(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです
- 237: ◆sEiA3Q16Vo :08/14(火) 00:50 4+XnkPsPO
第十話・ようじょ
(´・ω・`)「もう帰るのかい?」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、別に大した用も無かったからね〜」
バーボンハウスの外、戸口に持たれかかるショボンに、つーは後ろ頭を掻き、苦笑しつつ答える。
(*゚ー゚)「どうも、ご馳走様でした」
その隣で、しぃが努めて無表情を繕い、ショボンに向けてお辞儀をする。
(´・ω・`)「性転換したらまたおいで。歓迎するよ」
(*゚ー゚)「もう二度と来ませんさようなら」
(´・ω・`)「……冗談だよ」
互いに無表情のまま、言葉を交す。しかし、その双鉾は真剣の様に研ぎ澄まされていた。
ABE「病院に戻ったら適当に言い訳しておいてくれよ」
(*゚∀゚)「とりあえずここの住所晒しとくよ」
ABE「それは勘弁してくれよ」
阿部は笑いながらそう言うと、扉を開き再び店内に戻って行く。
ABE「……とりあえず頑張りな」
扉を閉める直前に、阿部はつーを振り返ると一言そう呟いた。
(*゚∀゚)「アヒャ?」
その言葉の真意を汲み取る様に、つーは小首を傾げる。
阿部は口元にシニカルな笑みを浮かべると、無言で薄暗い店内に消えていった。
- 238: ◆sEiA3Q16Vo :08/14(火) 00:51 4+XnkPsPO
(*゚∀゚)ノシ「んじゃ、また遊びに来るよ〜」
(´・ω・`)「今度は素敵なオスを連れてきてね」
(*゚∀゚)「ゴメン、やっぱもう二度と来ないわ」
(´・ω・`)「……冗談だよ」
(*゚∀゚)「目が笑ってない」
先程しぃと繰り広げたのと同様なやり取りを交し、つーはしぃを伴いバーボンハウスを後にする。
(*゚ー゚)「あの……」
(*゚∀゚)「ん? 何?」
遠くに見えるショボンの姿が親指程になった頃、不意にしぃが口を開く。
(*゚ー゚)「どうしてあのお店に行ったんですか?」
(*゚∀゚)「ん〜……ちょっと確認したい事があってさ」
(*゚ー゚)「確認したい事?」
(*゚∀゚)「そ、確認したい事」
上目使いにオウム返しするしぃに、同様にオウム返しでつーは答える。
(*゚∀゚)「アタシが、ちゃんとドクオを好きでいられてるかって事」
満ち足りた笑顔で、つーはそう口にした。
- 239: ◆sEiA3Q16Vo :08/14(火) 00:52 4+XnkPsPO
目の前で消えた青年。
彼が戻って来る事は二度とない。
彼女は、そう確信している。
明確な理由は無い。
断言できる根拠も無い。
しかし、彼女は確かにそれを感じていた。
(*゚∀゚)「幾ら待っても、アイツは絶対に帰って来ない」
満たされぬ思いは、澱となって胸の奥に溜っていく。
陰鬱な感覚が日々膨れていくのが分かった。
(*゚∀゚)「でもさ、そんな気持ちが……アイツと会って爆発したんだよ」
彼女が言うアイツ。
彼女が愛した男と、同じであり、異なる青年。
(*゚ー゚)「……あなたが言う兄さんと、兄さんは違います」
(*゚∀゚)「そうだよ……違うんだ……アイツとドクオは違うんだよ」
しぃの言葉に、うつ向きながら視線を反らす。
少女の瞳に、咎める様な物を感じたからだ。
だけど、とつーは言う。
(*゚∀゚)「違うからこそ、アタシはドクオを好きになったんだ」
その言葉に、少女の瞳は当惑の色を浮かべる。
(*゚∀゚)「アタシはアイツを忘れない。何があっても、絶対に。だからアタシはドクオを好きになれたんだ」
(*゚ー゚)「……………」
(*゚∀゚)「自分で何言ってるのかわかんないけどさ、アタシはドクオが好きだよ」
少女が見上げるつーの顔は、迷いが無く、眩しく感じられた。
- 245: ◆sEiA3Q16Vo :08/18(土) 00:41 Lmtagub7O
つーの独白を。
少女は呆然と見上げた。
彼女は言った。
自らの言葉を恥じる事もなく。自らの言葉を誇る様にして。
(*゚ー゚)(……何て……)
幸せそうな顔なんだろう。
その小さな瞳に写る笑顔を見て、しぃは胸の中でポツリと溢した。
(*゚ー゚)(……でも……)
(*゚ー゚)「バイブで戦うとか」
(*゚∀゚)「アレは正直無いと思った。マジで」
- 248: ◆sEiA3Q16Vo :08/18(土) 01:07 Lmtagub7O
何だよバイブって。
いや、知ってるけどさ。
聞いてるのはバイブそのものじゃなくて、それこそ数ある武器の中で何でバイブを選んじゃったのかって事だよ。
アレか、今宵の斬鉄剣は(性的な意味で)一味違うってか。
そもそものチョイスがおかしいだろ、常識的に考えて。何でバイブ。よりによってバイブ。
聞けばオナホとかダッチワイフとか持ち歩いてたらしいじゃねーか。
何に使うんだよ。アレか、ナニか。アレがナニしてアナルがあーなるのか。
いや、百歩譲ってバイブ常備を許可したとしよう。
何で武器としてチョイスしちゃったんだよ。何だよそのアグレッシブなチョイスは。
しかも、エクス・カリ・バーってあんた。
かの有名なブリテンの騎士王もびっくりだよ。
アホ毛も千切れ飛ぶ勢いだよ。
自慢の性剣ですwwwwwってやかましいわ!
- 252: ◆sEiA3Q16Vo :08/18(土) 23:42 Lmtagub7O
(#゚ー゚)「何でバイブなんだよォォォォッッッ!!!」
往来に少女の絶叫が木霊する。
道行く主婦は『ねぇお母さん、バイブって何?』『シッ! 聞いちゃいけません!』と我が子の純真な質問に赤面しつつ、その場から遠ざかり。
外回りのサラリーマンは少女のバイブ発言に勃起し。
向かいの喫茶店で、店前の掃除をするマスターはバイブ発言に勃起し。
『これが世界の選択か……』と感慨に耽る黒服は勃起し。
少女の発言に世界がフル勃起。
(*゚∀゚)「棒やだからさ」
(#゚ー゚)「やかましいわッ!」
諦めにも似た表情で、低い位置からわめく少女に投げ掛けた言葉は、先程よりも更に大きな叫びに掻き消される。
(*゚∀゚)「泣くなよ〜」
(#゚ー゚)「誰が泣くかッ!」
(*゚∀゚)「いや、泣いてるよ」
- 253: ◆sEiA3Q16Vo :08/18(土) 23:43 Lmtagub7O
(*゚ー゚)「……はぁ?」
(*゚∀゚)「分かんないかな? 泣いてるよ、しぃちゃんは」
ふ、と微笑みながらつーは膝を曲げ、少女と自身の目線の高さを合わせる。
(*゚ー゚)「なッ――」
(*゚∀゚)「ほれ」
視線を合わせたまま、つーは手を伸ばし少女の頬を撫でる。
たおやかな指が優しく触れ、しぃの目の下を僅かになぞる。
(*゚∀゚)「ね?」
(*゚ー゚)「……………」
目の前に差し出された指先には、僅かな水滴が付着していた。それが自身の双鉾から溢れた物だと、少女は理解する。
(*゚ー゚)「……羨ましかった」
(*゚∀゚)「……アヒャ?」
(*゚ー゚)「多分、羨ましかった……のかな……」
指先から、つーの目へ視線を移す。今度は自らつーの瞳を覗き込んだ。
(*゚ー゚)「貴方は、私が知らない兄さんを知ってて……そんな兄さんを素直に好きでいられる」
(*゚∀゚)「……………」
(*゚ー゚)「私にとってそれが……羨ましく思います」
(*゚∀゚)「……アタシもだよ」
(*゚ー゚)「……え?」
(*゚∀゚)「そんなドクオと、そんなにも近くにいられるしぃちゃんが……アタシには羨ましいよ……」
- 254: ◆sEiA3Q16Vo :08/19(日) 00:08 B4SEoUu8O
(*゚ー゚)「……………」
(*゚∀゚)「……………」
二人は、互いに視線を交える。
先程立ち止まっていた往来は二人に関心を無くした様に再びその流れを取り戻す。
立ち止まったままの二人の居る場所だけが切り取られた様に、停止していた。
(*゚∀゚)「前に……ね」
黙していたつーは、やがて言葉を紡ぎ始めた。
少女の瞳から目を反らし、僅かにうつ向きながら。
(*゚∀゚)「大きいしぃちゃんに言われたんだよ」
(*゚ー゚)「……何て言ったの?」
(*゚∀゚)「ドクオを……頼むって……言われた」
(*゚ー゚)「……………」
(*゚∀゚)「結局……アタシは何も出来ないまま。ドクオは消えちゃったよ」
うつ向くその瞳には自嘲と後悔の色に満ち、言い淀む様に口元が噛み締められる。
(*゚ー゚)「だからって……」
(*゚∀゚)「この時代のドクオを頼まれた訳じゃないよね……」
しぃの言わんとした事を引き継ぎ、その言葉を吐き出した口元を戒める様、更に噛み締める力を強めた。
- 255: ◆sEiA3Q16Vo :08/19(日) 00:40 B4SEoUu8O
(*゚∀゚)「後悔とか、責任とか……色々理由はあるけどさ」
噛み締める力を緩め、唇を開き少女に向けて言葉を発する。
自身を見上げる。
小さな少女に向けて。
(*゚∀゚)「やっぱり好きだからね……アイツが」
崩れそうな微笑みを浮かべ、つーはそう口にした。
そんなつーの頬に、小さな掌が沿えられる。
(*゚ー゚)「貴方も、泣いてるよ」
少女も同様に微笑みを返し。
同様につーの目の下を優しく触れ、溢れ出した一筋の涙を掬う。
触れた部分から少女の温もりが伝わってくる。
じんわりとした暖かさがまるで溢れる涙を蒸発させてしまいそうな、そんな気持ちにさせる温もりが。
(*゚ー゚)「でも」
(*゚∀゚)「アヒャ?」
(*゚ー゚)つ「兄さんは、渡さないんだから」
;゚∀゚)「おうっ!?」
撫ぜる様な手は、いつの間にか摘む形に変わり、つーの頬を捻り上げていた。
- 256: ◆sEiA3Q16Vo :08/19(日) 00:41 B4SEoUu8O
(#゚ー゚)つ「忘れましたか? 貴方が兄さんをナランチャしたお陰で退院が遅れたのを!」
;゚∀゚)「あだだだだだだだ、痛い痛い痛いって!」
少女の力とは思えぬ万力の如き圧力が回転を伴い捻られ、激痛が頬から顔中に拡がっていく。
(#゚ー゚)つ「そんな戯言を言うのはこの口か? これか? これかぁ!?」
;゚∀゚)「痛い痛い痛い! 取れるって! これ外れないから! 外れないから!」
額に青筋を浮かべる少女が、自身よりも遥かに齢が上の女性の頬を捻り上げるその異様とも言える光景は、往来の足と視線を縫い止めるには十分であった。
;゚∀゚)つ「うりゃッ!」
#゚ー゚)つ「痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 何するのよ!」
;゚∀゚)つ「お返しだよ! アヒャヒャヒャヒャ!」
#゚ー゚)つ「くぅうううぅぅぅぅぅぅうッッッ!!!」
互いに互いの頬をねじり。
それは数分に及んだ。
;゚∀゚)つ「つーかいい加減そろそろ放さね?」
#゚ー゚)つ「貴方が放せばねッ!」
;゚∀゚)つ「オーライ、じゃあせーので放すよ?」
#゚ー゚)つ「……分かった」
;゚∀゚)つ「はい、せ〜〜〜のっ」
;゚∀゚)つ「……………」
#゚ー゚)つ「……………」
その後、二人は互いに頬が赤く腫れ上がるまで力を緩める事は無かった。
第十話・完
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