( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
3: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:20:33.62 ID:3BbD6WXw0
  
第27話

こんなことがあっていいというのか?

世界を変えるためには、どんな人も死んでいいというのか?

違う。そんなの違う。

だって、彼女が死ぬ理由なんてない。
彼女はずっと自分の傍にいてくれた。支えだった。目標だった。

最初に助けてくれた時から、厳しくも優しい言葉ではげしてくれた彼女。
「安心していけ」という緊張をほぐしてくれる言葉は、もう聞けないというのか?

おかしい。そんなのおかしい。

( ゚ω゚)「クー……さん」

ブーンはクーの手を握り、その顔を覗き込んだ。
彼女の瞳は閉じられたままで、ぴくりとも動かない。
胸の呼吸運動は止まっているし、だんだんと身体は冷たくなってきている。

そして何よりも、彼女の心の光が失われていくのを、ブーンはリアルに感じ取っていた。



  
4: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:21:08.94 ID:3BbD6WXw0
  

( ゚ω゚)「クーさん……クーさん!」

身体を激しく揺らしても、彼女は反応しない。
すでに彼女の心の光は失われ、何も感じ取れなくなっていた。

( ;ω;)「そんな……そんな!」

どうして彼女が死ななくちゃならない?
そんな必要があるとでも言うのか?

ジョルジュ達が言っていた「犠牲」に、クーも入っていたというのか?

そうだとしたら……いや、そうでなくても!

( ´_ゝ`)「『人の子』!」

(´<_` )「ここはギコが……そうか、その女にやられたか。だが、そちらも1人やられたようだな」

( ´_ゝ`)「まだ勝負はついていない。さあ、来い! 決着をつけるぞ!」



  
6: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:21:55.04 ID:3BbD6WXw0
  

(  ω )「うるさいお……」

ジョルジュが行おうとしていること。恐怖で世界を安定させるということ。

止めなくちゃいけない。そんなもの。

(  ω )「もうお前達を……」

これ以上、誰も死なせないために。

( ゚ω゚)「許さないお!」

ブーンは立ち上がり、流石兄弟達の方へと振り返った。

コンマ数秒の間に兄者が近付いてくる。
だが、ブーンが出した『剣状光』はいち早くそれを察知して、敵のロープをガードする。

( ´_ゝ`)「何!?」

( ゚ω゚)「おおおおお!!」

もう誰も死なせない。
誰も殺させない。

そのために、今はこいつらを倒す。
敵を殲滅する。

それが今必要なこと。



  
7: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:22:49.49 ID:3BbD6WXw0
  

ブーンの背中に再び光の翼が宿る。
大空に飛び立つブーン。

その瞬間、ひとつのイメージを垣間見た。

それは、兄者が黒いロープでこちらの足をからめとり、その隙に弟者が手裏剣を叩き込むというもの。

言葉でも映像でもない。
ただ単に頭の中に飛び込んできたその確定事項を、ブーンはすんなりと受け取り、すぐに対策を立てる。

( ´_ゝ`)「はあっ!」

イメージ通りに、兄者が黒いロープを投げ縄のように飛ばしてきた。

それを翼で叩き落としたブーンは、『剣状光』を槍のように伸ばして弟者に投げ飛ばす。

(´<_` )「ぐっ!」

弟者の足に突き刺さりダメージを与えられても、ブーンの頭の中に飛び込んでくるイメージはとどまることを知らない。

兄者が弟者をガードするように立ちふさがり、ロープを2本使ってこちらに攻撃することが、ブーンの未来の確定事項となった。



  
9: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:24:08.09 ID:3BbD6WXw0
  

( `ω´)「そんなのぉ!」

すでにイメージすることすら不要となった無数の『飛槍光』を発生させるブーン。
それらは兄者と弟者の周りを猛スピードで飛び回り、徐々に彼らの逃げ場をなくしていく。

( ´_ゝ`)「なんだ……なんだこれは!」
(´<_` )「兄者……俺がひきつけるから、ここは退いてくれ!」
( ´_ゝ`)「何を言う! ここで止めなければ、俺達が戦ってきた意味がないだろうが!」
(´<_` )「だが……!」

( ゚ω゚)(お……お!)

『飛槍光』の結界の中に閉じ込められた2人の次の行動が、またブーンの頭の中に飛びこんでくる。

今度は、弟者が四方に手裏剣を放って『飛槍光』を何発か落とし、その間に兄者がこちらに攻撃をしかけてくる、という確定事項。

( `ω´)「やらせるかお!」

ブーンの目はすでに全てを見通していた。

『剣状光』を2刀、両手に持ち、結界の穴から出てくる兄者の2本のロープを叩き落す。

( ´_ゝ`)「く……どうして読まれているんだ!」

読む? そうだ。これは推測でしかない。
けど、確定事項だ。



  
10: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:25:15.58 ID:3BbD6WXw0
  

『飛槍光』を弟者の方へと集める。
足をつぶされた彼は逃げることができない。
彼の体は、一斉に白い槍に貫かれていく。

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「が……は」

黒い身体をつぶされ、弟者は倒れた。

( ´_ゝ`)「……くっ!」

弟者を見やった兄者だが、すぐにこちらの方へと顔を向け、2本のロープを構える。

( ´_ゝ`)「まだだ……まだ終わらん!」

( ゚ω゚)「邪魔をするんじゃないお!」

兄者の行動は全て読めた。
左と上から同時に繰り出されるロープをなんなく受け止め、逆に『光弾』をお見舞いしてやる。

( ´_ゝ`)「ぐはっ!」

兄者は無防備にもそれを受けてしまい、弟者が倒れている場所へと吹き飛ばされ、2人まとめて地面に突っ伏した。

終わり、だ。



  
11: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:25:58.49 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……行くお」

動かない2人をしばらく見つめ、ブーンは翼をはためかせて空へと飛ぶ。
もう迷いはない。ジョルジュを止めるためなら、なんでもやる。

そう決めた。今、この場で。

だが、後ろから手裏剣が飛んでくるイメージを得たブーンは、その場で急旋回して『光障壁』を発生させる。

3つの手裏剣が飛んでくるのを、完全にガードできた。

( ´_ゝ`)「い……行かせるか!」

(´<_` )「まだ、だ!」

1人は白い槍に貫かれ、1人は内臓をずたぼろにされても、まだ立ち上がる。
殊勝な……とまでは言わないが、粘っていることは確かだ。

( `ω´)「邪魔を……するなお!」

ブーンは『光弾』を何個も発生させ、未来イメージによって得た2人の回避先へと撃ち込む。
完全に虚をつかれた2人は、無数の『光弾』をその身体に受け、倒れた。



  
13: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:28:37.15 ID:3BbD6WXw0
  

( ´_ゝ`)「ぐぅ……」
(´<_` )「……」

沈黙する2人。ブーンは改めて空へと目をやり、ジョルジュの所へと向かおうとした。

だが、

( ´_ゝ`)「まだだと……言っているだろう!」
(´<_` )「俺達は……お前を……!」

まだ立ち上がる2人。

(  ω )「邪魔するなって……」

ブーンは再び『飛槍光』を発生させ、放った。
イメージする必要のなくなったその白い槍は、避けることのできない猛スピードで彼らへと次々と突き刺さっていく。

( ゚ω゚)「言ってるんだお!」

そして、最後に巨大な『光弾』が、ズタボロになった彼らの身体を包み込む。
2人は何も抵抗することなく、その光を受け止めていた。

( ´_ゝ`)「最後まで足止めできて……」
(´<_` )「やはり俺達は……」

( ´_ゝ`)(´<_` )「流石、だな」

白い光が消えたと同時に、彼らも消滅した。
跡形もなく。



  
15: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:29:32.46 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……行くお」

今度こそブーンは空へと飛び立つ。

ふと、ブーンは自分の下で眠るクーに目を移した。
彼女は目を瞑ったまま、まったく動かない。いや、これからもずっと動けないのだろう。

ブーンはしばらくの間彼女を見つめ続けていたが、やがて宙に浮かび、全速力で飛んだ。
飛ぶ方向はもうわかっていた。ジョルジュの気配が、はっきりと感じ取れていたから。

倒す、絶対に。

そんな決意が胸の中にあった。

ふと、視界の端に見知った顔を見つけた。

遠目からでもわかる。ぃょぅだ。

ブーンはそちらの方へと向かった。



  
17: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:30:10.72 ID:3BbD6WXw0
  

(=゚ω゚)ノ「……ブーンかょぅ」

( ^ω^)「ぃょぅさん……」

その場に降り立つと、彼の横で誰かが倒れているのが見えた。
それはモナーだった。刀を突き刺され、青い顔をしているモナーは、おそらく死んでいる。

( ^ω^)「……モナーさんを」

(=゚ω゚)ノ「仕方ないょぅ。それより、無事でよかったょぅ。今から一緒にジョルジュの所へ行くょぅ」

( ^ω^)「けど、腕が……」

ぃょぅの左腕はまったく動いていない。
おそらく肩の骨をつぶされたのだろう。その状態で戦うことなんて不可能だ。

(=゚ω゚)ノ「それでも行くょぅ。今は四の五の言ってる暇はないょぅ。あいつを止めるんだょぅ」

(  ω )「……」

ブーンは翼をはためかせ、身体を浮かせる。
ぃょぅが驚いた顔でこちらを見ているが、気にせずにさらに高度を上げる。



  
18: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:31:24.23 ID:3BbD6WXw0
  

(=゚ω゚)ノ「ブーン、何を……」

(  ω )「ぃょぅさんは、狐さん達の所へ戻ってくださいお」

(=゚ω゚)ノ「けど、それは」

ブーンは一方向を人差し指で示す。

(  ω )「あっちにクーさんの身体があるお。あのままじゃあんまりだから……よろしく頼むお」

(=゚ω゚)ノ「く、クーさんが? まさか!」

(  ω )「ジョルジュさんは、いや、ジョルジュは……」

ブーンは敵がいるであろう方向を見つめる。

あいつを倒せば全てが終わるはず。
守りたいものを守りきれるはず。

( ゚ω゚)「僕が倒すお!」

ブーンは一直線にその方向へと飛び立った。

彼の心の中には、もう怒りと戦う意志しかなかった。





  
19: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:32:12.58 ID:3BbD6WXw0
  


空を見上げていたジョルジュは、ふと白い光が空にきらめいたことに気付いた。

プレハブ小屋の屋上は不安定だったけれども、ジョルジュはバランスよくその場で立ち上がる。
  _
( ゚∀゚)「来た……か」

ふぅ、と息をつき、ジョルジュは懐から拳銃を取り出した。
  _
( ゚∀゚)「あいつらはみんな……いっちまったか」

遠い目を空に向けつつ、ジョルジュは仲間の気配が全てなくなっていることを感じ取り、目を瞑った。

この時のために、彼らはこれまで時間を稼いでくれた。身を呈してまで。
彼らにもう一度会ったら、お礼を言わないといけないだろう。ありがとう、と。

よくやってくれた、本当に。



  
20: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:33:14.33 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「……けど、まだなんだよな」

ジョルジュは、隣で車椅子に座る女性に目を向け、その顔を見た。

まだ無表情なままで、何も喋らない彼女は、まだ心を決めかねているのだろう。
彼女には時間が必要だ。流石兄弟達だけでなく、自分も時間稼ぎに向かわなくてはならない。
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、行ってくる。また戻ってくるからな」

ジョルジュはそう言い残し、プレハブ小屋から飛び降りた。

向かうべき所は分かっている。
ここは元『天国』があった場所なのだから、広くて人気の無い場所も知っている。

あとは、『人の子』とどれだけ戦えるか、なのだろう。

ジョルジュは懐からもうひとつ拳銃を取り出し、それに『気』を張ってみた。
黒い『気』はたちまちに2丁の銃を覆い、強度と威力を増していく。



  
21: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:34:04.02 ID:3BbD6WXw0
  

この2丁の拳銃は、常人では扱うことの困難なPfeifer Zeliska(ファイツァー ツェリザカ)という代物。
総重量6キロ、60口径という最大の口径を持つリボルバー拳銃だが、
その威力の大きさと重さ故に、訓練を受けた者でも容易には使いこなせない。

だが、『影』の力を得た自分は、こんなものは片手で扱える。

きっと大丈夫だ。

黒光りする銃を見つめつつ、ジョルジュは自分にそう言い聞かせ、不安をぬぐった。

そして、走る。
走り続けたジョルジュがたどりついたのは、かつての『天国』のビルがあった場所。

今は更地だったが、景色や空には見覚えがあった。

妹やクーと一緒に仕事をし、「彼女」と出会い、別れた場所。

ここで全てが始まり、全てが終わる。

それでいい。この世界はそうやって導かれていく。



  
22: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:34:44.58 ID:3BbD6WXw0
  


空を見上げたジョルジュは、白い光がだんだんと近付いてくるのを感じ、銃を両手に持った。

撃つのではない。『彼』の攻撃を受け止めるためのもの。

終わりが始まるまで、まだ時間がある。
それまで、『彼』と会話をするのもいい。

戦うということは、心を混じり合わせるということでもあるのだから。


黒いコートを脱ぎ捨てたジョルジュは、構えた。






  
23: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:35:46.82 ID:3BbD6WXw0
  



( ゚ω゚)「ジョルジュー!!」
  _
( ゚∀゚)「来たか! ブーン!」

まずは『剣状光』でジョルジュに攻撃する。
だが、彼は上手く拳銃でそれを受け止めた。

( ゚ω゚)「あんたを止めに来たお!」
  _
( ゚∀゚)「そうか! それでいい! 止めてみせろ!」

ハイキックを繰り出そうとするのを感じ取り、ブーンは翼を動かして上空に緊急回避する。

追い討ちをかけるようにジョルジュが発砲した。
だが、拳銃の弾は全て、ブーンの身体の周りを常に覆っている『光障壁』が防ぐ。
  _
( ゚∀゚)「強くなったな! ブーン!」

ジョルジュは発砲をやめないまま、徐々に横に移動していく。
全て『光障壁』で防げているとは言え、隙を見せればすぐに銃弾を打ち込んでくるだろう。

それに、『気』で覆われているのであろう銃と銃弾は『剣状光』では切れない。
ここは安全に距離を取るのが得策。



  
24: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:37:01.51 ID:3BbD6WXw0
  

沸騰する頭の中で、異様なまでに冷静に分析したブーンは、旋回と移動を繰り返しながら、
「みんな死んだお!」と叫んだ。

( ゚ω゚)「クーさんも、流石兄弟も、モナーさんも、ギコも、みんな死んだお!」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。そして高岡もだ。お前も気付いているんだろう?」

( ゚ω゚)「クーさん達が死ぬことが、今の世界に必要だと言うのかお!」

ブーンは何十もの『飛槍光』を発生させ、射出する。
白い槍は目にもとまらぬスピードでジョルジュへと襲いかかかるが、彼は顔色ひとつ変えずに喋り続ける。
  _
( ゚∀゚)「そうだ! この痛みが、この死が全て後につながる! 生みの苦しみというやつさ!」

ジョルジュはおもむろにダッシュして、『飛槍光』を避けるが、白い槍は彼を逃しはしない。

一斉に周りを飛び交い、流石兄弟を追い詰めた結界を回りに形成する。



  
25: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:38:24.87 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「だが、まだ足りない! まだ戦いは終わらない!」

ジョルジュはいきなり両腕を左右に広げ、おもむろに銃の引き金を引いた。
銃弾は『飛槍光』に辺り、2本の槍は跡形もなく消え去った。

ジョルジュは止まらない。続けて銃を両方とも右に構えて撃ち、白い槍を打ち落とす。

次には左、上、下、また左右に広げたり、上下に撃ったり、

銃声が連続して発せられ、それにつられるように白い槍が次々に消されていった。

ブーンは驚愕の表情でそれを見続けていた。

まるで舞うように次々に銃弾を放つジョルジュ。

最後に2発の銃声が響くと、『飛槍光』は全て撃ち落とされてしまっていた。



  
26: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:39:44.44 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「時間が足りないんだ。だから、俺がお前と戦う。さあ、来い!」

ジョルジュがその場でしゃがみこみ、ばねのようにして飛び上がる。

それは驚くべき高さのジャンプだった。

飛んでいるこちらの目の前に現れたジョルジュは、銃の底で殴りかかろうとしてくる。
『剣状光』でそれを受け止め、逆に『光弾』のカウンターをかけようとしたが、ジョルジュのもう一方の銃が先に火を噴いた。

( ^ω^)「っ!」

近距離だからなのか、『光障壁』を貫いたその銃弾は頬にかする。

遅まきながら『光弾』を撃つものの、ジョルジュはすでに下へと降下し、地面に転がって全て避けてしまう。

( ^ω^)「あんたが言ってた『良い目的のためなら、どんな残虐なことをしてもいいのか?』ってやつ。
      はっきり言うお。 それは間違いだお!
      方法を考えてこその目的なんだお!」
  _
( ゚∀゚)「その通りだ。 俺もそれには反対しない」

( ^ω^)「ならどうして!?」

ブーンは再び『飛槍光』を発生させるが、ジョルジュは猛スピードで地面を走り回っており、照準が定まらない。
牽制の『光弾』を何発か撃ち、機会をうかがう。



  
27: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:41:08.54 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「方法は考えたさ! 腐るほどな!」

ジョルジュは走りながらも銃を撃つことを忘れない。
  _
( ゚∀゚)「考えた末に導き出した方法が、これだ。
    もうこれしか残っていない。穏やかな日々を取り戻すにはな!」

( ^ω^)「何を……!」
  _
( ゚∀゚)「方法がひとつしかないのなら、俺はその道を突き進むだけだ!」

銃弾が絶え間なく降り注ぐ。
全て『光障壁』が防いでくれているものの、このまま弾を受け続けていれば障壁は崩されてしまうかもしれない。

ジョルジュの心は、もう言葉でどうにかできるようなものではなかった。
彼は彼の道を見つけ、それにまい進している。
止めることなどできない。

もし自分が、誰かに「守るために戦うことをやめろ」と言われて、できるか? 
きっとできないだろう。

ジョルジュも同じだ。

その心は理解できなくとも、彼の決意だけはよくわかる。



  
29: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:42:13.16 ID:3BbD6WXw0
  

だから、今は、

( ゚ω゚)「なら、あんたを止めるだけだお!」

戦うしかない。

また、自分の頭にイメージが流れ込んでくるのを感じた。
ついさっき、流石兄弟を倒した時と同じように、相手の行動の「予測」が目に見えてくる。

右に動いて転がりながら銃を撃つジョルジュ。

ブーンはそれを避け、右手から『光弾』を予測地点に放つ。

だが、予測のさらに上を行く速さでジョルジュは側転して回避行動を取り、すぐに銃を放ってきた

ブーンは驚きながらも、さらに流れ込んでくる未来の確定事項に対しての対策を立てる。

次は、ジョルジュが弾を入れ替える時間。
ブーンは何度か旋回しつつジョルジュに近付き、『剣状光』を振るった。



  
30: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:44:36.37 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「これでも!」
  _
( ゚∀゚)「ちっ!」

弾込めの途中だった銃でガードするものの、ジョルジュはこちらの速さに驚いた顔を見せていた。
ブーンはさらに頭の中のイメージに従い、ジョルジュの予想もしない攻撃を次々と繰り出していく。

まず、『剣状光』を振り下ろすが、銃に当たる直前で1度剣を消してしまう。
  _
( ゚∀゚)「なっ!?」

さらに左手で光の壁を作り出して、まだ1発だけ弾が残っていたのだろう、右手の銃から放たれた弾をガードする。

そして最後に、がら空きになった右わき腹に掌を当て、ゼロ距離で『光弾』を発射。

流れるような連続攻撃に、「ぐっ」とうなり声をあげるジョルジュ。

ボディブローは相当効いたようで、足をぐらりとふらつかせる。



  
32: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:45:51.50 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「くっ……だが!」

前宙をするように身体を回転させ、その勢いで踵落としを繰り出すものの、ブーンはそれすらも予期していた。

頭上で腕を交差させ、『光障壁』を使って軽々と防御する。

だが、その後いきなり見えた未来のイメージに反応することができず、ブーンはジョルジュの左足での膝蹴りをモロに喰らった。

(メ^ω^)「くはっ!」

イメージが見えてから、実際にそれが行われるまでのラグが短すぎる。
それだけジョルジュの動きが早いということなのだろう。見えていても対応することができない。

だが、それでも『飛槍光』を放つには十分だ。

腹がじんじんと痛む中で、ブーンは翼を動かして距離を取り、背中に『飛槍光』を発生させる。
未来が見えている今、イメージが重要視される白い槍を扱うのは容易だ。

何十もの『飛槍光』が発射され、それら全てがジョルジュの方へと向かっていく。



  
33: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:47:15.72 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「くっ!」

ジョルジュは弾をこめ終えた両手のリボルバー拳銃を前に構え、その引き金を何度も引く。
白い槍は黒い銃弾に次々と落とされていくが、未来を見通した目で放たれた『飛槍光』は先ほどの比ではなかった。

今までよりも数倍早く、数段複雑な動きをする白い槍を全て撃ち落とすことなど不可能。
撃ち漏らした多数の白い槍は、次々とジョルジュの身体を貫いていく。
  _
( ゚∀゚)「ぐっ! くぅ!」

身体をそらしたり、移動を繰り返して、なんとか致命傷を避けているジョルジュ。
だが、完全には回避できていない。
膝や顔、腕に次々と傷ができていき、YシャツとGパンの切れ目から黒い身体が見えてきた。

最後、全ての『飛槍光』を撃ち落としたジョルジュ。
だが、すでに彼はボロボロになっていた。



  
34: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:48:32.40 ID:3BbD6WXw0
  

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「はぁ、はぁ……」

完全にこちらが優位。
おそらく、もう彼に勝ち目はない。『飛槍光』をもう一度使えば、彼を殺すことだってできるだろう。

殺す。

その響きは、残酷で悲しい。

けれども、時には必要なこと。

守るためには、必要なこと。

ブーンは再び背中に『飛槍光』を発生させ、未来のイメージを掴む。

だが、未来のジョルジュは何一つ動こうとはしなかった。

( ^ω^)「……もう、やめないかお」



  
35: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:49:59.06 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「はぁはぁ……それはできない相談だな」

( ^ω^)「どうしてだお!クーさん達が死んで、その上で、本当に世界が安定するとでも言うのかお!
      こんなことが……こんなことが!」
  _
( ゚∀゚)「1発逆転の手はこれしかない。俺が生きている間に、もう一度あの日々を……」

( ^ω^)「けど、それでみんなが死んだら、元も子もないお!」
  _
( ゚∀゚)「死なないさ。俺は人を殺しているわけじゃない。人を生かすために、あえて俺は……『影の子』を……」

ふと、ジョルジュは顔を上げ、後ろに振り向いた。

戦いの最中に視線を逸らすなんて言語道断。
だが、ジョルジュはそんなことは気にもかけず、後ろの「何か」を見つめていた。



  
36: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:51:00.73 ID:3BbD6WXw0
  
  _
( ゚∀゚)「そうか……やっと、決めてくれたんだな」

ほっとした表情で呟き、おもむろにズボンのポケットに手を突っ込む。

取り出したのは……手榴弾?
  _
( ゚∀゚)「今、行く」

ピンを抜いて目の前に放り出したそれは、瞬間的に強烈な光と音を轟かせた。
スタン・グレネードという、殺傷能力はないものの、敵を気絶させるための手榴弾だと気付いたのは、その光をモロに浴びた後だった。

目と耳が焼けるような感覚。すぐに意識が持っていかれ、ブーンはその場に倒れこんだ。

( ´ω`)(く、くそぅ……)

ジョルジュがその場を去ろうとしていることに気付いた時には、もう目の前は真っ暗になっていた。





  
38: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:52:13.13 ID:3BbD6WXw0
  



息を切らせ、血がにじみ出る腕を振り、たどりついた場所はあのプレハブ小屋だった。

ジョルジュは弾む息を落ち着かせながら、一足飛びで屋上に上がり、彼女の目の前に立った。

彼女は相変わらずの無表情だったが、その目の奥にある光が確かに自分を見てくれていた。

それを見て、ジョルジュは安心する。
微笑み、彼女の肩に手を置いた。
  _
( ゚∀゚)「決めてくれたんだな」

ぽたぽたと血を垂らしながら、彼女に近付くジョルジュ。
止血はすでに無駄だった。ブーンの白い槍によって傷つけられたこの身体は、もう使い物にならない。
  _
( ゚∀゚)「……よく頑張ってくれたよ、ほんと」

空を見上げると、そろそろ夕方の時間帯に差し掛かっていることに、今になって気がついた。
冬だから、日が落ちるのも早い。太陽がいなくなった空は暗闇に染まり、世界を恐怖に陥れるだろう。



  
39: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:53:24.43 ID:3BbD6WXw0
  

けれども、太陽は昇る、絶対に。
どんな暗闇でも、いつかは光で包まれる時が来る。

世界は、人は、それぐらい強いはずなのだから。
  _
( ゚∀゚)「さあ、行こう」

ジョルジュは彼女の手を取り、慎重に立ち上がらせた。
彼女の足の筋肉はかなり衰えており、立つこともままならない。
ジョルジュは腰に手をやり、抱きかかえ、倒れないようにしてやる。
  _
( ゚∀゚)「あの日を……俺たちの時間を、取り戻そう」

力強く彼女を抱きしめるジョルジュ。

すると、徐々にジョルジュの身体に変化が訪れた。
彼の黒い身体が光りだすと同時に、徐々にもやになり、霧散していく。
『影』と同化していたその身体が、黒い光になっていく。



  
40: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:55:00.20 ID:3BbD6WXw0
  

ジョルジュは彼女の顔を見つめた。
彼女もジョルジュの顔を見つめていた。

その目が確かに自分のことを見ていることに気づき、ジョルジュは笑みを浮かべ、呟いた。
  _
( ゚∀゚)「つー……」

(*゚―゚)「ジョル……ジュ」

ジョルジュは完全に原型を失い、その身体を構成していた黒いもやが宙に飛び出していく。

それらはつーの身体へと入り込み、彼女の隅々にまで染み込み、同化していく。

全てが彼女の身体に入り込み、一瞬だけ静けさが辺りに戻った。


冬の冷たい風がプレハブ小屋に吹きつけ、夕方のオレンジ色の光が徐々に空に差し込んでくる。

工事現場であるこの場所には、都会の喧騒も届かず、耳には風の音がするだけ。



  
41: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/02(金) 20:55:56.77 ID:3BbD6WXw0
  

数秒後、

強烈な黒い光が辺りを照らし、一瞬だけその場を夜にした。

何も見えない暗闇が広がり、そして再び凝縮されていく。

夜はすぐに明け、再び辺りは夕方の光に包み込まれる。

黒い光が完全に消えた時、その中心に現れたのは、



(*゚∀゚)「……」




黒い翼を持った女性。



第27話 「真理と未来を見通す目」 完



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