- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:02:21.36 ID:p7AXdTQr0
《プルドーベイ》
《それは油田》
《ブルドーザー》
《それは重機》
《AK−47》
《それは銃器》
《ばばばん、ばばばばん》
《劇団員はみんな撃ち殺された》
《みんな幸せに死んだスイーツ(笑)》
《幕閉じ》
《再開幕》
《ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー》
《↑ブザー音》
違う、何かが違う……↓
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:03:49.60 ID:p7AXdTQr0
意識が戻ると、私は布団に寝ていた。見慣れた下宿の部屋であった。
本棚に寄りかかって溜息をつく男がいた。
友人だ。
友人は私が起きたことに気づくと本を閉じ、私の方へ視線を向けた。
( ^ω^)「キミは本当に馬鹿だおなあ。
人の家ならまだしも銭湯で寝るなんて、最近の駱駝でも思いつかんお。
そして汚いこの部屋は何だお? 今度来て掃除をしてやるお」
あの銭湯は、彼の家で経営をしている。
私はのぼせて気を失ったのだった。
ξ゚听)ξ「ふん。ではあたしはペンギンになってやる。空は飛べないから氷の下に籠ってやる。お前が来るまで出てこない」
( ^ω^)「この引き篭もりめ」
ξ゚听)ξ「あー貴様ぁ、あたしをいじめたないじめたな? いじめられて絶望した! いじめるやつは愛護団体に引き渡すぞ」
( ^ω^)「それは大変だお。ペンギンを守るべき騎士は、彼女の住処の汚染を防ぐべく明日は、掃除に明け暮れるだろう」
私がかなり元気なことに安心した友人は、
( ^ω^)「冷蔵庫に珈琲牛乳入っているから飲んじゃダメお」と言い残して去った。
私は天邪鬼だった。彼が帰った後、疼く頭を抑えながら立ち上がり、
ξ゚听)ξ「だがあたしは開けるのだ」
しかし冷蔵庫の中には珈琲牛乳では無く、
ポカリスエットが入っていた。
天井裏で、ねずみがチュウと鳴いた……。
これも愛なのかしらん↓
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:09:48.78 ID:p7AXdTQr0
- プシュ、と音を立てて窒素ガスが出る。
キャップを外し、そのままがぶ飲みする。
頭はまだくらくらした。
テレビを見ようとパソコンをつける。
この部屋には、家電製品のテレビは無い。
シャープのロゴの後ウィンドウズMEの起動画面が出た。
いまさらこんな骨とう品を使っているのは私くらいなものだ。
私のイーノートは、いつも止まって青い光で室内を照らすことを生業としている。
デスクトップのアイコンをダブルクリック→アプリケーション起動→デスクトップの上に窓が出て、ニュースが始まった。
『今日は猛暑でしたね女子アナさん。では8月9日の今日のニュースワイド……(ry』
ξ゚听)ξ「はて、ききまちがいだろうか。たしかに今日は8月9日と言ったような……?」
私は首を捻る。
なんども繰り返して『今日は暑いですねあついですね』『今日は、8月9日』とキャスターは言うのだ。
もしかしたら、録画放送をを見ているのでは無いかと思い、チャンネルを変える。
読み込み時間の後、同じような顔をしたニュースキャスターは言った。
『今日は猛暑でしたね、隣の女子アナさん? では8月9日の今日のNHKMADニュース……(ry』
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:10:30.71 ID:p7AXdTQr0
- ヤハリ何かおかしい。
グーグルで『今日は何日か』を検索する。
結果は案の定だ。
もしかしたら、時間を戻されたのかもしれない……。
即ち――時間跳躍〔タイムリープ〕。
しかし、コノ時間帯、私はナニヲしていたか……そうだ、
今日のこの時間、私は独りですやすや寝ていたのだ。
記憶と現状に矛盾が起きた。
確認のために、私は押入れを開ける。
玄関に放置された満杯の洗濯かごと同一のものが、たくさん不法滞在していた。
彼等は、来る8月10日に強制送還される身の上だった。
SFでは、時間航行をする話が数多くある。
マッド博士がそういう機械を作った、
ラベンダーの臭いをかいだ彼女のいとしの彼は未来人だった、
ある日起きたら超能力に目覚めた、
かのじょが願ったから、神様の気まぐれ、階段で転んだ、実は死んだ後の世界、
さらに宇宙人の陰謀説、さらに実はその宇宙人はサラリーマンだった、
時間跳躍じゃなくてパラレル世界だった、
宇宙的恐怖、などなど、エトセトラエトセトラ……。
そしてたいてい良い結果にならない。
なぜなら『タイムパラドックス』が起きるからだ。
時間の航行が乱され、混沌たる宇宙の泡沫
――ゆめである時間軸に守られたこの世界の因果律が狂い、
観測者と被観測者の観音様のにゃんにゃん関係やらなんやら、
それらの相対性が濁流に呑まれた様に一気に崩れて流さるので世界は崩壊を始め、
もとから過飽和である水溶液に現れ出でた結晶である物理法則の
とってつけた外皮を哀れにも丸裸にされて根幹からちょん切られる。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:11:29.32 ID:p7AXdTQr0
嗚呼ァ――、悲劇だ。
最早それに縋るしかなかった人類は、生き物は、森羅万象自体、世界は一体、
どうなってしまうのか分からないがどうかなってしまうだろう。
再び混沌の秩序は沸騰を開始して、
我々の世界を溶かし尽くし、
自らの不確定の法則の内に仕舞ってしまうのかもしれない。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:11:45.42 ID:p7AXdTQr0
ξ;゚听)ξ「この二つの矛盾が、混ざり合う事無く存在する。
それは、世界は概念的に一本道ではない事を示す。
もし一本であれば、あたしは前の記憶を忘れているか、
今の記憶といっしょくたになって、次第に薄れて、忘れていくはずだ。
だが、あたしの記憶は鮮明だ。慄然と固体と化し、
混ざる事は無いだろうそれについてはあたしは、あたし自身に照明できるのだ。
しかし、この先、さらなる矛盾がおきると、危険だ。
何か起きるだろう。だから、気をつけよう。
世界のほうも、あたしを味方してくれるはずだ。
きっとそうだ。なんとかなる……さて、明日は、何が起きたっけ?」
私は絶滅危惧種であるSF者だった。
しかしその割には、説明がおろそかであるのには目をつむろう。
私は自分がSFの主人公になるなんて思っても見なかった。
だがそんなこと本気で思っているやつがいたら、そいつはただの馬鹿モノで、唾棄すべき存在だろう。
今回の、私の頭の中に慄然と存在している『あたしは一人で寝ていた』『あたしは彼と一緒にいた』というパラドックス。
この二つの記憶が互いに交じり合う事も何も無かったのでそういう壮大なことは起きていないようである。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:12:44.37 ID:p7AXdTQr0
ξ゚听)ξ「学び舎の夏季休業も残り少なかったではないか。
これでまたかなりを遊べるじゃあないか。
これは得をした。
得をしたぞ!」
と喜ぶのも束の間。
この時、まだレポートは書きかけであった。
またあの大作を書き上げなくてはならないのだ。
私は湿った万年床に突っ伏した。
枕もとに空いたお酒の缶が並んでいた。
ごみ箱もやまもりで溢れており、最早、この部屋全体がごみばこだった。
更なる圧迫をもたらす環状本棚の中でも平気で住める女は、ここいらでは私くらいだろう。
ξ゚听)ξ「そういえば言っていたな、明日だ。明日に、彼が、あたしの家に、掃除しに、来るんだ……」
私は溜息をつき、薄いせんべい布団をかけて寝た。
SF者はたいていの場合、
身に降りかかる厄災が少ないと「はっはっは、こやつめ」と楽観する。
……それもどうかと思うがね……。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:15:51.15 ID:p7AXdTQr0
翌日になって、起きてみると、床一面
――といっても布団が真ん中に永久に居座る上だが――が血まみれだった。
ξ゚听)ξ「歴史は繰り返される、時間は簡単には捻じ曲がらず、修復されていくということか」
私は自分が生理だということを忘れていたということは露ほど思わない。
寝ぼけ眼で少し待つ。すると、友人が来た。
鍵の壊れたドアを開け部屋に入った彼は、その惨状を見るや否やビックリして腰を抜かした。
ξ゚听)ξ「へっへっへ、多い日も安心!」
(;^ω^)「多すぎだろうお、常識的に考えて」
今回、彼は手摺りから落ちそうにならなかった。
ので、階下の住人も駆けつけなかった。
そういう風に時間は書き換えられた。
私にはその方が都合が良かった。
流石に同じアパートに暮らしている人にその後ずっと、不信がられるのは嫌だもの。
ξ゚听)ξ「まあ順調に時間が進んでいるのだからいいだろう……、あぁー、こっちも拭いてくださいよ」
私と友人はせっせと掃除した。だがだいたいのせっせは、友人のものだったのだが……。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:16:21.34 ID:p7AXdTQr0
空き缶も、溢れたゴミも、全部袋に詰めて、ゴミ捨て場に棄てた。
掃除が終り、私と友人は、コインランドリーに向かった。
二人とも、白いかごを抱えていて少々前が見ずらかった。
表通りから行こうとしたが、今日はやけに、車が多かった。
事故があって、通行止めらしい。
日差しも強かったので、イチョウ並木の方から行く事にした。
しかし突然、表通りの渋滞に耐え切れなかった車に、並んでいた二人は吹っ飛ばされた。
宙で弧を描いて、激突するアスファルトに顔面を削られる私はしかし生きていたのだが、当たり前だがもう長くは持たない。もう持たない。すぐ死ぬから。
友人は、すで死んでいた。即死だった。胴体が二つに折れ、頭から血と脳髄が噴出していた。
私は絶叫した。
しかし音は出ない。グシャグシャに咽喉が潰れていたからだ。
その――声にならない声が、胸の鼓動と共に、排出される血と共に、小さく小さく、潰れていって終には消えた。
ねずみの声が何処からか聴こえたが、それもまた同じように消えた。
代わりにどこかから、盛大な拍手の音が聞こえた……。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:16:45.03 ID:p7AXdTQr0
劇場の幕が閉じる。
観客が帰る。
《パァ――世界が点滅・点滅、果して真暗に》
《ナニモカモが無くなったような曖昧な世界に》
《でも、客席からはモウ見えない高台には、彼女と彼の死体だけはちゃんと取り残されて、存在を確認できた……》
《再開》は面倒だから流れた↓
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:17:19.11 ID:p7AXdTQr0
ξ;゚听)ξ「ハッ!!!」
私は目を覚ました。
目の前には、見慣れた、顔のような模様がある低い天井があった。
時計を見た。
午前8時、日時は9月9日。時間の飛んだ日に戻っていた。
いや……これは。
ξ;゚听)ξ「あれは夢だったのか……」
玄関には洗濯はされたが使われずに、埃をかぶっている衣服が大量に、かごに詰まっていた。
私が布団から出ると、ごとりと、物音が押入れからした。
何事だろうと、私は開ける。
物音の正体は、額がぱっくりと割れた友人の首だった。
私はそれをゆっくり持ち上げる。
腐り終りゆっくりと乾きつつある彼の瞳に映る、自分の笑顔を見た。
そして私は彼を脇に抱え、四畳半を出た……。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:18:01.49 ID:p7AXdTQr0
有機的な胎動を繰り返す階段は、踏みしめるごとに卵管から卵を産んだ。
卵は気が気でないキミドリ色をしたアスファルトの雑草に受け止められて三ヵ月後に新しい階段の赤ちゃんが孵化した。
二人はテクテクと、国道さんさんさんよん号線を跨いだ。
またがれた国道5さんなななななななな7号線は桜が咲き乱れて火山が噴火した。
とかげの尻尾を持つ空中都市の少女が、道端にチョークで絵を書いていた。
それは洗練された文章でありながら冒涜的な絵画という矛盾をもつ彫像だった。
彫像はゆっくりと立ち上がりとかげの尻尾を持つ空中都市から一人の少女を摘み上げ大地に墜とし、自分はたちまち消えうせたという無限ループを越えた別のお話はまた後に語ろうではないか。
咽喉が渇いた二人は公園のミズ飲み場でミズを飲んだ。
ポチャンとミズに漬けられた友人の断面から新しい友人が生えてきた。
私はその友人だけを選別し、今まで持ってきた友人を土に埋めてミズをあげた。
背後ではナニカの叫び声が聴こえたが、私と友人はテクテク歩いた。
でもなめらかな木製のマジックハンドに捕まえられてしまった。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:19:09.32 ID:p7AXdTQr0
ちくたくちくたくと叫ぶ!
それは、構造上開かないのだけれども開く柱時計の針。
それは、四本の時を刺す針。
紙次元を突き抜けろ!
チクタクマンがまた叫ぶ!
ありえない長針が、存在を立証できない短針が叫ぶ!
それは四本でありながら、
無数にして有数でありながら、
無機物の有機物的なユーグリットだ!
数学的なアーマメンツに等しいありきたりな子猫ちゃんだ!
煌びやかで子供のプレゼントに最適です。ぜひお求めを……。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:19:41.42 ID:p7AXdTQr0
- 戦闘用アルテミットアーマーを装着した私
私に装着されるアーマーは煌びやかでなめらか
小さな友人は私の頭の上でこの先どうするのかを考えていた
――どうする
――なにもしないの
――こうなる
――なってしまうの
――あひゃーあ!
――私は核になった!
――世界は私になった!
――地球は私の子宮になった!
子供が生まれ、子孫繁栄→絶滅する。
死んだ、
生きた、
繰り返す!
ああはいいでありながらガガガであるのだった。ああぁあ――。
果してその後も二人は幸せに暮らしましたとさ。
此れはハッピーエンドのお話でした。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:21:13.31 ID:p7AXdTQr0
《終幕、幕閉じ――拍手が鳴り止まない》
《スピーカ音量を下げる》
《BGM、SE切る》
《再開幕》
《やっぱり、私がおかしいのかなあ……》
世界が震えている↓
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:21:42.82 ID:p7AXdTQr0
- ξ゚听)ξ「ハッ!!!」
私は目を覚ました。
目の前には、見慣れた、顔のような模様がある低い天井があった。
時計を見た。
午後12時30分。日時は9月9日。
布団は血で染まっていた。
洗濯物は玄関ではなく、私の足元にあった。
ブルーバックとカーテンからの木洩れ日で目を覚ました私は少々ボゥーと考えていた。
ξ゚听)ξ「あれは夢だったのか……」
携帯電話を探す。
染め布団の下にあった。
新着メールがあり『クビ』との題名だった。
内容も、案の定だろう。だから開けることはしなかった。
私は電話帳から、友人を呼び出す。電話の奥で、彼の着メロが鳴った。
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