジルはそれを確認すると泣きうな垂れているリタに肩を貸す、そしてドアのほうへと向かった。



348: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/25(日) 23:27:08.23 ID:FK2SIfJ50
  
スネークは3人が警察署から出るのを確認する。
今ここでスネーク自身も退避してしまえば確実にジル、リタの2人はタイラントに攻撃されてしまう。
どうにかしてここで多少の時間を稼がねばならなかった。
周囲にはアンブレラの兵士の死体が十数体ある、武器弾薬に関しては心配いらなかった。
スネークは兵士の死体へと目を落とした。
兵士の弾帯にはM4の弾倉に加え、いくつかの手榴弾がくくりつけられてあった。
銃弾は効かずとも、手榴弾などの爆発物ならばある程度の打撃を与える事は可能だろう、スネークはそう算段した。
タイラントはそれを知ってか知らずか、スネークに反撃の隙を与えまいと左右のパンチをひっきりなしに繰り返し出している。
タイラントはその大きさには似合わず、とても軽やかな動きでスネークを追い詰めていった。
スネークもパンチを避けながらも、果敢にM4で攻撃を加える。
タイラントも流石に頭部への銃撃は怯む素振りを見せたが、またすぐに体勢を持ち直した。

タイラントとスネークの間は1,5Mほど間隔が開いていたが、タイラントは難なく攻撃を繰り出す事ができるようだ。
スネークは体をタイラントの方へと向けたまま、後ずさる形で歩いている。
ふっとスネークは足元に硬いものがつっかかったと思うと全身を妙な浮遊感が襲った。
足元には死体があった。
気がついたときにはもう遅く、スネークの体は完全にバランスを失っていた。
スネークの背中に鈍痛が走る。スネークは床にたたきつけられた。



349: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/25(日) 23:27:58.47 ID:FK2SIfJ50
  
タイラントはそれを見逃さなかった。両手を重ね、指を絡ませる。タイラントは握り締めた両手を大きく振りかぶり、スネークめがけ振り下ろす。
スネークは即座に体を左に反転させた。
タイラントの両手はスネークのいたタイルを木っ端微塵に砕く。
タイラントは攻撃の手を緩めない。すぐにスネークの背中を蹴飛ばした。
あまりの痛みにスネークは体を丸めた。
タイラントは再度両手ぎゅっとを握り締め、スネークに振り下ろす。

スネークは暫くの間目を閉じていたが、タイラントの攻撃があまりに遅いため、恐る恐る重いまぶたをあげた。
するとそこにはタイラントの巨体ではなく、細身で筋肉質の見覚えのある姿があった。

グレーとオレンジ、白の三色のみで彩られ、背中には鞘と思われる細長い筒が装着されている。
サイボーグ忍者だ。
スネークは視線を忍者からタイラントへとやった。
タイラントは両手首より先を2本とも切断されていた。
にも関わらず、タイラントは表情を微塵も変えることはなかった。
タイラントは一度切断された両手首に目をやると、スネークらに背を向け、オフィスの中へと姿を消していった。


「お前は・・・!」
スネークは痛みなど忘れ、思わず声を漏らした。
「大丈夫か」
忍者はくぐもった声でスネークに問う。
「お前はシャドー・モセスで死んだはず!」
「・・・」
二人の間には暫くの沈黙があった。
「早くここから離れた方がいい」
忍者はそういい残すと、一瞬にして周囲の景色と同化した。ステルス迷彩と呼ばれる最新の光学迷彩だ。
「おいっ、待てっ!」
スネークの声も届かず、忍者は消え去った。



350: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/25(日) 23:28:32.36 ID:FK2SIfJ50
  

スネークはおもむろに立ち上がり、周囲を見回す。だが、やはり忍者の姿はどこにもなかった。
唐突に耳のイヤホンから電子音が響く。
「スネーク!大丈夫かい!?突然無線が切れたから」
オタコンの怒鳴り声だった。
「ああ。それより、ニンジャが現れた」
「ニンジャ・・・?もしかして・・・あの、サイボーグニンジャ?強化骨格の?」
「ああ」
「あれは・・・シャドー・モセスで死んだはずじゃ・・・」
「いや、ヤツだった。化け物の腕を切り落とし、消えた」
暫くの間、静寂が支配する。
「じゃ、じゃぁ僕は忍者の事について少し調べてみる事にするよ」
「あぁ、頼む」
そう言うと無線は切れた。

スネークは兵士の死体からM4とその弾倉を剥ぎ取り、装着する。
そのままスネークは警察署を後にした。警察署を出て、少ししてから耳を劈くほどの爆音が聞こえた。
爆風を伴った大きな爆発だ。スネークは振り返ると、そこには黒煙と共に燃え盛る警察署の無残な姿があった。
アンブレラの兵士が仕掛けた爆弾が爆発したのだった。

街に潜入してから4時間近くを経過していた。
潜入当初はまだ警察、市の機能はあったが、わずか4時間ほどで警察をはじめ各機関は完全にその機能を停止していた。
街は死体が徘徊するゴーストタウンと化している。取り締まる警察もない。
ゾンビと呼ばれる感染者の数も明らかに増えているようだった。
逃げ遅れた市民や鎮圧にあたっていた警察などが巻き込まれようだ。



382: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/26(月) 00:54:20.73 ID:0ljoibAS0
  
程なくスネークは最初に行き着いた巨大な公園へと行き着いた。
やはりここも他の地域と同じように、多数の感染者により埋め尽くされていた。
公園内には十数台の警察車両のバンがあったが、どれも火の手があがるか、鉄くずのようにみるも無残な姿になっている。
周辺は感染者だけではなく、銃撃を加えられ死亡したと思われる警察官などが多数いた。
スネークはふと見覚えのある一人の男にめがとまった。
レイモンドといった中年の警察官であった。レイモンドの体にもいくつかの目立つ傷が見られた。
だが致命傷になってるとは思えない。
スネークはレイモンドに近寄る。
「生きてるか?」
レイモンドは頷いた。やはり死んではいないようだった。
「アンブレラの奴らが・・我々を攻撃し、市民をおきざりにしていった・・・」
荒い息遣いでレイモンドは言った。
レイモンドは話している途中も何度か腹部を手で押さえ、嗚咽した。
周囲を見回すと、あたりは彼の物と思われる吐しゃ物があった。
「あいつら、おれたちを助ける気などもとからなかったんだ・・元からアンブレラなんてクソみてえな会社信用しちゃいなかったがな・・・」
レイモンドはアンブレラに対する憤りをあらわにした。
警察署襲撃の件もあり、スネークはレイモンドの言う事を信じる事にした。



383: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/26(月) 00:54:48.41 ID:0ljoibAS0
  
「立てるか?」
スネークはそう言うと、レイモンドに手を差し出す。
「すまん」
レイモンドはスネークの手を握り、その後手に抱えていたショットガンを杖代わりにして立ち上がった。
「ところで・・警察署はどうだったんだ・・?」
「・・・爆破された」
「なんだって?」
「アンブレラの奴らが署を襲撃した」
「やはりこの事件の目撃者を一掃するつもりなのか・・・」
「だろうな。あんたら警察も襲われたんだからこれはもう信じざるを得ないだろう。1週間後の救出ヘリってのも怪しいもんだな」
「そうか・・自力でここを脱出するしか方法ないようだな・・」
予想していた事とは言え、やはり救出が来ないと言う事がわかってレイモンドは軽い落胆の表情をこぼした。
「それはそうとして、ここは危険だ、そろそろ離れるぞ」
スネークの発言にレイモンドが周囲を一瞥する。2人の居場所を突き止めたのか、感染者たちが徒党を組んで二人に近づいているのが見て取れた。
「あそこに逃げ込むぞ」
スネークが指差す先には地下へと通じる階段があった。
地下鉄だ。
「地下鉄に行くつもりなのか・・・?」
レイモンドはあからさまに躊躇の色を見せた。
「ああ。外は危険すぎる。周囲はもうヤツらに囲まれている。ここで食われてヤツらの仲間になるか、それとも少しでも寿命を延ばすか、選ぶんだな」
レイモンドは納得いかないという表情をしていたが、すぐに観念したようで一度頷き、スネークに連れられ地下鉄の中へと消えていった。



384: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/26(月) 00:55:12.12 ID:0ljoibAS0
  
地下鉄の改札口は薄暗かった。
左右対称に作られた改札口。改札を抜け、コンコースに入ると左右にプラットホームへと降りる階段が伸びている。
二人は自動改札をまたぎ、コンコースへと侵入した。
スネークはしきりにレイモンドの様態に気をかけていたが、レイモンドはスネークの事など意に介していないようだ。
先ほどとは違い、段々と足取りもはっきりとしているようだった。
地下鉄内は閑散としていてまるで人影が見られなかった。
いくつか死体が見られたが、感染者によるものでも銃撃によるものでもないようであった。
体中に靴の跡と思われるものがみられるため、乗客たちが逃げ出す際に踏まれ、圧死したものと思われる。
2人は死体を横目に見送りながら、上り路線のあるプラットホームへと降りていった。
ホームも改札同様薄暗く、陰鬱な空気をかもし出していた。
上り路線には6両編成の車両が停車してあった。
6両全ての車内から光がこぼれていた。つまりこれは地下鉄にまだ電力が供給されているということだった。
二人は車両内部に入ろうと試みたが、ドアは全て閉じていた。
窓に何度か銃床をたたきつけるも、ひびすら入らなかった。銃撃を加えようとも考えたが、弾の浪費にも繋がるため、止めた。
「そういや上のコンコースに職員の死体があったな」
レイモンドがおもむろに口をひらいた。
「それがどうした?」
「鍵か何か持ってるんじゃないか?俺が見に行くよ。あんたはここにいてくれ」
レイモンドはそう言うとスネークの返事も待たずに上にいってしまった。



385: 1 ◆uOC5Omg9jw : 2006/06/26(月) 00:55:38.50 ID:0ljoibAS0
  
コンコースに戻ると、いくつかの死体が早速目に飛び込んできた。
レイモンドはその中から目当ての職員の死体を見つけ、近寄る。
男の死体だった。胸にきらびやかに輝くネームプレートには『363』とあり、その下に名前が記入されてある。
番号は認識票のようなものだろう。
腰にはいくつかの鍵がくくりつけられてあった。
レイモンドは男の鍵を腰からはずし、眺めた。
鍵にはどのような用途で使用するかを示すテープが貼り付けてあった。
レイモンドはその鍵を全て確認すると、その場に投げ捨てた。
車両用の鍵はなかったのだ。
コンコース内をさらに見回すと、やはり先ほどの男と同じように踏まれた形跡のある職員の死体が目にとまった。
こちらの男のネームプレートにも、先ほどの男と同じように『376』という番号とともに名前が記されてあった。
レイモンドは男の腰周りに手をもぐりこませ、鍵を探した。
案の定この男にも鍵の束がいくつもくくりつけられてあった。
レイモンドは同じ要領で鍵のテープに目をやる。
今度は『車両用』の文字をしっかりと見受け取る事が出来た。
レイモンドは鍵をしっかりと握り締めると、プラットホームへと駆け出した。



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