3: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:05:00.20 ID:MU7Ra9H6O



一応閲覧注意。



4: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:07:01.92 ID:MU7Ra9H6O
 ほう、ほう。夜の鳥は私を誘う。

 闇夜に輝く月は爛々、窓の硝子が光を浴びては乱反射。

 絹のカーテンの隙間を縫って、私はこっそり闇夜を覗く。

 夜は大人の時間だよ、パパの言葉はもう遠い。
 窓を開けてはひらりひらりら、後に残るはたなびくカーテン。

 私の姿はどこにもない。


(*゚ー゚)は眠れないようです



5: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:09:01.32 ID:MU7Ra9H6O

 ほう、ほう、と鳴き声を響かせる夜の鳥。
 洋館の階段、その手すりに背を預けて佇む少女は耳に飛び込む鳥の声とは別の、別の何かに耳を傾けていた。

 ガチャガチャと言う、玄関口での物音。
 誰かが鍵を開けようとしているが、その鍵を持っていない。
 そんな、乱暴な音だ。

 少女は寝巻きの裾を掴んで音がする方向、玄関へと向かった。
 ぱたぱた、小さな足音をさせて階段を降りる。
 玄関では未だに乱暴な音をさせている。心なしか、苛立ちを含んでいる様だ。

 なかなか開かない扉に対して大きく苛立ったのか、どん!と蹴る音。
 そして同じくして、荒々しく扉が開く音。



7: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:11:03.02 ID:MU7Ra9H6O
 少女は驚いた様に肩をすくませ、慌てて近くの部屋に身を隠す。
 ドアを開けた主も、壊れる様に開いたそれに「うわっ」と声をあげた。
 未だ年若い男の声は、遠慮がちに土足で洋館に上がり込む。

(,,゚Д゚)「失礼…しまぁす……」

 先程までドアを無理矢理こじ開けようとしていたにもかかわらず、妙に謙虚な声音で誰に言うでもなく挨拶をした。
 少女は部屋に隠れたまま、小さな声で

(*゚ー゚)「いらっしゃいませ…」

 ささやく。

 それを聞いた男は肩をぴくんと震わせて、周囲を見回す。
 少女は男の視界に入る場所にはおらず、男は思わず挙動不審になる。

 ぎし、ぎし、と軋む床を踏みしめて、男は声がした方向に向かう。
 そう、少女が居る部屋へ。



8: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:13:07.76 ID:MU7Ra9H6O
 足音を聞き、突然の来訪者に狼狽える少女は天井を見上げた。
 天井にはシャンデリア、壁には掃除の時に使う梯子。
 昔、上にのぼって叱られた事があるのだが、この状況なら仕方がない。
 両親も許してくれるかも知れない。

 そう思った少女は、無表情の中に少しの緊張感を含ませ、梯子をシャンデリアに立て掛けた。
 大きなシャンデリアは少女が乗ってもびくともしなさそうな程に大きく、少女も大丈夫だと思って梯子をかけ上がった。

 そしてシャンデリアの上に辿り着いたその時、梯子が大きな音をさせて床に倒れた。



10: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:15:04.69 ID:MU7Ra9H6O
 部屋を覗き込もうとドアの前に立っていた男の息を飲む音。
 ゆっくりゆっくり開かれるドア。
 固く目を瞑り、見つかりませんようにとシャンデリアの上で身を抱く少女。

(;,゚Д゚)「だ、誰、誰も…居ない、よな…?」

 ドアの隙間から室内を覗き、誰も居ないのかと見渡す。
 音の主は梯子なのだが、男には梯子が最初から倒れていたのかどうかも分からない。
 少女が息を潜めているため、耳を澄ませてみても何も聞こえない。
 それに安心したのか、男は小さなため息を吐いて部屋を出ようと背を向けた。



11: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:17:01.98 ID:MU7Ra9H6O
 ゆっくりとした足取りで、床を軋ませながら男は部屋を出て行く。
 目を開いた少女もその背にほっと溜め息を吐く。

 不意に、頭上の金具がミシミシと音を立てながら変形した。
 昔は軽かった少女も、数年の内に多少は重くなるもの。
 少女の祖父の代から存在する古くなったシャンデリアは、少女の成長の重みには耐えられず。
 数十年に渡る歴史を終えようと、天井から離れた。

(;゚ー゚)「きゃああああああっ!」

 耳元で空気の音を聞き、少女は落下していると言う事にやっと気付く。
 思わず上げた少女の悲鳴と、老いたシャンデリアが床にぶつかり砕け散る音。

 男は悲鳴と音を背中に受け、情けない声音で叫びながら洋館の奥へと走って行ってしまった。



12: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:19:04.13 ID:MU7Ra9H6O
(* ー )「い…た……たた…」

 少女は擦りむいた膝を小さな手のひらで押さえながら立ち上がり、打った腹部をそっと撫でる。
 高い天井と壊れたシャンデリアを見比べ、少女は悲しそうに眉を寄せた。

 あの高さから落ちて、これだけの怪我で済んだのは奇跡に近い事なのだが。
 そんな事よりも、お祖父ちゃんやお父さんが好きだったシャンデリアを壊してしまった事に対して、強い罪悪感を抱いていた。

 しゃがみこみ、へしゃげたシャンデリアの縁を撫でて、小さく「ごめんなさい」と謝る。
 少女を生まれた時から知るシャンデリアは、最後に大きな優しさを持つ少女を守ったのかも知れない。
 胸と傷の痛みに、目尻に涙を溜めて少女は歩き出した。



13: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:21:03.87 ID:MU7Ra9H6O
(;,゚Д゚)「はー…はー……何なんだよ、何なんだよもう…!」

 男もまた、恐怖により目尻に涙を溜めていた。
 階段をかけ上った先の踊り場で、どくどくと喧しい程に脈打つ心臓。
 情けなくもがくがく笑う膝に、全身を冷たい汗で濡らした男は眉をぎゅっと寄せる。

 ちょっとした出来心だったのに、こんな思いをするだなんて。
 袖で目元を拭った男は、唇を噛み締めながら階段を上ろうと足をあげる。


 きしん、きしん。



14: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:23:02.54 ID:MU7Ra9H6O
 男の耳に、小さな足音が届いた。
 軋む様な動きで、さっき自分が走ってきた廊下へと目を向ける。
 暗くてよくは見えないが、暗闇にも溶けない白い、血まみれの素足が目に飛び込む。
 そして白いフリルのついたネグリジェが、細い腕が、長い黒髪が。


(;,゚Д゚)「うわあああああああああああっ!!」

 少女の顔を見る前に、男は叫びながら階段を駆け足で上って行った。
 小さく「まって」と聞こえた気がしたが、聞こえないふりをした。



15: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:25:05.26 ID:MU7Ra9H6O
 膝の痛みを堪えながら歩く少女は、男に「何故ここに侵入したのか」を問おうと決心した。
 男が走り去った方向へ歩いていると、膝から血がぽたぽたと溢れて足を濡らす。
 それでも少女は止まる事なく歩き、階段の踊り場でやっとその姿を見つけた。

 しかし、男は少女を見るや否や悲鳴をあげて逃げ出してしまった。

(*゚ー゚)「まって…!」

 少女のか細い声は虚しく響き、消える。
 一人きりと言う事に心細さを感じ始めた少女は、尚も足を引きずる様にして歩く。
 なんとかあの男に追い付いて、話をしたくて。



16: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:27:18.73 ID:MU7Ra9H6O

(,,;Д゚)「何だよ……何だよあの子…何で……ちくしょぉ…っ」

 恐怖のあまり何度も自問自答をするが、答えなど導き出せずに男は二階の廊下を進む。
 それでも何かを持って帰らねばと、歯の根も合わない状態で恐る恐る一番近い部屋の扉を開いた。

 そこは子供部屋らしく、沢山のぬいぐるみや人形、おもちゃが所狭しと散らかっている。
 暗くてよくは見えないが、白とピンクが多い。
 女の子らしい幾重にも重ねられたピンクのカーテンに触れてみると、すべらかな手触り。
 どうやら絹の様だ。



17: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:29:13.46 ID:MU7Ra9H6O
 天外付きの小さなベッドには、リボンをつけた可愛らしいウサギのぬいぐるみだけが寝そべっている。
 そのぬいぐるみを手に取り、月明かりを頼りにリボンにあしらわれた刺繍を見る。
 リボンには小さく流れる文字で「しぃ」と縫ってあり、それがぬいぐるみの名なのか、持ち主の名なのかは分からない。

 それでも、他の部屋に比べて手入れの行き届いた部屋を見ると、男は罪悪感に苛まれる。
 やっと激しい鼓動がおさまった頃、この部屋は荒らしてはいけないと思い、ぬいぐるみをベッドに戻そうとした。



18: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:31:10.74 ID:MU7Ra9H6O

(*゚ー゚)「ぁ……の…」

(,,゚Д゚)「っ!?」

 開けっぱなしの扉から、少女の小さな声。
 男が勢いよく後ろを振り返れば、そこには階段で見た少女の姿が。

 僅かに怯えた目を男に向けながら、ゆっくりと部屋へと入って行く。

(;,゚Д゚)「ひぃっ、う、うぁああああっ来るなっ! 来るなよっ!」

 元の位置に戻そうとしていたぬいぐるみを振り回し、男は後退しながら叫ぶ。
 しかしそれは逆効果だったのか、少女は険しい顔をして足を引きずりながら男に迫る。

 ばん!と窓に張り付き、ぬいぐるみを片手に男は顔を真っ青にした。
 後ろに下がろうにも、もう下がれない。



19: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:33:07.72 ID:MU7Ra9H6O
 もうダメだと強く目を瞑り、奥歯を噛み締めた。


(;,-Д-)「………」

 数時間にも感じられる数分、数秒かも知れない。
 そんな時間の中、男は何度も念仏を唱えていた。

 しかしどれだけ時間が経とうとも、異変は起こらない。

 きっと罠だ、罠なんだ、瞼を押し上げれば恐ろしい目に合う。分かってるんだ。
 そう、男は必死に自分の意思を圧し殺そうとしていたが、首をもたげる好奇心は思っていたよりも強くて。

 そっとそっと、瞼を持ち上げる。
 前には何もない、離れた場所に扉があるだけ。
 少しだけ視線を下ろすと、少女が両手を差し出しながら険しい顔で見上げていた。



20: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:35:13.11 ID:MU7Ra9H6O

(,,;Д;)「うわあああああああああああっ!!?」

(*゚―゚)「……かえし…て…」

(,,;Д;)「わああああああああああああああ………あ…?」

(*゚―゚)「……かえして…」

(,,゚Д;)「………え…?」

 思わずぼろぼろと大人げなく涙を溢して怯える男だったが、少女のはっきりとした声を聞いて徐々に冷静さを取り戻す。
 眉根を寄せたまま手を差し出す少女と、自分の手にあるぬいぐるみを見比べてから、そっとぬいぐるみを渡した。



21: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:37:05.09 ID:MU7Ra9H6O

(,,;Д;)「うわあああああああああああっ!!?」

(*゚―゚)「……かえし…て…」

(,,;Д;)「わああああああああああああああ………あ…?」

(*゚―゚)「……かえして…」

(,,゚Д;)「………え…?」

 思わずぼろぼろと大人げなく涙を溢して怯える男だったが、少女のはっきりとした声を聞いて徐々に冷静さを取り戻す。

 眉根を寄せたまま手を差し出す少女と、自分の手にあるぬいぐるみを見比べてから、そっとぬいぐるみを渡した。



22: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:39:19.61 ID:MU7Ra9H6O
 うさぎのぬいぐるみを受け取って、少女はぷくんと頬を膨らます。
 男が大量に溢れ出した涙をやっと拭い、数回まばたきをしてから少女を見つめた。

 階段で見た時と同じ、白いネグリジェに長い黒髪。
 よく見ると愛らしい顔をしており、白すぎる肌も頬はほんのりと淡い桃色をしていた。

(,,゚Д゚)「………あの…君が、しぃ、ちゃん?」

(*゚ー゚)「………」



23: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:41:16.34 ID:MU7Ra9H6O
 少女に目線を合わせる様にしゃがみこんだ男の問いに、少女は黙ったまま頷く。
 ぬいぐるみを強く抱き、未だ警戒の色を見せる眼差しで男を見ていた。

 困った様に頭を掻きながら、男はあちこちに視線をやっては情けない顔で少女──しぃを見つめる。
 お互いに見つめるばかりでは埒があかないと思ったのか、意を決した様に男は口を開く。


(,,゚Д゚)「あー……あの、どうして

(*゚ー゚)「どうして…ここに、居るの…?」

(,,゚Д゚)「ぇ? ……あ、いや、その…えっと…」

(*゚ー゚)「パパとママなら、いないよ? パパのお客さんじゃないの…?」



24: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:43:25.68 ID:MU7Ra9H6O
(;,゚Д゚)「う、その……あの…」

(*゚ー゚)「……あなたは、だれ?」

 畳み掛ける様なしぃの言葉に、マシになった顔色をまたも悪くして男は口ごもる。
 しぃのいぶかしげな顔から目をそらし、その場にぺたんと座り込む。
 そして暫く考えながら低く唸り、しぃの足元で土下座した。

 突然の行動にしぃは目を丸くして、男の前にしゃがみこむ。
 血の止まった膝の傷が、ずきん痛んだ。



25: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:45:14.28 ID:MU7Ra9H6O
(;,゚Д゚)「済みません不法侵入しましたああああああっ!!」

(*゚ー゚)「……ふほー、しんにゅう…?」

(;,゚Д゚)「あ、その、勝手にお家に上がり込んじゃって御免なさい…」

(*゚ー゚)「……お客さんじゃ、ないの?」

(;,゚Д゚)「………はい…」

 土下座したまま申し訳なさそうに頷くと、額がごつんと床に当たる。
 文字通り地面に額を擦り付けて謝罪する男の姿を見ていたしぃは、男の頭を押して顔をあげさせた。



26: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:47:14.89 ID:MU7Ra9H6O
 そして促されてじわじわと顔をあげた男の額を、ぬいぐるみの手でぺしんと叩く。

 目を丸くする男に対して、しぃはにっこりと笑みを浮かべた。

(*゚ー゚)「悪い子」

(,,゚Д゚)「……ご、ごめんなさい…」

 ぬいぐるみを抱き直して立ち上がろうと膝に力を入れた時、膝に強い痛みが走った。

 痛そうに顔を顰めるしぃの足から力が抜け、ずるりと滑って前のめりになる。

 支えを無くした細い身体は重力に従って床を目指す。
 が、床としぃの間に存在する男が慌てて腕を伸ばし、しぃの身体を抱き抱えた。



27: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:49:13.80 ID:MU7Ra9H6O
 ど、と腕の中に倒れ込んだしぃ。
 軽いけれど確かに感じるその重さは、男の心を穏やかにさせる。
 細すぎる手足だが、それらは確かにしぃが存在していると言う証で。

 その時に、男はやっとしぃが膝に怪我をしている事に気付いた。

(;,゚Д゚)「膝っ! 怪我してるっ!」

(*゚ー゚)「うん……あの…落ちて…」

(,,゚Д゚)「ほらベッドに座って! シみるから我慢して!」

(*゚ー゚)「え、え? う……うん…」



28: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:52:44.05 ID:MU7Ra9H6O
 さくさくとしぃをすぐ側にあるベッドに座らせ、男はポケットから絆創膏とミネラルウォーターを、首から掛けていたタオルをはずす。
 ミネラルウォーターのキャップを外して、ボトルの口にタオルを押し当てて水を染み込ませた。

 しぃの裾の長いネグリジェをたくしあげてから、濡れたタオルで膝の擦り傷を出来るだけ優しく拭いた。

(*゚ー゚)「っ!」

(,,゚Д゚)「ちょっとだけ我慢して」

(*゚ー゚)「う、ん…」



29: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:54:12.85 ID:MU7Ra9H6O
 傷にタオルを当て、軽く擦られただけで焼ける様な痛みが襲う。
 実際は大した傷ではないのだが、幼いしぃにしてみれば、その痛みはかなりのもので。
 それに気付いている男も、傷に付着した埃や乾いた血を拭う手を慎重に動かした。

 傷だけではなく、汚れていた脛まである程度の汚れを落としてから絆創膏をシートから剥がし、傷にぺたんと貼り付けた。
 消毒薬などを持っていないのが心苦しい。



30: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:56:07.45 ID:MU7Ra9H6O
 ぬいぐるみの耳を噛みながら痛みに耐えていたしぃの頭を、ぽんぽんと軽く叩く様に撫でてやり、男はやっと笑顔になった。

(,,^Д^)「ギコハハハっ、耳を噛んだら可哀想じゃないか?」

(*゚ー゚)「…振り回したくせに」

(,,゚Д゚)「御免なさい」

(*゚ー゚)「……おじさん、おなまえは?」

(,,゚Д゚)「俺はギコ……お兄ちゃんが良いなぁ…」

(*゚ー゚)「ギコお兄ちゃん?」

(,,゚Д゚)「うん、そうそう」

(*゚ー゚)「…ギコお兄ちゃん、ありがとう、てあてしてくれて」



31: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 00:58:13.17 ID:MU7Ra9H6O
 足元にしゃがんだままのギコを見下ろして、しぃがひどく愛らしい笑顔で感謝した。
 その笑顔を見て、妙に気恥ずかしくなったギコは少し困った顔で俯いてしまう。

 しかし視界に入ったしぃの太股の白さに、更に恥ずかしくなって、ネグリジェをそっと下ろした。

 何故か頬を朱に染めたギコがきょろきょろと視線をあちこちにやり、沈黙がその背中にのし掛かる。



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