右手よりは気持ちいいよ
- 746: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 13:01 VJkFpXeiO
有象無象の区別無く
私の弾頭は許しはしない
狩人は獣を追う。
獣は狩人を追う。
狩人は獣を巣穴に追い詰め。
獣は狩人を巣穴に誘い込む。
追うのはどちら?
追われるのはどちら?
終わるのはどちら?
終わるのはこちら?
狩るのはどちら?
駆るのはどちら?
獣は吠える。
狩人は叫ぶ。
有象無象の区別無く
私の弾頭は許しはしない
〜第二十話・魔弾の射手と魔王の右手。撃ちて討たれて朱の闇、紅い涙の弓使い。とりあえずアチャ子は俺の嫁〜
- 747: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 13:02 VJkFpXeiO
騒動の後に、一同は病院から出る事となる。
実質、追い出された様なものだったがドクオの怪しげな薬のお陰か、経過も良く一日だけの入院となった。
一同は入り口を抜け、強くなってきた日差しを浴びる。
日光に焙られ、猛烈な熱気を放つアスファルトの上を陰鬱な表情で歩き出す。
(´・ω・`)「これから――」
――どうしようか。
そう、ショボンが皆に尋ねようとした時だった。
陽炎が立ち上るアスファルトの先に立つ人物の姿を認識した一同は声も無く立ち尽くす。
川;゚ -゚)「…………荒巻」
/,'3 「迎えにきたんじゃよ、お前さん方をのう」
うだる暑さの中、老人は顔色一つ変えずにのたまう。
( ゚ω゚)「……トーチャン」
/,'3 「ホライゾンや……準備が整ったんじゃ。今から母親に会わせてやろう」
荒巻は一度ブーンに向けて笑いかけると、自らの足元を一度踏み鳴らす。
- 748: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 13:03 VJkFpXeiO
荒巻の足が置かれた場所を中心に、固いはずのアスファルトに波紋が生まれる。
波は瞬く間に広がり、ブーン達の足元へと侵食していった。
ξ;゚听)ξ「な、何なのよ……これ……」
川;゚ -゚)「体が……沈む……」
波が触れた物は、引きずり込まれる様にして地面に沈んでいく。
物であろうが。
人であろうが。
(*゚∀゚)「うわ〜……気持ち悪」
沈みつつある自分の体を見下ろしながら、つーは身じろぎする。
/,'3 「下手に動かん方が身の為じゃぞ?」
そして、荒巻自身もアスファルトに埋まっていく。
('A`)「この先に……アイツが居るんだな?」
/,'3 「そうじゃよ、お若いの。儂等の障害となりうるのはお前さん方じゃからな。この辺りで消えて貰おうと思ってのう」
(´・ω・`)「言ってくれるね、荒巻……だけど知ってるかい?」
沈むに任せながら口を開くショボンの言葉に、荒巻は怪訝な顔をする。
('A`)「この手のノリじゃあな、悪役が勝った試しは無いんだぜ?」
/,'3 「ほっ……若僧が言ってくれる」
皺の刻まれた顔を歪め、荒巻は笑う。
/,'3 「下らんフラグの立て合いは、若い者に任せるわい」
やがてアスファルトは流砂の様に、全てを呑み込み、果たして其処には何も残らなかった。
- 750: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:22 VJkFpXeiO
先程とはうって変わって、冷えた空気が辺りに漂う。
周りは闇に閉ざされ、互いの場所すら定かでは無い。
ξ゚听)ξ「……ここは……」
ツンの問いに反応した様に、床を燐光を発する幾何学的な紋様が走り、辺りを照らしてゆく。
黒く、無機的な材質の壁で造られた半円状のドーム型の空間が光によってその姿を晒す。
そのドームの中央に供えられた巨大な球体。
そして、その球体の前に佇む者がいた。
(・W)「やっと来たか」
川 ゚ -゚)「内藤ホライゾン……」
クーが腰に下げた刀に手を伸ばす。
その剣呑な表情から今にも飛び出してしまいそうだった。
( ゚ω゚)「カーチャンとあの子を何処にやった!」
クーに負けじとブーンは内藤と相対する様に一歩踏み出し、叫んだ。
(・W)「……無事だよ……今の所はな……荒巻」
/,'3 「ほっ、了解じゃ。……じゃが、その前に……」
いつの間にか、内藤の傍らには荒巻が控えていた。
荒巻は一度頷くと足を踏み鳴らす。
川;゚ -゚)「なっ――」
(;><)「わかんないです!」
(´・ω・`)「あらら」
(*゚∀゚)「アヒャ?」
クー、ビロード、ショボン、つーの四人の体が、紫紺の球体に包まれる。
- 751: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:23 VJkFpXeiO
/,'3 「お前さん方には少しおとなしくして貰おうかの」
球体の中でもがく四人を眺めながら荒巻は、いつもの好々爺の笑みを浮かべる。
/,'3 「儂等に様があるのはホライゾンだけじゃがのう、お前さん方二人は特別じゃ」
('A`)「どういう意味だ……」
(・W)「……俺達は友達だろ? なぁ、ドクオ」
口の端を歪め、内藤は笑う。
コートの袖を捲り、紋様に覆われた右手を露にする。
(・W)「だから」
紋様が鈍く輝き。
『死んでくれ』
- 752: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:24 VJkFpXeiO
爆音がドーム内を震わせた。
もうもうと立ち込める粉煙が膨らみ、流れていく。
(*゚∀゚)「ドクオッ!」
球体を内側から叩きながらつーが悲鳴を上げた。
しかし、球体は微塵も動かずその場に止まり続ける。
その時、煙を突き破り影が飛び出しドームの壁に激突する。
重なり合う影。
(・W)「相変わらずふざけたモン使ってやがるなぁ! お前はよォォッ!」
(;'A`)「人の趣味をとやかく言ってんじゃねえよ!」
両手でバイブの端と端を掴みながらドクオは内藤の拳を受け止める。
壁と拳に挟み込まれ、動く事が叶わない。
(;'A`)「……何がしたいんだよ……お前はッ!」
腕にかかる膨大な圧力に、ドクオの両手は痙攣を始める。しかし、依然として内藤の力は緩められる事は無い。
(・W)「知ってんだろ? お前は! 全部知ってんだろうがよぉ!」
腕にかかる負荷が更に強まる。
人工的なドクオの骨格は悲鳴を上げ――
( ゚ω゚)「おぉおおおおぉぉぉぉおッッッ!!!」
――横槍のブーンの拳が内藤の横っ面を殴り付けその体を吹き飛ばす。
- 753: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:25 VJkFpXeiO
内藤の体が空中で何度か回転し。
ドームの床に突き入れた右手が急制動をかける。
(・W)「……チッ、良い所だったのによ……」
口元から垂れる血を拭い、床に唾液を吐き捨てる。
口腔に溜った血で汚れた唾液は床で跳ね、粗悪なコントラストで彩る。
(・W)「“俺”の方も調子良いじゃねえか。どうだ? その手は。病み付きになるだろ?」
( ゚ω゚)「あぁ……最悪だよ」
内藤とブーンは、互いに右手を前に突き出し構え、まるで鏡写しの様に向かい合う。
( ゚ω゚)「熱くて……うずいて……」
(・W)「何もかもブッ壊したくなっちまう……だろ?」
歪んだ笑みでブーンの言葉を内藤は引き継ぐ。
ブーンはそれに、無言で答えた。
('A`)「すまねぇ、ブーン」
ブーンの隣に立ち、ドクオはバイブを構える。
(・W)「まったく……締まらねえな……」
('A`)「ほっとけ」
( ゚ω゚)「……行くぞ」
対称の男達は同時に駆け出し、桃色のイチモツを持った男もそれに続いた。
- 754: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:26 VJkFpXeiO
ξ;゚听)ξ「何なのよ……これは……」
眼前で繰り広げられる光景に、ツンは絶句した。
/,'3 「下手に近付くと死ぬぞ」
ξ゚听)ξ「――ッ! 荒巻!」
突然後ろから掛けられた声に、ツンは慌てて振り返る。
/,'3 「お前さんは……どうするんじゃ?」
いつもの風体は成を潜め、老人の目は鷹のそれに変わっていた。
/,'3 「戦うか?」
ジワリ、とツンの背筋に冷たい汗が伝う。
/,'3 「傍観するか?」
口の中が乾き、息苦しくなる。
/,'3 「それとも、諦めるか?」
だが。
ツンは拳を握り締める。
/,'3 「……決めるのはお前さんじゃ」
ξ )ξ「決まってるでしょ」
強く。
決意を込めて。
ξ゚听)ξ「戦う、逃げない! 絶対にッ!」
/,'3 「ほっ! 剛毅な娘じゃな、久方振りに血が騒ぐわい!」
荒巻の周囲に紫紺の魔法陣が展開する。
/,'3 「儂の方具“ベルフェゴール”破れるものなや破ってみせい!」
円錐状の固まり魔法陣より生まれ出ると、ツンの頭上に降り注いだ。
- 755: ◆sEiA3Q16Vo :05/06(日) 22:55 VJkFpXeiO
ξ;゚听)ξ(なやって言った、絶対言った! )
荒巻の言葉を反芻しながらツンは駆け、その一瞬後に彼女が居た場所に円錐状の物体が突き刺さる。
/,'3 「逃げてばかりでは儂は倒せんぞ!」
展開させた魔法陣が輝き、そこから新たな円錐状の物体を吐き出し、撃ち込んでいく。
その度にツンは走り、飛び、転がりながら避けていった。
/,'3 「宝具無しでどうするつもりじゃ!」
撃つ。
避ける。
撃つ。
避ける。
撃つ。
また避ける。
幾度となくその動作を互いに繰り返すが、依然としてその膠着状態に変化は生まれない。
/,'3 「これならどうじゃ?」
魔法陣が荒巻の手の動きに合わせ、五つに別れる。
一つ一つが円盤の様に動き、ツンの後を追う。
一つが追い立て、別の一つが撃ち出す。
避けた所にもう一つ。
やがてツンの体は、ドームの壁際に追い込まれた。
隙間無く五つの陣が固め、ツンに狙いを定める。
ξ;゚听)ξ「くっ……」
ツンのこめかみから汗が伝う。
/,'3 「終わりじゃな」
荒巻は口元を歪め。
ξ゚ー゚)ξ「そうかしら?」
同様にツンも口元を歪める。
『マハ・カーラ』
硝子が砕ける音が響き渡り。
五つの魔法陣は、全てが二つに断ち斬られた。
- 758: ◆sEiA3Q16Vo :05/09(水) 12:34 VDz8i/l1O
/,'3 「……ふむ、それがお前さんの宝具か……」
気付けば荒巻は左手を突き出し、掌の前に紫紺の障壁を作り出していた。
しかし、その壁には幾筋もの亀裂が走り、今にも崩れ去ってしまいそうだった。
それを為した物が、壁に突き立っている。
それは、まるで三日月の様に僅かな軌跡を描き。
光を受けて鈍く煌めく。
一振りの刀がそこにはあった。
ただし、それが放つ色は銀光ではなく。全てを塗り潰す程の漆黒だった。
川 ゚ -゚)「存外、脆い壁だったな……荒巻」
クーを捕えていた球体の、紫紺の残骸を踏み砕き。クーはその場に降り立つ。
その姿は、仏敵を滅ぼす修羅もかくやと言わんばかりに、荒々しく。そして荘厳さをかもしだしていた。
黒翼を彷彿させる様に、放射状に広がりながら空中に停止した都合、五本の黒刀を背負う。
右側に三本。
左側に二本。
そして、荒巻が受け止めている一本。
合わせて六本の黒刀。
修羅の刀が獲物を求めてうごめいた。
- 759: ◆sEiA3Q16Vo :05/09(水) 12:34 VDz8i/l1O
/,'3 「まったく、とんでもない宝具じゃな。お前さんにそっくりじゃ」
再び荒巻の周りに魔法陣が展開し、五つに分かれる。
川 ゚ -゚)「そうか」
クーは一言、そう言うと突き立ったままの黒刀に目を向ける。
すると、まるで意思を持つかの様に、黒刀は身をよじると紫紺の壁から自らを抜き出し、クーの元に飛来する。
在るべき場所に納まり、三対の黒翼は完成する。
川 ゚ -゚)「ツン」
荒巻の背後に見える少女に向けて、荒巻から目を放さないまま呼び掛ける。
川 ゚ -゚)「今の内に他の者を助け出せ」
ξ゚听)ξ「………了解」
ツンは頷き、残る三つの球体へと駆け出す。
/,'3 「儂が許すと思うかの?」
背を向けた状態で、荒巻は魔法陣の一つから錐状の魔力塊を撃ち出す。
それは走るツンに向けて一直線に飛来し――空気を切り裂きながら飛来してきた黒刀に弾かれ、霧散する。
川 ゚ー゚)「私が許すと思うか?」
欠けた翼を翻し、クーが微笑する。
凍てついたその笑みの意思を汲み取る様に、黒刀は切っ先を荒巻へと向ける。
/,'3 「……小娘が……」
猛禽の眼光がすくめられ、魔法陣の輝きが強まる。
川 ゚ -゚)「……………」
魔法陣から、槍状に変化した魔力が無数に顔を覗かせる。
紫色の雨と。
漆黒の暴風が。
ドームの中を荒れ狂う。
戻る/最終話