ドクオは正義のヒーローになれないようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:34:55.38 ID:aShqbKid0
第二部 第十三話『それぞれの闘い』

〜ネタ切れ〜

爪'ー`)「…………」
富士山の廃坑の奥に作られた秘密基地――
その司令室で、フォックスは心地良いまどろみの中を漂っていた。

全てが順調だった。
怖くなるくらいトントン拍子に、自分の思惑が進んでいっている。

このまま、世界の全てを破壊し尽くし、
自分が絶対的な正義となる世界を新たに創ることも、
そう遠くないことと確信出来た。

そう、このまま全て順調に――

爪'ー`)「――――!?」
と、モニターに移った一つの影が、
フォックスの意識を現実に引き戻した。

何かが、この秘密基地に向かって接近してきている。

あれは――UFO?
いや、あの形、あのUFOには見覚えがある。
確か、ロマネスクのUFOだ。

それが――
どうしてこんな所に!?



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:35:28.80 ID:aShqbKid0
爪'ー`)「馬鹿なッ! 何故こんなにも早くこの場所が!?」
有り得ないことだった。

決してこの基地の場所が知覚されないよう、
セキュリティには万全を期していた筈だ。

よしんば発見されるとしても、
もっと後、少なくとも、世界が完全に滅亡してから。
その筈だったのだ。

それが――
もう居場所を掴まれただと!?

爪'ー`)「くッ! だが、まだこちらの方が優位!
     少し予定は早まったが、核兵器で世界を焼き尽くしてくれる!!」
もう少し時間をかけて、ゆっくりと弄り尽くすように世界を滅ぼしていくつもりだったが、
事ここに至ってはもう出し惜しみしている場合ではない。

奴らの士気の根源、すなわち護るべき世界を滅ぼして、一気に畳み掛ける。

フォックスの指が、核兵器の発射ボタンに伸び――



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:43:49.77 ID:aShqbKid0
爪'ー`)「!!?」
直後、司令室内にアラート音が鳴り響き、
全てのモニターの画面に緊急凍結の表示が映し出された。

爪'ー`)「馬鹿なッ! これは!?」
何度も核兵器の発射ボタンを押す。
しかし、何の反応も返って来ない。

まさか、外部からクラッキングを受けている!?

考えられない。
余りに、手際が良過ぎる。
そう、誰かが内から手引きでもしていない限り――

爪'ー`)「――――!」
その時、フォックスの頭を一人の男の顔がよぎった。
まさか、あの狂人が――

爪'ー`)「セントジョオォォォォォォォォォォンズッッ!!」
フォックスの怒号が、司令室内に響き渡った。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:36:40.80 ID:aShqbKid0

               *                *               *

('A`)「…………」
ロマネスクの『漢祭り』が、富士山中にある廃坑の前へと着陸した。

ここに――この廃坑の奥に、フォックスが。
そう思うと、握った手の平の中に、じわりと汗が滲む。

イ从゚ ー゚ノi、「……油断するな、マスク仮面。
       何人の怪人が待ち構えているか、分からぬぞ」
ドス女が日本刀の柄に手をかけながら構える。

分かってる。
分かってるさ。
だが、例え何千、何万の怪人が行く手を阻もうと、
駆け抜けるのみ……!

( ФωФ)「ッ! 来るぞ……!」
ロマネスクが腰を落とす。

見ると、廃坑の中からゆっくりと、
二つの影が姿を現し始めた。

一つは、小柄な女性。
もう一つは、大きな棺桶。
間違いない。
あれは、あいつらは――



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:44:49.82 ID:aShqbKid0
(*゚ー゚)「ようこそ。 負け犬さん達」
【+  】ゞ゚)「ヒッ……ヒイィッ!
       また出た! また、僕を虐めに出てきたッ!!」
しぃと――棺桶死オサム。

一見、戦闘に適した姿ではないものの、その実は全く違う。
こいつらは――あのロマネスクでさえ、手玉に取ってみせたのだ。

予想はしていたが――
こんなに早く、こいつらが出てくるなんて……!

(*゚ー゚)「殺す前に一つ聞いていいかしら。
    どうやって、こんなにも早くこの基地の場所を嗅ぎ付けたのかしら?
    ……いえ、やっぱり答えなくていいわ」
そう言って、しぃが首だけを後ろに動かす。

(*゚ー゚)「あなたが教えたのね、セントジョーンズ」
その視線の先には、いつの間にかセントジョーンズが現れていた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:45:26.52 ID:aShqbKid0
(’e’)「ご名答。 いや、子供でも分かるクイズだったかな?
    ともあれ君の想像通り、彼らにここの場所を教えたのはこの私だ。
    フォックスも、今頃はカンカンだろうな」
ニヒルな笑みを浮かべたまま、セントジョーンズが得意気に解説する。

(*゚ー゚)「……護衛の怪人をこの基地に残さなかったのも、その為?」
(’e’)「その通り。 あのままでは、彼らがあまりに不利過ぎたのでね。
    一方的なゲーム展開など、見ていてもちっとも面白くない。
    何より、数に任せた闘いまど、著しく興醒めだね」
軽く手を振りながら、セントジョーンズが言った。

(*゚ー゚)「最低のクズ野朗ね。
    今になって、私達を裏切るなんて」
(’e’)「誤解は止してくれ給え。
    私は確かにフォックスに協力はしていたが、仲間になった覚えは無い。
    それに、今回の事を差し引いても充分お釣りが来るだけのものを、
    私は君達に提供してきた筈だが?」
セントジョーンズがやれやれと肩を竦めた。

(’e’)「そういう訳だ、ドクオ君。
    今この基地に残っているのは、私と、そこの二人と、モナーと、ブーンと、フォックスだけ。
    心配することなく、存分に全力を尽くして闘うがいい。
    ああそれと、もう一つ朗報だ――」
ニヤリと、セントジョーンズは嫌らしい笑みを見せて、
(’e’)「フォックスからの命令でね。
    裏切り防止の為に、全ての怪人はフォックスが生命活動を停止すれば、
    自爆するように仕掛けをしてある。
    つまり、フォックスを斃せば全てが解決する訳だな。
    どうだい、俄然やる気が出てきただろう?」
得意気に、そう告げた。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:46:21.09 ID:aShqbKid0
イ从゚ ー゚ノi、「貴様……! どこまで人を虚仮にすれば気が済む……!」
ドス女が牙を剥き出しにして、セントジョーンズに敵意を向けた。

俺も、ドス女と全く同じ気持ちだった。
セントジョーンズ。
こいつは、世界を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、
全て自分の思い通りにコントロールしている気になっている。

今までフォックスに手を貸していたのも、
ここにきて急に俺達の手助けをしたのも、
そのふざけた快楽を満たしたいから、それだけだった。

ふざけるな。
そんなことで、そんなことでお前は、
多くの人達を巻き込んだのか。
多くの人達の命を犠牲にしてきたのか……!



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:47:42.56 ID:aShqbKid0
(*゚ー゚)「…………!」
しぃが懐からナイフを取り出し、セントジョーンズに投げつけた。
しかし、ナイフが命中する直前にセントジョーンズはその場から姿を消し、
一瞬にして廃坑の中へと瞬間移動する。

(’e’)「そう怒らないでくれ給えよ。
    これでも、ここまでお膳立てを整えるのは苦労したのだぞ?
    では、ここからは私は高見の見物と洒落込ませてもらおう。
    精々、私を目一杯楽しませてくれ」
高らかな笑い声だけを残し、セントジョーンズはそこから姿を消した。

いいだろうセントジョーンズ。
今は、お前の思惑に乗ってやる。
だが覚えておけ。
フォックスを斃した後は、必ずお前をぶちのめす……!



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:48:32.24 ID:aShqbKid0
(*゚ー゚)「……あの狂人の始末は後にするとして――」
しぃが、ゆっくりと俺達に視線を戻した。

(*゚ー゚)「まずは、あなた達を殺すのが先みたいね」
心の奥底まで見透かされそうな瞳で、しぃが俺達を見据える。

いや、実際、俺達の心は読まれてしまっているのだろう。
心の奥底に潜り込み、精神を蝕む心殺術。
それが、しぃの異能だった。

(*゚ー゚)「オサム!!」
【+  】ゞ゚)「は、はひィッ!」
しぃが棺桶を思い切り蹴飛ばすと、
中から情けない声が返ってきた。

(*゚ー゚)「のんびりしてる暇は無いわ。
     命令よ。 五分以内に、こいつらを皆殺しにしなさい。
     出来なかった時は……分かってるわね?」
【+  】ゞ゚)「ひゃ、ひゃいぃ! 分かりました!!
       分かりましたから、おしおきだけは勘弁してッッ!!」
そう叫ぶと、棺桶死オサムは棺桶の蓋を閉め、中へと引きこもった。

::::::::::【 + 】::::::::::
直後、黒く禍々しい瘴気が棺桶の周りを包み込んでいく。
そして瘴気が全て棺桶の中へと吸い込まれると――



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:49:18.28 ID:aShqbKid0
ノパ听)「アハハハハハハハハァーーーーーーー!!!」
勢い良く棺桶の蓋を蹴り飛ばして、
中から紅に身を包んだ女が飛び出した。

('A`)「――――!」
イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
俺もドス女も、そいつから発せられる重圧の前に、体が動かなくなる。

あれこそは赤き暴風。
純粋なる力を権化。
かつて存在した『正義のヒーロー』――
素直ヒートの姿だった。

ノパ听)「ハハハハハハハハハアァァーーー!!」
凄まじいスピードで、素直ヒートが俺達に向かって突進してくる。

まずい。
あいつは、ロマネスクですら子供扱い出来るほどの相手。
例え三人がかりだとしても、勝てるかどうか保障は無い。

だが、退く訳にはいかない。
もとより、逃げられるような相手ではないのだ。
ならば、ここでどんな手を使ってでも勝たなければ――



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:50:33.51 ID:aShqbKid0
ノパ听)「ッ!!!」
( ФωФ)「ッ!!!!!」
その素直ヒートの突進を、ロマネスクが受け止めた。

両手と両手を合わせた手四つの体勢で――
渾身の力を込めて、素直ヒートの前進を押し止めている。

( ФωФ)「マスク仮面ッ! お前達は先に進め!!!」
素直ヒートを食い止めながら、ロマネスクが叫んだ。

( ФωФ)「こいつは我輩が斃す!
       いや――斃さなければならないのだッ!!」
('A`)「で、でも!!」
ロマネスクは、一度こいつに完膚無きまでにやられているのだ。
それなのに、もう一度一対一で闘うなんて、余りにも無茶苦茶だ……!

( ФωФ)「早く行け!!
       自分の使命を忘れたか!!
       お前は、フォックスを斃して護るべきものを護るのではなかったのか!!!」
ロマネスクが、そう怒鳴った。

素直ヒートを止めている両腕は、筋肉がはち切れんばかりに膨張し、小刻みに痙攣していた。
もう、食い止めているのも限界に近いのだろう。
それなのに、そんな状況だというのに、
こいつは、俺のことを気にかけていてくれているのか……!



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:51:17.04 ID:aShqbKid0
イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!!」
ドス女が促す。

('A`)「分かってる……!」
俺はロマネスクから視線を外し、廃坑の入り口へと体を向けた。

行こう。
行かなければならない。
ここで俺達が残っていては、逆にロマネスクの邪魔になる。
何より、ロマネスクの俺達への想いを無駄にすることになってしまう。

('A`)「ロマネスク……死ぬなよ!!」
それだけ言い残し、俺とドス女は廃坑の奥へと駆け出した。

大丈夫だ。
信じろ。
ロマネスクは、絶対に負けない。

闘いの前に、一緒に誓ったのだ。
必ず勝つと、生きて戻って来ると。
だから――どんな奴が相手でも、負けっこない。

他ならぬ俺が、そう、ロマネスクを信じてやらないでどうする……!

('A`)「…………!」
背後で、隕石でも落ちてきたかのような爆音が聞こえてくる。
ロマネスクと素直ヒートが、戦闘を開始したのだろう。

しかしそれでも俺は、決して振り返ることなく走り続けた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:52:08.05 ID:aShqbKid0





('A`)「…………!」
廃坑の中をひたすらに走る。

ここまで、怪人には一人も出くわしていない。
入り口でしぃとセントジョーンズが言っていたことは、どうやら本当だったみたいだ。

幸いにも廃坑は一本道で、迷う心配は無さそうだった。
時折、ロマネスクと素直ヒートとの闘いの余波らしき振動が廃坑内を揺らし、
天井からぱらぱらと土が落ちてくる。

……振り返るな。
まだ闘っているということは、まだ生きているということ。
こうしてロマネスクが俺達の為に時間を稼いでくれているのだ。
ならば俺達は、その時間の中で少しでも先に進むのみ……!



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:53:16.40 ID:aShqbKid0
('A`)「――――!」
――と、廃坑の通路の奥に光が見えた。
あそこから、外に通じているのだろうか。

いや、考えている暇は無い。
どこに通じていようと、俺達には進むしか無いのだから。

('A`)「…………!」
光に導かれるように廃坑の出入り口を潜り抜け、俺達は開けた場所に出た。

周囲を見渡すと、高い岩壁に囲まれている。
どうやら、ここは深い谷底のようだった。

('A`)「…………」
向かいの方に、もう一つの廃坑の出入り口がある。
フォックスがいるのはあの先ということか。

俺はそちらに向けて駆け出して――

イ从゚ ー゚ノi、「待て、マスク仮面」
と、ドス女が肩を掴んで俺の足を止めた。

('A`)「ドス女……?」
イ从゚ ー゚ノi、「シッ!」
俺が何か言おうとするのを妨げ、ドス女が注意深く辺りを見回す。
やがて、何かを探り当てたかのように視線を定めると、そちらに向かって、
イ从゚ ー゚ノi、「……出て来い。 そこにいるのじゃろう、モナー」
静かに、そう言った。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:54:52.87 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「やれやれ、お見通しか――」
がさりと音を立てて、木の上から一人の男が飛び降りた。

その手には、体の大きさとは不釣合いな、金属製の弓――
『魔弾』、モナーの姿が、そこにはあった。

('A`)「…………!」
俺はモナーの姿を睨むように見据え、身構える。

( ´∀`)「……行けよ」
が、モナーはそんな俺のことなど何ら気にするでもない様子で、
首だけを俺に向けてそう告げた。

( ´∀`)「俺が用があるのは銀獣だけだ。
      他の事に興味は無ぇ。
      先に進みたきゃさっさと行け」
そう言って、モナーが俺を促す。

罠か?
モナーの真意を測りかねて、俺は進むのを躊躇する。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:56:14.44 ID:aShqbKid0
イ从゚ ー゚ノi、「行け、マスク仮面」
今度は、ドス女が俺に声をかけた。

('A`)「ドス女……!?」
イ从゚ ー゚ノi、「こいつの言う通りじゃ。
       こいつの目的は、儂一人。
       お前は、先に進むのじゃ」
日本刀を引き抜きながら、ドス女は言った。

イ从゚ ー゚ノi、「行け、マスク仮面!
       儂も必ず後で追いつく!!」
('A`)「…………!」
そのドス女の言葉が合図だった。

俺は黙ったまま、ドス女の残して向こうの廃坑の出入り口へと駆け出す。

必ずだぞ、ドス女。
必ず、追いかけてこいよ。
もし約束を破ったら、許さないからな……!



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:57:26.78 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「…………」
モナーの横を駆け抜けた。

モナー。
かつて、ドス女と闘い、ドス女に恋焦がれた男。
その想いの強さ故、何かが壊れてしまった男。

こいつは、ドス女の横にいる俺を見て、何を思っていたのだろう。
何を感じていたのだろう。

……考えるのは止そう。
もう、そんなことを考えたって、どうしようもない。

モナーはもう、道を踏み外してしまったのだ。
人であることを、止めてしまったのだ。
そんな感傷など、最早何の意味も持たない。
何も、変えることなど出来ない。

('A`)「…………」
だから俺は、モナーに何も言わなかった。
言えなかったのだった。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 00:58:48.89 ID:aShqbKid0

             *             *            *

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀はドクオが廃坑の奥へと進むのを見送ると、
モナーへと視線を戻した。

イ从゚ ー゚ノi、「……さて、いつまでそうやって突っ立ておるつもりじゃ?
       死合わぬのか?」
日本刀を抜き切って、銀は訊ねる。

( ´∀`)「そう焦んなよ。 銀獣、お前には少し話があるんだ」
イ从゚ ー゚ノi、「何……?」
この期に及んで話があるだと?

予期せぬモナーの言葉に、銀は首を傾げた。

( ´∀`)「なあ銀獣。 お前、俺の色になる気はねぇか?」
イ从゚ ー゚ノi、「なッ……!?」
銀は絶句した。

イ从゚ ー゚ノi、「何をぬけぬけと!
       この儂が、お主らフォックスの手先になるとでも思っておるのか!?」
銀は激昂して答えた。

よりにもよって、モナーの恋人になれだと?
こいつは、この状況が分かっているのか?



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:00:25.70 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「そりゃ勘違いってやつだ。
      俺は別に、フォックスの仲間でも何でもねえ。
      ぶっちゃけ、正義だの悪だの、俺には全く興味がねえからな。
      そうだ、何ならフォックスを殺す手助けをしてやってもいいぜ。
      それでお前が俺を受け入れてくれるってんなら、お安い御用だ」
モナーは飄々とした様子で言った。

イ从゚ ー゚ノi、「何を馬鹿な……
       セントジョーンズが言っておった。
       反逆防止措置として、フォックスを殺せば怪人のお前も死ぬようになっておるのじゃぞ?」
そう。
セントジョーンズを殺すということは、即ちモナーにとって自殺をするのにも等しい行為だった。

( ´∀`)「ああ、その点なら心配ねえ。
      セントジョーンズがこの基地の場所をお前達にバラしたことの口止め料として、
      その仕掛けは取り除いてもらったからな。
      これで何の気兼ねも無く、お前と一緒になれるって訳だ」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
狂っている。
銀はそう思った。

自分と同じ時を歩む。
モナーはそれだけの為に、ショボンやクー達を裏切り、
世界の破滅に手を貸し、人外の体に成り果て、
そして――最後にはフォックス達からすら背こうというのか。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:00:56.13 ID:aShqbKid0
いや、そんなことより。
腑に落ちないことがある。

こいつは国会議事堂前での闘いの時、
確か――

イ从゚ ー゚ノi、「……お主、何故今更になって、そんなことを言う?
       以前お主は、儂と60年前の闘いの続きをする為に、その姿になったと言っておったではないか。
       それなのに、どうして――」
そう、何故今になって、
色にならないかなどと、前言撤回するようなことを口にするのだ?

( ´∀`)「……なあ、銀獣。
      この体になってみて分かったんだが、人外の肉体ってのは凄えよなあ」
イ从゚ ー゚ノi、「…………?」
銀には、モナーの言葉の意味するところがすぐに判断出来なかった。

( ´∀`)「少々斬ったり突いたりしても死なねえ。
      寿命なんぞ予想も出来ねえ。
      一体、俺達はいつまで生き続けるんだろうなあ」
モナーは自嘲めいた風に告げた。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:01:47.07 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「この前考えてみたんだよ。
      フォックスがこの世界を根こそぎ破滅させて――
      何もかも無くなった世界で、生きていくことの意味をな。
      フォックスはそりゃ満足だろうさ。
      自分の望んだ世界で生きていけるんだからな。
      だが――俺はどうなる?」
モナーの眉が少し動く。
銀は何も言わず、黙ったままモナーを見据えていた。

( ´∀`)「何も存在しない。
      俺達以外の人間も、動物も、敵すらも。
      何も得られず、何も掴めない。
      そんな世界で、永遠にも等しい時間を生き続ける――
      そこまで考えた時、正直背筋が凍ったよ」
そこまで言うと、モナーは救いを求めるような視線を銀に向けた。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:03:14.59 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「怖いんだよ、銀獣!!
      一人ぼっちのまま、生き続けるのが!!
      永遠の孤独に苛まれ続けることが!!
      たった一人で、暗い闇の底を歩き続けるなんて耐えられない!!
      誰かに傍に居て欲しいんだよ!!!」
半ば狂乱した様子で、モナーは叫んだ。

――いや、彼はとっくに狂ってしまっていたのかもしれない。
それが、ここにきて表面化してしまっただけ。
ただ、それだけ。

( ´∀`)「なあ、銀獣、お願いだ!!
      俺を受け入れてくれ!!
      俺を一人にしないでくれ!!
      お前の望むことなら、何だってやってやる!!
      何だって叶えてやる!!
      だから頼むよ!!
      俺は、一人ぼっちなんて嫌なんだ!!!」
それは悲鳴にも似た叫びだった。
まるで子供が母親に縋り付くように、モナーは銀に助けを求めていたのだ。

だが――



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:04:50.22 ID:aShqbKid0
イ从゚ ー゚ノi、「弱虫め」
だが、銀はモナーを突き放すように、
冷徹な声色で短く告げた。

イ从゚ ー゚ノi、「そうやって、泣けば済むと思っているのか。
       そうやって、また逃げ出すつもりなのか」
静かに、だがはっきりと、銀は言った。

イ从゚ ー゚ノi、「朽ちるのが怖いから、死ぬのが怖いから、老いが怖いから、
       人外になったのではなかったのか。
       人外の体に、逃げたのではなかったのか。
       なのに、また逃げ出そうというのか。
       孤独から、逃げ出すつもりなのか」
銀がモナーに日本刀の切っ先を向ける。

イ从゚ ー゚ノi、「ふざけるな。
       そんな弱虫を、儂が愛するとでも思っておるのか?
       真っ平御免じゃ。 寝言は寝て言え、糞餓鬼」
それが、決別の言葉だった。
今、きっぱりと、銀とモナーとの情は断ち切られたのだった。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:05:52.51 ID:aShqbKid0
( ´∀`)「…………」
モナーは黙ったまま、俯いていた。

が、ゆっくりと顔を上げ――

( ´∀`)「……そうかい。
      どうあっても俺のものにはならねえと、そう言うんだな?」
狂気に彩られた瞳を、銀へと向けた。

愛情と憎悪と憐憫と哀愁と悲哀と憧憬と諦念と欲情と憤怒と歓喜と狂気とが、
全て一緒くたにごちゃまぜになった、混沌とした瞳。

そこには最早、
理性や正気の欠片も残ってはいなかった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:06:42.78 ID:aShqbKid0
イ从゚ ー゚ノi、「――ああ、そうじゃ。
       モナー、最後に教えてやる。
       儂はお前のものにはならぬ。 お前は儂のものにはならぬ。
       何故なら、お前はここで終わるからじゃ」
銀が風を斬るかのように日本刀を払う。
フオンと、刃が空を斬る音が周囲に小さく響いた。

イ从゚ ー゚ノi、「モナー。
       ――お前を殺す。
       お前のその呪われた肉体も、
       お前の狂った野望も、
       お前の想いも――
       全て、ここでお仕舞いじゃ」
言い切ると、銀は刀を閃かせ、
モナーに向かって跳躍した。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:07:23.65 ID:aShqbKid0

              *             *            *

ドス女とモナーを置いて、次の廃坑の中へと進んでから、
もう何分が経っただろうか。

3分?
5分?
いや、もっと経っているのかもしれない。

ここの基地のコンピューターを制圧出来るのが、
2時間程度と言っていた。
あまり、俺達に残された時間は無い。

一刻も早く、フォックスを斃さなければ……!



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:08:08.05 ID:aShqbKid0
('A`)「…………!」
と、目の前に、一つのドアが現れた。

金属製の、何の変哲も無いドア。

――あいつがいる。

中を覗いたわけでもないのに、
何故か俺はそう確信していた。

この中に、あいつがいる。
俺と同じように、『正義のヒーロー』を目指して――
誰よりも『正義のヒーロー』であろうとして――
その果てに、壊れてしまった、
ある意味本当の『正義のヒーロー』。
そいつが、この中に――

('A`)「…………」
ノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開ける。
その中は――



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:08:38.63 ID:aShqbKid0
('A`)「――――」
その中は、まるで子供部屋のような空間だった。

床には歴代のヒーローものの番組の人形や変身セットが。
部屋の中にいくつかあるテレビの画面には、
かつて俺も見ていたヒーローものの番組が映し出されている。

初めて入った部屋の筈なのに、
その筈なのに、
俺は何故か、自分の部屋に入ったような、
懐かしい空気を感じていた。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:09:20.53 ID:aShqbKid0
('A`)「…………」
その部屋の中央に、そいつはいた。

俺と同じ目標を持っていた筈の、
俺と同じ夢を追いかけていた筈の、
俺と同じ『正義のヒーロー』に憧れていた筈の、
一人の少年。

なのに、
今、
おれとそいつとの距離は、余りにも遠い。

( ^ω^)「…………」
そいつが――
『正義のヒーロー』、ブーンが、
そこに居た。


〜第二部 第十三話『それぞれの闘い』 終
 次回、『狂熱果てる時! 宇宙大魔王VS正義のヒーロー!! 〜その1〜』乞うご期待!〜



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/14(金) 01:09:51.79 ID:aShqbKid0
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('A`)「ドクオと」

( ゚∀゚)「ジョルジュの」

('A`)( ゚∀゚)「ワンダフォーデイズ」



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