右手よりは気持ちいいよ
- 762: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:44 rMaBv87lO
求めない少年。
動かない少年。
享楽に身を投じてうつろうだけの日々を送る。
少年は動きだす。
少年は求め出す。
自身を取り巻く世界は崩れ始めていた。
少年は立ち止まる。
少年は立ち尽くす。
目の前に広がる血の世界に。
壊れた友の姿。
倒れた最愛の者。
現実は無情にも自らを少年に叩き付ける。
少年の世界。
それを変えたのは奇妙な友人と。
ひとつのオナホールだった。
右手よりは気持ちいいよ
原案/室井芳子
脚本/ヒジキ業者
文章/ヒジキ業者
愛の差し入れ/バーちゃん
イラスト
ヒジキ業者
ID +uLP7BUaO
ID m5HmU1j5O
ID N4LtD7PcO
ID BnneUDFEO
ID cG4edjCeO
〜最終話・右手とバイブとオナホ〜
- 763: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:45 rMaBv87lO
紅蓮の炎が舞う。
('A`)「が――――」
(・W)「……………」
その中で、二人の男の影が重なっている。
周りの炎は勢いを増し、強く燃え上がる。
('A`)「は――――」
ドクオの喉から空気が溢れた。
( ゚ω゚)「―――――」
その光景に、ブーンは目を見開き、声を失う。
地に伏した彼は立ち上がる事すらできず、ただそれを眺めるしかなかった。
(・W)「……勝てると、思ったか?」
内藤は、ドクオの首を掴んだ右手を更に強く絞め上げる。
(・W)「良い線行ってたぜ、お前の計画は。“俺”を懐柔して覚醒を“無かった”事にする」
('A`)「………あ……」
ダラリと開いた口元から間断無く酸素が漏れるが、入ることは許されない。
(・W)「だが、どうだ? 現実には俺の力は無くなるどころか、更に満ち溢れている」
/,'3 「仕上げじゃな」
いつの間にか、全身に裂傷を負った荒巻が現れる。
痛む体を動かし、荒巻が歩いて来た方へ目を向ける。
そこに、動く影は見当たらなかった。
ただの、一つも。
/,'3 「お前さんに見せてやれなくて残念じゃよ、ホライゾン。中々しぶとくての、ついやりすぎてしまったわい」
つと、荒巻はドームの中心に座していた球体に手をかざす。
球体は脈動し、振動を始める。
唐突に球体から光が弾け、そこには黒い穴が広がっていた。
空中に、渦巻く様にして巨大な暗黒の穴が。
/,'3 「……ゲートは開いた。この世界も見納めになるのぅ」
- 764: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:45 rMaBv87lO
/,'3 「時間の跳躍も可能となった。後は……」
荒巻は、一度床を踏み鳴らす。
( ゚ω゚)「な――――」
再び、ブーンは声を無くした。
『カーチャン』
J(^ω^)し「……ブーン……」
/,'3 「驚いたかの?」
現れた母の後ろから荒巻の声が聞こえた。
/,'3 「……お前さんの覚醒には彼女達が必要なんじゃよ……」
荒巻はもう一度足を踏み鳴らす。
母の隣の空間が歪み。
ζ--)ζ「……………」
一人の少女が吐き出される。
/,'3 「知っておるじゃろ? ツンの母親じゃよ。今は眠っておるがの」
J(^ω^)し「……あなた……」
( ゚ω゚)「カーチャン達をどうするつもりだ!」
/,'3 「殺すんじゃよ。ツンの母親が死ねばツンは存在しなかった事になる。そして母親の死はお前の目覚めに必要じゃ」
当然の様に、荒巻は語り始める。
- 765: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:46 rMaBv87lO
/,'3 「ツンの存在はお前さんに影響を与え過ぎておる……このままでは母親を殺した所で満足のいく目覚めはもたらせられん」
( ゚ω゚)「……カーチャンを……殺すのか? 自分の妻を殺すのか?」
/,'3 「大切なのはお前じゃよ、ホライゾン。息子の願いは叶えるのが親の役目じゃ」
荒巻の笑みはこれ以上無いほど、幸福に満ちていた。
/,'3 「その為なら妻を手に掛ける事もいとわんよ」
J(^ω^)し「……私の事は構いません、ですが……この子には手を出さないで……」
母は、少女の盾になる様に両手を広げて立ち塞がる。
迷いと恐怖はその目には無く、真っ直ぐに荒巻を見つめていた。
/,'3 「捕えていた間に話は十分にした筈じゃ、お前とその娘は死なねばならん」
J(^ω^)し「……………」
荒巻の鷹の目にも臆さず、母は立ち続ける。
やがて荒巻は諦めた様に溜め息を突くと。
/,'3 「……ならばお前さからじゃな」
荒巻の頭上に生まれた陣が、魔力の槍を吐き出す。
- 766: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:48 rMaBv87lO
( ゚ω゚)「カーチャ――」
J(^ω^)し「ブーン」
ブーンが声を発するのを制する様に。
母は言った。
『生きなさい』
荒巻が生み出した槍が、母の心臓を刺し貫いた。
糸が切れた人形の様に、母は。
崩れ落ちた。
( ゚ω゚)「あ……」
血しぶきが舞う。
( ゚ω゚)「あ…あぁ……」
光を無くした瞳。
それが現実であると雄弁に語る。
『あぁああああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!』
喉が引き裂かれる程の絶叫がほとばしる。
苦痛の叫びがドームに広がる。
- 767: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:49 rMaBv87lO
/,'3 「苦しいか、ホライゾン……じゃがその苦痛はやがて甘美な破壊への欲望へと変わる! その為にはこの娘も死なねばならん!」
ベルフェゴールが輝き、少女へと槍の穂先が向けられる。
(・W)「……見ろよ、ドクオ。始まるぜ、俺の世界が」
(;'A`)「……今時、どこの厨房も言わねえよ」
(・W)「忘れてた、お前サイボーグだったよな。道理でしぶてえ訳だ」
首を絞め上げられた状態で毒付くドクオに、内藤は感嘆した様子で目を見開く。
( ゚ω゚)「クソ……」
ブーンの手が、ドームの床を掻く。少しでも前に進もうと。
だが、体の傷が塞がるのと、荒巻の槍が少女を貫くのは、どちらが早いかは明白であった。
(・W)「新世界の神に……俺はなる……」
ξ゚听)ξ「妄想も大概にしなさいよ、恥ずかしいから」
銃声が響く。
銃弾は走る。
ベルフェゴールの槍を砕き。
ドクオの首を掴む内藤の右手を撃ち抜いた。
- 768: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:50 rMaBv87lO
( ^ω^)「ツン! 無事だったのかお!」
ξ゚听)ξ「……だけど……皆が……」
ツンの手には黒光りする巨大な銃が握られていた。
銃口から白煙を上らせたった今、銃弾を撃ち出したのだと雄弁に語る。
少女の身が衝撃で投げ出されるが、ツンはそれを受け止める。
ξ゚听)ξ「……お母さん」
ツンの腕の中の少女は、グッタリと力無くもたれかかる。しかし、その規則正しく上下する胸を確認し、ツンは胸を撫で下ろす。
( ^ω^)「ツン、その子を連れて下がってるお」
ブーンは全身に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。
ξ゚听)ξ「えぇ、分かったわ」
ツンは一度頷くと、少女を抱きかかえたまま後ろに下がる。
そして、幾らか離れた場所にゆっくりと少女の体を横たえると再びブーンの隣に舞い戻る。
(・W)「……ツン……」
内藤は奥歯を噛み砕かんばかりに力を込め、ツンを睨む。撃ち抜かれた右手を抑えながら、ひずみの元に退く。
/,'3 「……小娘が」
荒巻は、その口元を緩めたと思うとおもむろに笑みを浮かべた。
/,'3 「じゃが、もう終わりじゃよ。お前さん方が何をしようと――」
('A`)「あぁ……確かに終わりだよ、爺さん」
荒巻の言葉を打ち消す様に、ドクオは口を開いた。
- 769: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:50 rMaBv87lO
('A`)「……知ってるか? コイツのポークビッツは伊達じゃねえって事をよ」
/,'3 「……何じゃと?」
ドクオは荒巻の言葉を無視し、股間に手を入れ、バイブを取り出す。
('A`)「ブーン、お前に預けたオナホを渡してくれ」
( ^ω^)「……はいだお」
困惑した顔を浮かべるが、ブーンは股間に手を入れオナホを取り出す。
('A`)「……架空の存在とされた幻のレアメタル、オリハルコンにより鍛えられたこのバイブレーター」
取り出したバイブを掲げる様に持ち上げ。
('A`)「人類史上最強の魔力を秘めた一億の精なる子達を受け続けたこのオナホ」
見せ付ける様にオナホを掲げ、強く握り締める。
右手にオナホ。
左手にバイブ。
性剣と性杯。
雌雄の龍虎がドクオの手に収まっている。
/,'3 「……………」
たかがオナホ。
たかがバイブ。
しかし、そこから発せられる圧倒的な威圧感がこの空間に満ちていた。
/,'3 「ほっほっほ……既にゲートは開いた。何をしようと無駄じゃよ……」
口の端を持ち上げるが、荒巻の目は剣呑な光を宿す。
('A`)「……試してみるか?」
ドクオは嘲る様に笑い。
性剣と性杯を一つにした。
- 770: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:52 rMaBv87lO
('A`)「これが俺の……エクス・カリ・バーだ」
ドクオが手にするのは一振りの剣だった。
蒼を基調とした柄に、金の装飾。
刀身には一片の曇りも無く、薄暗いドームの中ですら輝いて見えた。
/,'3 「小僧……」
荒巻はベルフェゴールを展開し、そこから魔力の槍を幾つも覗かせる。
その全てがドクオを貫かんと、鈍く輝く。
だが。
('A`)「……エクス……」
肩に担ぐ様にドクオは剣を振り上げ。
(・W;)「よせ、荒巻! 避けろぉっ!」
(#'A`)「……カリ・バアアァァァァッ!!!」
振り下ろした刀身から光が放たれる。
ドーム全てを飲み込むような閃光が走り。
/,'3 「な――――」
言葉すら発する事も許されず、荒巻は光の中に消えていった。
(・W;)「荒ま――」
荒巻が存在した場所に目を向けた内藤の左腕に突然、灼熱感が生まれる。
('A`)「終わりだ、ブーン」
内藤の腕を剣で貫いたまま、ドクオは全身を押し込む。
その先には、荒巻を亡くし制御を失なった時間のひずみが口を開いていた。
- 772: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:53 rMaBv87lO
(・W#)「テメェに俺が止められるかよおォっ! ドクオォッ!」
剣で貫かれた左腕を内藤は強引にねじ曲げる。
肉が引き千切れ鮮血を吹き出す。
内藤は意に介した様子も無く、右手でドクオの腹部を刺し貫いた。
(・W)「おとなしく……死んでろ」
右手の紋様が輝き、内藤の掌が強く発光する。
( A )「……れで…か……」
ドクオの喉の奥から、鮮血と共に言葉が溢れ出る。
(・W)「…………あ?」
内藤は、片眉と一緒にドクオの体を持ち上げる。
( ゚ω゚)「――それで終わりかって……言ったんだよッ!」
(・W;)「な――――」
内藤が驚きの声を上げる事すら許さず。
ブーンは内藤に組付くと、ドクオもろともひずみに向けて飛込む。
- 773: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 00:54 rMaBv87lO
(;'A`)「く…そ……駄目か……」
ξ;゚听)ξ「そんな……」
内藤はいまだ踏みとどまっていた。噴き出す自らの血で体を濡らしながらも、ひずみから逃れようと全身に力を込める。
そして。
柄を握るドクオの手から、力が抜けていく。
(・W)「残念だったなぁ! 後一歩の所でよぉ!!!」
ジリジリと内藤の体がひずみから抜け出そうとする。
( ^ω^)「……ツン」
血に濡れた顔でブーンが振り向く。その表情はどこか達観した様な、儚げな笑みを浮かべていた。
( ^ω^)「撃つんだお」
その言葉の意味を理解しながら、ブーンは口にした。
ξ;゚听)ξ「で、出来るわけないでしょ! それじゃあんたが――」
( ^ω^)「いいんだお」
振り返ったブーンの目を見て、ツンは悟る。
これ以外に、選択肢は無いと。
ξ )ξ「……………」
(・W)「よせ」
ツンは銃身を持ち上げる。
('A`)「……………」
(・W)「俺を撃つのか?」
トリガーに指を掛け。
ξ゚听)ξ「ブーン」
『大好き』
( ^ω^)「僕もだお……ツン」
(・W;)「やめろおぉおおおぉおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」
そしてツンは、引き金を引いた。
……さよなら……ツン……
ひずみは三人の体を飲み込むと、やがて空気中に霧散した。
後には、何も残らなかった。
――何も。
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