右手よりは気持ちいいよ
- 775: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 02:08 rMaBv87lO
〜エピローグ
――あれから、幾らか時間が経った。今でも思い出す、あの時の事。
だけど、終わった。
あなた達が消えてから、何とか生きていた隊長達を病院に運んだの。
幸い、一命は取り留めたみたいで無事退院したわ。
あれから……色々あったの。
結局、私達は元の時代に帰らなかった。いえ、正確には帰れなかった。
何故かは分からないけど、とにかく私達はこの時代に取り残された。
……どうしようか、迷って。
皆それぞれ、この時代に生きる事にした。隊長は歴史が変わるかもしれないって言ってたけど、既に書き換えられた歴史なんだから大丈夫だろうって結論になった。
自由に。
皆自由に生きる。
自分でバーを開いたショボン。
場末の小さな店で、細々と経営してる。
つーは、病院での一件から看護士として生きる事にしたらしい。意外と言えば意外だった。
隊長とビロードは、平和だったこの時代を見る為に、各地を旅して回る事にしたみたい。
……私達は目的を達成した筈なのに、どこか胸に空虚な穴が開いた気分だった。
つーはドクオが消えたと知って、しばらく落ち込んでた。
……私も同じ。
会いたいよ……ブーン。
- 776: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 02:09 rMaBv87lO
カラン、とドアに取り付けられたベルが鳴る。
(´・ω・`)「やぁ、バーボンハウスへようこそ」
ξ゚ー゚)ξ「久しぶり」
(´・ω・`)「……君が顔を出すなんて、珍しいね」
入ってきた客の顔を確認すると、ショボンは笑みを浮かべる。
ξ゚听)ξ「この店も中々様になってきたじゃない」
(´・ω・`)「ご注文は?」
先程まで磨いていたグラスをシンクに置き、カウンターに手を着く。
ξ゚听)ξ「ミルク」
(´・ω・`)「ここはバーだ、ぶち殺すぞ」
悪態を突きながらもショボンは屈み込み、カウンターの下をあさる。
(´・ω・`)「……どこに行ったんだろうね」
ξ゚听)ξ「冷蔵庫でしょ」
(´・ω・`)「彼等だよ……」
ξ゚听)ξ「……冗談よ」
ツンを軽く睨みながら、ショボンはグラスにミルクを注ぐ。
冷たいそれでツンは唇を僅かに湿らせ、一口すする。
(´・ω・`)「まぁそんな冗談が言えるようになったなら……少しは落ち着いたんだね」
ξ゚听)ξ「……そうでもないわ……」
(´・ω・`)「……そうかい」
ξ )ξ「会いたいよ……ブーンに……」
重い空気が店内を占める。
ツンのすすり泣く声と、備え付けられた時計の秒針の音だけが響き渡る。
――カラン、とドアに取り付けられたベルが鳴る。
(´・ω・`)「やぁ、バーボンハウスに――」
ショボンはお決まりの台詞を口にしようと入り口に顔を向け、固まる。
ξ゚听)ξ「?」
ショボンのその様子に、ツンは怪訝な顔をする。
――……ようこそ……――
ショボンが言い忘れていた台詞の最後を口にしたのを合図に、ツンは涙を拭き入り口へと振り返る。
そして。
言葉も無く。
ツンは駆け出した。
その先には――――
- 777: ◆sEiA3Q16Vo :05/13(日) 02:12 rMaBv87lO
〜プロローグ〜
('A`)「ここは……」
街が燃えている。
ビルは瓦礫の山と化し、燃え盛る紅蓮の炎が地を這う。
('A`)「……………」
隆起した地面。
横転した沢山の車。
そして。
『助け…て……』
崩れた瓦礫に挟まれた少女。
『ま、待ってろ! 今助けるからな!』
ドクオの目の前で、少年は瓦礫に手を伸ばし、持ち上げようと試みる。
しかし、それは僅かに少女に掛る圧力を弱めるだけでしかなく、体を引きずりだす事も出来ない。
『う…あぁ…苦しい……』
『喋るんじゃない! 絶対に、絶対に助けるからな!』
少年の手から血が滲む。
しかし彼はその力を緩めない。
そして、瓦礫もその圧力を緩めない。
『……もう…駄目みたい……』
『何を……』
『ありがとう、兄さん』
最後に微笑み、少女は息絶えた。
『しぃ! しぃいいいいぃぃぃぃぃっ!!!』
少女の亡骸の前で少年は吠えた。
ドクオは立ち尽くし、その光景を眺めている。
('A`)「そういう……事か……」
『俺は……守れなかった』
『俺は…何も出来なかった……』
『俺は…………』
('A`)「願うか」
『誰だ』
('A`)「取り戻したいか」
『俺は……取り戻したい』
('A`)「ならば、契約せよ」
――そして、世界は廻り始める。
右手よりは気持ちいいよ
完<
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