(´・ω・`)の恨み代理店のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:35:10.11 ID:fkBp6pDE0

(  ∀ )「お前がいると・・・俺まで・・」

暗がりの中、男は仰向けになっている女にまたがり何度も殴る。
女は顔を庇うようにして何度も謝っている。

「ごめん・・・ごめんなさい」

男はまるで聞く耳を持たず、大きく振りかぶっては何度も拳を叩きつける。
時には女の手に憚られ、時にはその隙間にねじ込むように。
女はそれでも謝るのをやめない。

(  ∀ )「五月蠅いんだよ・・・オカルト女」

男は立ち上がると、女の腹部を踏みつける。
女はせき込み、嗚咽を漏らす。

(  ∀ )「・・・お前、生きてる必要ないよ」

男は近くに転がっていた、握り拳2つ分ほどの大きさの石を、女の顔に、頭に叩きつける。
女は先ほどのように抵抗はせず、ただやられていた。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:37:01.83 ID:fkBp6pDE0

おそらく抵抗する力が残っていないのだろう。
男は髪を掴み半ば強制的に立たそうとするが、膝立ちの状態にしかならない。
腕は力無くたれていて、本当に生きているのかすら分からない。

(  ∀ )「おい・・・死んだのか?」

女はかすかにうめき声を漏らす。
それを訊いて男はにたりと笑い、掴んでいた髪を離す。

どさりと倒れた女に男は言葉を放つ。


    「死んで詫びろ」

ゴリ、と鈍い音がなる。
それは響くような音ではなく、ただその場にいる者にしか聞こえないような音。

女の横には血が付いた石。
男は立ち上がると、あらかじめ掘ってあっただろうと思われる穴に、石と女を入れ土をかけ始める。
女が完全に隠れると、ちかくに落ちている葉っぱを適度にかぶせる。

ここは、深い竹藪の中。
「熊がでる」とも言われており、人は滅多に来ない。
そこに隠された死体はいつ見つかるのだろうか。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:39:42.45 ID:fkBp6pDE0

<第4話 自分勝手>

(´・ω・`)「いらっしゃいませ」

一目見てバーと分かる空間。
その空間のカウンター裏にいる下がった眉毛が特徴的な男、ショボン。
ショボンはこの店のマスターで、少し変わった仕事をしている。

川 ゚ -゚) 「そこらに座って」

お客様に失礼なことを言うんじゃない、とショボンに叱られている女性、クー。
黒く長い髪、整った顔立ち、白い肌は見る者を魅了する。
「美人」といってしまえばそれまでなのだが。
クーはこの店にとってのイレギュラー的存在、この店にいる時間は3番目に長い。

そして、扉を開け、目の前の状況に困惑している女性。

(´・ω・`)「貞子さんですね?こちらにどうぞ」

川;д川「はい・・そうですけど」

貞子と呼ばれた人物は、カウンターの前の椅子に腰掛け、店内を見回す。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:41:08.37 ID:fkBp6pDE0

川д川「あの・・・ここは?」

ショボンは貞子の質問にきっぱりと、ためらい無く答える。

(´・ω・`)「ここは死後の世界だよ。君は殺された」

川д川「へ?死後って・・・死んだ後ってことですか?」

貞子はポカンと口を開けてショボンに聞き返す。
ショボンはこくりと頷き貞子に<あの世>の説明をする。

死んだ人間は大抵、あの世に来たことにショックを受ける。
だが極稀に、喜ぶ者がいる。

貞子は後者だった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:43:11.40 ID:fkBp6pDE0

(´・ω・`)「焦らずにじっくり決めると良いよ」

ショボンはそう言うと牛乳、卵、シュガーシロップを慣れた手つきで混ぜ、
バニラ・エッセンスを少量加える。

それをそっとカウンターに乗せる。
これはサービスだから、ショボンがそう言うと貞子はお礼を言って飲み始める。

川*д川「このミルクセーキおいしいですね」

そう言われるとショボンは優しく微笑む。
横でクーが「私も飲みたい」と言っていたが、また今度ね、と言われ拗ねている。

貞子はそんなやり取りを見て思う。
まるで生きていたときの方があの世なのではないか、と。

川д川「あの、少し・・話を聞いてもらえないでしょうか?」

貞子が控えめにそう言うと、クーもショボンも貞子を見て頷く。
有り難うございます、そう言って貞子は話し出す。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:45:20.16 ID:fkBp6pDE0

川д川「私を殺した相手は、私の・・・幼なじみです」

貞子がそこまで言うとクーは顔をしかめる。
そのことにはショボンも貞子も、もしかしたら本人も気づいていないかもしれない。

川д川「小学校の・・・低学年の頃までは仲良くしてたんですけど、四年生のあたりからは話しかけるな、
    こう言われて、おそらくそこから中学にはいるまで・・・一度も会話という会話をしていないと思います」

ショボンは黙ってカウンターに水を置く。
貞子はお礼を言ってから、それを二口ほどのみ、話を続ける。

川д川「中学生にもなると、周りの男女の多くが交際を始めました。
    正直、私には興味もなかったし、自分には関係のないことだろうと思っていました。
    人気があったわけでもないですし」

クーよりも少し長い程度の黒い髪から出た顔。
顔立ちは決して悪くない。
ただ、その雰囲気は控えめというより、暗い。
悪く言えば不気味。


貞子は眉を顰め、また話し出す。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:48:07.39 ID:fkBp6pDE0

川д川「二年生の頃、急に彼が話をかけてきました。私は少し怖くて、嬉しかった」

川 ゚ -゚)「何で怖かったんだ?」

クーは貞子に問いかける。
貞子はいきなりの質問にビクッ、と驚いていたが、すぐに理由を説明する。

川д川「私、人と話すのが苦手・・・と言うよりも嫌いで・・・。
    それに昔、話しかけるなって言われてたから、嫌われてると思ってたんです。
    なによりうまく喋れなくて怒らせちゃうんじゃないかって・・・」

クーは答えてくれたことにお礼を言い、「話を止めてすまなかった」と謝る。
貞子は律儀に「いいんです」と答え、話を元に戻す。

川д川「話しかけてくれたのに嬉しがったのは、嫌われてなかったのかも、昔みたいに戻れるかもと思ったからです。
    話の内容は、付き合え、つまりは恋人になれとのことです。
    私は断りました。でも彼は一方的に付き合うと言ってききませんでした」

貞子は肩を落とす。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:52:30.56 ID:fkBp6pDE0

川д川「こんな事を言うと思い上がりかと思われるかもしれませんが・・・。
    私は彼を幼なじみ、仲のいい友達、そこまでにしか思えませんでした。
    だから断った、だけど・・・」

(´・ω・`)「無理矢理付き合わされるはめになったと」

ショボンがそう言うと貞子は静かに肯定する。
コップには氷しか入ってない。

(´・ω・`)「御代わり、いる?」

貞子が「はい」と返事をするとショボンはまた水を注ぐ。
底に落ちていた氷が浮かび、水面に顔を出す。

川д川「結局それから一年ほど付き合いました。私はその間にも何度も別れを持ち出しました。
    でも彼は別れてくれなかった」

川д川「そして最後に彼は、好きな人ができたから別れる。そう言って名前だけの関係が終わったんです」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:55:06.10 ID:fkBp6pDE0

貞子はいったん話を止めて水を喉に通す。
氷が音を立てて揺れる。

ショボンは黙って表情を変えずに、クーは眉を曇らせ、それぞれ貞子を見ている。

川д川「望んでいたことなのに、少し悔しかったんですよ。おかしな話ですよね」

貞子はそう言って自嘲の笑いを漏らす。
重い空気が漂う中また声が混じる。

川д川「それでも、ふられたのは卒業直前だったので、すっきりした気持ちで高校に通えました。
    地元の学校にしたので、同じ中学から行く生徒も少なくなくて・・・彼もいました」

貞子意外誰も声を発しない。
ショボンはともかく、クーさえも。

川д川「私は滅多に喋りませんでしたし、本ばかり読んでいて、気味が悪いと避けられ完全に孤立していました。
    私はそれでも構いませんでしたが・・・、そのことで彼がからかわれ始めました」

(´・ω・`)「その腹居せに君を殺した」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:57:38.13 ID:fkBp6pDE0

川д川「そうなりますね。私がいなかったら良かったらしいです」

貞子の話が終わるとクーが声を荒らげて言う。

川#゚ -゚)「自分勝手な!」

クーの言うことはもっともである。
だからこそ、この場所が、ショボンがいる。

ショボンはクーを落ち着かせ、もう一度貞子に説明しなおす。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/06(土) 23:59:53.19 ID:fkBp6pDE0

(´・ω・`)「君には2つの選択肢からどちらかを選んでもらう。
      天国コースか恨みを晴らすか。天国に行けば後悔することはまず無い。
      恨みを選んだなら後悔するかもしれない」

恨みを晴らしても、転生したら記憶がないから後悔の仕様が無い。
しかしショボンはあえてそれを言わない。
後悔するぐらいの覚悟がなければ人を殺すに値しないから。

貞子はやんわりと笑い、話す。

川д川「私が死ぬ直前、彼は何て言ったと思います?」

ショボンもクーも答えない。
貞子はゆっくりと解答を口にする。

川д川「死んで詫びろ、だそうです」

クーが何か言おうとするのをショボンは止める。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:02:20.84 ID:pOF0GGGc0

(´・ω・`)「・・・その言葉が何か?」

貞子は「あはは」と、声を出して笑う。
そしてショボンに、視線を向け答える。

川д川「なんんとも彼らしい、何て言うんだろうな?自分勝手と言いますか・・・。
    死んだら許してもらえてるかどうかも分からないのに」

ショボンはそりゃそうだと微笑む。
この教室ほどの大きさの空間で笑ってないのはクーのみ。
クーは複雑な表情をしている。

川д川「さて、選択の時ですね」

貞子は一呼吸置いて、ショボンに告げる。

川д川「ショボンさんに頼みます。恨みを晴らして下さい」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:05:16.29 ID:pOF0GGGc0

ショボンは服装を正し、背筋を伸ばして立つ。
そして軽く礼をしながら、一言。

「ご注文をどうぞ、お客様」

それを聞いた貞子は十秒ほど目を閉じ、答える。

川д川「呪いの藁人形ってありますよね?あんな風に釘を打ってもらえますか?彼・・・モララーに」

できれば私が殺された場所でお願いします、貞子はそう付け足す。
ショボンは「分かりました」と言うと、代償の話を持ち出す。

(´・ω・`)「聴覚を貰って良いかな?もちろん全部じゃないよ。
      ただ、どれくらいになるかはちょっと分からない」

川д川「どうぞ、それで恨みが晴れるなら」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:07:37.71 ID:pOF0GGGc0

川д川「それと、言伝を頼みたいのですが・・・」

貞子は申し訳なさそうに言う。
ショボンは構わないよと快く引き受ける。

(´・ω・`)「何て言えばいいの?」

貞子はショボンの耳に口を近づけ、ボソボソと囁く。
クーには聞こえない。

(´・ω・`)「それじゃ行って来ます」

ショボンは扉を開け、店から出る。
バタン、音を立て扉が閉まるとまた密室に戻る。

貞子はあらかじめ聞いていたとおり、スクリーンに映像を映す。



川 ゚ -゚)「(私・・・空気だな)」

クーは少し切なくなり、貞子と同じように視線をスクリーンに移した。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:10:07.17 ID:pOF0GGGc0

(´・ω・`)「さて・・・と」

ショボンは息を潜め、モララーの通学路で待ち伏せする。

秋口の6時、空が紅から黒に変わる時間。
モララーは普段この時間にここを通るとのこと。

待ち伏せ開始から10分程経つと、3人の学生が歩いてくる。
ショボンはばれないように隠れ、後をつける。

少し歩くと、モララーは途中で他の二人と別れ一人になる。

( ・∀・)「・・・意外とばれないもんだな」

ショボンはいつものように指をパチンと鳴らす。
するとモララーは踵を返し、今来た道を戻り始める。

人通りはまるでない。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:12:57.25 ID:pOF0GGGc0

(;・∀・)「あれ?何でこんな所に?家の近くを歩いて・・・」

モララーは貞子を殺した竹藪に立っていた。
台詞から考えるに、自分の意識でここに来たのではないのだろう。

( ・∀・)「夢中遊行症・・・?でも寝てなかったよな・・・」

モララーは首を傾げあたりを見渡す。
そして急に焦り始める。

(;・∀・)「(ここ死体が埋まってる場所じゃねーか。こんな所にいるの誰かに見られたら・・・)」

人がいないのを確認すると、周りを注意しながら歩き出す。
しかし、茶目っ気あふれるあの男はいつも通り、このタイミングで声をかける。

(´・ω・`)「おや?こんなところで何をしてるんだい?」

ショボンが後ろからモララーに声をかける。
モララーは顔を引きつらせながら振り向き、答える。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:15:21.08 ID:pOF0GGGc0

(;・∀・)「あ、と、友達を捜していて・・・」

モララーはとっさに嘘をつく。

(´・ω・`)「僕も人を捜してるんだ。ほら、最近行方不明になった子・・・。
      貞子ちゃん。制服を見るに君も彼女と同じ学校だよね?君も貞子ちゃんを?」

貞子は行方不明となっている。
死体が発見されていないのだから当たり前だろう。
そのため、警察や地域住民によって捜索が行われていた。
モララーにはショボンもその一人に見える。

( ・∀・)「・・・ええ。仲良かったんです」

それを聞いたショボンは空を見上げて答える。

(´・ω・`)「もし、もしだよ?貞子ちゃんが亡くなっていたらどうする?」

モララーは心臓が止まりそうになる。
だが、実際にはそれとは逆に鼓動が少しずつ速くなっていく。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:18:36.12 ID:pOF0GGGc0
ショボンはこんなこと言うの不謹慎だね、と言ってモララーに謝る。
それに対しモララーは言い放つ。

( ・∀・)「事故なら悔しいですがどうにも出来ません・・・。
      もし、もし殺されていたなら、僕は殺した奴を一生許しません」

ショボンはそれを聞いて微笑む。

(´・ω・`)「君は本当に貞子ちゃんを思っているんだね」




          「貞子ちゃんも同じ事言っていたよ」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:20:40.99 ID:pOF0GGGc0

(;・∀・)「へ?」

モララーは素っ頓狂な声を出す。
ショボンは3メートルほどあるモララーとの距離を一歩ずつ詰めていく。

(´・ω・`)「だから貞子ちゃんも言ってたよ。殺した奴を許さないって」

モララーはショボンが近づく度に後ずさりをする。

(;・∀・)「ひっ・・・、く、くるなよ!近づくな」

(´・ω・`)「貞子ちゃん言ってたよー、私を殺したモララーを殺すって」

モララーは後ろに立つ木にぴったりと背をつける。
そのままヘナヘナと腰を抜かし、ショボンを見上げる。
ショボンは屈み、モララーの目線の高さとほぼ同じ高さに目線を持ってくる。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:23:00.26 ID:pOF0GGGc0

(´・ω・`)「でも安心して、貞子ちゃんは死んでるから何もできないよ。それが僕のルールだから」

ショボンは静かに、モララーに言う。
モララーは泣いて、意味も分からず頷いている。

(´・ω・`)「もちろん僕は警察にも言わないよ」

ショボンが立ち上がるとモララーもふらふらと立ち上がる。
モララーの息遣いは荒い。

(´・ω・`)「よし、突然ですが君には死んでもらう。これも僕のルール」

さらっと吐かれた言葉にモララーは畏怖する。
目の前にいる男は普通ではない、と。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:25:35.25 ID:pOF0GGGc0
  _, _
川 ゚ -゚)

川д川

スクリーンの前には二人の女性が座っている。

顰めっ面をしているクーと、ただ画面を見つめる貞子。
どちらも黒く長い髪を背中に垂らしている。

川 ゚ -゚)「なあ、何でこんな殺し方を?」

クーはこの殺し方に疑問を抱いたらしい。
藁人形、この言葉はすぐに思いつくようなモノじゃない。
貞子は少し照れながら答える。

川*д川「私、オカルトチックなモノが大好きで・・・。
     恨みや呪いって言ったらこれしかないと思ったんです」

それを聞いたクーは、苦笑いをしている。
オカルト好きの貞子本人がオカルト的な存在なのだから。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:27:43.68 ID:pOF0GGGc0

画面からは向こうの、つまり<この世>の音が届いている。
蝉の季節が終わり、バトンを渡されたのかの様に違う虫が鳴く。
しかし、この鳴き声は鎮魂歌にはならない。
これから魂が逝く所は天国ではないのだから。

こちらの音は向こうにいっさい聞こえない。
画面からはショボンの声が聞こえてくる。

「今貞子ちゃんに許してくれるかどうか聞いてあげる」

「あーあ、駄目だってさ。残念」

ショボンの一人芝居に二人は苦笑いする。
その間にもモララーは地獄に少しずつ近づく。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:30:06.31 ID:pOF0GGGc0

(*´・ω・`)「さてそろそろ本格的にやりますか」

ショボンは肩から掛けている鞄に手を入れ何かを取り出す。
出てきた物は釘と金槌、ハサミのような物。

周りはすでに暗くなっており、ほとんど何も見えない。
しかし、鼻をすする音がショボンの足下から聞こえてくることから、
モララーはまた腰を抜かしているのだろう。

(´・ω・`)「やっぱ雰囲気って大事だよね」

そう言うとショボンの周りが照らされる。
ふよふよと浮いている物から光が出ていた。

(;・∀・)「ひ、火の玉!?」

モララーが言ったとおりそれは赤や青の火の玉。
すぐに立ち上がり逃げようとするモララーの脚を、ショボンはがっしりと掴む。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:32:15.99 ID:pOF0GGGc0

(´・ω・`)「逃がすかっての」

ショボンはモララーの靴と靴下を脱がせ、裸足にする。
モララーは足をじたばたさせ、逃げようとするが、その策は失敗に終わる。

(´・ω・`)「はい、これから君に釘を打ち込みます」

ショボンは左手に長さ10センチ、太さ5ミリほどの釘。
右手には金槌を持ちモララーの脚の爪に打ち込む。

( ;∀;)「止めろって!止めて止めて」

モララーは仰向けに倒れている。
その上に、ショボンがモララーに背中を向ける形で乗っかっている。
モララーは上半身を起こしショボンの背中を殴るが、うまく力がこもらないようだ。

(´・ω・`)「爪が邪魔だな。剥ぐか」

ショボンは釘を胸ポケットにしまい、金槌をハサミのような物、つまりペンチと持ち替える。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:34:49.86 ID:pOF0GGGc0

爪をペンチで挟み、レバーを引く様にペンチを持ち上げた。
音も無く、右足の親指の爪が根本を残し剥げる。

( ;∀;)「イダイイダイイダイ!!」

ショボンは根本を残した爪を指で掴み、思いっ切り引っ張る。
モララーの体にある爪は19本となった。

(´・ω・`)「まず脚のを全部剥いじゃうか」

1本1本、同じように剥いでいく。
何本かは爪が直角に曲がり、痛々しさを増していた。

( ;∀;)「あ゛あ゛あ゛あ゛」

脚から爪が無くなった頃には、モララーは抵抗すら見せなくなった。

(´・ω・`)「どれだけ叫んでも助けは来ないよ。不思議なことに。じゃあ釘を打とうか。」

ショボンはそう言うと釘を取り出し先端を爪のない指に充てる。
それだけでも刺激が来るのだろう、モララーの悲鳴は大きさを増す。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:36:53.07 ID:pOF0GGGc0

ショボンは金槌を振り下ろす。
それと同時にモララーの体がビクンと跳ね、悲痛の叫びをあげる。
肝心の釘は、貫通しておらず、ショボンは首を傾げる。

(´・ω・`)「骨かな?あと、お前五月蠅い」

モララーは口をパクパクと動かしているが声が出ない。
おそらくショボンがまた何かをしたのだろう。

(´・ω・`)「・・・もう一度・・っと」

ショボンは中途半端に刺さった釘めがけて再び金槌を振り下ろす。
本当に小さく、ゴリ、という音が聞こえ釘が指を貫く。
骨からは少しずれたようである。

( ;∀;)「      」

モララーはショボンの背中を叩く。
しかしこの些細な抵抗ではショボンを止めることは出来なかった。

(´・ω・`)「気絶することも許さない」


ショボンはまた大きく金槌を振り落とす。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:39:04.07 ID:pOF0GGGc0

恨み代理店では虫の鳴く音だけが聞こえていた。
画面に映るモララーは泣いてはいるが声を出さない。
ショボンもただ黙々と同じ作業を繰り返している。

クーは貞子を見ていた。
己の恨みをぶつけている者の姿を。
貞子はそれに気づいたようで、クーに話しかける。

川д川「あの・・・どうかしたんですか?」

川;゚ -゚) 「え?あ、いや・・・そうだ!水いるか?」

貞子は微笑み、お願いしますと言うと、クーは立ち上がりカウンターの裏に周る。
氷はすでに溶けきっており、やはり死後の世界でも時は経つことが証明された。
本物かどうかは分からないのだが。

クーは氷水を貞子に渡す。
貞子は当たり前のようにお礼をして、水を飲む。

スクリーンではショボンがモララーを見下ろす形で立っていた。
モララーの脚の指、手の指にはそれぞれ1本ずつ、計20本の釘が刺さっている。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:41:07.65 ID:pOF0GGGc0

ショボンは何度も爪を剥いだ。
モララーは何度も爪を剥がれた。

モララーはその度に体を跳ねさせ、捻らせ、逃げようとしていた。
しかしショボンはそれを許さなかった。

虫の音さえ聞こえなくなるほどショボンは集中していた。
そして20本、つまりは両手両足の指全てに釘を刺し終えたところで立ち上がる。

モララーは最早痛みも感じないのか、ゆっくりと立ち上がる。
ショボンはそれを見て歓喜の声を上げる。

(*´・ω・`)「凄い凄い!よく立ったね」

本当に感心しているようで、ショボンは指を鳴らす。
そうするとモララーから声が発せられる。

( ;∀;)「いい加減にしろよッ!!ぶっ殺す」

モララーは叫ぶ、人外の、得体の知れない何かに。



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:43:16.06 ID:pOF0GGGc0

(*´・ω・`)「君はよく頑張るね。でも君に僕を殺すのはちょっと難しいかな」

ショボンは不可能な事をまるで可能性が少しでもあるかのように言う。
モララーは叫びながら釘を全て抜く。

( ;∀;)「死ね!死ね!!死ね!!!」

モララーは何度も殴りかかる。
火の玉の明かりだけの竹藪。
その中で一人が何度も何度も攻撃を仕掛ける。
もう片方はきれいに攻撃を避けながら笑っている。

(*´・ω・`)「ちなみにさ、君幽霊って信じるかい?」

( ;∀;)「状況見てもの言えってんだよ!!!」

モララーからしたら、ショボンは幽霊や化け物といったたぐいの者である。
しかしそれに殴りかかっているのだから大した者だろう。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:45:41.54 ID:pOF0GGGc0

( ;∀;)「っ・・はぁ、はぁ」

しかし根性だけで体力はカバーできないようで、モララーの攻撃の手がゆるむ。
ショボンは右手でモララーの頭を掴み、近くの木に後頭部を押しつける。

(  ∀ )「がっ・・・」

モララーは両手で、ショボンの手をはずそうと試みる。
しかし指からは血がこぼれ落ちるだけで、ショボンの手は外れない。

しかし次の瞬間、ショボンが手を離す。
モララーが苦し紛れにはなった蹴りが股間に命中していた。

(;´・ω・`)「ここまでやるとは・・・正直油断してた」

しかしモララーは逃げ出すことが出来なかった。
ショボンは咄嗟にモララーの首根っこを掴んでいた。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:48:18.18 ID:pOF0GGGc0

(´・ω・`)「君を殺すのはちょっと惜しい。でも君は私利私欲のために人を殺した。
      それは、ほとんどの人が許してくれない」

モララーは死ぬ覚悟を決めたようで、泣きやみ、落ち着いていた。

( ・∀・)「・・・殺せよ、どうせ遅かれ早かれ死ぬし」

ショボンは20センチほどの長さの、太い釘を取り出す。
それをモララーの額に充てる。

(´・ω・`)「おっと、忘れてた。貞子ちゃんからの伝言。聞く?」

モララーは10秒ほどの沈黙の後聞くことを願う。
ショボンはゆっくりと口を開く。


     「次は仲のいい友達でいよう」


(´・ω・`)「とのことだ。何か言い残すことは?」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:50:19.69 ID:pOF0GGGc0

( ;∀;)「俺が言って良いことは何もないよ・・・」

ショボンはそれを聞くと力強く、一度で絶命させる。
モララーは何も言わなくなる。

火の玉が一つずつ消えていく。
最後の一つが消えるのと同時にショボンは呟く。

「貞子ちゃんに怒られるかな・・・」

火の玉が消えて光が無くなった竹藪では、2つの死体が虫の音に包み込まれていた。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:52:18.02 ID:pOF0GGGc0

(;´・ω・`)「勝手してすいませんでした」

店に入ってくるなり体育会系のように謝罪するショボン。
それを見てクーは「何だこの垂れ眉」と笑っていた。

川;д川「あの・・・謝らないで下さい」

貞子はショボンに頭を上げるように言う。
ショボンは顔を上げて2、3度謝るとカウンターの裏に入る。

川д川「逆に感謝してるんですよ」

貞子からでた意外な発言にショボンは目を見開く。
クーは全く話についていけていない。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:54:10.05 ID:pOF0GGGc0

川д川「実は、恨みを選んだ事を少し後悔していたんです。
    これじゃどちらも相手を嫌いなまま終わってしまうから」

ショボンは真剣に話を聞いている。
自分のしたことはこの人に役立ったのかどうかを知るために。

川д川「ショボンさんに言伝てを頼みましたよね?もしショボンさんがそのまま言ってたら・・・。
    私もきっと地獄へ逝くべきでした」

ショボンはそんなことはない、と言ったが彼女は首を横に振る。

川;д;川「今私は、凄く後悔してる。何でもっとしっかり彼を見なかったのか。
     地獄に逝けるなら逝かせて欲しい。でも私にはもう年数がない。
     きっとこれが最小限の後悔なんです。
     ショボンさんが、私の本当に言いたいことを言ってくれた。それだけ十分です」

貞子は恨みを果たしたために、ゆっくりと消えていく。

川ー川「本当に有り難うございました」



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:56:45.71 ID:pOF0GGGc0

消えていく貞子にショボンはゆっくりと言う。
「君には二度と会いたくない」と。

それを聞いて貞子とクーはポカンとする。
次の瞬間、クーはショボンの胸ぐらに掴みかかっていた。
ショボンはクーの肩を掴み、なだめる。

川д川「クーさん、良いんですよ」

貞子は意味が分かったようで、消える寸前に言葉をなげる。

川ー川「私ももう会いたくありませんから」

貞子のいた場所には何もない。
完全に消えた後に、クーはショボンに謝る。

川 ゚ -゚)「何か意味があるのか?」

訪ねるが、ショボンは「自分で考えたら?」と笑っている。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:58:17.23 ID:pOF0GGGc0

川;゚ -゚)「じゃ、じゃあさ、貞子の伝言ぐらい教えてくれよ」

クーはこのままじゃ収まりがつかないらしく、ショボンに頼み込む。
ショボンはやれやれといった様に、クーに教える。

「とても自分勝手な言葉を頼まれてたんだよ」

これはすぐに分かったようでクーはにやにやと笑いショボンを見る。

川゚ー゚)「たまにはイイトコあるじゃないか」

クーが笑っているとショボンは苦笑いをする。
ショボンは黙ってコップを洗い始める。
クーは椅子を並べている。


洗い物をしながら、クーにも聞き取れないような小さな声で、ショボンは小さく呟く。

僕も自分勝手なだけだ、と。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/07(日) 00:58:51.69 ID:pOF0GGGc0

<第4話 自分勝手> END



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