( ^ω^)ブーンが多足歩行戦車に搭乗するようです
- 4名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/09(土) 12:32:05.06 ID:gKRfj78B0
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第1.5話
(1 ´_ゝ`) 「で、どうですかね。今年の最終募集の成果は」
(2 ´_ゝ`) 「ろくなのいませんな…充足率不足から、上から数だけは
取れといわれてるんですが…」
VIP陸軍省。首都ジップ=デークレーからほど近い閑静な保緑地の一角にそれはあった。
木々の間からのぞかせるそのコンクリート製のいかめしい外見は、まるで森の中にひっそりと立つ墓標だった。
その墓標の中のある一室に彼らはいた。
彼らが回し読みしている書類は三枚。1枚目は履歴書。二枚目はペーパーテストの結果。
三枚目は体力測定の結果だ。彼らの職務は一体はなんだろうか。
(3 ´_ゝ`) 「これもゆとり教育の弊害か…」
(4# ´_ゝ`) 「教育省の連中なんざ、憲兵送りつけてしょっ引いちまえばいいんだ!」
( ) 『物騒だな』
- 7名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 12:44:14.29 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚) 『成果はあったか?』
(1´_ゝ`) 「あ…中佐!」
中佐と呼ばれた女が1人。ルームライトに輝く長い銀髪。後ろでまとめてはいたが
僅かに肩にその銀髪がかかる。そしてその肩には中佐を示す二つ星。
通った鼻筋に制服ごしにもわかる大きな乳房。まるでムービースターのようだった。
そんな彼女はお世辞にも洒落ているとはいえない
女性用支給ヒールを鳴らし、同じような顔のひしめく部屋に入ってきた。
8名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/09(土) 12:57:59.94 ID:gKRfj78B0
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(2 ´_ゝ`) 「クーク中佐、中間選考までは我々がやりますので、わざわざご足労いただかなくても」
川 ゚ー゚) 「何。ご足労と知っても参謀本部はここの七階だ。エレベーターで5分だぞ」
共和国陸軍中佐。クーク中佐と呼ばれた女の身分だ。正しくはクー・クーク。
陸軍士官学校を首席で卒業した初めての女性であり、戦車術科学校、さらには陸軍大学校を
最年少の25歳で卒業した才媛だ。大学校を出てすぐ彼女は佐官任官し、この陸軍省最上階にある
参謀本部に勤務していた。
それはすでに彼女の将来は約束されている、ということを示すものだった。
当然それをねたむものも多い。特に軍隊に属しながらも毎日デスクワークにいそしみ、
腰痛と痔の痛みのストレスを妻に難癖をつけ、酒を煽ることで紛らわせているようなこの男には。
(4; ´_ゝ`) 「……」
11名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 13:08:54.41 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚) 「何。ちょっと暇になったものでな。手間はとらせん」
(1; ´_ゝ`)「いえ、そういうことではなく、我々には職務というものが…」
(1; ´_ゝ`)「(ダメだ!婉曲に言っても通じない!)」
(4# ´_ゝ`)「(ガツーンといってやればいいんだよ!越権行為なんだから!)」
川 ゚ー゚) 「おい」
(4; ´_ゝ`) 「は、はいィ!?」
選考委員・4の全身が硬直する。まずい。聞かれたか。
川 ゚ー゚) 「こいつの名前面白いな。『近藤むつ子』。
イニシャルがMKだ。マジで恋するだぞ」
(1234;; ´_ゝ`) 『そこか!!?』
どうもこの女はよくわからない。参謀本部で勤め上げたここ二年間。時としてこのように下界に舞い降りてきては、
ぞっとするような冷たい視線をくれたかと思うと、今回のようにたわいも無い、本当にたわいも無いことで
笑ったりする。わけのわからない27歳だ。
女というのはこんなものだったか?いや、俺の横で毎晩寝てる化け物。あれはもう少しわかりやすい生物だった。
それとも天才というのはすべからく頭のネシが一本外れているのだろうか?
選考委員4の苦悩は止まらなかった
- 13名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 13:24:20.07 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚)「まあ真面目な話に戻ろう。仕事の話だ」
(1´_ゝ`)「はあ・・・」
川 ゚ー゚)「めぼしいのはいたか?参謀本部からもな、人材不足の悲鳴が上がっていてな」
(3´_ゝ`)「あまりいませんね。いいのはみんな中央の省庁にとられてしまいますから…」
川 ゚ー゚)「こいつは?秀才じゃないか」
クーが手にとった履歴書。そこには「ラウンジ・VIP共和国立學館」とあった。ラウンジとの共同出資で建てられた
国内最高峰の学び舎だ。留学生も多数通い、国政を舵取る人材を多く育てている。しかしラウンジの名を最初に冠するという
ことから、これを汚名として嫌う人間も少なくなかった
(2 ´_ゝ`)「そいつはゲイです」
川 ゚ー゚) 「破り捨てろ」
- 14名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 13:33:19.29 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚)「お…こいつは」
隅に寄せられていた書類を手に取る。「VIP国立大学」の字。添付された写真にはあの細い目。
川 ゚ー゚)「こいつはどうなんだ?」
(2 ´_ゝ`)「ああ…そいつですか。確かに体力測定は抜群でしたよ。論文も悪くなかった。ただ…」
選考委員2の顔が曇る
川 ゚ー゚)「ただ?」
(2 ´_ゝ`)「学業成績表が…」
おずおずと取り出したVIP国立大の推薦表。35科目の単位が認定されたと書いてある。
だがよく見ると、35科目中「優」は三科目。残りはすべて「可」であった
(3*´_ゝ`)「嘘www俺それまだ見てねぇwwww見せてwwww俺もそこ出身なのよwww」
川 ゚ー゚ 「……」
(3;´_ゝ`)「し…失礼しました…」
- 15名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 13:43:35.77 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚)「いい。気にするな。3君。彼が優をとった科目というのはどんなものだ?」
(3;´_ゝ`)「は?え、えーと…」
戸惑いながら選考委員3は書類に目を通す。緊張していたが、目を通すに攣れ思わず口元がゆがみ、
失笑が漏れる。
(3´,_ゝ`)「プッ」
川 ゚ー゚)「…」
(3;´_ゝ`)「し、失礼しました!えーと、1つは体育。サッカーですね。
どうやら地区じゃそこそこ有名だったようです」
川 ゚ー゚)「気にしなくていいといってるだろう。後の二つは?」
(3 ´_ゝ`) 「政治学のゼミと歴史社会学ですが…」
川 ゚ー゚) 「ですが?」
(3;´_ゝ`)「このゼミは、堕ちこぼれと変人の集まりで、酒さえ飲めれば優が来る様なところで、
後者のほうはテストが教科書の値段を書けだの購入したた本屋の名前を書けだの…」
川 ゚ー゚) 「ぷっ… あははははは!」
Σ (1; ´_ゝ`)(´ <_` ;; 2)( ;´_ゝ`3)(´ <_` ;;4 )
突如としてクーが堰を切ったように笑い出す。選考委員たちは何が起こったか事態を把握できないでいて、
ただお互いの似たような顔を突き合わせていた。
- 28 名前: 愛のVIP戦士 投稿日: 2006/12/09(土) 19:34:04.42 ID:gKRfj78B0
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(1; ´_ゝ`) 「…どうかなされましたか?」
川 ゚ー゚) 「いや、失敬。職務中だったな それでな、私も職務を果たそうと思うのだが」
(1; ´_ゝ`) 「?」
川 ゚ー゚) 「こいつが欲しい」
Σ (1; ´_ゝ`)(´ <_` ;; 2)( ;´_ゝ`3)(´ <_` ;;4 )
馬鹿な。
彼らは一様にそうした表情を浮かべた。
大卒とはいっても、こんな堕ちこぼれを採用し、あまつさえエリートの代名詞である
参謀本部へ?あり得ない。
(;2 ´_ゝ`) 「無理です!採用だけならまだしも、予備士官を参謀で勤務させるなんて!」
(#4 ´_ゝ`) 「参謀本部だからといって、何もかも思い通りできると思うな!」
元からこの男は中佐に対し敵愾心を持っていたのだろう。怒声を張り上げ、机を叩き反発した。
しかしそんな怒気などまるで意に介さないかのように中佐は言う。
川 ゚ー゚) 「誰が参謀本部に登用すると言った?私の部下にするのだよ」
(#4 ´_ゝ`) 「同じことでしょうが!大体…」
川 ゚ー゚) 「聞いてなかったか?さっき私が言ったことを」
涼しげな顔を崩さぬまま、中佐は喋り続ける。そして予想だにつかないことを言った
- 30名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 19:49:30.01 ID:gKRfj78B0
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川 ゚ー゚) 「『暇になった』『参謀本部は人手不足』と言っただろう?
転属を願い出たのだよ。参謀本部からな」
今なんと言った?参謀本部を辞めた?将軍、ひいては軍政に関われるであろうその
もっとも簡潔でわかり易い出世の道を自ら閉ざした?
(1; ´_ゝ`) 「そんな…なんてことを」
川 ゚ー゚) 「心配してくれるのか?」
(1; ´_ゝ`) 「いえ、そういったわけでは」
川 ゚ー゚) 「そうだな。君に心配されるいわれは無い」
(1; ´_ゝ`) 「…」
そんなふうに選考委員1君が深く傷つけられているのを尻目に、
4はまた怒気をはりあげた。
(4# ´_ゝ`) 「しかしそれなら明確な越権行為だ!我々は役職無しの中佐から
受ける命令など何一つありません!!」
川 ゚ー゚) 「さっき君達のうちの誰かが採用だけならまだしも、といった気がするのだが」
(4# ´_ゝ`)(´ <_` ;; 2)「……」
苦々しげな表情で、口の滑った同僚をにらみ付ける。その間を縫って、さらに中佐は喋り続ける。
川 ゚ー゚) 「それにな、これは君らにとっても悪い話ではない。この男の名前を見てみろ」
(3; ´_ゝ`)「? 『内藤ホライゾン』…ですか?これが何か」
(4; ´_ゝ`)「まさか!?」
川 ゚ー゚) 「そうだな。ありがちな苗字だ。気づかなければ見落としてしまったかもしれないな。
だが気づくと気づかないとでは大きな違いだ。交差点で赤信号に気づかなければ死ぬ。
そうだろ?」
- 31名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 20:01:15.78 ID:gKRfj78B0
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(1; ´_ゝ`)(´ <_` ;; 2)( ;´_ゝ`3)(´ <_` ;;4 )
参った。なんて日だ。今日はいろんなことがありすぎる。頭の整理がつかない。ただいつも通り
書類を選別してたらこの悪魔のような女がやってきて。
引っ掻き回したと思ったら今度はこれだ。夢なら覚めてくれ。
そうやって一同が逡巡していると
川 ゚ー゚) 「どうだ?この情報料ということで貸し借り無しにはできんか?」
またこの悪魔が取引をもちかけてきた。
(;1 ´_ゝ`)「このことは、内藤中将閣下は…」
川 ゚ー゚) 「当然存じておられる。くれぐれもよしなに、だそうだ」
小さい頃読んだ教訓話はみなこう結論付けられている。
『悪魔と取引するとろくなことが無い』
しかし実際に体験してみるとわかる。悪魔が持ちかけているのは取引なんかでは無いってことを。
それは体裁が整えられ、リボンで綺麗にラップされた「脅迫」以外の何物でもなかった。
- 32名前: 愛のVIP戦士投稿日: 2006/12/09(土) 20:09:38.46 ID:gKRfj78B0
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(1 ´_ゝ`)「わかりました。やってみましょう」
川 ゚ー゚) 「すまないな。感謝する」
選考委員1はふう、と息をついて、内藤の書類に勢いよく判を押す。
それはこの「脅迫」の受諾に他ならなかった。
(4* ´_ゝ`)「突然中佐のところに配属されると、いろいろといらぬ誤解を招くこともあるでしょうから
まずは陸軍省の主計科にでも推しておきましょう」
川 ゚ー゚) 「気が効くな。ぜひそうしてくれ」
(4* ´_ゝ`)「いえいえ…職務ですので。しかし中佐」
川 ゚ー゚) 「ああ。何故だかわからないが、急に君の名前が気になった。覚えておこう」
(4* ´_ゝ`)「フヒヒヒ!スンマセン!」
さっきまでの罵声にも似たどなり声はどこへ言ったか。すっかり選考委員4の声は猫なで声へと代わっていた。
今日は2人分のつまみを買って帰ろう。とてもこの女と比較できるほど美しくは無いが、少なくとも悪魔ではない
俺の横で寝るあの女のために。
選考委員4の口元はすでに緩みきっていた
川 ゚ー゚) 「それでは失礼するよ。私も新しい任地に赴かなければならないのでな」
(1 ´_ゝ`) 「これからどうなさるおつもりで?」
川 ゚ー゚) 「地方のケチな戦車部隊でお山の大将さ。ちょっとした教導団長だ」
(1 ´_ゝ`) 「そうですか…」
川 ゚ー゚) 「君も元気でな」
(1 ´_ゝ`) 「は、はい」
- 34名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 20:34:14.62 ID:gKRfj78B0
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(1* ´_ゝ`)「(いい女だったなあ…)」
(2; ´_ゝ`)「(悪いのは俺か?俺なのか?)」
(4* ´_ゝ`)「(あいつ何好きだったっけかな…まあ前祝だ。パーッと行こう!)」
クーがその銀髪をなびかせ、僅かに香る香水の残り香が香る部屋で、
彼らは悲喜こもごもの面容だった。
(3: ´_ゝ`)「俺さ…怒られただけかな…」
と愚痴る3。悪魔と取引できる機会すら訪れない。
そんな人間だっているさそうだ。俺には俺の仕事が似合ってる。
そう心の中でつぶやいて、再び書類の整理についた。
川 ゚ー゚) 「面白いな。人生は実に面白い」
そのころ悪魔は、まるで彼らの悲哀なんて思考の片隅にもないようにその言葉を反駁していた。
-コツ、コツ、コツ、コツ。安ヒールが廊下に規則正しく響く。
悪魔が向かうは闇か地獄か。とりあえずまずは仕事のリズムを崩さぬよう
静かに陸軍省のロッカールームを整理して、荷物をまとめる。その後に輸送機に乗り込むのだ。
何が待つか。何を成すか。 物語をはじめるのはそれからでも遅くは無い。
彼女の口元にはいつの間にか笑みが浮かんでいた。ぞっとするように美しい笑みだった。
第1.5話 終
…こんな長くなるなら第2話でもよかった('A`)
- 35名前: 1投稿日: 2006/12/09(土) 20:37:51.00 ID:gKRfj78B0
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おまけ
某地方区役所
(地1 ´_ゝ`)「バロスwwwwwwwwwwwwwwwww優三つwwwwwwwwwwww」
(地2 ´_ゝ`)「うぇうぇwwwwwwwwwもう合否出さなくていいんじゃねwwwwww」
(´ <_` ; 地3)「働けよお前等…」
内藤ホライゾン 『不採用』
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