( ^ω^)ブーンが心を開くようです

  
108: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 16:53:10.69 ID:gmEhDIqq0
  

幕間 「Change The World」

全てが変わる瞬間というのは、何かしらの感情の残滓を感じながらも変化した末のものに思いを馳せてしまう。
絵の具の白に黒を混ぜるかのように、筆でなぜるという最初の軽い行為をきっかけに、物事は劇的なまでに進んでいく。

世界は平穏から混沌へ。
白から黒へ。
昼から夜へ。

最初の変化はささいなものでも、そこから全てが変わっていってしまう。
原子一個の配列が変わっただけで、世界は終わりにも導かれるし、始まりへと向かうかもしれない。

意外にもろく、それでいて柔軟なもの。

それが世界というものだ。



  
109: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 16:54:30.52 ID:gmEhDIqq0
  

( ,,゚Д゚) 「なあ、ジョルジュ」

荒々しい風に吹かれながら、ギコは目の前に立つ青年に声をかけた。
あたり一面が平野で、おざなりながらも木が植えられているだけの質素なこの場所。
1度はビルの建っていたこの場所を更地に戻し、さらに次世代都市を建てようという計画が進むこの場所には、
ショベルカーやらブルドーザーやらの重機もちらほらと見える。

ちょうど自分達が立っている場所も、この場所を開発する工事団体のプレハブ小屋の屋根だ。平坦な屋根なのでバランスを崩すこともなかった。
今住民達は全て逃げ出し、自分達が代わりに使わせてもらっている。台所や風呂までついていて、便利なものだった。
  _
( ゚∀゚)「なんですか?」

目の前に立つ青年は、振り返りもせずに答えた。
彼の視線は目の前の光景に釘付け。
遠くに見える黒い煙や、爆発の閃光をその目に捉えているのだろう。

( ,,゚Д゚) 「お前のやりたいことって、本当にこれだったのか?」



  
110: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 16:56:30.22 ID:gmEhDIqq0
  
  _
( ゚∀゚)「不思議ですか? こんなことをする俺は」

( ,,゚Д゚) 「いや……少しだけ、な。まあ、こんな疑問をいまさらぶつけて仕方ないがな」
  _
( ゚∀゚)「これが必要なことなんですよ。この世界にとって……
     きっと、俺のやっていることには意味があるはず。そう思いたい」

( ,,゚Д゚) 「お前は……」

ふっ、とジョルジュは笑った。
それは若い奴が浮かべるいじきたない笑顔ではない。
全てを見定め、全てを考え、全てを受け入れた男の顔。

その背中にどれだけの重みを背負ってきたのだろうか?
世界を旅していた頃のジョルジュを、自分は知らない。その間に、様々なことを経験し、様々なことを考えきたのだろう。
しかし、たったの数年でこれほどまで成長するものなのだろうか?
これほどまで、自分のやるべきこととできることを見定めることができるのだろうか?

わからない。けど、ジョルジュはそれをやってのけている。
自分達のリーダーなだけのことはあるものだ。



  
111: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 16:58:35.79 ID:gmEhDIqq0
  
  _
( ゚∀゚)「俺がやっていることが礎になるのか、それとも城になるのか。
     全てはあいつ、いや、あいつら次第です」

( ,,゚Д゚) 「……そうか」

再び前へと視線を移したジョルジュ。

その背中を見て、この若者の行く末を見届けたいと思うのは老婆心故なのだろうか。

彼の考えていること全てを理解したわけじゃない。
けど、ただ世界に「変化」を与えたいという信念と、それを行うだけの行動力。それに惹かれて自分達は集まった。

最後までついていくべきなのだろう。彼に。彼の心に。

(´<_` )「リーダー」

屋上に、流石兄弟が現れた。
弟者はパソコンを、兄者は爆弾の信管を持っている。一仕事終えたばかりなのだろう。
  _
( ゚∀゚)「ん、弟者か。どうだ? 来るか?」

(´<_` )「ああ。こちらに向かっているのは3つ。ひとつは、猛スピードで空を飛んでこちらに向かっている。
       あとの2つは地上をバイクか車で走っているようだ」

( ´_ゝ`)「今、俺の指揮する『影』を足止めに差し向けた。
       どれほどもつかわからないが、いくらか時間稼ぎにはなるだろう
       って、俺は無視なのか? そうなのか?」



  
112: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:00:10.34 ID:gmEhDIqq0
  
  _
( ゚∀゚)「すまんすまんwww 兄者もいたことに気付かなかったwww
     そうか。わかった。最後の詰めまでにはまだもう少し時間がかかるから、頼む」

( ´_ゝ`)「まったく……わかっているさ」
(´<_` )「いざとなったら、俺と兄者が奴らの相手をする」
  _
( ゚∀゚)「はは、それはあいつらも困るだろうな」

笑い、また空に目を向けたジョルジュ。

その先には、たぶん「彼」がいる。
『人の子』として生を受け、『人の子』として生きている『彼』。
この世界を導き、変革するための存在が。

『彼』を見て、ジョルジュは何を思うのだろう。
嫉妬? 羨望? 恐怖? 全て違う。
彼のもつ感情は言葉では表しがたい、高尚なもの。彼にしかわからず、彼の心の奥底に秘められたもの。

それを理解しようなどというのは、おこがましいことだ。

後ろに再び気配がして、ギコは振り返った。

そこには、相変わらずの無表情なハインリッヒと、戦闘用グローブと靴をつけたモナーが立っていた。



  
114: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:01:25.89 ID:gmEhDIqq0
  

从 ゚―从「……準備できたよ」
( ´∀`)「こっちもだモナ」
  _
( ゚∀゚)「おう、ご苦労さん。これであとは結末を迎えるだけになったな」

空を見ることをやめたジョルジュ。
振り返り、自分についてきてくれた仲間を見つめた。

それは、最後の最後になって見つけた愛しい者を見つめる目。
  _
( ゚∀゚)「……兄者、弟者」

( ´_ゝ`)(´<_` )「なんだ?」
  _
( ゚∀゚)「ヨーロッパで出会った頃のことを覚えてるか? 俺達は傭兵同士で、敵味方に分かれてたっけ?」

( ´_ゝ`)「そうだな……お前は強かった。まあ、俺達2人のコンビネーションには流石にかなわなかったがな」
(´<_` )「兄者、あの時俺達は負けたのに、その言葉に説得力はないぞ」
( ´_ゝ`)「そうか?」
(´<_` )「そうだ」
  _
( ゚∀゚)「何にしろ、よくついてきてくれたよ、ここまで。ありがとう。心からお礼を言う」

( ´_ゝ`)「ジョルジュにお礼を言わせるなんて」
(´<_` )「やはり、俺たち」
( ´_ゝ`)(´<_` )「流石だな」

いや、そこ意味不明だから。



  
117: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:03:00.54 ID:gmEhDIqq0
  

ジョルジュは笑いながら、今度はモナーに視線を移す。
  _
( ゚∀゚)「モナー……お前には辛い役目を押し付けてしちまったな。すまない」

( ´∀`)「いいんだモナ。これが僕の望んだ道だモナ。
      ジョルジュが3年前に話をしてくれなかったら、まだ僕は何も考えてない兵士だったモナ」

一時は仲間だった者を裏切り、こちら側についたモナー。
彼の考えることも、自分達にはわからない。けど、彼が満足しているということだけはわかる。
  _
( ゚∀゚)「その言葉を聞けて安心したよ。ありがとう」

次に視線を移した先は……ハインリッヒ。
  _
( ゚∀゚)「高岡……お前は特に俺と一緒にいてくれた。お前が支えになってくれた。ありがとう」

从 ゚―从「……それは、こっちも同じ。私はあなたと一緒にいたから、私でいられた。それを感謝してる。
     海兵隊で助けられたこと、今でも忘れてない」

オーストリア製アサルトライフル「ステアーAUG」を肩にかけ、
足元には地対空ミサイル「スティンガー」と軍用狙撃銃「M24」の輸送用ハードケースを置いている彼女。

それだけの武装でも、フル装備にはまだまだ足りないのだろう。
彼女のこれまでの経験が全て活かされるこの作戦。
全てを出し尽くすつもりでいるのだろう。彼女の腕も、感情も。



  
118: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:04:50.46 ID:gmEhDIqq0
  

从 ゚―从「私はあなたのために……全てを行います。感謝の印として」
  _
( ゚∀゚)「感謝のし合い、だな。ハハ……」

ハインリッヒの従順な目。それは、主人に対して向けられる敬虔な瞳。
ジョルジュはそれを広く受け止め、笑みを返す。

そして、「で、ギコさん」と最後にこちらに目を向けた。

( ,,゚Д゚) 「なんだ?」
  _
( ゚∀゚)「あなたと出会ったから、俺は今ここにいます。ありがとうございます」

( ,,゚Д゚) 「……俺の台詞を取るんじゃねえよ、くそやろう。
     俺もお前と会えたから、ここにいる。感謝の言葉は……照れくせえな、ゴラァ」
  _
( ゚∀゚)「はは……本当にありがとうございます」

風が強くなってきた。
クリスマスのこの日、いつもより勢力を拡大した寒気団が日本を覆い、凍てつく風を各地に吹かせているという。
十分ほど外にいただけで風邪をひいてしまいそうな外気の中、しかし自分はもう温度なんて感じていなかった。

この身体はすでに黒く染まっている。
『影』の身体……もう、これは人間の身体じゃない。寒さなんて感じなくなってしまった。
情緒ある雪道を歩くなんてこともできなくなるのだろう。



  
119: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:06:22.82 ID:gmEhDIqq0
  

しかし、後悔はしない。
これが自分の選んだ道だから。
いくらそれに弊害があろうとも、目的を達成するためなら耐えなければならない。それがたとえ、自らの死であろうとも。
  _
( ゚∀゚)「……高岡、そろそろ行ってくれ。もう準備も済んだだろう?」

从 ゚―从「……わかった」

ハインリッヒが身を翻して、階段で下へ降りていった。
  _
( ゚∀゚)「兄者、弟者。準備ができたら位置についてくれ。ギコさんとモナーも、それについていってくれ。
     少しでも長く、あいつらをここに近づけさせないように頼む」

( ´_ゝ`)「任せておけ」
(´<_` )「うまくやってみせる」

( ,,゚Д゚) 「わかった」
( ´∀`)「精一杯守ってみせるモナ」

兄者と弟者が屋上から飛び降り、モナーがそれに続く。3人共、3階から飛び降りたというのに平然と着地を決める。これも『影』の力の成せる技なのだろう。

彼らの後を追おうとしたギコだったが、ふと、ジョルジュの方へと振り返った。

彼は、自分の大切なものの横でじっと立ち尽くしていた。



  
123: ◆ILuHYVG0rg :2006/12/14(木) 17:09:59.33 ID:gmEhDIqq0
  
  _
( ゚∀゚)「……あの時の約束通り、戻ってきた。これからは一緒にいこう」

横にいる人物に話しかけるジョルジュ。
その顔はとても嬉しそうで、愛しい者にしか向けない最上級の笑顔。

おそらく彼にとって、「彼女」と一緒にいることが一番の望みなのかもしれない。
ふとそんなことを考えたギコは(不謹慎だな)と自らを諌める。

彼には彼の考えることがあり、自分には自分の考えることがある。ただそれだけだ。

ギコは目の前の空を見上げた。
その空は青く澄み渡り、これからの世界の行く末をじっと見守っているかのような錯覚を引き起こす。

本来はそうではない。
空もまた、この世界のひとつを形作る要素のひとつなのだ。
全てが世界という容器の中に入られた要素。

そうした世界の全てのものがこの戦いに巻き込まれていく。

戦いの中心にいる『彼』と『彼女』は、その戦いを行う宿命を負っているのだろう。

そして、かつて『天国』があった地で、世界は変化させられるのだろう


幕間 終わり



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