( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

4: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:39:00.60 ID:BnDT+RQJ0
  
第三話 『牙猫』

本日は祝日で学校は休みだ。
ブーンの休日の過ごし方は、のんびりゴロゴロするか、外へ出るかの二択である。
今回は外出だ。

彼女が、そう決めたのだ。

(;^ω^)「ってか、なんでアンタここにいるの……」

ベッドの上で、目を擦りながら目の前の女性を見る。

川 ゚ -゚)「ほら、起きるんだ。
     今日は色々とやることがあるぞ」



5: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:40:46.17 ID:BnDT+RQJ0
  
昨日。
頭が混乱したブーンは、埒が明かないので、とりあえず家に帰ることとなった。

彼女の家を聞いてみたが無いと言うので、自分の家に招待することも考えたが
よくよく考えれば自分をこんな状態に巻き込んだのは彼女である。
ブーンはそこまでお人好しではなかった。
とりあえず保健室に彼女を放って帰り、一日の疲れを取るためにベッドへ。

起きたら、これだ。
何故か彼女が自分の家の、しかもベッドの前で仁王立ちしている。

(;^ω^)「ふ、不法侵入だお!」

川 ゚ -゚)「君の母親の許可はとってある」

(;^ω^)「えぇ!?」

見れば、ドアの隙間から母がニヤニヤしながらこちらを見てみる。

J( 'ー`)し「ブーンったら……いつの間に彼女なんて作って」

(;^ω^)「ち、ち、違うお!?」

母は俊敏な動作で、シュバッと消えていった。



7: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:42:49.00 ID:BnDT+RQJ0
  
(;^ω^)「ア、アンタ、一体かーちゃんにどういう説明したんだお!?」

川 ゚ -゚)「何、簡単だ。
     『貴女の息子を護るために、側にいさせてほしい』と頼んだのだ」

(;^ω^)「なんか僕が情けない存在的な展開になってるお!?
      ってか、かーちゃん単純すぎだお!?」

川 ゚ -゚)「何、気にするな。
     さぁ、早く起きて出かけよう」

(;^ω^)「ど、どこへかお?」

川 ゚ -゚)「出来れば人気の無い場所が望ましい」

(;^ω^)「えー!?
      ちょっとwktk……じゃなくて、えー!?」

ブーンは引っ張られるように、彼女と共に家を引きずり出された。



8: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:45:11.06 ID:BnDT+RQJ0
  
休日の学校。
生徒はおろか、教師さえいない空間だ。

静かな学校の教室。
その中心付近の椅子に、二人の男女が座っていた。

(;^ω^)「眠いお……まだ7時だお……ってか、勝手に学校に侵入してるお……」

川 ゚ -゚)「早起きは三文の得だ。
     ちなみに今のお金に換算すると6円くらいらしい」

(;^ω^)「逆にめっちゃ損した気分だお……」

川 ゚ -゚)「とりあえず、何から話したらいいのか?」

( ^ω^)「えーっと……そういえば、君の名前は?」

川 ゚ -゚)「そうだ、言い忘れていたな。
     私の名は『クー』、君の名は?」

( ^ω^)「内藤ホライゾンだお! あだ名はブー――」

川 ゚ -゚)「内藤か」

(;^ω^)「何で最後まで聞かないのかお……」



10: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:47:27.84 ID:BnDT+RQJ0
  
川 ゚ -゚)「で、何から話そうか?」

( ^ω^)「これのことが知りたいお」

ポケットから白い指輪を取り出す。
硬質な音を立て、それは机の上を転がった。

川 ゚ -゚)「うむ、それを説明する前に……少し歴史を語ろうか」

( ^ω^)「歴史は嫌いだお」

彼女の手が刀へとのびる。

(;^ω^)「じょ、冗談だお……」

川 ゚ -゚)「事の始まりは数年前だ」

(;^ω^)(勝手に語りだしたお……)

川 ゚ -゚)「『クルト事件』というのを知っているか?」

( ^ω^)「……あ、知ってるお」



11: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:50:02.59 ID:BnDT+RQJ0
  
その名に、ブーンは覚えがあった。
数年前にクルトという博士が、道徳に反する実験・研究をしていたという事実が発覚し
逮捕される、という事件だったはずだ。
ちなみに逮捕直前に、クルト博士は拳銃自殺で死んでいる。

( ^ω^)「その事件がどうしたんだお?」

川 ゚ -゚)「彼の実験内容は知っているか?」

( ^ω^)「それは知らないお」

当時見たニュースでは、その研究内容は明かされていなかった。

川 ゚ -゚)「合成、だよ」

( ^ω^)「合成……?」

川 ゚ -゚)「生物と生物の合成。
     クルト博士の研究目的は、地上最強の生物を作ることだった」



12: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:52:30.19 ID:BnDT+RQJ0
  
(;^ω^)「ち、地上最強生物……?」

まるで漫画のような話に、ブーンは疑問を抱かずにはいられなかった。

(:^ω^)「な、なんで最強生物なんてものを作ろうだなんて思ったんだお?」

川 ゚ -゚)「彼は幼少の頃から、友達と言い合っていたそうだ。
     『どの生物が、一番強いのか』と」

(;^ω^)「…………」

ブーンにも憶えはある。
どのゲームのキャラが一番強いだとか、この漫画のどのキャラが強いだとか。
そういう言い合いを子供の頃にしたことがあった。

川 ゚ -゚)「彼は大人になっても、その疑問を忘れることは無かった。
     誰に問うても、答えは人それぞれで、明確な答えは出ることがなかった」

(;^ω^)「まさか……」

川 ゚ -゚)「だから、己の手で作ることにしたんだ。
     いつか誰もが口を揃えて出す、最強の生物を」



15: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:54:26.55 ID:BnDT+RQJ0
  
(;^ω^)「そ、それでどうなったんだお……?」

川 ゚ -゚)「彼は実験を繰り返した。
     動物の魅力的な部分を摘出し、他の生物と合成する。
     まさに悪魔のような実験だ」

だが、と彼女は付け足した。

川 ゚ -゚)「それは完成することはなかった。
     たとえばライオンに翼を付けたりしても、狩りを上手く成功させることは出来ない。
     たとえばゴリラに強靭な足を付けても、ただバランスが悪い化け物でしかない」

一息。

川 ゚ -゚)「所詮、良いところを合わせて作っても
     お互いの良いところを潰し合うような結果しか得られなかったんだ」

(;^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「だが、彼は一つの結論に達していた。
     合成など必要しない状態での、今現在存在する生物で最強なもの。
     彼は、それに気付いてしまったんだ」



18: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:57:11.07 ID:BnDT+RQJ0
  
(;^ω^)「そ、それは……?」

川 ゚ -゚)「人間だよ」

(;^ω^)「……!」

川 ゚ -゚)「他の生物を凌駕する知能。
     物を掴み、持ち上げ、形を表現し、握れば拳という武器にもなる腕。
     歩き、走り、泳ぎ、更には跳躍することの出来る足。
     物を見、匂いを嗅ぎ、音を聞き、声で意思を伝え、味を判断できる各能力。
     そして複雑な関節機構、バランス調整力、驚異的な再生力――」

彼女は無表情に言葉を並べていく。

川 ゚ -゚)「ただ、人間には致命的な欠点があった」

(;^ω^)「それは……?」

川 ゚ -゚)「獲物を狩る攻撃力。
     そして、他の生物より劣る体力と運動神経」

人間には牙が無く、鋭利な爪も無く、強靭な顎や筋肉が無い。
そして高所を駆け上る筋力や、延々と運動し続ける体力が無い。



19: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 21:59:37.54 ID:BnDT+RQJ0
  
川 ゚ -゚)「彼の研究は、合成よりも人間の強化に移った」

(;^ω^)「まさか、この指輪が……!?」

川 ゚ -゚)「そう、人間に攻撃力を与えるための、クルト博士の研究成果だ」

ブーンは改めて指輪を見る。
白色をした綺麗な指輪に、そんな怨念じみた意思が篭っているとは思えなかった。

川 ゚ -゚)「クルト博士の作った武器……通称『ウェポン』と呼ぶのだが、その数は14。
     君の持つその指輪は『8th−W(ウェポン)・クレティウス』と呼ばれるものだ」

( ^ω^)「クレティウス……」

川 ゚ -゚)「クルト博士は、人工知能の研究もしていた。
     各武器には、彼が自力で作った擬似精神という高度な人工知能が宿っている。
     会話をしたりすることは出来ないが、意思表現くらいは出来るらしい」

( ^ω^)「…………」

こんなちっぽけな指輪に、意思が宿っているとは思えないが……。



20: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:02:14.47 ID:BnDT+RQJ0
  
(;^ω^)「昨日、君が『指輪が望む心を君が偶然持っていた』っていうのは……」

川 ゚ -゚)「ウェポンは、誰でも扱えるものじゃない。
     その擬似精神が望む心を持つ者を主人とし、そのために力を具現化する。
     主人以外の人間が持っていても、ただの装飾品に過ぎない」

( ^ω^)「なんでこんなものを君が持っていたんだお……?」

川 ゚ -゚)「この14のウェポンを悪用しようとする者達がいたから」

( ^ω^)「もしかして、昨日の……?」

川 ゚ -゚)「ジョルジュもその組織の一員だ。
     ちなみに『9th−W・ユストーン』の使い手でもある」

( ^ω^)「君は、もしかしてその組織にいたのかお?」

川 ゚ -゚)「私は――」

「失敗作、だよな」

(;^ω^)「!?」



22: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:05:48.24 ID:BnDT+RQJ0
  
突然、二つの声の他に、もう一つの声が追加された。
慌てて背後を振り返る。
教室の後方の扉に、男女が立っていた。

( ,,゚Д゚)「……その少年が適合者か」

川 ゚ -゚)「お前は……」

( ,,゚Д゚)「お前に用はない。
     俺はそこの少年に話がある」

鋭い視線はブーンに注がれている。

(;^ω^)「ぼ、僕かお?」

( ,,゚Д゚)「その指輪を渡せ……話はそれだけだ」

(;^ω^)「え……」

( ,,゚Д゚)「どっちだ、答えろ」

うろたえるブーンの前に、席を立ったクーが立ちはだかった。



23: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:09:00.46 ID:BnDT+RQJ0
  
川 ゚ -゚)「お前は何者だ」

( ,,゚Д゚)「関係ない」

川 ゚ -゚)「敵と認識するぞ」

( ,,゚Д゚)「俺はどちらでも構わん。
     結果的に指輪が手に入れば、それでいい」

(*゚ー゚)「あの、ギコ君めちゃくちゃ強いから……渡した方が、いいよ?」

男の隣にいる女が心配するように声を発する。

川 ゚ -゚)「……内藤、逃げろ」

(;^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)「こいつらは私が引き受ける。
     君は指輪を持って逃げるんだ」

(;^ω^)「で、でも……」

川 ゚ -゚)「ここでむざむざ奪われることは許されない。
     それに、護ると約束したからな」



24: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:12:10.51 ID:BnDT+RQJ0
  
クーが刀を抜き、その様子を見た男の隣の女性が

(*゚ー゚)「度胸あるね……」

( ,,゚Д゚)「しぃ、下がっていろ。 ここからは俺の仕事だ」

(*゚ー゚)「うん、任せる」

女はあっさりと引き下がる。

( ,,゚Д゚)「廊下に出ろ……流石にここで暴れたら、跡が残りやすい」

川 ゚ -゚)「いいだろう」

二人は廊下に出る。
その様子をブーンは立ちすくみながら見続けた。
そんな彼に、しぃは話しかける。

(*゚ー゚)「貴方は逃げないの? あの女の人、すぐに死んじゃうよ?」

(;^ω^)「そんな……」

(*゚ー゚)「戦う度胸も逃げる勇気もないなんて……彼女に失礼なんじゃないかな?」

(;^ω^)「…………」



26: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:15:11.96 ID:BnDT+RQJ0
  
川 ゚ -゚)「…………」

( ,,゚Д゚)「…………」

二人は決して狭くはない廊下で対峙していた。
クーは日本刀を構えている。
対するギコは素手だ。
その両手は茶色のコートのポケットに収められている。

現在、既に一撃ぶつかり合った後だ。

川 ゚ -゚)(初撃の剣撃を防ぐとは……今の指輪はもしや……)

( ,,゚Д゚)「この指輪の正体に気付いたようだな」

ギコが右手をポケットから出す。
その中指には、青い指輪。

( ,,゚Д゚)「ウェポンは通常の武器では壊せない。
     使い方次第では、指輪で防御も可能だ」

川 ゚ -゚)「防御だけでは私を倒すことは出来ない」

( ,,゚Д゚)「力の差を見せようとしただけなんだがな……。
     直に見ないと解らないか」



28: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:17:39.01 ID:BnDT+RQJ0
  
ギコが右手を握る。
発光。
数瞬、男の姿が青い光によって見えなくなる。

川 ゚ -゚)「……やはりウェポンか」

発光が途切れる。

( ,,゚Д゚)「…………」

ギコの右手には、先ほどまでは無かった物が握られていた。
青い剣で、その腹部分に『1st』と刻まれている。
刀身は身の丈ほどあり、そして太い。
俗に言う巨剣である。

( ,,゚Д゚)「『1st−W・グラニード』……お前の刀とは比べ物にならん代物だ」

片手で軽々と持ち上げ、肩に乗せる。

( ,,゚Д゚)「それでもやるか?
     出来れば人の命を奪うようなことはしたくはない」



30: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:20:36.78 ID:BnDT+RQJ0
  
川 ゚ -゚)「私を人だ、と?」

その言葉に、ギコは軽く目を見開く。
そしてすぐに口に歪んだ笑みを浮かべた。

( ,,゚Д゚)「そう、そうだったな……お前は失敗作だったな」

川 ゚ -゚)「遠慮はいらん」

( ,,゚Д゚)「とは言え、お前は人の形をしている。
     殺してしまうのは俺の良心が痛むんでな」

ギコは青い巨剣を降ろす。
地に着いた剣は、しかし音を立てなかった。

( ,,゚Д゚)「多少の加減はさせてもらおうか」

川 ゚ -゚)「どちらでも構わん……来い」

静寂が場を支配する。
これから起こる戦いを期待するかのような沈黙。

数秒。
動いたのは同時だった。



32: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:22:58.57 ID:BnDT+RQJ0
  
ブーンは走っていた。
短く息を吐きながら、校門を目指していた。

怖い。
怖い。
怖い。

あの男が、女が、クーさえも怖かった。
戦いを日常とする者達の、異常な威圧感。
それがブーンには耐えられなかった。

走る。
駆ける。
まるで何かから逃げるように。

その目からは涙が溢れていた。

男から感じて取った恐怖感か。
クーを見捨ててしまった罪悪感か。
そんな自分を許せないという自責感か。

( ;ω;)「う、うぅ……!!」



34: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:25:19.25 ID:BnDT+RQJ0
  
今の自分を助けてくれる人などいない。
今の自分を慰めてくれる人などいない。
今の自分を支えてくれる人などいない。

( ;ω;)「あうっ!」

石につまづき、転ぶ。
その拍子に、ポケットから指輪が飛び出した。
白く輝きながら転がる指輪。
ブーンは、それが憎かった。
こんな指輪さえなければ、自分は今このような思いをしなくて済むのだろうに。

その時だ。

校舎の方から、轟音が聞こえた。
ガラスを叩き割る音と、何か苦悶のような声。
明らかにクーの声だった。

( ;ω;)「クーさん……!」

彼女は自分のために、盾になって苦しんでいる。
こんなにも情けない自分のために。
こんなにも臆病な自分のために。
こんなにも……。



35: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:27:50.48 ID:BnDT+RQJ0
  
( ;ω;)「う……うぅ……!!」

拳を握り締め、嗚咽する。

彼女は昨日、自分に言ってくれた。
「君を護る」と。
正直、嬉しかった。

しかし同時に疑問を持った。
何故、自分などを護るなどと宣言したのか。
何か裏があるのではないかと。

なおも戦いの音はブーンの耳に響く。
剣撃の音。
風を切る音。
そして……彼女の苦しみの声。

ふと、前を向く。
白い指輪が落ちている。
その指輪が、自分に問いかけているように光った。

―――さぁ、どうする?



36: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:30:16.95 ID:BnDT+RQJ0
  
クーの目の前を、凶悪な威圧感と共に巨大な青剣がかすっていく。
彼女は後退していた。

川;゚ -゚)「くっ……!」

強い。
流石はウェポンといったところか。
自分の力量と武器などでは、まともな戦闘にすらならなかった。

( ,,゚Д゚)「どうした、失敗作。
     たとえ失敗だろうが、それなりの力は持っているんじゃないのか?」

巨剣の重量を巧みに操りながら、ギコが迫ってくる。
一撃一撃が致命傷になりかねない攻撃力だ。

川;゚ -゚)「ッ……!」

向かってくる威圧感を弾くように、前に足を進める。
手に持つ刀を振るう。
が、それはあっさりと防がれた。

( ,,゚Д゚)「単調な攻撃だな」



40: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:32:32.99 ID:BnDT+RQJ0
  
ギコが、足を一歩引く。

( ,,゚Д゚)「攻撃ってのはな――」

全身から殺気が溢れ出したのを感じる。
クーは、本能的に身を後ろに投げ出した。

( ,,゚Д゚)「こうやるんだよ……ッ!!」

轟、と音を立てて迫る巨剣。
刀で防ごうとするが、一瞬たりとも止まることなく弾かれる。
クーのバランスが崩れた。

( ,,゚Д゚)「ッつぁ!!」

振り抜いた巨剣を、更に回転させるように振る。
遠心力を用いた連撃だ。

川;゚ -゚)「……っ!」

もはや刀での防御は意味を為さない。
クーは力の限りを込めて、地を蹴り後退する。
が、ギコはそれを逃さない。



41: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:34:46.98 ID:BnDT+RQJ0
  
遠心力を利用した斬撃は、もはや断頭台に等しい。
縦に回転するそれは、廊下の天井と床を削りながらクーに迫る。

川;゚ -゚)「!?」

背中に何かがぶつかる。
壁だ。
いつの間にか廊下の端にまで達してしまったらしい。

しまった、とクーは気付いた。
あの男が廊下に誘い出したのは、教室が荒れるのを避けるためではない。
自分の武器にとって有利な廊下での戦いを望んだからだ。

右に見えるのは階段。
前に見えるのは死の回転刃。

クーは迷わず右を目指して走り出す。
階段を下り、踊り場を走り、更にまた階段を駆け下りる。



42: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:37:33.97 ID:BnDT+RQJ0
  
「何処へ逃げる?」

声と共に轟音。
辿り着いた1階の天井から、そのコンクリートを突き破りギコが降り立ってきた。

川;゚ -゚)「なっ……!?」

驚愕に目を見開く。

( ,,゚Д゚)「逃げるな、戦え」

天井からの破片や埃をかぶりながら、ギコは巨剣を肩に乗せる。

川;゚ -゚)「ただの巨剣で、そこまでの威力は出せないはずだ……。
      それがウェポンの能力……!?」

( ,,゚Д゚)「そこまで考え切れれば上出来だ。
     だが、後は知ることは無いだろう」

ギコが接近し、その青い巨剣が横薙ぎに迫ってくる。
まさに殺気の塊。
焦ったクーは咄嗟に刀を縦に構えた。



43: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:40:07.74 ID:BnDT+RQJ0
  
ガンッという硬質な音と、そして脳を揺さぶる衝撃。
クーはあっと言う間に、巨剣と共に壁に叩きつけられた。

川;゚ -゚)「がっ……あぁ……!」

( ,,゚Д゚)「言っただろう。
     お前の刀とは比べ物にならん、とな」

ギリギリと巨剣を押し付けながら淡々と語るギコ。
対するクーは、その身を圧迫する力に圧倒される。

川;゚ -゚)(な、なんだ、この威力は……!?
      腕の力だけでは、こんな力など……)

おそらく、ウェポンの能力だろう。
だが単に攻撃力上昇ではないはずだ。
クーはそう判断する。
それで片付けるには、妙な点があるのだ。

だが、今はそんなことを考えている場合ではない。
このままでは――



45: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:42:40.43 ID:BnDT+RQJ0
  
川;゚ -゚)「くそッ……!!」

全身の力を振り絞り、巨剣を押し返そうとする。
だが動かない。

( ,,゚Д゚)「無駄だ」

ギコが両手に力を篭める。
メリメリという音を立て、クーの背後のコンクリート壁にヒビが入っていく。

川;゚ -゚)「ッ……ああぁ……ッ!?」

己の刀が、腕が、圧力が身体に食い込む。
口からは処理しきれない涎が流れ、目には自然と涙が浮かぶ。

( ,,゚Д゚)「…………」

ギコはその力を止めることなく巨剣を押し付ける。
メリという音と同時に、ゴキリという嫌な音が混じり始めた。

川;゚ -゚)「あぁぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

壁のヒビが広がり、クーの叫び声も大きくなる。



46: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:45:19.83 ID:BnDT+RQJ0
  
( ,,゚Д゚)「よく耐えたな……終わりだ」

ふと、巨剣から力が抜ける。
思わず膝を折るクー。
ハ、ともヒ、とも聞こえる短い呼吸をしながら、刀を支えに倒れぬよう身体を支える。

( ,,゚Д゚)「そう、これで、終わりだ」

その言葉に、クーは顔を上げる。
ギコが、その青い巨剣を振りかぶっていた。

川;゚ -゚)「なっ……!?」

( ,,゚Д゚)「じゃあな」

バットのように振る。
襲い掛かるは刃ではない。
刀身の腹の部分だ、
高速とも言える速度で、巨剣はクーの顔から胸元を捉えた。

轟音。
割れやすくなった壁をぶち破り、クーはその奥にある教室へ吹き飛んだ。
机と椅子を派手に倒しながら、教室の奥へ身を飛ばし、ロッカーにぶつかる。



48: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:48:36.28 ID:BnDT+RQJ0
  
川;- -)「ぁ……ぅ……」

小さい呻き声を漏らしながら、しかしその身は動くことはなかった。
パラパラと、破片が落ちる音。
振り終わったギコは巨剣を指輪に戻す。

( ,,゚Д゚)「失敗作は失敗作、か……」

呟き、背を向ける。
その目線の先は昇降口だ。
向かう先は逃げたブーンの元。
奴から『8th』を回収しなければ、今回出てきた意味が無い。

歩き出す。
ふと、その昇降口に人影があるのが見えた。
一瞬、しぃだと判断。

( ,,゚Д゚)「?」

違う。
男だ。

( ^ω^)「…………」



49: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:51:51.41 ID:BnDT+RQJ0
  
先ほど逃げたはずのブーンだった。
彼は肩を上下させ、荒い息を吐いている。

( ,,゚Д゚)「どうした……何しにここに戻ってきた?」

( ^ω^)「今のは、アンタがやったのかお……?」

無視し、ブーンは問う。

( ,,゚Д゚)「あの女のことか……見ていただろう?
     俺がやった。」

( ^ω^)「何故だお……?」

( ,,゚Д゚)「お前が素直に指輪を渡さなかったからだ。
     だが安心しろ、殺してはいない」

( ^ω^)「そういう問題じゃないお……」

( ,,゚Д゚)「じゃあ、どういう問題だ?」

(#^ω^)「そういう問題なんかじゃないお……!!」



52: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:54:20.45 ID:BnDT+RQJ0
  
稚拙な殺気。
荒削りなそれは、ギコの汗一つ流すことは出来なかった。
だが――

( ,,゚Д゚)「……あの女が俺にやられたから、どうする気だ?」

(#^ω^)「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

指輪を取り出し、しっかりと指にはめる。
瞬間、発光。

( ,,゚Д゚)「馬鹿が……」

光が止む。
そこには、先ほどまでと同じ格好のブーンがおり、その両手には白いグローブ。

(#^ω^)「…………」

( ,,゚Д゚)「格闘戦仕様のウェポン、か。
     さて……お前はどうだろう? 失敗作のようにすぐに倒れるのだろうか?」

ギコもウェポンを解放する。

青い巨剣と白いグローブ。
『1st』と『8th』が対峙する。



54: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:56:33.33 ID:BnDT+RQJ0
  
( ,,゚Д゚)「始める前に言っておく」

(#^ω^)「……何だお」

( ,,゚Д゚)「死んでも恨むなよ」

瞬間、ギコが動いた。
巨剣を肩に担いだまま、ブーンの元へ突進する。

(#^ω^)「……!」

ブーンは動かない。
右手を眼前に、左手を腰だめに構えたまま、ギコを待ち受ける。

( ,,゚Д゚)「ッ!」

ブーンから見て、左上から巨剣が迫る。
高速、そして高威力。
武器としては性質の悪いそれが、ブーンに迫った。



55: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 22:59:02.86 ID:BnDT+RQJ0
  
(#^ω^)「ふっ!」

重心を左に。
正中線から身をズラし、迫る巨剣を回避する。
己の右耳、そして右肩を、巨剣が鋭く通過していく。

それを見届けたブーンは、身を前に投げ出した。
握った右拳で、隙だらけのギコの顔面を殴り飛ばし――

(#^ω^)「!?」

が、受け止められる。
ギコが咄嗟に離した左手によって、ブーンの攻撃は顔面に届くことは無かった。

( ,,゚Д゚)「格闘技経験者か……面白い」

ギリッとブーンの手を握る。
一瞬うろたえたブーンだが、気を取り直し距離をとるために地を蹴った。
それを逃がすギコではない。
腰だめに構えた巨剣を持ち、後退するブーンを追撃する。

(#^ω^)「!?」

( ,,゚Д゚)「格闘経験者に接近戦は禁物、故に接近はしてこない……。
     勝手にそう考えていたお前のミスだ」



56: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:01:30.58 ID:BnDT+RQJ0
  
今度は下方から剣が迫る。
つい慌てたブーンは、左手で右下方から迫る刃を押さえてしまう。
衝撃。
が、痛みはあまりない。

(;^ω^)「あ、あれ?」

衝撃こそあったものの、自分の手が裂けるようなことはなかった。

( ,,゚Д゚)「ウェポン同士の接触は、ほぼダメージにならない。
     特に接近戦用のウェポンを使う身なら、それくらい憶えておけ」

(;^ω^)「……!?」

一瞬、ブーンは呆けてしまう。
何故、彼は敵に塩を送るような情報を伝えてきたのか。
が、考える間もなくギコの猛撃が始まる。



57: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:03:51.93 ID:BnDT+RQJ0
  
( ,,゚Д゚)「これは、どうかな?」

足を引き、巨剣を水平に構える。
刺突。
直感したブーンは、重心をズラした。
轟、と風を貫く音と共に巨剣がブーンの顔をかする。
隙が出来た。
判断は一瞬。
ブーンは先ほどのように身を前に出し、今度は腹目掛けて蹴りを放った。

( ,,゚Д゚)「馬鹿の一つ覚えだな」

またもや防がれる。
しかし――

(#^ω^)「これでいいんだお!」

グン、と、ギコの身が背後に押された。

(;,,゚Д゚)「!?」

自分は確かに蹴りを受け止めたはずだ。
何故だ?
思うと同時に、その身は弾かれ吹き飛ばされた。
バク転するように空中で身を回し、着地。
巨剣を肩に担ぎ、今の現象を冷静に分析する。



60: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:06:39.75 ID:BnDT+RQJ0
  
( ^ω^)(成功したお……!)

対するブーンは、自分の思惑通りに事が運んだことに内心喜んでいた。

少林寺拳法の蹴りとは、蹴り上げることではない。
言うなれば、それは蹴り押すという方法だ。

膝から先をを畳んだ状態で膝を上げる。
そして膝から先を上げ蹴り込むのだ。

相手に当たった状態では、まだ足は完全に伸び切ってはいない。
そのまま全体重をかけて、畳まれていた足を完全に伸ばし、相手を蹴り押すのだ。

そこに相手の頑丈さなどは関係無い。
全体重と足の力を篭められたそれは、圧倒的な体重差が無い限りは、ほぼ確実に対象を吹き飛ばす。

反撃を食らわないように考えられた、防御を兼ね備えた蹴りが少林寺拳法の基本なのだ。

( ,,゚Д゚)(妙な足技を使う……慣れていなければ厄介だな)



61: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:09:31.96 ID:BnDT+RQJ0
  
( ^ω^)「行くお!」

調子に乗ったブーンは、ギコの元へ駆け出す。
拳を握っていないところを見れば、次もまた蹴りを繰り出すつもりなのだろう。

( ,,゚Д゚)「技は妙だが……オツムはまだまだのようだな」

思惑を読み取り、防御体勢に入るギコ。
ブーンの右足に力が入った。
来る。
右膝が上がり、迫ってくる。

( ,,゚Д゚)(馬鹿が……!)

巨剣を地面に突き立てる。
この巨剣に蹴りを入れれば、おそらくブーンの足はただでは済まないだろう。
ウェポンの攻撃が防げるのはウェポンだけだ。
拳にしかウェポンを装着していないブーンの足は、防御力0のような状態。

しかし、ギコは気付いていなかった。
膝を上げた右足とは逆の左足。
その足先が外側を、踵が内側を向いていることに。



63: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:11:49.67 ID:BnDT+RQJ0
  
( ^ω^)「ッ!」

高速でブーンの身が回る。

(;,,゚Д゚)「!?」

膝から先が、一瞬で地面と並行になったのだ。

(;,,゚Д゚)(これは……!)

地と平行となったブーンの足は、ギコの真横から鋭く迫ってくる。
想定外の出来事に、ギコは対処し切れなかった。

(;,,゚Д゚)「つぁッ……!?」

脇腹に衝撃。
モロに喰らったギコは、吹き飛ぶように身を宙へ飛ばす。
バランスを崩しながらも着地。
砂煙の中、またもや妙な足技を喰らったギコは歯噛みする。

( ,,゚Д゚)(面倒な相手だ……)

ウェポンで動きが強化されているとはいえ、その速度と正確さは素人のそれとは段違いだ。
そしてあのフェイントを含んだ攻撃。
初めて戦闘するにあたって、あれほど面倒な相手はいないだろう。



66: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:14:32.43 ID:BnDT+RQJ0
  
( ^ω^)「なんか結構イケそうな予感がするお……」

相変わらずすぐに調子に乗るブーン。

先ほどの蹴りの正体は、回し蹴りだ。
通常の蹴りとは違い、踏み込んだ足の先を外側に向ける。
これはやってみればすぐに解るが、そのまま蹴ると尻の右部分が上がり、蹴りが地面と平行になるのだ。

つまり蹴る直前まで、通常の蹴りと回し蹴りと判別がつかない。

通常の蹴りの後にやると、実は意外と効果抜群で、ほぼ確実に一撃を入れられる。
ブーンはそれを利用したのだ。
まさかあのギコ相手にもそれが通用するとは思わなかったが。

( ^ω^)(きっと身体能力が上がっているからだお……!)

イケそうだ、と思う。
何とかなりそうだ、とも思う。
この8th−W・クレティウスはブーンにとってかなり相性が良いらしい。



68: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:16:57.07 ID:BnDT+RQJ0
  
先ほどから沈黙を保つギコを正面に見据え、ブーンは構えをとった。
今度は何をしてやろうか。
ブーンは少しずつ、この戦闘が楽しくなっていく気がしていた。
先ほどまでの怒りは既にほぼ失せている。

無論、それは戦闘狂への第一歩であるのだが、本人は気付かない。

しかし――

ふと、前方のギコがウェポンを消してしまった。
巨剣から指輪に戻り、それはギコの中指に収まる。

(;^ω^)「……どうしたんだお?」

( ,,゚Д゚)「やめだ」

ギコはコートについた埃をはたく。

(#^ω^)「まだ決着がついてないお!
       それに、ここでウェポンを奪っておかないと、また襲ってくるんだお!」

( ,,゚Д゚)「襲わんよ。
     お前は充分に強いことが解ったからな」

(;^ω^)「……どういうことだお?」



70: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:21:07.86 ID:BnDT+RQJ0
  
( ,,゚Д゚)「お前は自分でウェポンを護れるほどの力を持っている。
     だから俺が預かる必要はないってことだ」

(;^ω^)「アンタ……あのジョルジュとかいう奴の仲間じゃないお?」

( ,,゚Д゚)「なんだ、勘違いしていたのか」

呆れるように吐息する。

( ,,゚Д゚)「アイツらは、俺にとっても敵だ」

(;^ω^)「え……!?」

( ,,゚Д゚)「まさか何も知らずに俺と戦ったのか……って、そういえば説明していなかったな」

(;^ω^)「ど、どういうことか説明して欲しいお」

その時、校舎の方から女性の声が響く。

(*゚ー゚)「ギコ君! もう終わった?」

( ,,゚Д゚)「あぁ、終わったぞ」

(*゚ー゚)「あれ? まだ彼、ほとんど無傷だよ?」

( ,,゚Д゚)「殺す必要はない。 アイツはやっていけるさ」



71: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:23:37.77 ID:BnDT+RQJ0
  
ギコは背を向け歩き出す。
それにしぃが追従するように駈け寄っていく。

(;^ω^)「ま、待つお! まだ何も聞いてないお!」

その声に振り向いたギコは、口元に笑みを浮かべ

( ,,゚Д゚)「その指輪は奪われるな、自力で護れ。 俺から言えるのはそれだけだ。
     あとはあの失敗作に聞くんだな」

そして

( ,,゚Д゚)「俺の名はギコ。
     『牙猫』といったら、おそらく俺のことだろう。
     この異名に不満はありまくるけどな」

あと、と彼は付け足す。

( ,,゚Д゚)「失敗作にも伝えておけ、『試して悪かった』と」

と言い残し、歩いていった。
ブーンはその後姿を呆けて見ていたが

(;^ω^)「あ! クーさん!」

と、慌てて校舎に走っていくのだった。



72: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:26:15.89 ID:BnDT+RQJ0
  
彼女は、未だボロボロになった教室の奥に倒れていた。
それを見つけたブーンが慌てて駈け寄る。

(;^ω^)「クーさん!!」

抱き起こす。
息はあるようだ。
クーの目が薄く開かれる。

川;゚ -゚)「無事、だったか……」

(;^ω^)「ギコってヤツは僕がやっつけたお!
       だからもう安心していいお!」

それを聞いたクーは、安心したように吐息する。
だが、その表情は少し悲しそうだ。

川;゚ -゚)「すまない、な……君を護ると約束したのに……」

( ^ω^)「そんなのいいお!
      二人とも無事だったんだから、万事OKだお!」



74: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:28:37.33 ID:BnDT+RQJ0
  
クーは口元に、微かに笑みを浮かべる。

川:゚ー゚)「君は、優しいな……」

( ^ω^)「普通だお!」

出来るだけ元気なように見せるブーン。
だが、その実は体力が限界を迎えつつあった。

( ^ω^)「早く病院に行くお!
      こんな怪我、すぐに治っちゃうお!」

川;゚ -゚)「いや……病院は必要ない。
     保健室のベッドか何かで……休ませてくれ……」

(;^ω^)「そ、そんな……」

川;゚ -゚)「理由はいつか話す……。
     だから、私の言う通りに……してくれないか」

(;^ω^)「わ、解ったお……」

クーを背負い、学校を後にするブーン。
保健室では心配だったので、自宅の布団に寝せることにした。



75: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:31:17.16 ID:BnDT+RQJ0
  
夜。
寂れたバーの扉が開かれる。
暗がりの奥で、若い主が客にお決まりの台詞をかける。

(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ……って、君達か」

( ,,゚Д゚)「昨日は世話になった」

(*゚ー゚)「どうも〜」

二人は昨日と同じ椅子に座り、同じ注文をする。
若い主は昨日と同じ動作を取りながら

(´・ω・`)「結果はどうなったんだい?」

( ,,゚Д゚)「俺が回収するまでも無かった。
     荒削りだが、アイツは努力すれば強くなるだろう。
     それに、良いパートナーが側にいるしな」

(´・ω・`)「そう、それは良かった」

二人に酒を出す。
片方はしばらくそれを見つめ
片方はすぐさまそれを飲み始める。



77: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:33:57.22 ID:BnDT+RQJ0
  
( ,,゚Д゚)「殺すな、と言われたが……あの少年とは知り合いか?」

(´・ω・`)「うん……まぁね」

一杯目を飲み終えたしぃが、口を開く。

(*゚ー゚)「へぇ、そうなんだ……どんな関係?」

( ,,゚Д゚)「しぃ、あまりそういう事に突っ込み過ぎるな」

(´・ω・`)「いや、少しくらいなら語るよ。
       彼を生かしてくれた恩人だからね」

ギコは酒を一口飲んで黙った。
代わりに、とでもいうように隣のしぃが問う。

(*゚ー゚)「その少年とは……良い関係だったの?」

(´・ω・`)「どうだろうね。
       彼のせいでこの店の主になったようなものだし
       彼のお陰でこの店の主になったようなものだよ」

( ,,゚Д゚)「何やら深い因縁がありそうだな」



79: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:36:11.28 ID:BnDT+RQJ0
  
(´・ω・`)「そんな大層なものじゃないよ。
       ただの子供の純真さが生んだ悲劇、というには稚拙なものだけど」

(*゚ー゚)「子供の純真さ……?
     貴方、若く見えるけど歳は?」

(´・ω・`)「18」

(;,,゚Д゚)「おいおい……昨日、思い切り酒を飲んでたな、アンタ」

(;*゚ー゚)「しかも私達より年下……」

(´・ω・`)「気にしないでよ。
      一応、僕は大人だよ」

少し悲しそうに、若い主は背を向けた。
もう語る気は無いらしい。
話す気がないなら、こちらからも無理に問い出すことは無い。
ギコは静かに酒を口に入れた。



82: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:39:01.13 ID:BnDT+RQJ0
  
ドクオが見たものは、奇妙な風景だった。
買い物帰りに彼は歩いていた先で、ブーンを見つける。

('A`)「あれ、ブーンか?」

が、その背には黒いコートの女性が担がれていた。
ヨタヨタとふらつきながらも、彼は一生懸命歩いていく。

('A`)「なんだ、ありゃ……?」

ある考えへ行き着いた。

(;'A`)「まさか……彼女か!?」

拳を握り、怒りに悶える。

(;'A`)「ちくしょぉぉぉ! くやしぃぃぃぃ!!」

道のど真ん中で叫ぶ彼の姿は、もはや滑稽としか言い様がない。
だから女が近寄ってこないのだ、とツッコむ者は残念ながら彼の側にはいなかった。
普通にしていれば、ちょっと不良風の格好に、陸上部のエースとモテ要素はあるだろうに。



84: ◆BYUt189CYA :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 23:41:11.71 ID:BnDT+RQJ0
  
ふと、ドクオは自分の手に異変が発生したのに気付く。

('A`)「あ……?」

彼の左手にはめてある茶色の指輪。
それが、僅かに振動しているのだ。

('A`)「なんじゃこりゃ……気味悪ぃ」

しばらくすると、その振動は無くなった。

('A`)「意味ワカンネ」

そう呟きながら、ドクオは帰り道を急ぐのだった。



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