川 ゚ -゚)クーと孤島のラビリンスのようです

82: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:41:55




川 ゚ -゚)クーと孤島のラビリンスのようです

3、孤島のラビリンス



83: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:42:41

川 ゚ -゚)「……」

結局、私はそのまま朝を迎えてしまった。

フサギコさんは魂が抜けたように呆然して部屋から出てこないままで、
私も一睡もすることなく部屋の中でぼうっとしていた。

ブーンさんとツンさんには、あの後部屋に戻ったようなので会っていないが、
おそらく困り果てているのだろう、こんな状況を前にして。

モララーさんはと言うと、人を呼ぶと言って、この旅館を出てふもとのほうに向かっていった。


窓を見ると、灰色の空からサーサーと雨の降る景色が見えた。
島の一帯を雲が立ち込めており、遠くに見える海は大きく荒れていた。

揺れ動く波頭に、私はしばらく心をゆだねていた。



84: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:43:40

そうしているうちに、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く向き直り、どうぞ、と一声をかければ、そこにはブーンさんとツンさんが立っていた。
私の思ったとおり、それは困り果てた顔をしていて、眉が八の字に下がっていた。

ショボみたいだ、と思って、私は急に泣き出しそうになってしまった。

( ^ω^)「クーさん、ええと、その……大丈夫かお?」

しどろもどろになりそうなくらいに言葉を選びながら、ブーンさんが私に声をかける。


大丈夫なもんか。と、返したくなってしまうのだが、
横でおろおろしているツンさんを見ると、そうもいかないものであった。


川 ゚ -゚)「ええ。私は大丈夫です。
     それより、フサさんの方が私なんかより悲しみにくれているのでは……?」

( ^ω^)「お……。フサさんかお……」

気まずそうなその目線が、状況を語っていた。
遺体に泣きついて、自分の部屋に閉じこもっていたフサさんは、やっぱり今もそのままなのだろう。

私は小さくうなずいた。



85: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:44:34

ξ゚听)ξ「ねえ、ツンさん。
     ドクオ君とショボ君、きっと生きていると思うの。だから……」

(;^ω^)「ツ、ツン!!」


隠しながら握り締めていた自分の拳に、思い切り力が入るのを感じた。

ドクオとショボが死んだなんて、最初から思っているわけがなかろうが。
勝手に殺すんじゃないよ。と、一番にそう思ってしまった。

しかし、勿論2人が死亡している可能性だって十分にあるのは間違いないのだった。
犯人は、つーさんの首を絞めて更にナイフまで刺しているんだ。

いまさらもう1人、人を殺そうと不思議なことではないはずである。

ブーンさんが、この島に来て、ツンさんに都会人と言われたときのように、
ものすごく申し訳そうな目でこちらを見ながら、頭を下げていた。

ツンさんは、意味もわからなそうに戸惑っていた。


そんな2人を見ていると、私は怒りなど不思議におさまってしまった。



86: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:45:10

川 ゚ -゚)「いいんです。ドクオとショボが見つかると、私は信じています。
     でも……。でも、最悪の事態は……覚悟しています……から……」

嗚咽が喉まで出掛かって、涙が目頭を潤そうとした。
しかし、それらを必死に飲み込んだ。

気丈な振る舞いがしたかったわけではない。
ただ、目の前にいる2人に余計な心配をかけたくなかっただけであった。

私が泣いたところで、事態に変動はない。そんなことは、火を見るより明らかなのだから。


( ^ω^)「クーさん……」

川 ゚ -゚)「平気ですから。お構いなく」

無理に笑顔を作って見せた。
ブーンさんは、それからもう、私の表情を見ても何も言わなくなった。



87: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:46:18

それから暫くの沈黙があって、若干の気まずさが
空間を支配する中、先に口を開いたのは、ブーンさんだった。


( ^ω^)「クーさん。
      僕は、何年も前からこの旅館に滞在しに来てるお。
      その時、孤島のラビリンスという建物の噂を聞いたことがあるんだお」

川 ゚ -゚)「孤島のラビリンス? なんですか、それは」

どこかのミステリー小説にでも出てきそうな名前であった。
孤島に広がる迷宮? しかし、どこに。


ξ゚听)ξ「孤島のラビリンスは、この旅館の地下にあるらしいの。
     作られた目的は不明で、本当にあるかどうかすら分からない。
     けど、ドクオさんとショボさんが短時間のうちに姿を消したとすると、
     あの嵐の中、誰にも見つかることなく海に2人を突き落としたりするのは不可能だと思うの」

川 ゚ -゚)「それはつまり……ドクオとショボがその、孤島のラビリンスに幽閉されている可能性があると?」

( ^ω^)「そういうことだお」



88: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:47:11

信憑性も、へったくれもない話だった。
孤島のラビリンスと言うものが胡散臭いのは何よりだったし、
唐突にそんなことを言われても理解できなかった。

だが、ドクオとショボが生きている可能性がある。
それだけで私は、その可能性にかけてみたくなった。


川 ゚ -゚)「……場所は、この旅館の地下でしたか?」

( ^ω^)「そうだお。あくまでも、これはモララーさんから聞いた噂なんだけどおね。
      旅館の地下には、ラビリンスが広がっているって。
      だから、もしかしたらこの旅館のどこかに入り口があるかもしれないんだお」

ξ゚听)ξ「つーさんの部屋から、犯人は音もなく姿を消したわ。
     だからそれはつまり、この旅館の中には孤島のラビリンスの続く道がいくつかあって、
     その1つがつーさんの部屋にあって、そしてこのクーさんの部屋にもあって、
     何らかの形でドクオさんとショボさんはそこに移動させられたんじゃないかと思うの。
     そう仮定すると、犯人はラビリンスを知っている可能性のあるフサさんか、モララーさんか……」
      
川 ゚ -゚)「それとも、ラビリンスに姿を隠している何者か……ということですか」

( ^ω^)「そういうこと、だお」



89: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:48:07

犯人の目星と言うのは、かなり絞ることができる。
私ではないし、ドクオとショボがそんなことをするはずは無い。

目の前の2人だって、完全には信用できない。
もしかしたら、このラビリンスへの誘いだって、私をそこに誘導して殺すための手はずなのかもしれない。


だが、ドクオとショボが消えてしまった以上、私に残された道は、
この信憑性の欠片も無い可能性にかけるか、二人を見捨てて変えるしかない。

どちらを選ぶのかと聞かれれば、私が選ぶ一方に迷いは無い。


川 ゚ -゚)「わかりました。ラビリンスの入り口を探しましょう」

( ^ω^)「おお、そうくるとおもってたお!」


前向きになった私を見てか、ブーンさんがやっと明るい表情を見せた。
それにつられて、ツンさんもにこやかに笑う。

やはり私には、この2人が私を陥れようとしているなどとは、到底思えなかった。



90: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:49:04


孤島のラビリンスの入り口探しが始まってすぐ、私たちはつーさんの部屋に向かった。
警察が来ることもかなわないので、遺体はやむを得ずそのばにシートをかぶせて放置してあった。


遺体に近寄らないようにしながらくまなく探すと、小さな本棚を固定していた止め具が
少しゆるくなっているのを、ブーンさんが発見した。


旅館のオーナーであるフサさんやつーさんには申し訳がなかったが、その
本棚を動かすと、そこには何やら折りたためる取っ手のようなものがついた壁があって、
その取っ手を横に引くと、鈍い音と共に扉がスライドし、少し先には薄暗く下へと続く階段が見えた。


( ^ω^)「ビンゴ、かお……」


本当に孤島のラビリンスというものがあったので、私は内心喜んでいた。

ドクオとショボが生きているかもしれない。
その可能性が、十二分に証明されたのだから。



91: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:50:03

( ^ω^)「僕が先頭をいくお。
       ツンとクーさんは、あとをついて来てくれお」

ブーンさんが小さい入り口をかがんで通り、ツンさんがそれに続く。
そんがりの私は本棚をしっかりと戻すと同時に、扉をスライドさせ、閉めた。


そうするともう本当に真っ暗で、私たちは携帯電話の小さな光を頼りに道を進み始めた。
コツコツと足音が嫌に響いて、非常に不気味であった。


( ^ω^)「大丈夫だお、ツンは僕が守るお」

ξ゚ー゚)ξ「うん……ありがと、ブーン」

川;゚ -゚)「……うぉっほん」

(;^ω^)「……あ、クーさんもね」

そして何より、ちょっと気まずかった。



92: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:50:39

また暫く歩くと、更に降りる階段があって、その下はぼうっと明るかった。
やがて視界がだんだんと明瞭になり、目の前の景色がはっきりとしてくる。

階段を降りきると、そこは本当にラビリンスだった。
壁がいくつも枝分かれするように並び、それに沿って多く取り付けられた
松明の光が道をどんどんと照らしていた。

壁は黄色く光、どこまでもどこまでも続いていた。
迷宮のラビリンス。ここに、ドクオとショボがいるかもしれない。

川 ゚ -゚)「しかし、来たはいいけど、これからどうするんですか?
     迂闊に進めば、犯人と鉢合わせになるかもしれないですよ」

(;^ω^)「ううん、そうなんだけど……進むしかないお」

川 ゚ -゚)「……まあ、そうですよね」

私たちはそのラビリンスの道を、ブーンさんを先頭にして、ひたすらに歩き始めた。



93: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:51:11



――――――――――――――――――
――――――――――――
―――――――

瞼を開き、視界が明瞭になっていく。

差し込む光が嫌に眩しく、目がくらみそうな感じを覚える。

その光の色は、薄い黄土色。

自分たちがいた部屋の壁は、真っ白だった。

はじめはその光景に理解できなかったが、次第に頭痛と共に、記憶がよみがえっていった。

なぜ自分が、体中にロープをぐるぐる巻きにされてこんなところにいるのか。

そして、自分の横に頭から血を流しているショボが倒れているのか。



94: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:52:05

('A`)「…………」

落ち着いて周囲を見渡してみれば、その部屋は三方を黄土色の壁に覆われ、
一方を鉄格子で覆われていて、壁にかかる1つの松明で照らされた部屋だった。
いうなれば、囚人をいれておく牢獄といったところか。

(;´ぅω-`)「う……ぐ」

('A`)「ショ、ショボ!」

そんなことを考えているうちにショボに意識が戻ったらしく、
ショボは目をこすりながら、のっそりと立ち上がった。


(;´ぅω-`)「痛っ!!」

そしてショボが突然、頭を抑えてうずくまった。

ショボの右耳の横辺りから、血がたらりと流れていた。
その量からして傷は深くはなく、致命傷ともならないものであろうが、痛そうだった。

(;'A`)「ショボ、その傷は……」

(´・ω・`)「っ……気にしないで、ここに落ちたときにできたみたいだ」



95: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:53:03

ショボも辺りを見回し、そしてたずねる。

(´・ω・`)「ドクオ、ここは……」

('A`)「さあ、わからねえ。
    俺が覚えてるのは、夜中に起きたらお前とクーがいなくてさ。
    トイレに行ったのかとでも思ったけど、やけに目がさえてたから窓の外の景色を見てたんだ。
    そしたら、背後に人の気配を感じて……振り向く前に、頭をガツンと殴られて、気がついたら縛られてここにお前といたんだ」

(´・ω・`)「そうか……。
      僕は、君を起こしに部屋に戻ったら、君が簀巻きにされて床の上に横たわっていたから、
      急いでその縄を解こうと……。そしたら、急に床が開いて、僕と君はここにまっ逆さま、僕は気を失ってたんだ」

('A`)「床が開くって……ミステリーのご都合展開みてえだな。
    しかし、俺を起こしにきたって、なんでまた?」


そこでショボは一呼吸整え、まじまじと俺のほうを見る。


(´・ω・`)「落ち着いて聞いてほしい。
       つーさんが、誰かに殺害された」



96: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:53:46

('A`)「へ?」

ただでさえ混乱している頭の中に、新たな火種を投げ込まれた。

が、幸い、つーさんとは深い付き合いも無かったし、ここには今俺とショボしかいなかったので、
俺は妙に、自分で不気味に思うほどに落ち着いていた。

冷静になって考えてみれば、旅行に来ただけの俺がいきなり簀巻きにされるメリットが果たしてあるのだろうか。

何か、俺がまずい証拠でも握っているのではなかろうかと考えたのだが、そんなものもない。

('A`)「つーさんが殺された……ね。
    犯人はわかってたりしないよな?」

(´・ω・`)「残念ながらわからない。
       だが、おそらくクー以外で、あの旅館の宿泊客、従業員の中の誰かだ。
       わかっているとは思うが、クーが危ない」

('A`)「……そんな」

クーがここにいないと言うことは、現在も旅館に取り残されているのだろう。
それは確かに、危険なことだった。



97: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:54:33

とにかく、時間がない。
俺を縛り上げて、このわけのわからない小部屋に
ショボもろとも突き落としてくれたやつこそが、おそらくつーさんを殺害した犯人であろう。

つまりそれは、やっぱりあの旅館の関係者に犯人がいると見て間違いなくて。
更にいうなれば、クー……それから、俺は信用しているが、ブーンさんとツンさんにも被害が及ぶと言うことだ。


('A`)「とりあえず、早いこと、ここを脱出しないとな……」

と、口に出してみる。
しかし、自分ひとりであれこれと考えを模索しても、たかが知れているのであった。

(´・ω・`)「……」

ショボも思考を張り巡らせ、辺りをきょろきょろと見回している。
3人よれば文殊の知恵とはよく言ったもので、この場にいつもならクーがいて、明瞭な解決策が思い浮かぶものなのだが。



98: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:55:13

その時、俺の右手が何か違和感を感じ取った。
右手、というよりは、右手をもたれかけさていた壁に異変があった。

右手を動かしたとき、壁の塗装が粉となって付着するのを感じたのだ。

('A`)「粉……?」

体を動かしてそこを見れば、壁の一部に小さな穴が開き、そこから薄い亀裂が
壁の間を走りこんでいて、その亀裂の部分の黄色い塗料が乾燥し、パラパラと崩れて俺の手にかかっていたのだった。

しかし、本当に小さな穴と亀裂であったので、それでどうにかなるとは思っていなかった。


(´・ω・`)「!!」

……少なくとも、それは俺個人の考えであり、
この状況を見て目を光らせたショボがどう思ったのかは、定かではないのだが。



99: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:55:44

(´・ω・`)「ドクオ、これは行けるぞ!」

ショボがそう言いながら、右のポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
小さく、太長く、鈍い鉛色に輝くそれは、
よくよくみると、刀身が異様に太いアイスピックであった。


(;'A`)「何でそんなものが出てくんだよ」

(´・ω・`)「ん? 僕の実家はバーだからね」

果たして、そういう問題なのだろうか。

と、俺が見ている前でショボは崩れ落ちた壁のかけらを拾い、
それを手に持ち、アイスピックのキャップをはずして、その先端を亀裂の部分にあてがうと、勢いよく叩きつけた。


その瞬間、コーンと鈍い音が響き渡り、しかし壁の亀裂は少しだけ濃くなり、広がっていった。



100: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:57:20

それから幾度も幾度もショボはアイスピックを壁に打ち続けていた。

だが、素人の俺の眼で見ても、次第にアイスピックの先端が
穿っている壁に逆に削られ、脆くなっているのに気づくことが出来た。

ショボがポケットから取り出したときはとても鋭利だったのに、
今ではなまくらがたなのように、その刀身はぼろぼろである。


('A`)「なあショボ、そのアイスピック壊れないのか?
    壁の厚みだって結構あるだろうし、アイスピックで壁を壊すなんて無謀じゃないか?」

(´・ω・`)「んなことないよ。
       この亀裂と穴、そしてアイスピックを叩きつける感覚で分かるんだ。
       ここの壁は、僕らが思っている以上に薄く、そして壁は風化していてひどく脆い。
       それにね、このアイスピックは僕専用のものなんだ。
       毎日太ましい氷を削ってきてるんだから、これくらいで壊れるわけないだろう」


俺のほうを見向きもしないでショボはそう言い、壁を叩き続けていた。

少々納得のいかない説明ではあったが、壁の亀裂が今見ればくっきり
分かるほどに広がり、最初に壁にあいていた小さな穴は、握りこぶし大くらいまで広がっていた。



101: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:58:19

(´・ω・`)「そぉい!」

ショボの奇妙な掛け声と共に、
懇親の力でアイスピックが亀裂と穴の中心をめがけて振り下ろされる。

それが、最後の一打となった。

('A`)「!!!!」

次の瞬間には、ガラガラと壁の崩れる音がして、
壁にあいた穴を中心に、広がる亀裂が決壊し、積もった瓦礫をショボと一緒にどかすと、
そこには子供一人が通れそうなくらいの大きな穴が開いていたのだった。


穴の向こうには、相変わらず松明に映える黄色い壁がどこまでも続いているのが見えた。
それを見て、一瞬落胆しそうになったが、少なくともここのように四方が
壁にふさがれているというわけではさすがにないであろう。

(´・ω・`)「とりあえず、ここを動こう。
      犯人がいつここに来るかもしれない」

('A`)「おう」

俺とショボはその穴をくぐり、孤島の地下に広がる
この奇妙なラビリンスを歩き始めた。



102: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 21:59:03



俺とショボがしばらく適当に歩き始めると、前方から風が吹き込んでくるのに気づいた。

('A`)「風……ってことは、出口か?」

(´・ω・`)「行く価値はあるだろうけど、用心してね」

('A`)「わかってら」


忍び足で、ゆっくりとそちらに向かって歩くと、壁がそこだけ切り取られたようになくなり、
そこからは濃い茶色の岩の道がごつごつと続いて、大きな開けた場所に出た。

そこからは潮風が勢いよく吹き込んでいて、波の音さえした。
見下ろしてみれば、下はすぐ海で、周りを見れば、ここはどうやら旅館のあった山の
どこからしく、ここと連なるようにしてはるか右のほうには山のふもとが見えた。


(´・ω・`)「どうも、人が生活しているような痕跡があるね」

ショボがそこら辺りを見回しているのを自分も眺めると、小さなベッドと
薄汚れた本棚を1つだけ見つけることが出来た。

ベッドの上には銀色の何かがあって、それを拾ってみると、ロケットだった。



103: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:00:13

(;´・ω・`)「これ、つーさんのロケット? クーが言ってた……」

そのロケットは、俺には全く見覚えのないものであったのだが、
どうやらショボはクーにそのロケットの事を聞いたことがあるらしく、
なんでもつーさんの両親の写真が入っている、彼女の大事なロケットだと言う。

ならば、それがどうしてここにあるのだろうか。

(´・ω・`)「……つまり、犯人はつーさんを殺してから1回ここに戻ってきてるんだ。
      こりゃやばいね。このままここに立ち往生してると、僕らも殺されかねない」

(;'A`)「うお、マジかよ。じゃあ、なんか手がかりになりそうなものだけ持っていって、移動しようぜ。
     お、これなんてどうだろ」

本棚を見ると、薄汚れた1冊のノートが放置されていた。
ところどころがかびていて、凄く臭かったが、最後のほうに書いてあるページのインクは、
最初のページに書いてあるかすれた文字と比べると、比較的新しかった。



104: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:01:01

(´・ω・`)「…………」

('A`)「……」

その手記には、この旅館の創業時からの事柄が記されていた。

ギコさんとしぃさんという2人のカップルのこと。

フサさんとつーさんという子供が、2人の間に儲けられたこと。

ギコさんとしぃさんが、海の藻屑となったこと。

それらが、ある人物の視点から、全てひたすらに書き綴られていた。


そして、その事柄と、ショボの持っていた情報を掛け合わせることで、
どうやら俺たちはこの事件の真相に深く迫ることが出来たようだった。


時間にしては、その手記を読んでいたのは数分に過ぎない。
だが、その数分も惜しいほどに俺とショボは急ぎ、迷宮へと踵を返した。



105: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:01:51

――――――――――――――――――
――――――――――――
―――――――

( ^ω^)「そういえば、この島には妙な伝統があるんだお」

川 ゚ -゚)「伝統、ですか?」

私たちは相変わらずラビリンスを歩き回っていたのだが、
本当に進めど進めど何もなく、ただひたすらに会話をして、気を紛らわせていた。

ξ゚听)ξ「この島では、古くから、成人したときに
      好きな男に髪を切ってもらうって言う伝統があるんですって。
      ロマンスよね、なんか」

( ^ω^)「そのとき、はさみとかじゃなくて、ナイフを使って髪を切るんだそうだお。
       あのつーさんの胸に突き刺さっていたナイフ、妙にぴかぴかだったけど、
       もしかしたらこの慣習に恨みを持つ人の犯行かもしれないおね……」

川 ゚ -゚)「もしかして、つーさんの髪が短いのは……」

( ^ω^)「ああ、つーさんは髪をフサさんに切ってもらってるんだお。ナイフで、ね。
       もっとも、フサさんの使ってるナイフはあのナイフじゃないし、
       モララーさんは独身だからナイフを持っているはずはないんだけどお」



106: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:02:48

好きな人の髪を切るナイフとは、確かにロマンスだ。
だが、それで殺人が起きてしまったのなら、ロマンス以前の問題である。

今回犯行に使われたナイフが、もし本当にその好きな人の髪を切るためのナイフだと言うなら。
つーさんを好いていた誰かの犯行ということにでもなるのだろうか。

つまりそれは、旅館にはいるはずのない人間……すなわち、
この孤島のラビリンスのどこかに潜んでいる人間が犯人であると見ても、差し支えないのであった。


( ^ω^)「ま、そんな話もあるっていうことだお」

結局、それからまた下らない話をしつつ、私たちはラビリンスの中を歩き始めた。


最初のころは緊張感を持ち続けていたが、あまりにも何も起こらないので、
私は不謹慎だが眠気さえ感じていた。



107: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:03:38



そんなことだから。

私たちは十字路で、自分達から見て右側の通路を
歩いている誰かと突然出会ってしまた瞬間、心臓が出そうなほどに驚愕したのだった。

その人物の顔も見ずに逃げ出そうとした私たちだったが、
いざとなると腰が抜けて、立ち上がることさえできなかった。

もし、こいつが犯人であったのなら。

私は1人、震えながら死を覚悟していた。



「お前……」


しかし、私に語りかけるその声は、
やさしく、どこか聞き覚えがあり、落ち着くものだった。


3、孤島のラビリンス  終



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