( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
3: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:38:26.58 ID:gclVlXDd0
  

第15話

目覚めた場所が知らない場所だった、なんてのはこの1カ月で何度も経験している。
1度目は『VIP』のビルの中、2度目もそこ。そして今が3度目だ。

こういう経験はなかなかできるもんじゃない。貴重だな、うん。

( ^ω^)「お……?」

起き上がり、辺りを見回してみる。
豪華なベッドで寝ている自分。壺やきらびやかなカーテンなどの装飾品で着飾れた豪華な部屋。
窓がないから今が昼なのか夜なのかもわからないけど、どうにもここは自分の知っている部屋ではなさそうだ。

( ^ω^)(確か僕は……)

寝る前のことを思い出そうと、ブーンは頭を抱えた。
確か流石兄弟に負けて、気を失い、最後に大勢の足音が聞こえて……む〜、そこから覚えていない。



  
5: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:40:33.58 ID:gclVlXDd0
  

しかし、状況は良いとは言えなさそうだ。どうも雰囲気と直感的にそんな感じがする。
誘拐? それとも拉致? 人質だろうか?

でも、どれにしたってこんな豪華な部屋にいる理由がよくわからない。誘拐なら、もっと牢屋みたいな場所に入れるはずなのに……

ブーンはベッドから這い出て、部屋の中をうろうろとしてみた。
高価そうな壺やら絵画やらが飾られていて、なんだか中世ヨーロッパの貴族の部屋みたいだ。
ドアがひとつだけあったので、試しにドアノブを回してみる。開かない。鍵がかけられているようだ。

ということは、やはり閉じ込められているということか。

( ^ω^)(けど、誰が……?)

クー達が言うには、自分を狙っている組織は大勢いるという。
『赤坂』だとかフランスの外人部隊だとか……それらのどれかが、自分をさらったのか?

と、突然扉からガチャリという音が聞こえた。鍵が開けられたようだった。

扉がゆっくりと開く。



  
6: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:42:38.46 ID:gclVlXDd0
  

入ってきたのは1人の男と1人の女だった。

( ゚∀゚)「ん、起きてたのか」

体格のいい20代後半ぐらいの男。短髪をワックスで立て、黒いセーターとジャージというラフな格好。
知らない顔だった。

从 ゚―从「……」

後ろに立っている女性も知らない。
ショートボブの髪を無造作に束ね、無表情な顔で男の後ろに控えている。
TシャツにGパンと、こちらもまたラフな格好。
けっこうかわいい、と思ってしまうのは男の性だ。

(;^ω^)「誰だお……」

ブーンは後ずさりしつつ尋ねる。
最近はこういった危機感が常に備わっていて、意識しなくてもこうなってしまう。



  
7: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:44:50.76 ID:gclVlXDd0
  

( ゚∀゚)「そんなに怯えるなよ。危害は加えないからさ」

思わず警戒心を解いてしまいそうな見事な笑顔を浮かべる男。なんだこの顔は。こんな笑顔、今まで見たこともない。
まるで全ての人間を優しくしてしまうような笑顔……

拍子抜けしたブーンは握りこぶしを解き、彼らに向き直った。

( ^ω^)「誰だお?」

( ゚∀゚)「俺はジョルジュ長岡。こっちがハインリッヒ高岡」

从 ゚―从「……どうも」

ハインリッヒというらしい女性が表情を動かさずに頭を下げた。

( ゚∀゚)「で、ここはちょっとした施設の中だ。まあ、詳しいことは教祖様から聞いてくれ」

( ^ω^)「教祖様?」

( ゚∀゚)「ああ、ここの長だ。ちょうどいい。教祖様がお前に会いたがってるしな。ついてきてくれないか?」

( ^ω^)「……わかったお」

じっとしていても仕方ない。
ここは彼らについていって、何かしら情報を得るしかない。



  
8: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:46:55.70 ID:gclVlXDd0
  

歩き続けること数分。
この建物は地下にあるらしく、窓とか扉がまったく見当たらなかった。

ただ、殺風景というわけでもない。
なぜなら、壁にはそこら中に「教祖様は神」「日本は彼によって救われる」「人々よ祈れ」などの一見呪いの言葉のような貼り紙があるのだ。

( ^ω^)(いったいなんだお? ここ……)

教祖様だとか、神だとか、まるで何かの宗教のようだ。

時々、途中の部屋をのぞき見ることができた。
中で何やら座禅を組んだおっさんや少女が一心不乱にお経を唱えている姿が見られ、なんだか気持ち悪くなってきた。

( ゚∀゚)「変か? ここの奴らは?」

突然話しかけられ、ブーンは何も疑わず素直にうなずいた。

( ^ω^)「いったいなんだお? みんなおかしくなってるのかお?」

( ゚∀゚)「そんなことないさ。奴らにとっては、ここが世界の真実なんだからな」

男が自嘲的な笑みを浮かべる。その後ろにいる女性は一言も喋らない。
なんだか変な2人だなあ。

( ゚∀゚)「ここだ」

ジョルジュがひとつの大きな扉の前で立ち止まった。扉の上には「教祖の部屋。神聖にして不可侵の部屋」という札が掲げられている。



  
9: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:49:07.20 ID:gclVlXDd0
  

ジョルジュが扉をノックした。

( ゚∀゚)「入ります」

「あー、入ってくれー」

ガチャリとドアを開けた先は……まさしく異世界だった。

(;^ω^)(な、なんじゃこりゃー!!!!)

壁には一面に妖怪漫画で見られるようなお札が貼られ、
机は奇妙なハート型をしており、
所々にアイドルや俳優のポスターも貼られ、
棚の上には美少女フィギアが飾られていて、
かと思えば何かの優勝トロフィーや、政治新聞が置かれていたり、

極めつけに、部屋の中の男が、まるでアフリカの民族衣装のような格好をしているし。


カオス。


全てはその言葉で片付けられた。



  
11: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:51:17.51 ID:gclVlXDd0
  

( ^ω^)(元は普通のオフィスみたいな部屋なのに……カオスすぎるお……)

( ・∀・)「やあやあ、『人の子』さん、はじめまして」

アフリカ民族衣装を着た男が話しかけてきた。
ブーンは彼のあまりの奇妙な格好が怖くなり、自然と後ずさりしてしまう。さっきとは別種の危機感だ。

( ・∀・)「おや? この格好はお嫌いのようですね。では、少し変えましょうか」

男がおもむろに衣装を脱ぎ捨てる。

すると普通のスーツ姿になり、いくぶんはマシな姿になった。というか、あの服の下にスーツを着ていたのか。

( ・∀・)「これでどうでしょう? 少しは話しやすいですか? 『人の子』さん? 
     というか、この人が『人の子』さんなんだよね? ジョルジュ?」
 _
( ゚∀゚)「はい、そうです」

即座に後ろに控えていたジョルジュが答えた。
スーツ姿の男はますます笑みを深くする。



  
12: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:53:10.52 ID:gclVlXDd0
  

( ・∀・)「ならよかった。はじめまして。私はここで教祖をやらせてもらってるモララーと申します。以後お見知りおきを」

( ^ω^)「僕は……」

( ・∀・)「いや自己紹介はけっこうです! あなたのことは頭の先から、髪の毛が何本あるかまで知っていますから、『人の子』さん」

( ^ω^)「……」

あくまで『人の子』と呼んでくるのか、この人は。

どうにも嫌な気分になり、ブーンは無意識に眉をひそめた。モララーは気にしていないようだが。

( ・∀・)「うん、ジョルジュ、ご苦労様。君はさがっていいよ」
  _
( ゚∀゚)「いえ、一応ここに控えておきます。教祖様に何かがあってはいけないので」

ジョルジュとハインリッヒは、扉を塞ぐようにして立っている。外に出させないつもりなのだろう。

( ・∀・)「そうかい? 君は心配性だねえ。そうは思わないですか? 『人の子』さん?」

( ^ω^)「……どうして僕をここに連れてきたんだお? というか、ここはどこだお?」

我慢しきれず、ブーンは話を切り出した。
早い所情報を聞き出してしまいたい。というか、ここがどこなのかを知りたい。



  
13: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:55:16.41 ID:gclVlXDd0
  

モララーはますます笑みを深くする。ずっと笑っているかのようだった。

( ・∀・)「ここはラウンジ教の秘密施設でございます、『人の子』さん」

( ^ω^)「ラウンジ教?」

聞いたことがある。確か、ぃょぅが会議の時に言っていた宗教団体じゃなかったか?
ぃょぅが「気をつけたほうがいい」と言っていた覚えがある。

そうか、自分はこのラウンジ教に誘拐されたのか。
しかし、どうして? どうして自分を誘拐したんだ?

『人の子』と呼んできている辺り、どうも自分のことは全て知っているようだ。
ということは、こいつらも『人の子』の力を求めている団体なのか?

ブーンは疑惑の目をモララーに向ける。モララーは相変わらずの笑顔で何やら話し始めた。

( ・∀・)「そう! ラウンジ教です! おや? その様子では私達のことを知っているようですね。これは光栄だ。
     ラウンジ教は日本古来の神をたたえあがめる、健全で、かつ巨大な宗教法人なのです!
     私は教祖と名乗らせてもらっていますが、実はただの神との仲介者でしかないのですよ。そもそもラウンジ教は――」

止めないといつまでもラウンジ教について説明しそうなので、ブーンは「わかったお」と話に割り込んだ。

( ^ω^)「公安にマークされるような宗教団体さんが、僕に何のようだお?」

挑発するようなその言葉に感化されたのか、モララーの目がふと冷たい色を帯びたような気がした。



  
15: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:57:23.86 ID:gclVlXDd0
  

だが、彼の顔はすぐに笑顔に戻る。

なんだ? この変化は?

( ・∀・)「やだなあ、これだけ大きい団体になると、どうも色々な人達に監視されてしまうものなんですよ。
     人の幸せを追求する健全な団体なのにねえ」

( ^ω^)「そんなことはどうでもいいお。何のために僕を誘拐したんだお」

さらに挑発するような口調で言うと、モララーの目がまた冷たくなった。
どうもこの笑顔の裏には一物隠されているような気がする。信じてはいけなさそうだ。

にしても、自分がこんな風に強気に出れるなんて、自分で驚いてしまう。クーに鍛えられたからだろうか?

モララーはまた笑顔に戻り、近くにあった飴玉を口に放り込みつつ、困ったように肩をすくめた。

( ・∀・)「うーん、弱ったなあ。まあ少々荒っぽかったことは謝ります。ごめんなさい。
     で、どうしてここに連れてきたのか? ですよね。それは簡単なことです。私達に協力してもらいたいのですよ」

( ^ω^)「嫌だお」

( ・∀・)「おやおや、これはまた手厳しい」

ははは、と笑うモララー。



  
16: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 22:59:27.04 ID:gclVlXDd0
  

やっぱりこの男は信じられない。こんな人たちに手を貸すなんて嫌に決まってる。

というか、自分が戦う理由は『影』を倒すためであり、特定の団体のためじゃない。この意志は変わらない。
『VIP』のところにいるのだって、彼らの活動目的と自分の目的が一致しているからなのだ。

なのにこんなラウンジ教だなんてうさんくさい人たちに手を貸すなんて……絶対にできない。

ブーンはそう思いつつ、厳しい表情を浮かべる。

( ・∀・)「う〜ん、これは弱ったなあ。『人の子』さん、あなたは自分の力がどれほど強大なものなのかを知っていないのですね。
     まずは話し合いをしましょう。これから私達が話すことを聞けば、きっとあなたも納得してくれるはずですから。
     ジョルジュ、説明してくれ」
  _
( ゚∀゚)「はっ!」

モララーが近くにあった椅子に座り、ジョルジュに話し手を譲った。

ジョルジュはゆっくりと前に立つと、おもむろに「お前、親のことは覚えてるか?」と尋ねてきた。



  
17: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:01:36.52 ID:gclVlXDd0
  

( ^ω^)「……いきなり何を」
_
( ゚∀゚)「まあ、覚えてないだろうな。それはわかってる。で、だ。俺たちはお前の親について色々と調べたんだ」

( ^ω^)「……」

親?
自分の親について?

まさか。そんなことできるはずがない。
自分は孤児院の前に捨てられた『捨て子』だ。親のことなんてわかるはずが……
_
( ゚∀゚)「お前は赤ん坊の頃、ktkr孤児院の前に捨てられた。だから、親については何一つ覚えていない」

( ^ω^)「……そうだお」
  _
( ゚∀゚)「だが、見つけてやったぜ。お前の母親をな」

( ^ω^)「そ、それは本当かお!?」

ブーンは思わず身を乗り出しそうになり、「待て待て」とジョルジュに制止させられた。

まさか、母親が?
誰だ? そしてどこにいるんだ?

いるんなら会いたい……ブーンは無意識に握りこぶしを作っていた。



  
18: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:03:44.85 ID:gclVlXDd0
  
  _
( ゚∀゚)「残念ながら、お前の母親は、お前を捨てた直後に死んでしまってる。これは確かだ」

天国から地獄へ。
それを聞かされたブーンは、膝から崩れ落ちそうになるのをなんとかこらえた。

死んだ?

どこで? どうして?
  _
( ゚∀゚)「原因は自殺。場所は北海道辺りだと聞いてるが、これは不確かだ。だが、色々と聞いて回るうちに興味深い事実を知った」

( ^ω^)「……?」
  _
( ゚∀゚)「お前の母親な、処女だったんだよ」

は?

処女?

いや、待て待て。それはおかしい。
だって自分を産んでいるんだ。自分を産んでいるということは、あれを……俗に言うセク○スを1度はしているはずだ。

なのに処女?
おかしい。なら自分はどうしてここにいるんだ?

そして、どうして母親は自殺を?



  
19: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:06:03.01 ID:gclVlXDd0
  
  _
( ゚∀゚)「どうして自分は産まれたんだ、って顔してるな。
     俺にもどうしてかはわからんが……お前の母親は処女懐胎だったってことだ」

( ^ω^)「処女懐胎……?」

( ・∀・)「古くはキリスト教の始祖であるイエス=キリストを産んだ母、マリアもそうだったんですよ。
     マリアは夫と交わることなく、処女でイエスを身ごもった。それは神様がマリアに子を授けたからなんです」

( ^ω^)「神が子を……」
  _
( ゚∀゚)「周囲の噂によると、お前の母親はそれをめちゃくちゃ怖がったらしいな。
     まあ、当たり前だろう。経験もないのに妊娠するなんて、普通に考えて恐怖だわな。
     でも中絶する勇気も持てず、そのまま産んでしまい、そして捨てた。
     だが、その後罪悪感に苦しめられて自殺した。そんなところだろ」

そんなところ……?
母親が自殺したことを「そんなところ」で片付けるのか?

ブーンは思わずジョルジュを殴ってしまいそうになるが、すぐに彼はそれに気付き「すまん、不謹慎だった」と頭を下げた。

やりどころに困った拳を下げて、ブーンはジョルジュの話を続けて聞く。



  
20: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:08:21.30 ID:gclVlXDd0
  
  _
( ゚∀゚)「とまあ、これがお前の出生の秘密ってわけだ。
     そして、お前は何やら光を出すことが出来る上に、古代からの予言どおりの場所に出現した。
     このことから、われわれはひとつの結論を導いた」

( ・∀・)「あなたが我々の救世主……『人の子』だ、ってことですよ」

モララーが立ちあがり、こちらに近づいてきて肩を抱いてくる。

( ・∀・)「私達はあなたの出現を待ちわびていた。
     この混沌とした世界の中での唯一の希望。それがあなたです。
     私達は世界平和を実現するために様々なことをやってきましたが、いまだ世界は戦争の火に脅かされ、『影』によって混乱し、そして終末へ向かっている。
     私達はそれをなんとかしたい。そのために、あなたの力を借りたいのです」

綺麗な言葉が並べられている。『影』をなんとかしたいという思い。それもわかる。

しかし、何か嫌な気分だった。この男の言うことは、どこか信じられない。

( ・∀・)「具体的には、まず『影』を倒していきたいと思っています。『影』を倒せば、世界はある程度安定へと向かいます。
     その後、あなたの力を最大限にまで借り、世界を平定へと導きたい。ラウンジ教はそのための礎となるつもりです。
     無論、私もです。私は世界平和のためならこの身をささげてもいい」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「どうでしょうか? 私達に手を貸してもらえないでしょうか?
     きっとあなたも望む平和が手に入れられるはずです」



  
22: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:10:46.22 ID:gclVlXDd0
  

ブーンはモララーの目を見た。
彼の目はこちらをじっと見据えており、一点の濁りもない。だが、それがかえって不信感を生む。

嫌な気分になる理由がようやくわかった。
この男、演技している。心の底からそれを望んでいないんだ。

( ^ω^)「お断りだお」

( ・∀・)「……どうしてでしょう?」

( ^ω^)「あんたは言葉の上ではそう言っていても、心の中は真っ黒だお。そんな気がするんだお」

( ・∀・)「ほう、そうですか?」

( ^ω^)「あんたは自分の地位と幸せしか望んでないお。他人のことなんか考えてないって心をしてるお」

( ・∀・)「ふむふむ、これは困った。どうも誤解されているようですねえ」

モララーがうーんと唸っている。だが、それすらも演技くさくて、ブーンはやっぱり信じちゃいけないと再確認した。

( ・∀・)「仕方ない。ここはひとつ保留ということにしておきましょう。もっと私達のことを知っていただければ、きっと協力してくださるはずですから。
     ジョルジュ、彼を部屋へ頼む。丁重にね」

( ゚∀゚)「はっ! 了解しました!」

モララーはずっと笑っていた。けど、その笑いはあまりにもひどく濁っていた。



  
23: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:13:48.26 ID:gclVlXDd0
  



部屋に戻る時も、ジョルジュとハインリッヒに案内された。もう道は分かるのに。
というか、この2人は自分の監視が仕事なのだろう。ハインリッヒなんてこっちをちらちらと見てくるし。
  _
( ゚∀゚)「……ここに協力しないんだな」

( ^ω^)「協力しなきゃダメなのかお?」
  _
( ゚∀゚)「いんや。お前の意志が決めることだろ、それは」

( ^ω^)「……あなたは、なんかあの教祖とは違うお。優しい感じがするお」
  _
( ゚∀゚)「そうかwwwサンクスwww」

本当に、どこか違うような気がする。これもまた直感的な判断で理由なんかないけど。

どうも最近、こういう直感的な判断が多くなってきたような気がするなあ……



  
24: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:16:04.64 ID:gclVlXDd0
  
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、この部屋にいといてくれ。鍵は閉めとく。外には出られないからそのつもりで」

从 ゚―从「……じゃあね」

( ^ω^)「わかったお」

扉が閉められ、またあの豪華な部屋に戻ってきた。

ブーンは部屋を見渡し、ため息をひとつつく。
結局は進展せず、か……

ブーンは近くにあった椅子に座りながら、考え込んだ。

とにかく、脱出しないといけない。これは決定事項だ。

けど、どうやって脱出する? 『剣状光』を使えば、やすやすとこの部屋から脱出できるだろう。
でも、きっとジョルジュ達が監視についているだろうし、何よりこの施設がどこにあるかわからない。
もし山奥だとか孤島だとかなら、現時点では脱出する手段がない。もっと前準備をしておかないと……



  
26: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:18:05.33 ID:gclVlXDd0
  

( ^ω^)(とりあえず今は情報を集めるしかないお……)

ベッドに寝転び、ブーンはふぅと息をついた。今日もいろいろあったなあ……

特に母親の話。
今までは、自分の親はどこかで生きていて、いつか自分を迎えにくるかもしれないと思っていたこともある。
けど、その可能性は完全に断たれた。母親は死んでしまったのだから……

ブーンはふと、自分の目に涙が流れているのに気がついた。なんだ? 一度も見たこともない母親のために泣いているのか?

変なの、と自分で思ったけれども、涙は止まらなかった。
そしてついには、その涙は母親のためだけではなく、別れてしまった友達を思い出したり、ひとりぼっちな現状をかんがみることで流されていく涙へと変わっていくのだった。

( ;ω:)「……僕はどうなるんだお」



  
27: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:19:57.59 ID:gclVlXDd0
  



ブーンのいなくなった教祖の部屋。
今、そこで2人の男が向かい合って話をしていた。

モララーとジョルジュ。

モララーは不機嫌な顔で、机の上の紙を見つめながら口を開ける。

( ・∀・)「ねえ、ジョルジュ。彼、生意気だと思わない?」
  _
( ゚∀゚)「……はっ」

( ・∀・)「ほんと、何が『あんたは自分のことしか考えてない』だか。当たっているけど、それだけにむかつくんだよね」

モララーはビリビリとブーンについての調査報告が書かれているその紙を真っ二つに破る。
その顔は、さっきまでのさわやかな笑顔と違い、あくどく、全てを支配しようともくろむような笑顔だった。

( ・∀・)「ジョルジュ、私が教祖になったのは何のためだと思う?」
  _
( ゚∀゚)「……全てを手に入れるため、です」

( ・∀・)「そうだよ、そうなんだよ! だから、あの『人の子』の力が必要なんだよ! 
     あいつが導く世界を、私にとって都合のいい世界にしないといけない!」

机を思いっきり叩くモララー。その音は部屋中に響き渡り、部屋にいるもう1人の人間の身体を震わせた。



  
29: ◆ILuHYVG0rg :2006/11/16(木) 23:22:05.95 ID:gclVlXDd0
  

( ・∀・)「そうだ……こうしよう。あいつを、協力せざるをえないようにしてやるんだ。
     例えば、脅迫したりとかね」
  _
( ゚∀゚)「脅迫、ですか? しかし、どうやって?」

( ・∀・)「あいつの大切なものを盾に取れば簡単だよ……ねえ、そうだろ?」

モララーが声をかけたのは、ジョルジュではなく、もう1人の人間の方だった。

その人間はうなずきもせず、返事もせず、ただソファの上に座っているだけで身じろぎもしない。

( ・∀・)「彼に教えてもらって、その『大切なもの』を盗んできてよ、ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「……はっ、仰せの通りに」

( ・∀・)「じゃあ、僕は演説の時間だから行くよ。あ〜あ、馬鹿な信者を納得させるのも一苦労だよ、まったく」

モララーはぶつくさといいながら、部屋を出て行った。

後に残ったジョルジュは、ソファに座っているその人間の顔を見てみる。

(―_―)「…………」

かつてヒッキーと呼ばれていた新参信者の彼は、意志のない瞳を、ただ宙に浮かせているだけだった。


第15話 完



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