( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:13:20.96 ID:gx1gBjB00
  

第1話。

―○○県、ニュー速市―

県内の中では比較的人口が多く、市外や県外の会社へ出勤するサラリーマンの一家が多く住むベッドタウン、ニュー速市。

主に一戸建て住宅やマンションが多く立ち並び、大型スーパーや商店街もあるなど、都会と田舎の中間の位置するような街並みがそこにはある。

市内には学校施設も充実しており、小学校・中学校はもちろんのこと、高校も4つほど備えられている。
その中でも最も生徒数が多い高校、ニュー速高校に彼らは通っていた。

( ^ω^)「みんな、おはようだお」
('A`)「おう、おはようさん」
ξ゚听)ξ「おはよう、ブーン」

(´・ω・`)「や ら な い か ?」

 ^ω^)‘A`)゚听)ξ「だが断る」

毎朝恒例の挨拶を済ませて、ブーン達は学校の教室で談笑を始めた。
12月14日。本格的な冬の到来と共に、近づく年末に心を馳せる時期。

黒い詰襟の学生服と、紺色のセーラー服が混在する教室。エアコンがなく、ストーブによって暖められているその部屋。

ニュー速高校3年2組の通常の風景がそこにはあった。



  
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:15:01.12 ID:gx1gBjB00
  
ξ゚听)ξ「今日はちゃんと学校に来れたのね、ブーン」

( ^ω^)「今日は気分がいいから来れたお。昨日おとといは行けなくてごめんだお」

('A`)「まあ、いじめについては俺とショボンがなんとかしといたから心配すんな」

(´・ω・`)「うん、少々厳しいお仕置きを科しておいたから、もう彼らはちょっかいを出してこないだろうね」

( ^ω^)「ありがとうだお」

教室の後ろの方で、ブーンは親友達とおしゃべりをしていた。

ブーン、ドクオ、ショボン、ツンは全員3年2組の生徒だ。
小学校からの友達で、いつも一緒に遊んでいて、いつも助け合っている。

しょぼくれた顔立ちだが、色々な知識を色々な所から仕入れているショボン。
性格が暗めで趣味も特殊だが、優しく頼りになるドクオ。
口は悪いが、いつも自分を心配してくれているツン。

ブーンはいつもこの3人に助けられていた。
つい先日も、ブーンが他クラスの生徒にいじめられていたのを、ドクオとショボンに助けてもらったばかりだ。

いじめられてばかりで、力も気もそれほど強くもないブーンは、彼らの助けに本当に感謝していた。

( ^ω^)「本当にありがとうだお」
('A`)「何度もうぜえwwww」
( ^ω^)「ちょwwwヒドスwwww」



  
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:15:50.96 ID:gx1gBjB00
  
日常の中、こうやって笑い合えることがブーンにとって幸せだった。
こんな日々がずっと続けばいい。もうすぐ卒業だけれども、自分達の関係はきっと変わることがないのだろう。

そんなことをブーンは思っていた。

(´・ω・`)「そういえば、今日の朝のニュースは見たかい? また頭なしの死体が発見されたらしいね」

ξ゚听)ξ「今日の朝でしょ? もう4人目ね」

( ^ω^)「そんな事件知らないお。最近ニュース見てないお」

('A`)「まあ、お前はアニメしか見ねえしな。この前、お前と同室の奴と話したけど、最近夜中の3時まで起きてるらしいじゃねえか」

( ^ω^)「そうだお。最近の深夜アニメはクオリティが高いお」

ξ゚听)ξ「たまには新聞やニュースも見なさいよね」

ツンが呆れたような口調で言った。

アニメをほとんど見ないツンには、深夜アニメのすばらしさがわかっていないらしい。
ブーンは自分の趣味が否定されたかのような気になった。
やはりオタクブームがやってきてもオタクの風当たりは厳しいと実感した。



  
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:16:52.94 ID:gx1gBjB00
  
(´・ω・`)「まあ、そんなことはどうでもいいよ。さっきの続きだけどね。今回は犯人を目撃した人がいるらしいんだ」

ξ゚听)ξ「へえ、ニュースでは言ってなかったわ」

(´・ω・`)「インターネットは情報の宝庫だからね。なんでもその目撃者が言うには『黒い影が男の首を食べた』とのことだ」

( ^ω^)「何かのなぞなぞかお? なぞなぞは苦手だお」

(´・ω・`)「いや、まさしく『影』だったようだ。まあその女性も錯乱していただろうから、何かの見間違えかもしれないけどね
     ただ、興味深い話がある。殺された被害者はみな、何らかの犯罪を行った者ということだ」

('A`)「俺もそれは聞いたぜ。今回殺されたのは強姦の常習犯だったらしいな」

ξ゚听)ξ「ふーん。犯人は正義の味方でも気取ってるのかしらね」

( ^ω^)「でも、人助けにしてもやりすぎだと思うお」

相変わらずショボンは情報通だ。
だんだんと話が広がっていきそうな気配だったが、ちょうど話題が切り替わりそうな所で始業チャイムが鳴り響いた。
1時間目の授業の先生が教室に入ってくる。



  
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:17:47.09 ID:gx1gBjB00
  
先生「ほら、座れよ〜。座らないと今日の夕日は見れないからな〜」

ブーン達は急いで自分の席に座った。
この先生は少々荒っぽく、言うことを聞かないと宿題をどっさりと出され、一日中部屋に閉じこもらなければならなくなるのだ。

ブーンは3人と別れ、自分の席に座った。
先生が出席を取り始める。次々と生徒の名前が呼ばれていく。

ブーンは、3日ぶりの学校の始まりを少し不安に思いつつも、友達の態度が変わっていなかったことを嬉しく思った。

( ^ω^)(これでまた、みんなと一緒に学校に行けるお)



  
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:18:26.93 ID:gx1gBjB00
  



放課後、ブーン達は学校からの帰り道をおしゃべりしながら歩いていた。
話題はブーンの体重の話から、ショボンのバーボンジュース、ドクオのエロゲと多岐に渡り、会話が途切れることは一度もなかった。

('A`)「そういや、最近この辺に痴漢が現れたらしいな」

(´・ω・`)「ああ、聞いているよ。いきなり髪や胸を触っていく変態らしいね。男も被害にあったとか」

ξ゚听)ξ「怖いわねえ。私も襲われないように気をつけないと」

( ^ω^)「ツンを襲うような勇気のある奴はいないと思うお」

('A`)「そうだな」
(´・ω・`)「そうだね」

ξ♯゚听)ξ「……」

数秒後、ブーンの頭にたんこぶができたのは言うまでもない。



  
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:19:31.94 ID:gx1gBjB00
  



しばらく歩くと、ブーン達は白く平たい建物の前に着いた。
縦は2階までしかないが、横はかなり広い。一見幼稚園のような建物だが、運動場があるわけではなく、せまい庭がぽつりとあるだけだ。

ここがブーンの家。
「ktkr孤児院」だ。

( ^ω^)「じゃあ、みんな、また明日だお」

('A`)「おう、またな」
(´・ω・`)「明日も迎えに来るからね」
ξ゚听)ξ「宿題、ちゃんとやりなさいよ」

ブーンは手を振り、みんなを見送った。
3人が曲がり角を曲がって見えなくなると、身を翻して白い建物の中へと入った。
靴を脱いで、玄関に上がる。食堂を少し覗いてみると椅子に横になって寝ている人がいた。

( ^ω^)「ただいまだお」

/,' 3「おー、帰ってきたかブーン君。おかえり。今日はちゃんと学校に行けたようじゃの」

彼は荒巻スカルチノフ。この孤児院の創設者であり、院長だ。
もうすでに60を超えたおじいさんで、最近は昼寝ばかりしている。
だが、孤児院にかける情熱は半端なものではなく、第2ktkr孤児院の建設をも計画中らしい。



  
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:20:17.33 ID:gx1gBjB00
  

ブーンは挨拶をし、寝ている院長を起こしてあげた。

( ^ω^)「はいだお。院長はまた昼寝ですかお」

/ ,' 3「気にするな。ヒッキー君ももう帰っておるぞ。晩御飯までには時間があるから、部屋で休んでおけ」

( ^ω^)「把握したお」

ブーンは階段を駆け上がる。
2階は孤児院に住む子供たちの部屋があてがわれている。
ブーンは歩き慣れた廊下を通り、自分の部屋のドアを開けた。

( ^ω^)「ただいまだお」

(−_−)「ブーンか……おかえり。今日は遅かったね」

現在、この孤児院には10人の子供が住んでいるが、部屋は8つしかなかった。
そのため、ブーンはこのヒッキーという少年と相部屋で暮らしていた。

ヒッキーは中学2年生で、ここに入ってきた当初は部屋にずっと引き持っていた。
だがブーンが頑張って学校にいく姿に感化されて、最近はきちんと中学校に行っている。



  
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:21:27.54 ID:gx1gBjB00
  

( ^ω^)「みんなと話したら遅くなったんだお」

(−_−)「ああ、ドクオさん達か。まあ、別に遅くなっても僕には関係ないんだけどね」

( ^ω^)「そうでもないお。このお菓子、僕のために取っておいてくれたんだお?」

(−_−)「別に……僕だけじゃ食べ切れなかっただけだよ」

いつのながらの無表情・暗い口調で話すヒッキーだったが、そこに微妙な照れがあることにブーンは気付いていた。
少し微笑んだブーンは「じゃあ、そういうことにしておくお」とだけ言っておき、お菓子を机の上に置いた。

 / ,' 3「おーい、飯じゃぞー! お前ら、降りてこいー」

( ^ω^)「お、もうご飯だお。ヒッキー、行くお」

(―_―)「ああ、今行くよ」

まだ5時を回ったばかりなのに、もう晩御飯か。毎日晩御飯を食べる時間が違っている。
いつもながら、荒巻院長の気まぐれにはほとほと困ったものだった。



  
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:22:20.16 ID:gx1gBjB00
  



小学生A「これ、僕んだよー!!」
小学生B「だめ! このハンバーグは私が取っておいたの!」
中学生C「こら、2人共仲良くして食べなさいよ」
中学生D「エビフライもーらい!」
中学生C「あ、だめ!」

/ ,' 3「わ、わしのハンバーグまで取るな!」
高校生E「早いモン勝ちだよー」

( ^ω^)「ハフ!!!ハフ!!!モフモフ!!!」
(―_―)「きめえwwww」

10人も子供がいれば、その食卓は戦場に等しい。
大皿に入ったスパゲッティを取り合ったり、それぞれに分けられたハンバーグを奪い合ったり。
一瞬でも気を抜けば、自分の食べる分はすぐに奪われてしまう。そんな緊張感漂う世界。それが食卓だ。
10人の子供と、2人のお手伝いさんと、1人の院長。
総勢13人による激しい戦いが繰り広げられていた。



  
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:23:27.83 ID:gx1gBjB00
  

( ^ω^)「ヒッキー、もっと食べないのかお?」

(―_―)「さっきお菓子を食べたから、お腹いっぱいなんだ」

ヒッキーは自分の皿に乗っていたご飯を半分以上残して、箸を置いていた。
もちろん、その残り物をめぐる争奪戦も繰り広げられる。

ブーンはヒッキーの元気があまりないことを心配に思いつつ、自分のハンバーグを死守して食べ続けた。

『今日のニュースです』

と、今までバラエティ番組を垂れ流していたテレビから硬いアナウンサーの声が聞こえてきた。
午後の6時台はどのチャンネルもニュースが多い。
久しぶりにニュースを見たブーンは、物珍しさから画面に目を向けた。

『また、飲酒運転の犠牲者が出ました』
『○○議員の汚職事件の闇が、次々と暴かれていきます』
『警察官による拳銃の発砲事件が、昨夜起こりました』
『今年の少年犯罪の件数は、昨年を大幅に超えて2倍以上となりました』
『××県△△市で起きた連続放火事件ですが、犯人と思われる人物が全国に向けて指名手配されました』

なんだか暗いニュースばかりだ。
ショボン達とのおしゃべりの中でも、最近は色々な犯罪が多発しているという話題が出た。
ニュースを見ない上、そういった犯罪に出くわしたことのない自分にはわからないことだったが、今では護身術ブームが起きるほど犯罪が多いらしい。
また他にも、マナーを守らなかったりモラルの低い人が増えたりしているとか。



  
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:24:19.37 ID:gx1gBjB00
  

/ ,' 3「嫌なものじゃのう。こういう事件が立て続けに起きるとは、時代も変わってしまったものじゃ」

( ^ω^)「最近はそんなに犯罪が多いですかお?」

/ ,' 3「そうじゃ。モラルの低下、大人になりきれない大人、と色々と言われておるが、わしが一番問題だと思うのは、そういったことが『おかしい』と思えなくなっている風潮じゃろうな」

( ^ω^)「おかしいと思えない……」

/ ,' 3「これだけ犯罪が多発しておるんじゃ。新しく『人が1人殺されました』とニュースが流れても、世間はそれほど騒がなくなっておる。事件に慣れてしまったんじゃ」

( ^ω^)「……」

/ ,' 3「自由だか個性だか知らんが、もっと他人の命を考えることが大切じゃと、わしは思うんじゃがな」

お手伝いさん(女)「そうですねえ。私たちの時代では、近所のおじさんが色々と教えてくれたもので――」

お手伝いさん(男)「俺の時もそうでしたよ。なんかかみなり親父とかがいて――」

徐々に話が大人達の昔話へと変わっていき、ブーンは意識を所長から子供たちの方へと移していった。
子供たちは無邪気にはしゃいでいる。こんな物騒な世の中になっていることも知らずに。
他人を殴ることはあっても、教えられればそういった行為が駄目だとわかる子供たち。



  
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:25:17.79 ID:gx1gBjB00
  

彼らの方が、よっぽど人に優しいのかもしれない。

『やはり教育の改革が必要だと思われますね。
 それと飲酒運転の厳罰化など、世論が批判している点については早急な対応が必要でしょう。
 保守派の人達は「厳罰化をしても抑止効果にはならない」と言っていますが――』

テレビのニュースはまだ続いていた。なにやら評論家らしき人がわけのわからないことを喋っている。

内容が分からないのは、自分の頭が足りないせいだということは、よく分かっているつもりだ。
けれど、彼の言っていることが現実味を帯びたものとは到底思えない、なんだか『さびれた』言葉ばかりがこの世の中を飛び交っているような気がした。



  
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:26:11.20 ID:gx1gBjB00
  



(´・ω・`)「『うはwwww漏れもまだ童貞だしwww』、と。ふぅ……」

夜の12時を過ぎたショボン宅。
ショボンは自分の部屋でパソコンのキーボードをすさまじい速度でタイプしていた。
画面には『童貞にとって信じられないこと』というタイトルがつけられた巨大掲示板のスレが映し出されていた。

ショボンは毎日この巨大掲示板にやってきては、無駄で、かつ充実した時間をすごしている。

(´・ω・`)「今日は糞スレが多いね……ん? 『今日変なこと聞いたんだよ』? 変なタイトルのスレだな」

ショボンは奇妙なようでいてどこか惹かれてしまうスレを見つけ、とりあえず開いてみることにした。
レスはたったの2つ。
>>1にはこの板には似合わない、かなりの長い文が書かれていた。



  
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:27:08.10 ID:gx1gBjB00
  

『俺、某宗教団体に入ってるんだけどさ。今日、幹部の人たちが変なこと話してるの聞いたんだよ。
 廊下の隅っこの方でヒソヒソ話してるから、「なんか怪しいな」と思って物陰で聞いてたんだ。
 
 そしたら「もうすぐしたら【子供】が生まれる」とか話してた。「【子供】を手に入れないと私たちは破滅だ」とかなんとか。妙に神妙な顔で。
 おまいらはこれを聞いてどう思う? もしかたら俺のところの教祖に子供でも生まれるのかな。

 けど、「教祖は神だから、人間が取るような生殖行動は行わない」っていう教えがあったんだよなあ。
 俺、別にこの宗教のこと信じてるわけじゃないけど(親が入ってるから無理やり入信させられた)、これってスキャンダルになるんじゃね?
 
 これでこの団体つぶすことができたら、だいぶ楽になるんだけどなあ。
 どうしたらいい? 教えてみんな!』

(´・ω・`)「長々と喋るものだね……クオリティの低い奴め」

ショボンはこの板に似合わないことを長々と喋るスレ立て主に怒りを覚えつつ、『スネーク乙』とだけ書き込んでおいた。
他のレスも大抵似通ったものばかりだ。『狂信者乙』『お前、小学校でいじめられてるだろwwww』など。誰も本気にしてはいない。



  
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/14(土) 17:28:17.93 ID:gx1gBjB00
  

この分だと、このスレはすぐにでもdat落ちとなるだろう。
まあ、クオリティの低いやつの宿命というものだ。

(´・ω・`)「さてと……妹スレが祭りか。久々にいいクオリティが見られそうだ」

ショボンはすぐに『今日変なこと聞いたんだよな』のスレを閉じ、別のスレを開いた。
他にも彼は『くそみそテクニック』『男に告白されたんだが』などのスレを同時に見ている。
様々なスレを同時に見ることなど、彼にとっては日常茶飯事だった。

そして、今さっき開いたスレのことなど、記憶の底へとしまい込んでいくのだった。


第1話 完



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