( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです

11: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:11:24.18 ID:tleOweXb0
  
第二十話 『白銀騎士』

白い巨塔。
その根元に、幾つかの人影が見える。
それらは動いていた。

高速で、鋭く。

片方は白銀だ。
白銀の甲冑に身を包み、その表情は鉄仮面によって伺うことは出来ない。
両手に持つのはやはり白銀。
剣と槍が風を切り、大気を貫き、そして前方の獲物を喰わんとする勢いで迫る。

対するは四人の戦士。
モララー、フサギコ、ドクオ、弟者の四名だ。
彼らは騎士を囲むように移動しつつ、攻撃を仕掛けていく。
しかし――

(  )「甘い」

その一言で悉く攻撃を捌かれていく。
あのモララーでさえ、未だ一撃を与えていない状況だ。



15: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:13:51.01 ID:tleOweXb0
  
( ・∀・)「面白い……本当に面白い」

月夜の明かりに照らされながら、口元に笑みを乗せつつ彼は笑った。
2nd−W『ロステック』を片手で振り回しながら、騎士の隙を見つけようと忙しなく動く。

その動きを補助するのはフサギコだ。
怪我で思うように戦えない彼は、モララーのために囮をする程度のことしか出来ない。

ミ,,"Д゚彡「しかし、あの武器は何なのでしょうか?
      ウェポンの攻撃を受けても砕けませんし――」

背後で援護射撃をしていたドクオが

('A`)「アレが14th−Wじゃねぇのか?」

(´<_` )「有り得ない話ではないが……しかし違和感を感じる」

違和感とは、形状。
今まで見てきた十三のウェポンは、全て異なる形状を持っていた。
剣、槌、鎌、書、槍、靴、銃、拳、鎖、翼、杖、盾、斧――

しかし騎士の持つ武器は『剣』と『槍』。
1stと5thとに被るのだ。
そんなことはあり得るのだろうか。



18: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:16:10.19 ID:tleOweXb0
  
もしかしたら剣と槍が一組のウェポンだということも――

(  )「違う」

心を読んだかのように、騎士が語る。

(  )「我が武器と装甲は、主であるリトガーが作りし対ウェポン用装備」

( ・∀・)「なるほどね……故に壊れず、砕かれず、傷一つ付けられぬ、か」

(  )「来い、武器の使い手達よ。
    我は貴様らを相手にするためだけに生まれてきた」

(´<_` )「何……?」

気になる言葉を耳に入れ、疑問に思った瞬間だ。

騎士が何かに気付き、一瞬で後退する。
その地に橙色の羽片が大量に突き刺さった。

('A`)「これは――」

(*゚ー゚)「皆、無事?」

しぃだ。
彼女が上空から降り立ちながら問う。



21: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:19:02.68 ID:tleOweXb0
  
(´<_` )「俺達は、な。 そちらはどうなったんだ?」

(*゚ー゚)「うん、こっちも全員大丈夫だよ」

言葉と同時。
背後から複数の人影が飛び出してくる。

( ´_ゝ`)「ジャジャーン! 魔法少女兄者、参上!!」

(´・ω・`)「ここがどうやら終着点らしいね」

( ,,゚Д゚)「そのようだ……後の雑魚はモララーの兵に任せよう」

( ゚∀゚)「あーあー、今からあの塔登るのかよ、面倒くせぇ」

口々に言いながら出てくる四人。
その姿はほとんどが無傷だ。

何故か兄者だけ服装がボロボロなのだが、厄介事に巻き込まれたくないためか誰も問わない。

ミ,,"Д゚彡「というか――」

(;'A`)「な、何でお前がここにいんだよ!?」

( ゚∀゚)「あー?」



24: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:22:27.50 ID:tleOweXb0
  
頭をポリポリと掻きながら、問われたジョルジュが心底面倒くさそうに説明を始める。

( ゚∀゚)「俺様、俺様のために動いた→テメェらも同じような目的→じゃあ、手伝ってやんよ。 むしろ手伝え。
     以上、反論・異論・質問は全部却下な」

( ,,゚Д゚)「つまりは今日だけ助っ人というわけだ。
     腹が立つが、皆には我慢してもらいたい」

(;゚∀゚)「腹立ってんの、テメェだけじゃねぇか?」

( ・∀・)「やぁやぁ、随分と騒がしくなったのは好ましいことだ。
     しかしとりあえずこちらを手伝ってくれると嬉しいのだが、どうかね?
     意外と厄介なのだよ、これが」

金属音を織り交ぜながら聞こえた声。
その方向に展開されているのは、モララーと騎士が高速の攻防を繰り広げている光景。
剣を避け、槍をかわし、鉄槌を繰り出すが避けられ、しかし反撃の蹴りを往なす。
そんな高速攻反撃の中でモララーは喋っていた。

( ,,゚Д゚)「モララー……そいつは?」

( ・∀・)「ははは、人が一生懸命に戦っている時に質問はやめたまえ。
     集中力が――あ、痛いよ痛い!」

肩を少し切り裂かれたモララーが、余裕で声を上げる。



28: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:25:43.29 ID:tleOweXb0
  
(´<_` )「内藤だけが塔内に入れてもらっている状況だ。
      俺達はアイツを倒さないと入れてくれないらしい」

( ,,゚Д゚)「ならば、話は簡単だな。
     近接攻撃が出来る奴らで一気に畳み掛ければいい」

(´・ω・`)「さっさと行こう」

( ゚∀゚)「誰がトドメ刺せるか勝負な」

ギコとショボンとジョルジュが走り出す。
それに気付いた騎士が、その場で動きを止め――

(  )「数での戦力計算は無意味だと言ったはずだ」

( ・∀・)「やってみないと解らないではないかね」

体勢を戻したモララーも、同じタイミングで襲い掛かる。

(  )「愚かな――」

声と同時。
巨剣と槍、鎖と鉄槌が一度に襲い掛かった。
連続した金属音が鳴り響く。



32: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:27:58.41 ID:tleOweXb0
  
('A`)「やったか!?」

ミ;,,"Д゚彡「い、いえ――」

(´<_`;)「これは――」

(;´_ゝ`)「予想GUYです」

残った者達の視線の先。
そこには――

(  )「だから言っただろう。 数など戦力計算の内に入らぬ、と」

未だその場に女騎士。
彼女が現状最強であろう四人の攻撃を全て防いでいた。
二つの武器で四つの武器を押さえることなど可能だろうか。

答えは、否。

では、何故受け止められたか。
答えは簡単だ。

(;*゚ー゚)「う、腕が――」

(;'A`)「増えた!?」

女騎士の腕が――四本に増えていた。
新しく生まれた腕には、それぞれトマホークと長棒が握られている。
それらに全ての攻撃を防がれた四人は、流石にその光景に驚愕した。



37: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:30:05.61 ID:tleOweXb0
  
(;,,゚Д゚)「馬鹿な――」

(;´・ω・`)「これは厄介、だね……」

( ・∀・)「ははは、だから言ったではないかね」

(;゚∀゚)「っていうか、人間ってレベルじゃねぇぞ!」

弾かれるように一斉に離れる四人。
それを追わず、女騎士は入り口を守るように仁王立ちする。

(  )「我は人間に非ず。
    主であるリトガーが作りし、戦闘人形『ジェイル』――それが我が名」

四つに増えた武器をそれぞれ振り回しながら、声は続く。

(  )「かかって来いよ、指輪の担い手。
    我が命、そのために生まれてきたのだから――



41: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:32:31.90 ID:tleOweXb0
  
塔の根元から少し離れた戦場。
そこでは白い兵士達が、残った黒い兵士を駆逐している。

「よぉし、ここらはもう大丈夫だな」

一人の兵士が意気揚々に言う。

「んじゃ、他ん奴の援護に行っちまおうぜ」

「それにしても――」

「ん? どうした?」

「いや、どうにも簡単すぎる気がしてな……あの巨大な奴も案外簡単に倒されただろ?」

「そりゃあ、社長の『MJ−D型』とかいうのが強かったからじゃねぇか?
 今は燃料切れでそこらにぶっ倒れてるけど」

「まぁ、そうなんだろうが……どうも気になる」



43: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:34:32.00 ID:tleOweXb0
  
「どういうこった?」

「何ていうか……今、ここで起きてる戦いって……。
 『もしかしたら戦いですらない』、って気がしてな」

「はぁ?」

「……あー、いやいい、気にしないでくれ。 さっさと行こう」

「え、あ、あぁ……解った」

「社長、無事かなぁ」

「無事だろ……あの人が死ぬところなんて想像できねぇ」

「だな――」



46: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:36:43.75 ID:tleOweXb0
  
激戦。
この状況を例えるならば、それが一番近い。

(;'A`)「し、信じられねぇ……」

ドクオが青い顔で呟く。
視線の先に、その激戦といえる戦いが繰り広げられていた。

( ,,゚Д゚)「つァッ!!」

( ・∀・)「ふっ!」

巨剣と鉄槌が迫るが、ジェイルは槍一本でそれを往なした。
その隙にジョルジュが鎖を振るい、足元を狙う。
地を這う鎖が迫り――

(  )「お見通しだ」

声と共にジェイルが跳躍、そして回避。
その飛んだ身に向かったのはしぃだ。

(*゚ー゚)「!」

彼女の翼から羽片が大量に撒き散らされる。
橙色の小さな刃が、ジェイルに襲い掛かるが――
しかしそれらは前方で回転させた棒によって全て弾かれた。



50: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:39:15.74 ID:tleOweXb0
  
その下。
兄者が書物を広げ

( ´_ゝ`)「くらえぃ! 稲妻ー!!」

ページを破り、宙に放り投げ――
次の瞬間。
小さな音と共に、飛んだ紙が真っ二つに裂かれた。
原因は斧。
トマホークのような形をしたそれは、回転しながら魔法書の紙を切り裂いたのだ。
無論、魔方陣は無効化される。

(;´_ゝ`)「……mjd?」

着地したジェイルは、背後から新たなトマホークを取り出す。

その死角から攻めるはショボンだ。
槍を脇に挟み、身体ごとぶつかるような姿勢で槍を突き出すが――

金属音。

しかしその槍の先端は、強固な甲冑によって阻まれた。

(´・ω・`)「そんな――」

言葉を言い終わる前に、ジェイルの蹴りがショボンの身体が吹き飛ばす。

(;´・ω・`)「くっ……」

転がるように地を滑るが、慌てて体勢を立て直し――



52: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:41:58.00 ID:tleOweXb0
  
(  )「遅いな」

しかしジェイルは既にショボンに迫っていた。
手に持つ銀光がショボンの喉を狙う。

(´<_` )「む!」

金色の盾がそれを阻んだ。
斥力によって剣の行く手が捻じ曲げられ、ジェイルの姿勢がほんの僅かに崩れる。
そこにつけ込んだのはジョルジュだ。

( ゚∀゚)「俺の攻撃無視すんじゃねぇ!」

声と共に放たれた鎖が、今度こそジェイルの右足を捉えた。
それを確認したジョルジュは一気に鎖を引く。

(  )「――!」

身が空へと飛ばされる。
その体勢が出鱈目になった状態のジェイルに仕掛けるのはギコとしぃだ。
しぃの羽片がジェイルの身体に襲い掛かり、その背後から巨剣を構えたギコが飛ぶ。

( ,,゚Д゚)「喰らえ!」

巨剣の刀身が甲冑に当たるが、金属音が響くのみで傷さえ入れられない。
『硬い』、『強固』とかいう問題ではない。
もはや甲冑はウェポンの攻撃を『無効化』するかのような性能を誇っている。



53: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:44:10.00 ID:tleOweXb0
  
舌打ちをしつつ、ジェイルを蹴り飛ばし背後に飛ぼうとした瞬間。
ガシリ、とその右足を捕まれたと気付いた時には、既に視界が逆を向いていた。

(;,,゚Д゚)「うぉ!?」

投げられ、一瞬で頭から地面に墜落。
激音と共に一気に砂煙が舞い、視界が暗転する。

(;*゚ー゚)「ギコ君!?」

(  )「他人の心配する暇などない」

(;*゚ー゚)「!?」

気付けば、ジェイルが背後にいた。
振り向こうとするが遅い。
両翼の鉄鋼部分を両手で固定され、背に膝が当てられる。

(;*゚ー゚)「うっ――!?」

(  )「空を飛ぶ貴様は厄介だ……故に落とさせてもらう」

言葉と同時に落下。
慌てて羽ばたこうとするも、翼が固定されていてはそれも適わない。

(;*゚ー゚)「きゃああああぁぁ!?」

悲鳴。
そして墜落。
轟音と共にギコと同じような砂煙が舞った。



57: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:47:24.21 ID:tleOweXb0
  
(;'A`)「しぃさん!?」

砂煙から出てきたのはジェイル。
その背後の地面で、しぃがうつ伏せで倒れていた。

(´<_`;)「何という――!」

( ´_ゝ`)「私に任せて! そぉい!」

兄者が一気にページを破り、バラ撒く。
ジェイルは何もせず、ただそれを傍観するだけだ。

魔方陣が複数展開される。

( ´_ゝ`)「ゆけい!」

指を指すと同時、炎や水、稲妻が発射された。
しかし向かう先に既にジェイルの姿は無い。

(;´_ゝ`)「あれ? ど――」

何か口から発そうとした瞬間。
いつの間にか兄者の真下にしゃがんでいたジェイルのアッパーカットが炸裂した。

(;´_ゝ`)「がふぁ!?」

首を、そして身体を仰け反らせながら吹き飛ぶ兄者。
木の幹に激突し、そのまま動かなくなる。

(´<_`;)「兄者ー!!」



62: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:49:54.51 ID:tleOweXb0
  
(  )「この程度、か……」

殴った腕を少し振り、つまらなそうに呟くジェイル。
その鉄仮面の中の表情は伺えぬが、明らかに落胆の色が見えて取れた。

(  )「よわ――」

『弱い』、と言いかけた瞬間――ジェイルの頭部に鉄槌が落ちた。
強烈な衝撃と音が鉄仮面に響く。

(  )「貴様……」

フラリ、と一瞬よろめきながら、不意打ちをした本人を見る。

( ・∀・)「戦いは敵を全員倒すまで続くのだよ。 君はそれが解っていない」

(  )「嘗めた真似を――」

ピシ、という音。
見れば鉄仮面にヒビが入っていた。
その亀裂はみるみる内に広がっていく。

(  )「これ、は――」

( ・∀・)「これがロステックの能力だよ。
     『粉砕力の強化』――割と地味だが、効果は高い。
     本当なら君の身体ごと割れても良いはずなのだが……リトガーという男、なかなかの技術力だね」

言葉と同時に、破砕音と金属が割れる音と共に、鉄仮面が遂に砕けた。



67: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:52:01.14 ID:tleOweXb0
  
中から現われたのは――

爪゚ -゚)「…………」

長髪で金髪の女性だった。
無骨な甲冑に似合わない綺麗な顔立ち。
人が作ったとは思えないほどの美しさだ。

( ・∀・)「おぉ……やはり美人だった!」

(;'A`)「モララーさん、アンタ顔が見たくて――」

( ・∀・)「当然ではないかね。
     私は声から既に『美人だな』と思っていたのだよ。
     いや、もちろん先に甲冑を砕き、辱めることも出来たが
     それでは鉄仮面と相まってアンバランスだからね……ぶっちゃけ萎えるだろう?
     故に私は鉄化面から砕くことにした」

(;'A`)「話長いけど、つまりは顔が見たかっただけ、と」

( ・∀・)「よし、顔が見れたから私は満足だ。
     さっさと倒してしまおう」

爪゚ -゚)「貴様――」

睨むような表情でモララーを見る。



75: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:54:03.79 ID:tleOweXb0
  
その刺すような視線を受け流しながら

( ・∀・)「ははは、美人がそんな顔をしては駄目だよ。
     もっと色っぽく! 誘うように! こう、もっと身体をくねらせて――」

( ,,゚Д゚)「……貴様の趣味を語ってどうする」

( ・∀・)「おや、生きていたのかね」

( ,,゚Д゚)「だいぶ首が痛い……だが、その分を返すつもりだ」

(;'A`)「な、何か方法があるんスか?」

ドクオが問う。
しかし、ギコは首を振った。

( ,,゚Д゚)「正直、無事に勝てる気はしない……が、逃げるわけにもいかんだろう」

( ・∀・)「鉄仮面はともかく、あの甲冑は割れる気がしないね……どうしたものか」

ミ,,"Д゚彡「あの――」

それまで傍観していたフサギコが手を上げる。



82: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:56:39.74 ID:tleOweXb0
  
ミ,,"Д゚彡「私の限界突破ならば、あの甲冑を何とか出来そうです」

( ゚∀゚)「マージかよ! それならさっさとやれよ、馬鹿!
     お前、どうせ怪我人で役立ちそうに無いっ――げふぁ!」

ベラベラと喋るジョルジュの頬に鉄拳が炸裂した。

( ,,゚Д゚)「フサギコも俺達の仲間だ、足手まといなどいない」

(#)∀゚)「な、殴るこたぁねぇだろうよ……」

ギコは無視。
フサギコに向き直り

( ,,゚Д゚)「で、俺達はどうすればいい?」

ミ,,"Д゚彡「形は出来てるんですが、もう少し指輪と会話をする必要があります。
      故に少々の時間稼ぎをお願いしたいのですが――」

( ・∀・)「任せたまえ」

即答し、モララーが駆け出す。
それを追うように、フサギコを除くメンバーも走った。



89: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 21:58:49.62 ID:tleOweXb0
  
しかし残る者もいた。

(;'A`)「…………」

ドクオ。

ミ,,"Д゚彡「どうしたんですか?」

(;'A`)「は、はは……やべぇよな……怖くて震えてんだぜ、俺」

ミ,,"Д゚彡「……それは」

(;'A`)「今まで頑張ってきたけど……ちょっと今回は無理っぽいかも」

ミ,,"Д゚彡「ならば、戦い以外のことで役に立てば良いのでは?
      ほら、しぃさんや兄者さんの介抱という仕事もありますよ」

('A`)「……そ、そうだな……俺、そっちの方やっておくよ」

駆け出す。
その後姿を見ながらフサギコは思う。

ミ,,"Д゚彡(ガロンは彼のどこを見て、力を託したんでしょうか……)

いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
とりあえず指輪との会話を――

そう思い直し、フサギコは目を瞑った。



100: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:01:29.12 ID:tleOweXb0
  
( ゚∀゚)「この阿修羅野郎がぁぁぁぁ!!」

声と共に飛び出すは鎖だ。
それは地を這うように一直線にジェイルの元へ向かう。

爪゚ -゚)「無駄だ」

剣を鎖の延長線上の地面に突き立てる。
タイミングを計り、そのまま刀身に蹴りを入れる。
鋭い剣線が鎖を弾いた。

その弾かれ飛んだ鎖と入れ替わるように飛び込むのはギコ。

( ,,゚Д゚)「ッ!」

上方から叩き落すような一撃。
しかしそれは回避される。
後方へ飛んだジェイルを捉えたのはショボンだ。

(´・ω・`)「はっ!」

気合の声と共に刺突を繰り出す。
しかし、高速のそれは彼女の腕がガシリと掴み込む。
そのまま槍ごとショボンを投げ飛ばす動作。

(;´・ω・`)「う、うわぁ!?」

宙を飛び、地面に叩きつけられる。
続いてショボンの首を狙うはトマホークだ。
だが彼はそれを一瞬で察知し、横転して回避する。



105: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:03:39.47 ID:tleOweXb0
  
今やジェイルの意識は完全にショボンへ向けられていた。

それを彼が逃すわけがない。

( ・∀・)「もらったッ!!」

背後。
下から掬い上げるよう、ゴルフのスイングのように叩き上げる動作。
鉄槌の頭部部分が下方から迫り――

硬質な音。

爪゚ -゚)「私は戦闘人形……ただの人間に劣りはしない」

足で踏みつけるように鉄槌が受け止められていた。
ギリギリと押し合うが、しかし動くことは無い。

( ・∀・)「何という馬鹿力かね……女性ならもっとお淑やかに頼むよ」

押し切るのは不可能と判断したのか後退する。
しかし安心は出来なかった。
その背後に飛んだモララーに追従するように、ジェイルが迫ったのだ。

揺れる金髪を目に入れ、一瞬呆気にとられるモララー。
まさか追われるとは思っていなかったのだろうか。



109: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:05:47.35 ID:tleOweXb0
  
( ・∀・)「ッ!」

ロステックを盾代わりに構える。
そこにぶつかったのは、横から薙ぐように迫った長い棒だ。

爪゚ -゚)「長棒というのは扱いにくいが――」

ぐん、とモララーの身体が押された。

爪゚ -゚)「その長さゆえの遠心力を使えば、とんでもない武器になり得る」

( ・∀・)「ぬ……!!」

左方に身体が吹き飛ばされる。
高く、そして鋭く滑空する身体は――

(´・ω・`)「モララーさん!?」

背中から白い壁に激突した。
ズルズルと壁に身を滑らせ、しかし何とか着地をする。

( ・∀・)「げほっ……ふふ、今のは効いたよ……やるではないかね」

言葉と同時、走り出す。
それを合図としたかのようにジョルジュ、ショボン、ギコも走った。
個別順次攻撃が駄目なら、四人同時攻撃で――



118: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:08:00.95 ID:tleOweXb0
  
鉄槌が唸り
巨剣が迫り
槍が風を切り
鎖が地を這い

しかし

銀剣が跳ね返し
銀槍が往なし
トマホークが飛び
長棒が受け止め

全ての攻撃が通じない。

( ,,゚Д゚)「くそっ……!」

強い。
遠距離攻撃が出来るしぃと兄者、ドクオがいないものの
残ったギコ、モララー、ショボン、ジョルジュの強さは並ではないはずだ。
それに完全防御出来る弟者もサポートしている。

しかし相手はそれを全て往なし、回避し、更には反撃さえしてくる。



121: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:10:10.68 ID:tleOweXb0
  
手に持つ四つの武器を巧みに、そして最も有効な場面で使い分け
そして、強靭な足が生み出す速度がそれを更に強化させる。

これほどまでの敵が用意されているとは。

今まで相手をしてきた黒い兵などは、雑魚以下だ。
一気に進ませ高まったテンションを、強敵を出すことによってギャップ効果を生み出し
ここで叩き折る、というのが敵側の策だろう。

正直、かなりこれは効いた。

テンションを折り、精神的に弱った獲物を片付けるのがジェイルの仕事。
黒い兵はそのための前座。
つまりテンションを高めるための餌に過ぎない。
ここまで簡単に進めた理由がやっと解った。

今までの快進撃が幻だというように、ここにきてウェポンの使い手達は阻まれる。
もはや先ほどまでのようなテンションは生み出せない。
つまり、それは集中力や抵抗力、そして攻撃力の欠如に繋がる。



123: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:12:43.46 ID:tleOweXb0
  
やられたな。

ギコは内心歯噛みする。

折られたテンションは、やはり似たようなことをしなければ再び宿ることはない。
しかし黒い兵はここにはおらず、そして今も数を減らしている状況だ。

この消沈した精神状態で戦いを強要されるわけだ。

特に気絶させられたしぃや兄者のダメージ、そしてそれを目の当たりにしたドクオ辺りは
もはや戦力になるかどうか解らない。

( ,,゚Д゚)「ちっ……厄介なことを」

厄介だ。
本当に厄介なことをしてくれた。



127: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:15:27.73 ID:tleOweXb0
  
爪゚ -゚)「どうした……もう誰もかかってこないのか?」

軽く槍を振り回し、前方で構えるギコ達に問いかける。
しかし相手に動きは無い。
ジェイルはその高度な思考回路で思う。

弱い、と。

心も、頭も、身体も、技能も、武器も――己の前には適わない。
たとえ数を増やしたとしても結果は変わらないだろう。
限界突破という妙な技を持ち合わせているらしいが、それも己ならば回避も防御も容易いだろう。

己の身体と甲冑、そして武器は対ウェポン用に改造されている。
そして装備されている人工知能は『戦闘行為』に特化している。
実質、奴らの武器は己の身に届くことはないのだ。

勝ちは見えた。
否。
勝ちは最初から見えていた。

爪゚ -゚)「……来ないのか?」

再び問う。
しかし相手は来ない。
その表情に焦りと恐怖、そして憤りが見える。
己の武器が通じず、そして押されているのが信じられないのだろう。

当然の結果だというのに。



131: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:17:55.16 ID:tleOweXb0
  
己という相手と対峙した時に気付くべきだったのだ。
勝てないのだ、と。

もはや諦めの意思と共に向かってくれば、精神的ダメージも減らすことも可能だったはずだ。
しかし彼らはテンションに身を任せ、意気揚々と戦闘を開始した。

馬鹿だと思う。

人間には感情があると聞いている。
それが素晴らしいことであるとも聞いている。
しかし、それは戦場において最も邪魔なモノだとも聞いている。
それを戦場で発揮してしまった愚かしい生物が……奴らだ。

ふぅ、と溜息――ただの排熱行為だが――が漏れ出る。

つまらない。

私は奴らを殺すために作られたというのに。
その役目は果たされようとしているのに。

何故か、嫌だと感じる。



135: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:20:03.63 ID:tleOweXb0
  
足りないのか。
まだ、戦い足りないのか。

爪゚ -゚)(私は戦いのための人形――その絶頂を一度は味わってみたいものだ)

思うが、しかしそれは果たされないのだろう。
強すぎるが故に。

爪゚ -゚)「来ないのか?」

もう一度問いかける。
今度は、少しの願望を籠めて。

来てほしい。

そして、己と戦ってほしい。



140: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:22:07.08 ID:tleOweXb0
  
( ゚∀゚)「おい……で、どうするよ」

(´・ω・`)「君が犠牲になって、その隙に僕らがやればいいと思うよ」

(;゚∀゚)「仮にも味方に言う言葉じゃねぇな」

そうかなぁ、と首を傾げるショボンの隣で弟者が

(´<_` )「しかし……本当にどうする?」

と、ギコに問いかける。

( ,,゚Д゚)「フサギコに何か策があるらしいが……そればかりを頼りにするわけにもいくまい」

( ゚∀゚)「っつーか時間稼ぎが目的なんだろ?
     んじゃあ、一人ずつ掛かっていくっつーのはどうよ?
     やられたら交代ーって感じで」

(´・ω・`)「僕ら四人が一人ずついったとして……瞬殺、まぁ頑張る、防御して時間稼げる、ちょっと稼げる
      っていう結果しか見えないや」

(;゚∀゚)「なぁ、その最初の『瞬殺』って誰のことだ?」

ショボンは無視。
先ほどから黙っているモララーに目を向けた。

(´・ω・`)「モララーさんは、何か考えがありますか?」



142: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:24:28.76 ID:tleOweXb0
  
( ・∀・)「……いや、特にないね。
     とりあえず時間を稼ぐ、という方法をとった方が良い。
     フサギコ君の限界突破が駄目ならば
     それまでにとった戦闘データから弾き出される弱点を突けば、あるいは――」

( ,,゚Д゚)「弱点などあるのか?」

( ・∀・)「彼女は、何故今……攻撃してこないと思う?」

( ゚∀゚)「あ? 塔の入り口を守ってっからじゃねぇか?
     アイツがあっこから離れたら、俺達が侵入出来ちゃったりするだろ?」

( ・∀・)「正解だ。
     それは私達が彼女の立ち位置を固定する必要が無いという意味に繋がる。
     そして更には、あの強靭な脚部から発動される速度は頻繁には使われないのだよ」

その言葉に弟者が首を傾げた。

(´<_` )「いや、しかし……先ほど、兄者はその高速移動故にぶっ飛ばされたぞ?」

( ・∀・)「そう、攻撃挙動のための移動ならば、ね……」

( ,,゚Д゚)「単に回避挙動や移動挙動には使われない、ということか」

( ・∀・)「小さな、本当に小さな情報だ。
     しかし……彼女相手にそれを使わずして勝てる道理は無い」



145: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:26:53.43 ID:tleOweXb0
  
そして、と彼は付け加える。

( ・∀・)「彼女が今攻撃してこない理由がもう一つある」

(´・ω・`)「それは?」

答えず、モララーはジェイルの元へと歩き出した。
それを目で追う四人。
少し歩いた先で、モララーが首だけをこちらに向けた。

( ・∀・)「慢心故の停滞……ギコ君ならば、覚えがあるのではないのかね?」

( ,,゚Д゚)「……まさか」

( ・∀・)「そのまさかだ。 案外この戦闘――すぐに終わるかもしれないね」

走り出す。

フサギコの限界突破を待つだけならば、もはや自分達は攻撃を仕掛けなくても良い。
何故なら彼女はその場を動かないのだから。

しかし、彼らは攻撃をする必要があった。

彼女が、その速度を移動・回避挙動に使わないが故に。
彼女を、『その時』までに動かさないために。
彼女に、そのことを気付かせないために。

そして何よりも――彼女が自分達よりも強いと思わせるために。



148: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:29:02.53 ID:tleOweXb0
  
爪゚ -゚)「来るか……さぁ、貴様らの本気を見せてみろ!」

攻撃の意思を感じ取り、その場で構えるジェイル。

( ・∀・)「ははは、ボッコボコにしてあげるよ!」

( ゚∀゚)「何か台詞がアレだが、概ね同意だぜ!」

モララーのロステックが唸りをあげつつ迫り、その背後からユストーンが援護攻撃を仕掛ける。
しかしそれは剣と槍に阻まれた。
剣線が鎖を叩き落し、そして槍がロステックの軌道を歪曲させる。

反撃は長棒だ。
長さ4、5メートルはありそうなそれは、横薙ぎに五人の脇腹辺りを狙う。

( ,,゚Д゚)「伏せろッ!」

声と同時。
五人が一斉にその場に伏せる。
一瞬後に長棒が風を切り裂きながら通過していった。

立ち上がり、まず接近したのはショボン。
長いリーチを利用した中距離からの刺突を繰り出そうと――

(;´・ω・`)「!?」

目の前に回転刃。
慌てて首を逸らすが、その回転したトマホークはショボンの左耳を少し切り裂いた。



154: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:31:28.55 ID:tleOweXb0
  
出血する耳を押さえるショボンの側をギコが駆け抜ける。

( ,,゚Д゚)「つぁッ!!」

上段からの渾身の一撃。
金属音。
見れば、細身の銀剣が青色の巨剣を軽々と支えている。
鍔迫り合い以前の問題だ。
ギコは全身の力と体重をかけて攻めているのだというのに
ジェイルの方は片手の剣のみ、しかも腕の力だけで防いでいる。

爪゚ -゚)「力任せで我に一撃を入れることなど不可能だ」

ギコの身体がグン、と押される。
右腕の力だけで巨剣+ギコの体重を吹き飛ばしたのだ。

(;,,゚Д゚)「ちぃ……!」

砂煙を上げながら後退するギコ。
殺気を感じ視線を上げれば、目の前に白銀の槍が迫っていた。

(´<_` )「おおっと!」

間一髪。
弟者が滑り込みながら槍を弾き飛ばす。



157: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:34:05.32 ID:tleOweXb0
  
それを見届けたジェイルは、余裕を持って新たな白銀の槍を取り出しながら
疾駆。
狙われたのはジョルジュだ。

(;゚∀゚)「げげっ! 選りによって俺かよ!」

一瞬で状況を判断した彼は、鎖を身体に纏わせて防御体勢に入る。
直後。
神速に近い槍の一撃がジョルジュに直撃した。
耐える間もなく吹き飛ばされる。

(;゚∀゚)「あ痛ってぇぇぇぇぇ!?」

ズザザ、と背を地面に擦りながら滑る。
その慣性運動が終わる前に、ジェイルはジョルジュの真上へと跳躍していた。
迫る銀剣。

( ・∀・)「カモォン♪」

仰向けのジョルジュの傍らにモララーが走りこむ。
まるで落ちてくるジェイルを野球のボールに見立てたかのように、彼はバット代わりにロステックを構えた。

思い切り振る。
風を切る音が来る前に鉄槌と剣が激突。
甲高い音が響き、互いの武器が振動する。

結果、劣ったのは剣だった。
みるみるうちにヒビが入り――金属が割れる音と共に銀剣が砕けた。



160: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:36:35.34 ID:tleOweXb0
  
( ・∀・)「ふぅむ……もっと一瞬でパリーンと割りたいのだが。
     いやはや、非常に興味深いね」

爪゚ -゚)「だが、いくら武器を叩き砕こうとも無駄だ」

またもや彼女は背から銀剣を取り出す。
どうやら無尽蔵、もしくはかなりの数を保有しているらしい。
というか何処から出しているのか。

爪゚ -゚)「先ほどからの攻防……貴様らの本気はその程度か」

( ゚∀゚)「阿修羅野郎とマトモに戦う方がおかし――」

声が終わる前に、風切音。
ジョルジュの頬をトマホークが掠っていった。

(;゚∀゚)「…………」

爪゚ -゚)「我はただ貴様らと戦いたいのだ。 我はただ己の力の限りを見たいのだ」

( ・∀・)「限界を知りたいわけだね? それは何故かな?」

爪゚ -゚)「解らぬ……しかし、知りたいのだよ。
    我が力の、限られた界の――その淵を見たいのだ」

( ・∀・)「そうかね」

興味なさ気に呟く。



163: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:39:44.18 ID:tleOweXb0
  
そして、彼はこう続けた。

( ・∀・)「我々は限界を突破しているというのに、君ときたら……」

爪゚ -゚)「ほぅ……」

ジェイルが反応を見せた。

爪゚ -゚)「我の限界と、貴様らの限界を超えた力……果たしてどちらが強いのか」

( ,,゚Д゚)「それを先ほどから比べているだろう」

爪゚ -゚)「その程度なのか、貴様らの限界を超えた力とは」

( ・∀・)「だろうね。 残念ながら私達は君に勝てる方法を持ち合わせていないらしい」

爪゚ -゚)「残念だ……ならば、終わらせよう」

( ・∀・)「そうだね、終わらせようか」

爪゚ -゚)「貴様の命運を」(・∀・ )



166: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:42:13.88 ID:tleOweXb0
  
動きは同時だ。
動作の名は疾駆。

片方は鉄槌を構え、走り
片方は四種の武器を構え、走る。

互いの向かう先は互いの敵。
疾駆の途中でモララーが口を開いた。

( ・∀・)「悪いが――人の力は弱くはない」

爪゚ -゚)「ならば言おう―ー人形の力も弱くはない、と」

距離が――

( ・∀・)「感情と――」

爪゚ -゚)「無感と――」

縮まり――

( ・∀・)「どちらが虚しいのだと――!」

爪゚ -゚)「どちらが無駄だのだと――!」

瞬間。
二人の中心点から金属音が鳴り響いた。



175: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:44:08.82 ID:tleOweXb0
  
薄暗い廃墟。
その中でブーンは日記帳を読み終えた。
クルト博士の遺した日記。
それは最後まで書かれることの無かったモノ。

( -ω-)「…………」

目を瞑り、天井を仰ぐ。
そして思う。

そうだったんだ。
クーは――彼女の存在の意味って――

だから彼女は――

そこまで思い、目を開ける。
目の前には深い闇が支配する隠し通路。

この先に、おそらくは――

日記帳を懐にしまいながら、足を踏み出す。
もはや迷いは消えた。

( ^ω^)「クー……君はこれを知らなきゃいけないんだお」

そう言い残し、彼は深き闇へと身を歩かせていった。



179: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:46:16.21 ID:tleOweXb0
  
目を覚ませば、夜空に三日月が浮いていた。

(*゚ー゚)「う……うぅん……?」

ここは?
自分はどうなった?

そうだ、あの女騎士によって地面に叩きつけられて――

(*´_ゝ`)「大丈夫? お嬢さん?」

(;*゚ー゚)「きゃぁぁぁああぁぁ!?」

(#)_ゝ`)「ごふょ!?」

見事な鉄拳が兄者の頬を捉えた。
鼻血を噴き出しながら、文字通り吹っ飛ぶ兄者。

(;'A`)「し、しぃさん!?」

(;*゚ー゚)「ハァ、ハァ……ご、ごめんなさい……でも、その顔のアップはもはや凶器だと思うの」

(#)_ゝ`)「失礼な……私、これでも顔に自信あるのに」

('A`)(あるんだ……)

鼻血をダラダラと流しながら、ゾンビのようにこちらに歩いてくる兄者。
どう見ても化け物です、本当に(ry



187: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:48:35.72 ID:tleOweXb0
  
(*゚ー゚)「えっと……今はどうなってるの?」

しぃが周囲を見渡しながら言う。

(;'A`)「あー……あんまり良い状況じゃないッスよ」

指を指す。
その先には――

爪゚ -゚)「…………」

無言で立っているジェイルと

( -∀-)「…………」

その足元にうつ伏せで倒れているモララーの姿。
彼の脇腹からは出血。
それが小さい血溜まりを作っている。
ロステックの姿は指輪に戻っており、傍らに転がっていた。

(;*゚ー゚)「そんな……!」

状況を理解したしぃが絶句する。

(;'A`)「正直、負けるとは思わなかったんスけど……」

ドクオもしぃと同じ気持ちだった。
まさか、あのギコを圧倒した男が一騎討ちとはいえ敗北してしまうとは。



193: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:50:47.40 ID:tleOweXb0
  
ギコ達に動きは無い。
モララーがやられたことによってショックを受けているのか
はたまた、ただ恐怖しているだけのか。

(;゚∀゚)「おいおい……マジですかよ? ねぇ、マジ?」

(;´・ω・`)「そんな……」

(´<_`;)「俺達の戦力の中では最強を誇ったあの男が……」

口々に言う。
ギコは黙ったまま、ジェイルを睨んでいるだけだ。

そこでドクオは気付く。
ジョルジュ達――特に弟者の口調や台詞に違和感を。

('A`)(何で説明口調なんだ……? これなんて斬?)

爪゚ -゚)「この男が最強だったのか。
     なるほど……もはや貴様らに我を倒すことなど出来ぬな」

言葉通りに受け取るジェイル。
倒れたモララーを一瞥。
地を蹴り、巨塔の入り口に陣取るように再び仁王立ちの姿勢に入った。

爪゚ -゚)「これで我の勝ちは決まっ――」

ミ,,"Д゚彡「まだです」



206: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:53:31.07 ID:tleOweXb0
  
フサギコ。
彼がいつの間にかギコ達の隣に立っている。
その彼に、ギコが前方を睨みつつも

( ,,゚Д゚)「――準備は出来たか」

ミ,,"Д゚彡「はい」

即答。

(´・ω・`)「こっちも仕込みはOKだよ。 後は君の力次第だ」

ミ,,"Д゚彡「任せて下さい……何とかやってみせます」

大鎌――ウィレフェルを構えながら、走り出すフサギコ。
お世辞にも迫力があるとは言えないが――

爪゚ -゚)「右腕、右耳、右目が機能不全――無駄なことを」

対しジェイル構えず、ただただ走ってくるフサギコを見つめるのみだ。

こんな人として不良品の人間が、己に向かってきている。

そういう程度の認識。
その慢心がジェイルの思考を支配していた。
もはやそこにあるのは絶対の自信。
最強と言われていたモララーを倒したことにより、その慢心は更なる上昇を続けていた。



215: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:55:41.71 ID:tleOweXb0
  
フサギコが迫る。
しかしジェイルは微動だにしない。

彼が持つ大鎌は左手に収められ、そして振りかぶられている。
左――つまりジェイルから見て右側からの斬撃。
彼女の右手には銀光を放つ剣。
先ほどグラニードの一撃を押さえた剣だ。

警戒するまでも無い。

斬撃軌道を予測。
その軌道上に刀身を向け、軽く腕に力を入れる。

これで終わりだ。

押さえた後は、左手に持つ槍で串刺しでいい。
それで残った敵は更なる恐怖を植え付けられるだろう。

恐怖が積まれれば、それはテンションの低下と攻撃意思の剥奪に繋がる。

戦闘とは身体の削り合いでもあるが、しかし精神の削り合いでもある。
それをジェイルは一番理解していた――戦闘人形故に。

ミ,,"Д゚彡「『OVER ZENITH』――!!」

それは限界を突破するための命令。
大鎌から黒い光が発せられ、しかし形も大きさも色も変わらない。
先ほどと変わらぬ姿でジェイルに襲い掛かる刃。



223: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 22:58:04.46 ID:tleOweXb0
  
爪゚ -゚)「限界突破――その力、見せてもらおうか!」

――戦闘人形故に

ミ,,"Д゚彡「ああぁぁぁ!!」

――彼女は解っていなかった。

黒い刃が銀色の刀身に接触し

爪゚ -゚)「!?」

音が無い。

その超高速処理される視界で見る。
大鎌の刃が剣の刀身を紙のように裂いていくのを。

これ、は――

判断が遅れる。
刀身に何も手応えを与えず、遂に黒い刃は刀身を真っ二つに切り裂いた。

次に黒い刃が向かうのは、己の甲冑に包まれた横腹だ。
この甲冑は対ウェポン用の処理が施してある。
よほどのことが無い限りは――しかし――

判断は一瞬だ。
黒き刃が触れる前にその場の離脱を試みる。



230: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:00:13.08 ID:tleOweXb0
  
足に力を込めるが――

爪゚ -゚)(しまっ――)

よもや離脱などするわけがないと思っていた故に、脚部への力的操作が行われていなかったのだ。
人間で言うならば、完全に足腰に力を入れていなかった状態。

フサギコ如きが自分に一撃を入れられるわけがないと思っていて慢心故の結果。

この状態からの回避をするには、ほんの一瞬だが隙が出来る。
その隙を、漆黒の鎌『ウィレフェル』は逃さなかった。

ミ,,"Д゚彡「人の力は――決して弱くは無いッ!」

黒い斬撃が――

一閃。

爪゚ -゚)「ッ――!?」

――ジェイルの胴体を両断した。



238: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:02:18.08 ID:tleOweXb0
  
上半身が空中を舞い――ドサリと重々しい音を立てて地面に落ちる。
下半身は少しの間立っていたが、主を失った故にバランスを崩してその場に倒れた。

( ゚∀゚)「おっしゃぁ! やりやがった!」

味方勢の一部がワイワイと喜びの声を上げながら近寄ってくる。

(´・ω・`)「今の能力って……?」

ミ,,"Д゚彡「私とウィレフェルが出した結論です。
      『切断力の最適化』――
      つまり、刃を当てた部分の成分に対して最も的確な――」

( ゚∀゚)「OKOK、何でも斬っちゃうってことだろ?」

ミ;,,"Д゚彡「最悪の言い方をすればそうなりますね……。
       ただしウェレフェルや私が知らない物質を斬ることは不可能ですが」

「おや、倒したのかね」

背後から声。
振り向けば

( ・∀・)「いや、わざと油断した甲斐があったよ」

脇腹を押さえたモララーが立ち上がっていた。
フラリとよろめきながらも、こちらに近付いてくる。



248: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:04:28.72 ID:tleOweXb0
  
(;'A`)「無事だったんスか!?」

( ・∀・)「ははは、私はこれでも演技の達人でね?
      会社にただの社員に変装して出社し
      『あれれ〜? 社長がいないよ?』ゲームなどよくやったものだよ」

(´<_`;)「もはや何が目的のゲームなのか解らんが、無事ならよかった」

爪゚ -゚)「油断……? 演技、だと……?」

ジェイルの声。
モララー達が集まっている場所から少し離れた所に、彼女の上半身が落ちていた。
そこから途切れ途切れに声が発せられる。

爪゚ -゚)「どういう……ことだ」

胴体を両断されながらも未だに声を発する彼女に、モララーが近寄っていく。

( ・∀・)「君は機械なのだろう?
     ならば『予測』は出来ても『想像』は出来ないだろうと思ってね」

爪゚ -゚)「想像……?」

( ・∀・)「私がこの者の中で『最強』……ということにして
     そしてその私を倒した君はさぞかし自信を持っただろうね。
     戦闘用人形ならば尚更だ。
     それが君の生きる意味であり、存在の意味なのだから」

爪゚ -゚)「…………」



258: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:06:55.37 ID:tleOweXb0
  
( ・∀・)「私達の目的は、君をあの場から動かさないことだ。
     何故ならフサギコ君が何とかしてくれる、と言ってくれたからね」

そして

( ・∀・)「見事に君は、慢心故にあの場から動かなくなってしまった。
     この私という最強戦力を下手に倒してしまったからね。
     もはや絶対な自信と慢心を擬似精神に得てしまったから君は
     故にフサギコ君の限界突破にも危機感を持たなかった……だから回避運動が遅れたのだ」

続ける。

( ・∀・)「要は君の圧倒的な速度を無効化したかったのだよ。
     アレがあるおかげで、フサギコ君の攻撃を回避されるかもしれないからね」

爪゚ -゚)「し、しかし――」

( ・∀・)「テンションを削るという作戦は見事だった。 正直やられたよ。
     だが、それを逆手に取るという方法もあるということを憶えておきたまえ」

爪゚ -゚)「つまり……私は……」

( ・∀・)「己の慢心故に負けた、ということだろうね。
     せっかくの高機能な装備も、それがあるがために力を発揮することは出来なかった」



264: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:09:01.01 ID:tleOweXb0
  
爪゚ -゚)「そ――うか――」

( ・∀・)「一時の間、眠りたまえ。
     そして君が起きたとき――戦いは終わっているだろう」

爪- -)「――――」

ジェイルの目が瞑られる。
どうやらフサギコの一撃は動力系統も断ち切ったらしい。
それを見届けたモララーは懐から黒い携帯電話を取り出す。

( ,,゚Д゚)「回収するつもりか?」

( ・∀・)「あぁ、もちろんだ。
     これ以上興味をそそられる機械人形も、そうそうあるまい」

部下に連絡を取り、人形の回収と修理を依頼する。
一通りの指示が終わった彼は周囲を見回し

( ・∀・)「さて、怪我人はいないかね?」

(#)_ゝ`)ノ「はいはーい」

(*゚ー゚)「私は大丈夫。 ドクオ君が治療してくれたから」

(*'A`)「いや、まぁ……当然のことをしたまでッスよ」

( ・∀・)「他の者も問題ないね?」



269: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:11:31.03 ID:tleOweXb0
  
( ゚∀゚)「もちろんだぜ」

(´・ω・`)「耳が切れちゃったけど……これくらい怪我に入らないよ」

(´<_` )「俺も大丈夫だ……ん?」

そこで気付く。
フサギコが膝をついて荒い息を吐いているのを。

(´<_` )「大丈夫か、フサギコさん」

ミ;,,"Д゚彡「ちょっと体力配分を間違えたかもしれません……。
       しかし戦えないという状態ではないので大丈夫かと」

( ,,゚Д゚)「苦戦した割には被害は少ないようだな……」

( ・∀・)「皆が等しく努力した結果だよ、ギコ君。
     というか、君……今の戦闘で何かしたかね?」

(;,,゚Д゚)「うるさい……次はするさ」

さて、と結論付けたモララーはある方向を向く。
その視線の先には白い巨塔の入り口だ。

( ・∀・)「これで門番はいなくなった。 あとは何も考えずに突き進むのみだね」



276: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:13:21.01 ID:tleOweXb0
  
( ,,゚Д゚)「覚悟はいいな?」

(´・ω・`)「ここにいる時点で、覚悟してない人なんていないよ」

('A`)「も、もちろんだぜ」

(*゚ー゚)「行きましょう」

( ・∀・)「先に入った内藤君も心配だしね。
     皆、駆け足で行こう」

言葉と同時に九人は駆け出した。
向かう先は『矛盾を世界に発する塔』。

矛盾を止めるために、『かつて』に抗うために、『これから』を彩るために――



281: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:15:27.73 ID:tleOweXb0
  
塔内。
本棚の隠し扉を潜ったブーン。
その彼は、延々と続く階段を上っていた。

(;´ω`)(何か無闇に長いお……っていうか、地下に続いてるんじゃないのかお?)

兄者の情報では、そこから地下研究所に行けたらしい。
しかし今、自分はどう見ても上へ上へと上っている。
少し曲がっていることから、どうやら螺旋階段らしいが……。

(;´ω`)(兄者さんいい加減だお……もうあの人のこと、信じられないお)

上り続けてはや数十分。
流石のブーンも、そろそろ体力の限界を感じ始める。

と、ちょっと諦めかけた時だ。

(;´ω`)「いてっ」

疲労で頭を垂れていたため、目の前に現われたドアにぶつかってしまった。

( ^ω^)「おっおっ、とうとう着いたお」

やっと階段地獄から抜け出せる。
意気揚々と扉を開いた。



288: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:17:59.28 ID:tleOweXb0
  
その先には――

(;^ω^)「おぉ……」

白一色。
床も壁も天井も――全てが白で彩られている。

これが兄者の言っていた『白い通路』なのだろうか。

( ^ω^)「だとすれば、この先にリトガーがいるはずだお」

仲間を待つことも考えられたが、敵がわざわざ自分一人を呼んだことを考えると――

( ^ω^)「行くっきゃないお」

もし一人でリトガーや完成品を倒せたら、それこそ英雄だ。
そんな厨っぽい妄想をしながら通路を歩く。

白。
白白。
白白白。

頭がおかしなりそうな、目が回りそうな光景だ。
自分がしっかりと真っ直ぐ歩いているのか解らない。

背後を振り返る。
先ほどの階段の出口である黒い点が見えることから、どうやら先には進んでいるらしい。



298: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:19:47.90 ID:tleOweXb0
  
( ^ω^)「このまま真っ直ぐ――」

前を向いた時。

( ^ω^)「?」

背後を振り返る前には無かったモノが、前方に存在した。
黒い点だ。

いや、あれは――

(;^ω^)「まさか――」

心当たりがあった。

あの黒い点――いや、黒い人影は――

思うと同時、自然と駆け足になる。
黒い人影がみるみる近付いていき――

(;^ω^)「――!!」

遂に、その正体がはっきりと視認出来た。



304: ◆BYUt189CYA :2006/11/26(日) 23:21:41.12 ID:tleOweXb0
  
黒いロングコート。
腰に差した日本刀。
美しい黒髪。

見間違えるはずが無い。

彼女は――

彼は彼女の名を口にした。



( ^ω^)「……クー」



川 ゚ -゚)「……内藤」



対する彼女も、彼の名を口にした。

白い空間。
遂に二人は出会い、そして――



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