川 ゚ -゚)クーと孤島のラビリンスのようです
- 139: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:29:43
川 ゚ -゚)クーと孤島のラビリンスのようです
5、これから
- 140: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:30:25
結局あの後、私達は孤島のラビリンスを脱出して、旅館に戻った。
シートをかぶせられていたつーさんの遺体の胸からは、
やはりあのナイフがなくなっていた。
私はナイフについた血液をしっかりとぬぐい、鞄の中にしまいこんだ。
数時間たって、ショボとドクオとブーンさんがトンネルを塞いでいた土砂を
スコップなどで時間をかけてどかし、ふもとに助けを求めに行くことができた。
すぐに警察がやってきて、私達は夜遅くまで事情聴取をされた。
つーさんの遺体は警察に持ち出され、私達が吐き出した情報から
警察が孤島のラビリンスに侵入しようとしたらしいのだが、
孤島のラビリンスは瓦礫で入り口が埋まってしまっていたと言う。
あの後何回か土砂崩れなどがあったから、おそらくその影響なのだろう。
- 141: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:30:57
私達の証言や、実際にラビリンスがあったことなどから、
つーさん殺害事件の犯人はモララーさんであると断定され、
ラビリンスからの遺体発掘作業が行われることになった。
フサさんはというと、相変わらずうつろな目でその光景を見ていた。
数日後につーさんの葬儀を行うらしいのだが、私達もブーンさんたちも、
もうその頃には地元に帰る予定だった。
そういうわけで私達はあの山を出て、港に戻り、
現在フェリーに乗り込んで、本州に戻ろうとしているのであった。
- 142: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:31:41
出航したフェリーの甲板に、私は1人佇んでいた。
段々と遠ざかっていく孤島を目の前に、鞄からひと振りのナイフを取り出す。
凶器が無くなっているということで、警察も必死に捜索したようなのだが、
モララーさんと共にラビリンスに埋まってしまっていると言う旨を説明したら、
あっさりと探すのをあきらめてくれた。
結局、私はあの時のモララーさんの遺言どおり、このナイフを海に捨てようとしているのだ。
刀身は私が丹念に磨いたからピカピカだ。
しかし、ルミノール試薬でも吹きかけてみれば、このナイフの刀身は真っ青になるのだろう。
神聖な儀式に使われたこのナイフは、あまりにも多くの人の血を吸った。
そしてその発端は、この海に飲み込まれた、ギコさんとしぃさん。
ならば共に、モララーさんの想いも眠らせてやってくれ、海よ。
- 143: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:32:40
ナイフは弧を描いて島のほうに飛んでいって、海に静かに沈んでいった。
それっきりだった。
あまりにも、彼の想いの最後はあっさりとしていた。
ξ゚听)ξ「……クーさん」
川 ゚ -゚)「ツンさん」
船室で眠りこけているドクオたちの元に戻ろうとした私は、ツンさんに呼び止められた。
ξ゚听)ξ「あのナイフ、やっぱりあなたが持ってたのね。
私達、警察に言い訳するのに苦労したんだから……」
川 ゚-)「すまない。しかし、彼の最後の言葉だったからな」
海を眺め、ツンさんに言葉を返す。
やがて彼女は私の横に並び、一緒に海を眺め始めた。
- 144: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:33:44
青い水平線が広がる中、私達の横には
いつだか見たのと同じように、ウミネコが飛んでいた。
私はポケットからかっぱえびすんを取り出すと、つまんで砕いて、海に放り投げた。
途端に、ウミネコ達はそれに食いつくようにして急降下する。
ξ゚听)ξ「なんだか、ウミネコみたいね」
川 ゚ -゚)「何が、だい?」
ξ゚听)ξ「欲しいものをただ手に入れようとした。
そんな男の怒りが暴走して怒ってしまったあの事件、かしら」
川 ゚ -゚)「欲しいもの……ね」
モララーさんは、決してしぃさんを欲していたわけではなかろう。
しぃさんからモララーさんへの、愛を欲していたのだろう。
だが、彼女は他の男と子を作った。
殺人の動機とは、十分なりえるのだ。
確かに、私のまいた餌を他の仲間に取られてしまった、哀れなあのウミネコのようだ。
- 145: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:34:21
もし、仮にドクオが私のことを好きだとして。
私がショボのことを好きになってしまったら、ドクオは激怒するだろうか。
いや、あのドクオが私を好いているということ事態が想像できないし、
私がショボのことを恋愛的な意味で好くというのもありえないだろう。
だが、もし本当にそうなってしまったのなら。
一番に狙われるのは、私か。はたまた、ショボか。
少なくとも、殺人がおきてもおかしくは無い。
私は、中高生の恋愛などは、
所詮お遊び……もしくは、人生経験の上での軽いものだとしか思っていない。
その時期で付き合ったカップルが結婚まで行く事例など、果たして何件あるだろうか。
だが、その一時的な感情の錯誤ですら、殺人の動機となりえる。
私は、恋愛と言うものに少し、恐怖を抱いていた。
- 146: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:34:57
ξ ゚-)ξ「……海、綺麗ね」
川 ゚-)「そうですね」
隣にいるツンさんは、ブーンさんと幸せに生活を過ごしている。
そういうカップルばかりならいい。そうやって、嫉妬という感情が無ければいいのに。
川 ゚ -゚)「ツンさん」
ξ゚听)ξ「なあに?」
川 ゚ -゚)「ブーンさんといて、幸せですか?」
ツンさんは一瞬顔を赤らめ、きょとんとしていた。
ξ゚ー゚)ξ「……幸せ、よ。この世で一番ね」
しかし、少しの間をおいて、きっぱりとそう言い切った。
川 ゚ -゚)「それはよかった」
私は再び、海を眺め始めた。
- 147: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:35:27
海は果てしなくどこまでも続いていた。
同じように、私達の人生も、一寸先は闇で広大に続いている。
その人生の中、どんな出来事が起こるかはわからないが。
一歩ずつ一歩ずつ、立ちはだかる壁を越えながら歩いていくことが必要だ。
その壁を登りきることをあきらめたとき。
それが、自分が崩壊してしまう時でもあるのだろう。
川 ゚ -゚)「……」
潮風がさわやかに頬をなぜた。
その冷たさに、目がパッチリと覚める。
さあ、私は戻るとしよう。
いつもの幸せな日常に、彼らの元へ。
- 148: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:35:59
甲板に背を向け、階段を降りる私の後を、
ツンさんもしっかりとついてきた。
彼女とたわいも無い話をしながら、船室へと足を運ぶ。
そうやって楽しく談笑でもしているこの一時こそが、
一番の至福なのだろうから。
少しの時間を、少しでも大切に。
そうやって、私は生きていきたい。
5、これから 終
- 149: ◆WFml1l.GUY :2008/08/30(土) 22:36:29
一歩ずつでもかまわない。
地に足をつけ、自分の力で、しっかりと歩んで行こう。
川 ゚ -゚)クーと孤島のラビリンスのようです 終
あとがき
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