( ^ω^)ブーンが幸せの意味を知るようです

  
79: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 22:58:39.67 ID:iFJfdzjK0
  

--第25話--

(;^ω^)「これで応急処置は完了だお!あとは救急車を待つお!」

ブーンは額に浮かぶ汗を拭う。
荒巻の足の止血から、ショボンの両親の解熱まで、ブーンの魔法ひとつで済ましてしまった。

この中で回復魔法を使えるのはブーンしかいなかった。
だから、僕がやるしかなかった。

('A`)「ブーン・・・お前汗すごいぞ・・・20分も魔法使役しっぱなしで・・・」

(;^ω^)「僕は全然大丈夫だお!!」

顔色は青く、唇の色も血の気が引いている。
無理をしていることは間違いない、でも。

やらなくてはいけない使命があるためか、ブーンの顔はそれでも輝いていた。



  
83: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:05:56.02 ID:iFJfdzjK0
  

/ ,' 3 「ありがとうブーン君・・・わしらはもう大丈夫じゃ・・・もうじき救急車も来るだろう。
     君達は神殿の方に向かってくれないか・・・わしも向かいたいが・・・この足では」

床に横たわる荒巻が息も絶え絶えに言う。
止血をしても、痛みは引かない。気を失わないのが不思議な程だ。

(´・ω・`)「分かりました。あっちは僕達にまかせて。父さん、母さん後は頼んだよ!」

荒巻の看病をショボンの父母に任せて、ブーンたちは荒巻の家から飛び出した。



さくさく、さくさくと革靴で雪を踏む音がする。
そこでドクオは雪が降ってきていたことに気付く。

('A`)「寒い・・・!!」

夕暮れも映さぬ曇天の空。
それでも3人は走る。

(;^ω^)「走れ・・・ば、あったかく・・・なる・・・お!!」

(´・ω・`)「ブーン君、大丈夫かい!?」

ただでさえ疲れていたであろうブーン。
それでも必死に足を動かしている。



  
86: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:10:46.37 ID:iFJfdzjK0
  

(;^ω^)「大丈夫・・・ですお。ツンの帰る場所をちゃんと守る・・・んですお!!」

体はもう限界に近いのだろう。
精神力でのみで彼は動いていると言っても過言ではない。


その必死の形相に、休んでもいいとショボンは言ってあげたかった。
でも、彼はそれを認めないだろうと思い、口をつぐんだ。


そして、神殿に向かう足は更に速くなり、
山の中腹に差し掛かったところで、いきなり女の声がした。

(  )「ここは通さないっぽよ!!」

(´・ω・`)「!!誰だ!!!」

ずっと前に、聞いたことのあるような声だった。



  
92: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:20:49.36 ID:iFJfdzjK0
  

その声は、頭上から声が降って来た。
慌てて上を見上げると、がささ、と木の葉が揺れていた。



(*‘ω‘ *)「ここは我が主の命で通せないっぽ!!早々に立ち去れっ・・・って・・・あんた達!!」

( ><)「・・・」

二つの影が急降下してくる。
やはり、この声の主は彼女だったのか。

(;^ω^)「ちんぽっぽさん!わかんないんですさんも!」

だけど、何故ここにいるのか。
嫌な予感が脳裏にこびり付く。



  
96: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:24:46.94 ID:iFJfdzjK0
  

(*‘ω‘ *)「あんた達、何のようでここに来たっぽ?
      これ以上は立ち入り禁止だから、早く帰るっぽ!」

ここに来た奴は皆切り倒せ、とボスに言われていた。
でも、よしみのある彼らを切るのは気が引ける。

この子達はこちらの組織に害などないだろうし・・・そのまま返しても良いだろう。


彼らの目的も、フサギコの目的も、何も知らないちんぽっぽはそう考えていた。



  
99: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:29:44.54 ID:iFJfdzjK0
  


('A`)「そういう訳にもいかないんだ・・・この先に用がある。ここを通してくれ!」

ドクオが珍しく懇願する。
彼も焦っているのだろう。

( ><)「・・・」

わかんないんですは、黙して何も語らない。

(*‘ω‘ *)「神殿は今取り込み中だっぽ!!そっちの用事は後にするっぽ!」

この子達も急ぎの様だが、こちらの方を優先させなくてはならない。

(´・ω・`)「ごめんね、その取り込み中とやらを僕達は阻止しなきゃならないんだ・・・」

(*‘ω‘ *)「ぽっ!?」

今、なんて・・・?
この子達が、ボス─フサギコ様の敵で、食い止めなくてはならない相手だとでも言うのか!?



  
100: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:35:20.85 ID:iFJfdzjK0
  


(;^ω^)「な・・・?」

ショボンのその言いようだと、彼女達はフサギコの手下だと─?
そしてショボンはその事に気付いていた、と?


(´・ω・`)「今神殿を封鎖する必要がある人間なんて、フサギコしかいないだろう・・・」

─フサギコの名はブーンから聞いていた。
─荒巻の、先代のサラマンダーの子。失踪したという・・・少年。

ブーンの心の声を聞いたかのように、ショボンが言った。


(*‘ω‘ *)「あんた達が敵と分かっても、こっちは戦いたいとは思わないっぽ!

      こっちは命令だから退けない。頼む、そっちが退いてくれっぽ!!」

フサギコの用事が何かは知らないが、今日には帰るだろう。
明日まで、待ってくれないか、とちんぽっぽは交渉した。



  
103: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:40:29.40 ID:iFJfdzjK0
  

かちゃ、と聞きなれた音色。

刃と刃の擦れる音がした。

('A`)「すまねぇな・・・俺達はどうしてもあいつを、フサギコを止めなきゃなんねぇんだ・・・
    だとしたら、もう、分かってるだろ?俺達は戦わなきゃいけないって事をな」


( ><)「・・・」

その刹那。
わかんないんですはドクオの方へと走りこんでいた。
剣を突きの姿勢に構えて。



  
109: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:50:34.54 ID:iFJfdzjK0
  

('A`)「くっ!」

わかんないんです対ドクオでは、ドクオの方が不利。
短剣では盾にならず、元々後衛向きなのだ。

突風を起こし、わかんないんですの走る軌道を変える。
よろめいたわかんないんですの剣をブーンの両剣が捉える。


(;^ω^)「ドクオ!こっちは僕に任せて間合いを取るお!!」

ブーンはドクオの血の気の多さに辟易しながらも剣を取った。

('A`)「分かった!!」

バックステップで後方へと下がる。
ショボンはちんぽっぽの方に駆けていた。


(´・ω・`)「さぁ、君も・・・無駄死にしたくなければ武器を取るんだ!」

細剣でちんぽっぽに切りかかる。
彼女はふところの小太刀でそれを流す。


(*‘ω‘ *)「分かってるっぽ!!わかんないんですだけに戦わせたりしないっぽ!!」

そう言って彼女も後ろに下がり、弓をつがえた。



  
115: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/09(月) 23:58:56.83 ID:iFJfdzjK0
  

('A`)「でぇいっ!」

(*‘ω‘ *)「食らうっぽ!!」

ドクオの刃の嵐とちんぽっぽの4本の矢が放たれたのはほぼ同時。

矢はすべてそれぞれの軌道を描きながらショボンへと向かう。

(´・ω・`)「ちっ・・・」

ショボンは後退せざるを得なかった。
そしてちんぽっぽとショボンの間にわかんないんですが立ち塞がる。

これであちらにも前衛と後衛のポジションを作らせてしまったことになる。

(´・ω・`)「折角有利な状況だったのに・・・」

わかんないんですはドクオの刃をいくらか浴びながら、しかしブーンとショボンの相手をする。
ちんぽっぽの壁になるために。



  
117: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:05:26.04 ID:9WLQ9otV0
  

不利な状況だな、とショボンは思考を巡らせる。

こっちはフサギコとの戦いの為に体力を温存しなくてはならない。
対して、あちらは全力を出し切れる。

魔法を使えば、ケリはつくかもしれない。
でも、疲れという大きなリスクがある。

(´・ω・`)「どうしたものか・・・」

こう戦闘になれば説得も出来ないな・・・。

ちらり、と前方でこちらの攻撃を受け流しているわかんないんですを見上げる。

( ><)「・・・」

彼の様子もなんだかいつもと違う、何かがおかしい・・・そう思った。



  
122: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:13:33.78 ID:9WLQ9otV0
  

('A`)「ちぃ・・・」

前衛対前衛で戦っている間、後衛の方でも地味な戦いがあった。

(#'A`)「こらちんぽっぽ!こっちがナイフ投げようとしてるときにちまちま矢飛ばしてくるんじゃねぇ!」

これではこちらの攻撃が出来ない。
弓はモーションがかかるため、防戦に尽くしているのだろう。

(*‘ω‘ *)「・・・こっちは魔法の準備してるんだっぽ!いくっぽ!!」

ちんぽっぽの魔法って・・・まさか・・・!!

('A`)「みかんはもう止めてくれぇぇぇぇぇ!!!!!」

随分トラウマになってしまったものだ。


頭を抱えるドクオに構わず、ちんぽっぽは両手を構えた。

(*‘ω‘ *)「今回はみかんなんて甘いもんじゃないっぽ!!くらえ!!文旦ストライク!!!」



  
124: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:19:39.43 ID:9WLQ9otV0
  

どどどどど、と重く鈍い音がする。
虚空から舞い降りる、いや、襲い掛かる大量の文旦。

(;'A`)「痛いいたい!!これ地味に痛い!!みかんよりでかいし硬い!!たしかに甘くないけどさ!!!」

皮が厚いぶん、実が体に付着することはないが、じわじわと痛い。
魔法の有効範囲から逃げようとすると、足元の文旦を踏んで滑って転んだ。



  
125: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:24:43.47 ID:9WLQ9otV0
  

(*‘ω‘ *)「あんたバカっぽ!!前から何も成長してないっぽ!!」

(#'A`)「やかましい!!お前だってこんな幼稚な技覚えやがって!!」

ドクオが足元に転がる文旦をちんぽぽに向かって投げている。
ちんぽっぽがそれを喧嘩文句と共に投げ返す。

(*‘ω‘ *)「お前のカーチャンでべそっぽー!!」

(;'A`)「貴様、どうしてそれを!!」





(;^ω^)「あっちは平和そうでいいお・・・」



  
131: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:32:54.75 ID:9WLQ9otV0
  

(;^ω^)「それに比べてこっちは・・・」

ショボンと二人で斬りかかってみるものの、全て受け流される。
前にコロシアムで戦ったときよりもずっと上達している。

実際、ショボンも息が上がってきていた。
こちらはさっきの魔法の疲れもあり、目の前が明滅している状態。
これは、まずいかもわからんお・・・。

ちんぽっぽがドクオに向かって投げた文旦。
それが手元が狂ってしまい、ブーンの足元に転げて来た。


(;^ω^)「っとぉ!!」

お約束のようにすっ転ぶブーン。

( ><)「・・・!!」






剣は、深く深く突き刺さっていた。
─わかんないんですの腹に。



  
139: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:42:11.37 ID:9WLQ9otV0
  

(*‘ω‘ *)「わかっ・・・わかんないんですっ!!」

手に持っていた文旦を放り捨て、ちんぽっぽがわかんないんですの背中を支える為に走ってきた。


(;^ω^)「わかんないんですさんごめんなさいだお!!今治療魔法を・・・」

焦るブーン。肉体を傷つけるつもりなど到底無かったのだ。
とにかく剣を抜こうをする。


──困惑していた彼は、気付いていなかった。

(´・ω・`)「どうして・・・剣を抜いても血が流れない・・・?」



──人を刺したというのに、肉を貫いた感触がしなかった事など。



  
143: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:48:42.06 ID:9WLQ9otV0
  

ブーンは、ショボンのその言葉にはっとする。

(;^ω^)「そういえば、わかんないんですさん刺したはずなのに・・・

       硬いものに当たる感覚しかしなかったお・・・」


( ><)「・・・」

わかんないんですは、表情を変えないまま大地に横たわった。
しゃがんだちんぽっぽが隣に寄り添う形になる。

(*‘ω‘ *)「わかんないんです!!大丈夫かっぽ!?ちょっと怪我の様子見るっぽ!!」

初めは遠くで傍観していたドクオもこちらにやってきた。
このような状態では、休戦するしかないだろう。


・・・元々、ドクオしか戦闘意欲は無かったのだし。



  
148: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 00:54:03.50 ID:9WLQ9otV0
  

ちんぽっぽがわかんないんですの体躯を包んでいたローブを捲る。
そして、わかんないんですの肌が露わに・・・ならなかった。


ローブの下から覗いたのは、鉄の塊やたくさんの機械だった。


(´・ω・`)「これは・・・?」

(*‘ω‘ *)「そんなじろじろ見るなっぽ。そんな顔で見なくても、話してやるっぽよ。


      どうしてわかんないんですがこんな体になったか・・・」



  
156: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:05:57.63 ID:9WLQ9otV0
  


あれは、3ヶ月前のことだった。

(*‘ω‘ *)「"中級"和解者試験受けるっぽ!!」

( ><)「ちんぽっぽちゃんなら受かるんです!!」

(*‘ω‘ *)「わかんないんですも受けるんだっぽ!」


もちろん、結果は合格。
二人で鍛錬した甲斐があった、と喜び合ったものだ。


─問題は、その後だった。


( ><)「ちんぽっぽちゃん!!コロシアムバトル出たいんです!!」

(*‘ω‘ *)「わかんないんですは出るといいっぽ!!弓兵はタイマンバトル不利だから応援してるっぽ!!」

そう言って、コロシアムに向かうわかんないんですを見送った。


──あの時、止めていれば・・・何度もなんども、そのことばっかり苦しんだ。



  
160: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:13:48.62 ID:9WLQ9otV0
  

いきなりの事だった。
審判の大きく響く笛の音、崩れ落ちるわかんないんです・・・

わかんないんですの血で真っ赤に染まった対戦者。

仰向けに倒れたわかんないんですの左胸には、大きな穴が穿たれていた。

それは審判側の不注意。
戦うものに命の危険が迫った場合、審判側が止めるはずなのに。

そして対戦者の精神状態。
対戦者は奥さんを病気で亡くし、むしゃくしゃしていたのだ、と後に噂で聞いた。

審判側は病院の手配と一生掛かる費用の支払いを引き受け、
対戦者の男は牢屋に連れて行かれた。



  
161: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:15:15.68 ID:9WLQ9otV0
  


(*‘ω‘ *)「わかんないんです・・・」

わかんないんですは最新の治療により一命を取り止めた。
しかし、心臓はもう使い物にならず、脳だけが生きている状態となったのだ。

─ただ、病室で眠り続けるわかんないんです

わかんないんですを傷つけたものは罪に裁かれ、見殺し同然のものはこっちが怒るよりも先に謝って来た。

─起きる事もない、怒ることもない。わらうこともない─

(*‘ω‘ *)「わかんないんです・・・起きるっぽ・・・起きて一緒に殴りこみに行くっぽ・・・」

ちんぽっぽの怒りの矛先は、どこにも当てることは出来なかった。



  
167: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:21:54.82 ID:9WLQ9otV0
  


('A`)「で、どうしてこんな事になったんだ?最新の医療技術なら、心臓移植も出来ただろうに」


(*‘ω‘ *)「VIP教の存在を知ってるっぽ・・・?」

(´・ω・`)「古くから西方に伝わる宗教・・・たしか、人の臓器を貰って移植するのはタブーだったね・・・」

(*‘ω‘ *)「そうだっぽ、でも・・・機械なら・・・」


(´・ω・`)「でも、機械と人の融合・・・たしか、研究者達はホムンクルスと呼んだか・・・
       そんなまだ発表されてない技術を、どうしてわかんないんですが?」

(*‘ω‘ *)「それは・・・」



  
172: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:31:01.12 ID:9WLQ9otV0
  


煙草の黄ばみも見つからない程真っ白で綺麗な病院で、わかんないんですはすやすやと眠っていた。

わかんないんですの病室には、毎日たくさんの医者が訪れた。
中には心臓移植を薦めるものもあったが、それでわかんないんですが帰ってきたとしても、
わかんないんですが辛いのが分かっていた。

だから、それは丁重に断った。



毎日まいにち、ちんぽっぽもお見舞いにやってきた。
寝巻きのせいで傷は隠れ、本当に眠っているだけのようにちんぽっぽは何度も錯覚した。

(*‘ω‘ *)「・・・実は揺すれば起きるんじゃないっぽ・・・?」

そう思いはしたが、繋がれたたくさんのチューブが外れたらわかんないんですは死んじゃう・・・



そこまで考えて気付いた。

チューブが外れたら死ぬという事を理解しているという事は、

わかんないんですが目を覚ますはずが無いことも理解しているのだ、と。



  
176: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:35:01.18 ID:9WLQ9otV0
  



それでもやっぱり、ちんぽっぽはわかんないんですが起きるかも、と何処かでいつも考えていた。

それは、希望だったか、懇願だったか。


頬をぺしぺしと叩いてみた。
反応はない。

髪を引っ張ってみた。
起きない。

そっと、くちづけをした。
─頬を赤らめることも無かった。


(*‘ω‘ *)「・・・まったく・・・ここまでさせておいて・・・大したねぼすけだっぽ」

代わりにちんぽっぽが頬を赤らめていた。



  
181: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:39:02.74 ID:9WLQ9otV0
  


ちんぽっぽは、もし夜にわかんないんですが目覚めて、お腹がすかないように、と1日1個、みかんを置いていった。

最初はわかんないんですの傍に。
でもだんだん量が増えてきて、床に籠を置いてその中に入れた。


そして、籠の中にみかんがいっぱいになって、底のほうのが腐りかけてきた頃。


(*;ω;*)「どうしてわかんないんですは起きないっぽぉ・・・!!」

ちんぽっぽは、初めて泣いた。



  
191: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:48:26.77 ID:9WLQ9otV0
  


わんわんわんわんと泣いた。泣き続けた。
泣き止もうとするとまた虚しさが胸を襲う。

わかんないんですの担当医だった人が、
「今日は特別にここに泊まってもいいから」と言ってくれた。


夜になって、月が2人を照らしても、涙は止まらなかった。
もうくちゃくちゃのひどい顔だった。

わかんないんですが起きたとき、こんな顔じゃいけないと思って泣き止もうと思ったら、
今度は奇跡でも起こらないとわかんないんですは起きないという現実を思って大声で泣いた。

今思えば、その泣き声で彼を引き寄せたのかもしれない。

「なんでそんなに泣いてんだよ?」
とぶっきらぼうに言って、でも優しく頭を撫でてくれたあのひとに。



  
199: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 01:59:04.62 ID:9WLQ9otV0
  

年下だという事は後で知った。
自分の仕えるべきボス、フサギコ。


ミ,,゚Д゚彡「まぁ、それだけ泣けば・・・な」

彼が報われる、と言いたかったのか、私が報われると言いたかったのか。
とにかく、彼は私の言う事を全部聞いてくれた。

どこから現われた、とかどこの誰とかはもうどうでも良かった。
完璧にすり込みだったのだろう。

ミ,,゚Д゚彡「あのさ・・・ものすげぇハイリスクなんだけど・・・そこの男、蘇らせられる方法はあるぜ」

そこで、その概要を彼は包み隠さず教えてくれた。
機械と脳を融合させること、声が出せない、表情も表せないこと。

でも、精神と脳はちゃんと存在するから、感情はあるという事。

すべてを聞いた後、私は、ただひとつだけ頷いた。



  
201: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 02:00:36.43 ID:9WLQ9otV0
  



その後、すぐに病院を飛び出してその実験を行った。
わかんないんですはちゃんと帰ってきた。


(*‘ω‘ *)「おかえりだっぽ、わかんないんです」




彼が目覚めてすぐにメモと紙を持ってきて、


─ただいま、また会いたかったんです─


と言ってくれたことはブーン達には話さないでおこう。
それは、私達だけの秘密。



  
207: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 02:12:37.44 ID:9WLQ9otV0
  

(*‘ω‘ *)「とまぁ、そういう事っぽ」

(´・ω・`)「そうなんだ・・・知らない間に色々あったんだね・・・」

(*‘ω‘ *)「そんなしょぼくれた顔するなっぽ!」

(´・ω・`)「元々だよ」

(;^ω^)「それにしても・・・わかんないんですさん大丈夫ですかお?」

( ><)「・・・」
わかんないんですは手をひらひらと振る。

(*‘ω‘ *)「ちょっとだけ関節を痛めたみたいっぽ。でも、治すには専門知識がいるから私じゃ治せないっぽ・・・」

(´・ω・`)「・・・この島で一番大きな病院に入院されているだろう、シャキンという人を訪ねるといい。僕の父だ。
      きっと、その実験の開発者だから・・・」

父さんの盗まれた資料を使ったんだろう、となんとなく確信していた。
それで、人の命を救う優しさがあるのに、彼はどうして人を殺めるのだろうか・・・



  
209: ◆OLIVIA/O7I :2006/10/10(火) 02:13:44.05 ID:9WLQ9otV0
  


ちんぽっぽは礼を述べ、わかんないんですを軽々と担いで山を降りていった。
最後に、「ボスが危険な事をしているのなら止めてくれ」と言って。

('A`)「さぁ、先を急ぎますか・・・」

(´・ω・`)「みんな、体調は大丈夫?」

(;^ω^)「はいですお・・・ちょっとマシになりましたお。行きましょうお、最終決戦に・・・」

彼らは早足に神殿へと向かう。

--第25話 終--



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