( ^ω^)とひぐらしのなく頃に。のようです

5: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:27:29.02 ID:/0LgPqK+0

(;^ω^)・圭一「「幽霊ぃ!?」」

教室に二人の声が重なり合って響きわたる。



早いもので、僕と圭一が転校してから2週間の時が流れた。
圭一はあの時の面影なんて見る由も無く、今ではこのクラスの中心的人物になっている。

それはきっと、魅音が設立した部活に入ったからであろう。
部活なんて名ばかりで遊ぶ事しかしないけど、クラスに馴染むにはこれ以上ないほどの効果を示していた。

もちろん、それは僕も同じである事は言うまでもない。


そして、今そんな二人が声を張り上げているのは、魅音の突拍子もない話のせいである。



6: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:29:49.63 ID:/0LgPqK+0

魅音「そうなんだよ〜。夜の校舎にさ、出るらしいよ。」

レナ「本当に……?誰から聞いたの?」

魅音「低学年の子がさ、どうしても必要な忘れ物をとりに夜の学校に行ったんだって。
   そしたらさ……コツーン、コツーンっていう足音と共に女の人が現れたんだって!」


沙都子「そ、それで、どうなったんですの?」

魅音「思いっきり叫んで、大急ぎで逃げてきたんだってさ。
   いやぁ、危ない所だったんじゃないの?」

圭一「でもよ、幽霊だったっていう確証はあるのかよ?」

沙都子「そうですわ。もしかしたら、同じ生徒だったのかも……。」


( ^ω^)「でも、それだったら次の日にでも教えてくれるんじゃないかお?」

レナ「そうだよ。それに、忘れ物を皆がそんなにするとは思えないな……?」



9: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:32:46.84 ID:/0LgPqK+0

圭一「それもそうか……。いやいや、でもさ……!」

沙都子「そうですわ!幽霊なんている訳ないと思いましてよ!」

梨花「……圭一と沙都子はお化けが怖くて、がたがたぶるぶるなのですよ。にぱー。」

何かにつけて幽霊話に反論する二人を梨花ちゃんが小馬鹿にする。
まぁ、怯える沙都子の姿はなんか良い。圭一もこれはこれで……。

全員の意見が揃わないまま、話し合いは続く。
しばらくすると、魅音が痺れを切らしたかのように口を開いた。



魅音「まぁまぁ、皆の衆ちょっと落ち着いて。
   おじさんが何でこんな話をしたか、分かる?」
   
(;^ω^)「……ひょっとして、行くのかお?」

魅音「お!さすがブーンは察しが良いねぇ。
  小さな子供たちを脅かす存在を黙って見過ごす訳にはいかないよね。
  なら、部活メンバーでお化け退治といこうじゃないの!」



10: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:34:28.63 ID:/0LgPqK+0
沙都子「でも、相手は幽霊ですわよ?どうやってそんな事を……?」

魅音「さぁ?塩でもぶっかければ良いんじゃないの?」

梨花「怖いのなら、沙都子は一人でお留守番でも良いのですよ?」

沙都子の顔が微妙に歪む。
恐らく、お化け退治よりも、一人でお留守番の方が怖いのだろう。


レナ「お、怯える沙都子ちゃんかぁいいよ〜!!」

圭一「ま、待て、レナ!お預け!」

レナ「は、はぅ〜。かぁいいのに……ちょっとだけならいいかな、かな?」

圭一「人の体をちょっとだけってどういう事だよ……バラバラにでもする気か?」

しょんぼりとするレナと、レナの暴走を止められた事に満足げな圭一。
……初めて、お持ち帰りの現場に立ち合わせたときは目を丸くしてたのになぁ。



11: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:35:42.79 ID:/0LgPqK+0

魅音「じゃあ、今日の夜8時に学校の前に集合でいいかな?」

沙都子と圭一は不満げな様子だったが、その場の空気に流されて渋々了承する。
他のメンバーは快諾。
梨花ちゃんに至っては、今からずっと学校にいたいというぐらい楽しみのようだ。

……他人の不幸を喜ぶ梨花ちゃんらしい。



それにしても、夜の学校に男と女が入り混じるのか……。

( ^ω^)「これは期待して良いかもわからんね。」

レナ「ブーン君、何か言ったかな、かな?」

(;^ω^)「な、何でもないお。」



12: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:36:46.50 ID:/0LgPqK+0

そんな訳で夜。

日は完全に沈み、ひぐらし達の合唱も完全に止んだ頃。
雛見沢には街灯が少ないため、こんな時間ともなれば真っ暗で一寸先が見えない程である。

( ^ω^)「念の為、懐中電灯を持ってきておいて良かったお。」

レナ「私も持ってきたよ〜。」

圭一「俺もだ。雰囲気もでそうだしな!」


魅音「ライトが3つで6人か……ここは2人ずつの方が盛り上がるかねぇ。」

沙都子「ぜ、全員で行きませんの?」

梨花「心霊スポットの定番ってやつなのですよ。
   ちなみに、一番初めに行った組がなかなか帰ってこないのがデフォなのです。」

沙都子「……梨花、変な事を言うのは止めてくださいませ。」



13: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:37:47.80 ID:/0LgPqK+0
魅音「それじゃあ、これで組分けといこうか!」

そう言って、魅音は懐からくじのような物を取り出す。
……何で準備済みなんだろう。


圭一「よし、じゃあ俺から行くぜ……ん、2番って書いてあるな。」

レナ「じゃあ、次は私〜。……1番だね!」

( ^ω^)「僕は3番だお!」

梨花「僕も3番なのですよ。」

沙都子「私は1番ですから、レナさんと一緒でございますわね。」


各自が引いたくじで組み合わせを確認する。
レナと沙都子。梨花ちゃんと僕。圭一と魅音に分けられたようだ。



14: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:38:22.17 ID:/0LgPqK+0
魅音「なんだ〜。圭ちゃんとかー。」

圭一「なんだよ、俺じゃ不満だってのかよ。」

言葉とは裏腹に、顔がにやけっぱなしの魅音。
……ひょっとして仕組んだじゃ?


レナ「ブーン君、気付いても言わないであげてね?」

( ^ω^)「……ん、分かったお!」

レナも同じ事を思ったようで僕にこっそりと耳打ちする。
友情を大切にするレナを見て、僕はちょっぴり胸を打たれてしまった。



16: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:40:01.55 ID:/0LgPqK+0

魅音「じゃあ、くじの番号順に出発だから、レナと沙都子が1番に出発だね。」

レナ「じゃあ、沙都子ちゃん行こうか!」

沙都子「レナさん、ちょっと……?」

沙都子が恥ずかしそうにレナに小声で話しかける。
僕達には聞こえないようにしているようだ。

……と、いきなりレナが鼻血をふきだした。


レナ「は、はう〜!沙都子ちゃんかぁいすぎるよ〜!!」

(;^ω^)「ど、どうしたんだお?」

レナ「さ、沙都子ちゃんが!怖いから手を繋いでもいい?って!はう〜!!」

沙都子「レ、レナさん!なんで言うんですの!!」

レナの気持ちが痛いほど理解できる。
というか、羨ましい。ずるい。



18: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:42:10.10 ID:/0LgPqK+0

沙都子「……もう!早く行きましてよ!」

真っ赤になりながらも、レナに手を差し伸べる沙都子。
あー、僕なんで1番じゃなかったんだろう。

レナ「じゃあ、行ってくるね〜。お化けさんはどこかな〜♪」

沙都子の可愛さに上機嫌なレナは鼻歌交じりに校舎へ入っていった。
辺りに微妙な空気が漂う。


圭一「お化けより、レナの方が危険なんじゃないか?」

(;^ω^)「……僕もそう思うお。」

幽霊と沙都子の安否が気になる僕であった……。



20: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:43:24.59 ID:/0LgPqK+0
―――――――――。

5分程経っただろうか。
そろそろ、行っても良い頃合だと俺と魅音は判断する。

圭一「よし!それじゃあ、俺と魅音も出発するか!」

( ^ω^)「行ってらっしゃいだお!」

梨花「ちゃんと、お化けさんを退治するのですよ。にぱー。」


圭一「まかせとけ!ふんじばって捕まえといてやるよ!」

魅音「お、さすが圭ちゃん!勢いだけは誰にも負けないね!」

圭一「だけはよけいだ!」



21: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:45:22.13 ID:/0LgPqK+0
校舎の中へ足を踏み入れると、先ほどまでの明るい雰囲気が嘘のような静けさが俺たちを包みこむ。
懐中電灯の光の届く場所だけが、俺たちの安全範囲内のような錯覚に陥る程に。
……夜の学校は薄気味悪いと思ってたけど、ここまでとはなぁ。



魅音「あはははは……圭ちゃん怖いなら私の手を握ってもいいんだよ?」

圭一「魅音こそ、怖いなら正直に言えば、手を繋がせてやるぜ?」

魅音「お、おじさんが幽霊ごときに怖がるわけがないでしょ!」

どちらも強がってはいるが、内心はびびりっぱなしだろう。
幽霊とかじゃなくて、この雰囲気そのものが怖い。

闇に飲み込まれて消えてしまいそうな、そんな雰囲気が。



23: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:46:28.33 ID:/0LgPqK+0

……魅音だって、怖いとは思っているのだろう。
でも、部長としてのプライドや、女の子らしく出来ないという事が災いして、言い出せないに違いない。

でも、魅音だって女の子には変わりない。
素直になれないけど……手を繋いで少しでも不安を和らげたいんじゃないかと俺は思ってる。
でも、きっと魅音からは言い出せないだろう。

なら、俺がここで一芝居うつのも悪くない。


圭一「なぁ、魅音怖いよな。」

魅音「へ?お、おじさんは全然怖くなんかないよ!
   ……怖いなら手を握ってあげるって言ったじゃん!」


魅音は冗談で俺に手を差し伸べたんだろう。
俺がその手を握る事は無いと、そう確信して。

……でも、俺はその手をゆっくりと握り締める。



24: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:48:06.00 ID:/0LgPqK+0

圭一「サンキューな魅音、これでちょっとは楽になるってもんだ。」

魅音「ふ、ふぇ!あ、あの、えと!……どういたしまして。」

俺の予想外の行動に、案の定慌てふためく魅音。
ライトの光では薄っすらとしか顔は見れないけど、きっと顔が真っ赤になっているに違いない。

こういうのはレナにしかやらないけど……魅音にやっても楽しいんだな。


改めて認識する。
ここにいる園崎魅音は女の子だっていう事に。

……いかん、ちょっと恥ずかしくなってきた。

夜の学校に女と男が一対一か……って俺は何考えてんだ!

まずい、一回意識すると変な考えが頭に浮かぶ。
段々と自分の心臓の鼓動が早くなっているのに気付いた。



25: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:48:56.21 ID:/0LgPqK+0

魅音「……ねぇ、圭ちゃん?」

圭一「え、あ、何だ?」

魅音「実を言うとさ……私もちょっぴり怖かったんだ。」

圭一「そ、そうか。天下の園崎魅音様でも怖いものがあるんだな!」

魅音「うん……だから、その、ありがとね。」

圭一「……おう。」


普段とは違って、素直な魅音。
普段とは違って、女の子として魅音を意識する俺。


どちらともなく、握った手の力を強める。

その握った手を離すことのないように。
一度、心に浮かんだその感情を忘れないように。



27: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:51:14.63 ID:/0LgPqK+0

魅音「……圭ちゃんはさ、私と同じペアになって嫌だった?」

圭一「え?別に嫌じゃなかったけどさ……。」

魅音「本当に?」

圭一「ああ、本当だよ。」

魅音「私がズルして圭ちゃんと同じペアになるようにしたって言っても?」

圭一「はぁ!?何でそんな事したんだよ?」

魅音「……圭ちゃんと二人きりになりたかったから。」


そう言って魅音は俺との距離を更に狭める。
いや、この言い方は正しくないのかもしれない。
魅音と俺との間に距離なんてないからだ。

二人の間には何の障害もない。あるとするならば、俺の最後の理性の壁。
魅音を友達と見るか、一人の女の子として見るのか。




……俺は後者を選択する。



28: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:52:59.77 ID:/0LgPqK+0

懐中電灯に照らされていた廊下。

少し前までは、その暗さに不安を覚えさせられた。
でも、今は少ない明かりが逆に俺たちの心を震わせるようで。


……懐中電灯のスイッチをOFFにする。

左手で魅音の髪をそっと撫でる。
ライトの代わりに、少しばかりの月明かりが二人を照らし出す。

自然と見つめ合うような形になった。

相手の心臓の音、呼吸の音、そこに存在するという事。
それを、こんなに間近で確認するのは生まれて初めての事だった。

本当に薄っすらとしか、顔を見ることは出来ないけど。
僅かな光で照らされた魅音の顔を見て、俺はただ純粋に綺麗だと思った。


魅音がそっと目を閉じる。

それがどういう意味なのかを理解した俺は少しずつ、顔を近づけていく。
握り締めていた手もいつの間にか、相手の体そのものを抱きしめる形に変わっていた。

そして、頭の中で理解する。
今、俺を満たすこの感情が愛しいという気持ちだという事を。



31: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:54:34.26 ID:/0LgPqK+0
あと、ほんの2〜3cm近付けば唇を合わせられる距離……。
魅音の顔を少しばかり自分に引き寄せて……。








「「キャーーーーーー!!」」

突如、聞こえた悲鳴。

魔法が解けたかのように、二人は距離をとる。



32: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:56:21.10 ID:/0LgPqK+0

圭一「……ああ、いやこれは違うんだよ。!
   ほらあれだ!危険な状況に陥った二人は一時的な恋心が芽生えるって奴!  
   あ、別に魅音が好きじゃないとかそういうわけじゃないんだぜ!?
   柔らかかったし、良い香りもしたし、正直たまんねぇ……じゃなかった。
   俺が言いたいのはな、一時の感情に流されてこういう事になってしまっても良いのかっていう事なんだよな、うん。
   魅音も俺もまだ出会ってから1ヶ月もしてないんだぜ!?
   それなのになぁ。お前も俺も軽い奴だなんて思われたくないだろ!?そうだよな!?
   だから、今起こったことは心の中にひっそりとしまっておこうぜ!?うん、きっとそれがいいぜ!!」
 
魅音「け、圭ちゃん慌てすぎ……。
      って、今の叫び声、沙都子とレナの声じゃない!?」
 
圭一「いやぁ、3次元もなかなかあなどれないな……あ、いやゴメン。   
      俺も確かにそう聞こえたぜ!」

魅音「まさか……?」
   
圭一「本当に……?」



魅音・圭一「幽霊が……?」



34: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 20:58:04.52 ID:/0LgPqK+0

先ほどまでは気にもならなかったが、校舎内は妙に肌寒い気がする。
懐中電灯を点けなおし、灯った光に安堵感を覚える。


魅音「見に行ってみよう!あの二人に何かあったら大変だよ!」

圭一「あ、ああ。それもそうだな。」

魅音「うん、きっとこっちの方から声がしたよ。行こう!」


魅音はよほど心配なのか、俺を置いて走り出す。
あんな事があったばかりなのに、だ。
俺が意識しすぎなのかな……。

さすがに、いつまでも一人でここでぼけっとしている訳にはいかない。
魅音とはぐれない様に俺も走り出す。


まさか、本当に幽霊がいる訳ないよな……?
背中にちょっぴり不安を抱えながら、声が発せられたと思われる場所に向かう。



37: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:00:12.67 ID:/0LgPqK+0
魅音「……!!圭ちゃん、レナと沙都子が!!」

圭一「どうしたんだよ魅音……ってレナ!沙都子!!」

魅音が駆け寄った場所を見ると……レナと沙都子が倒れていた。
どうやら、気絶しているらしい。

魅音「うん、別に危ない状態とかそういう訳じゃあ無いみたいだけど……。」

圭一「ああ、なんでこの世の終わりみたいな顔して倒れてるんだ……?」

何が起きたというのか?全く想像がつかない。
と、倒れていたレナの手がぴくりと動く。


レナ「ん……うぅ……。」

魅音「レナ!あんた大丈夫?何があったの!!」

レナ「……魅ぃちゃん、圭一君……気をつけて。敵はまだすぐ傍に……。」

圭一「敵?敵って一体何の事だよ!?」

レナ「私には言う事が出来ない……ごめんさい、ごめんなさい、ごめんなさ……。」


レナは謝罪の言葉を言い残し、再び気を失った。
レナがここまで怯えるなんて一体……?



39: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:01:09.92 ID:/0LgPqK+0
魅音「本当にお化けでも現れたのかな?」

圭一「まさか……そんな訳ないだろ。」

魅音「でも……!!」

魅音が話そうとした所で後ろに何かの気配を感じる。
気配なんてものじゃない、間違いなくそこに何かがいる!



その何かは俺たちにゆっくりと語りかける。

?「皆さん、何をやっているんですか……。」

体はその存在を認めたくないかのように固まっている。
しかし、無理やり心を奮い立たせ……後ろを振り返った。



…………あ。



58: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:18:09.26 ID:/0LgPqK+0
―――――――。

圭一と魅音を見送り、僕と梨花ちゃんは2人きりになった。
これが、沙都子とだったらどんなに良い事か……おっと、よだれが。


梨花「……ブーン、お月様がとても綺麗な夜なのです。」

( ^ω^)「ん?ああ、本当だお。」

見上げた夜空に浮かぶ満月。
覆い尽くす黒から光が漏れているかのように、月が輝いていた。

そして、僕の隣で月を見上げる少女。

月光に照らされる彼女は年齢を思わせないほど、大人びていた。
さすがは百年間もこの世界をやり直しているだけある。


梨花「ブーンは雛見沢が好きですか?」

( ^ω^)「お!もちろん、大好きだお!」

梨花「僕もなのですよ。にぱー。」



60: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:19:05.72 ID:/0LgPqK+0

彼女の見せた笑顔は、本当に無邪気で幸せそうだった。
……でも、どこか儚げで、不安を抱えているように見えるのは僕の気のせいなのだろうか。


梨花「雛見沢だけじゃないのです。皆の事も大好きなのです。」

( ^ω^)「僕もだお。」

梨花「僕は……この世界が大好きなのです。だから、何があっても守りたいのです。」

( ^ω^)「大丈夫だお。この世界はいつまでも平和なままだお。」


そうだ。
梨花ちゃんを……この世界を守るために僕はここに来たんだから。

今、口に出して言う事は出来ないけど。
彼女が抱えている悩みを少しでも取り除ければと僕は思う。

だから、出来る限りの事はしようと思っただけ。



62: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:20:37.36 ID:/0LgPqK+0

( ^ω^)「梨花ちゃん、何か困っている事でもあるのかお?」

梨花「はい……ブーンに変な事を聞いてもいいですか?」

( ^ω^)「仲間に相談するのは当然の事だお!」

……僕の笑顔に梨花ちゃんは応えてくれなかった。
少し俯いた後、僕の顔を申し訳なさそうに見つめて彼女は言う。



梨花「……ブーンは僕と会った事はありますですか?」

( ^ω^)「お?前から会ってるじゃないかお?」

梨花「転校して来る前に……なのです。」

転校して来る前……前の世界の事だろうか。
もちろん、梨花ちゃんはそういうつもりで言ったのでは無いと思うが。

僕には確かな記憶はない。
だけど、梨花ちゃんには記憶があると思っていたのだが違うのか?

まぁ、僕の事だから前の世界でも彼女の力になろうとしていたのは間違いない。
否定するような事もないだろう。



63: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:21:40.25 ID:/0LgPqK+0

( ^ω^)「梨花ちゃんが思うなら、きっと出会った事があるんだお。」

梨花「僕が思うなら、なのですか?」

( ^ω^)「そうだお。きっと、オヤシロ様の生まれ変わりである梨花ちゃんの身に起きた不思議な出来事があったんだお!」

梨花「そう…なのですか……。」

何故かは分からないが、梨花ちゃんは妙に気を落としたようだった。
頭を抑えながら、苦悶の表情を浮かべる。



( ^ω^)「……?梨花ちゃん頭でも痛いのかお?」

梨花「み、みぃ。大丈夫なのですよ、にぱー。
   それより、そろそろお化け退治なのですよ。」

( ^ω^)「本当に大丈夫かお?無理はしない方がいいお。」

梨花「みー、そこまで僕は弱っちくないのです。それとも、ブーンは怖気づいたですか?」

( ^ω^)「む、そんな事はないお。よし、出発だお!」



64: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:23:31.47 ID:/0LgPqK+0
校舎の中は妙な緊張感に包まれていた。
少しばかりの肌寒さと、前方がうまく確認できないほどの暗さのせいかもしれない。
懐中電灯の明かりだけでは心もとないと思った、が。


梨花「み〜♪お化けさんはどこなのですか~♪」

(;^ω^)「な、なんという傍若無人。」

ライトを持っているのは僕の筈なのだが、梨花ちゃんは気にしない。
まるで、いつも学校に来ているのと同じように歩いていってしまった。


( ^ω^)「とりあえず、どこに行くお?」

梨花「適当にブラブラしてればいいのです。きっと、すぐにでも誰かがお化けさんと出会うのですよ」

(;^ω^)「そんなバナナ……。」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:25:16.37 ID:/0LgPqK+0
「「キャーーーーー!!」」

僕が否定した瞬間に、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。
あまりに突然な出来事だったので、腰を抜かしてしまう。


梨花「だから言ったのですよ、にぱー♪」

(;^ω^)「う、本当だったお……って早く行かないと大変だお!」

梨花「それでは、ファイトおーなのです♪」


体を起こし、一目散に声が聞こえたと思われる場所へ走る。
だけど、一度腰がぬけたせいか上手く走れず、結構な時間がかかってしまった。



69: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:28:02.35 ID:/0LgPqK+0
梨花「多分、あの辺りから声が聞こえたのですよ!」

( ^ω^)「よっしゃ、音速を超えるお!」

梨花ちゃんより、一足先に角を曲がって現場(?)に辿りつく。

すると、転がった懐中電灯が二つ。
そのすぐ傍に人が何人も倒れている……よく見ると、それは先に向かった部活メンバーだった。


(;^ω^)「み、皆!大丈夫かお!?」

梨花「……気絶しているみたいなのです。一体何が……。」

気を失っている皆の表情は地獄でも見たかのような顔をしている。
圭一に至っては、祟りが祟りがと呟いている始末だ。



71: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:30:42.64 ID:/0LgPqK+0

( ^ω^)「本当に何があったんだお……。」

梨花「……ブーン、何か聞こえませんですか?」


梨花ちゃんにそう言われたので、目を閉じて耳を澄ます。

コツーン……。コツーン……。

コツーン…。  コツーン…。


その音は段々と大きくなっていく。
いや、その音を出す何かが段々と近付いてきている?

闇の向こうから来たそれは僕達の元へと一歩、また一歩。
ゆっくりと、しかし確実に。

何故か僕は逃げられないと思った。
梨花ちゃんはもう逃げていた……おい。


そして、それの正体を見て僕は絶句する。

なんとそれは……



76: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:32:34.86 ID:/0LgPqK+0

入江「おやおや、久しぶりの出番のようですね〜。」


  i       ├''  `´     i
  l     l  l       , -_二l―+
  l     l _l---、   ' ',-r‐。i‐-l、 i
  l     .i´ l__ニ=ヽ., -、i  `ー''l  l" ノ
  l     l l/l (_゚ノ }  ヽ、__.....i-十
.  l     !、_l_...- 'l       l i
  i      i、 l    l       l /l     /
   l l    l 、i    ` __ ... - ァ l/l     /
   i i、    .ト、ヽ  ヽ'', - '' ¨ / / i  ,  /
    il ヽ   l ヽ、  ヽ--‐ ''   l イ  /、イ/
    ! ヽ  li  ` 、   ー '   , l /l  /::ヘ
      ヽ  lV、 lヽ`i 、    / l/ .l /::::::::ヘ
.       ヽ .l ヽ l ヽ/rヽ'' ¨   /,, '/::::::::::::::::
        ヽl  `  ヽ:::ー ― '':::::::::::::::::::::::::::
             イフ:: : : . :::::::::::::::::::::::::::::/
           /{ {'::::: : : : : : : ::::::::::::::::://


『メイド服を着た』入江監督だった。

※服装は心の目で見ればメイド><



80: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:33:58.54 ID:/0LgPqK+0
入江「いやー、ブーンさんじゃないですか、こんばんわ!」

(;^ω^)「こんばんは……じゃないですよ!何やってるんですかお!!」

入江「夜のお散歩ですよ。まぁ、流石にこの格好で外に出歩く訳にはいきませんしね。」


(;^ω^)「じゃ、じゃあ、な、何でメイド服なんて着てるんですかお!?」

入江「よくぞ聞いてくれました!
   ご存知の通り私はメイド服というものが大好きです!
   それはもう、三度の飯よりもなんていう言葉では表せないほどに!!
   しっかーし!ただ、誰かに着せるだけでは本当のメイド王というものにはなれないと私は気付いたんです!  
   だからこそ、私自身がこの衣装を着ることによってメイドを理解し、体験する!
   それにより、メイドというもの全てを知る事が出来ると思ったのです!!」


(;^ω^)「メイドインヘヴン乙。でも、好きだからって、その格好はまずいお……。」



?「そんな事はありませんよ!」

突如、教室のドアが開き何者かが飛び出してきた。



82: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:35:09.83 ID:/0LgPqK+0
大石「私なんてこれが初登場なんですよ。説明ぐらい欲しいものです。」

           /       ヽ i     ||     ヽ
          /          ヾi    〃,,,     ヽ
          /           /`_   ヘ''''''――、 彡ヽ
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          ! |` ヽ|  ̄  ''''  /    |   ̄    |´/
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           ヽ ヾ ヽ           j      ト、 
             ヽ-i        ´ ` ´      ノ |
            / .|i    ,,         _ `i /| ト-、
           r/  iヽ  く  -ー――'''''''   ノ / `i  \
          ,ノヽ  \ヽ、,,      ''''''   ノ´ /   .|   `ヽ、 
      ,, - ´   ヘ    \ `ー、       ノ /   .|      ` ヘ`'''''ヘー-
 _,,―'''''      ヘ     \  `ー---ー'''’/     |       ヘ  ヘ
  /  /        ヘ       \      /      |        ヘ  ヘ
 /  /          ヽ       \、   i´       |         ヘ  ヘ
./   /          ヽ        /――ヘ      |         ヘ  ヘ
 
『バニースーツを着た』大石蔵人だった。
※服装は脳内補完で><



85: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:36:50.69 ID:/0LgPqK+0
(;^ω^)「な、なんで大石さんまで……。」


大石「んっふっふ〜。私達にとってはこれが正装なんですよ。ねぇ、イリー!」

入江「その通りですよクラウド!」

大石・入江「「だって俺たちはソウルブラザー!!」」

夢なら覚めて欲しい。
心の底から思ったのはこれが初めてだった。

(;^ω^)「盛り上がってるところ悪いんですけど、やっぱ自重しろっていう意見が……。」



?「ハッハッハッ!誰も僕達を止める事なんて出来やしないのさ!」

窓を突き破って、何かが乗り込んできた。
志村―!ここ2階、2階!!



89: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:38:12.83 ID:/0LgPqK+0
富竹「前から僕の扱いはひどすぎないかな?」

         ,,
       ,, ,;;;;;,
      ;,,;;;,;;;;;;;;,,
        ;;;;;;;;;;;,,  ,.-- 、
         ;;;;;;;;;;;;,/_- .,|
           ;;;;;| ゛' .!゛
           _ ;;;;;, .(__
         .r''フ .i,/ ./ ヽ
         | | ,, - ,, !_i  |
         | i"     | .|
         | |     ,| |
         |/,,i-i,,__ /.| |
         .{!       | |
        . ||  ::   { }
         |   |!   .|
    ____.|   |.!   t -'' - ,
 ___"==-   !、 ,,-!,  ,/""----、___
"=-   __  ゛ "  ゛‐"  ,-.、__,,―― "
゛ ――"   ゛ー――″""""


『ナース服を着た』富竹さんだった。

※AAは時報仕様です。



93: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:40:01.67 ID:/0LgPqK+0
K「トミー!お前もきたのか!」

クラウド「んっふっふっ〜!トミー、カメラは任せましたよ!」

イリー「おお、さすがK!!スク水からはみ出るスベスベのお肌がたまりませんね〜!」

トミー「おっ!シャッターチャンスだね!いただきっ!!」


……もう何も考えられない。

何で、ここに変態が集結しているのかとか。
いつの間に圭一は復活していて、しかもスクール水着を着ているのかとか。

そんな突っ込みをする気力は起きない。



トミー「僕のカメラは美しか追求しないのさ!!」

高速で鳴り響くカメラのシャッター音、そして変態に取り囲まれる僕。

意識は闇の中へと沈んでいった……。



97: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:41:45.17 ID:/0LgPqK+0

私、ブーンはとても奇妙な体験をしています。

なぜ、ここで、こんな自体が起きているのかわかりません。

ただひとつ判る事は、オヤシロさまの祟りと関係はないということです。

圭一と富竹は犯人の一味。他にも大石と入江で4人編成。各自、コスプレ衣装を所有。

圭一が倒れていても、もう一度よく調べてください。狸寝入りです。

富竹さんの死は作者の都合によるもの。あのAAが気に入ったらしいです。

どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。

これをあなたが読んだなら、その時、私はまともな自分を保てているでしょうか。
 
衣装があるか、ないかの違いはあるでしょうが。

これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。

それだけが私の望みです。



102: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:46:13.10 ID:/0LgPqK+0
目が覚めると、見慣れた天井が僕の瞳に映る。
ここは……僕の部屋!?

布団を飛び出し、辺りを確認する。
うん!間違いないここは僕の家、僕の部屋だ!!

心の底から安堵する。
よかった……アレは夢だったんだ……。


僕は運命に打ち勝った!
信じる心が奇跡を起こしたんだ!!

……その時、ドアが開く。


一瞬、まさかと思いドキッとしたが、心配する事はなかった。
なんてことはない、ペニサスが僕を起こしに来てくれたのだ。



105: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:48:04.68 ID:/0LgPqK+0

('、`*川「あら、ブーン。起きてたの?朝ごはんできてるわよ。」

( ^ω^)「お!わかったお!」

('、`*川「……ブーン。私はあんたの趣味にとやかく言うつもりはないわ。  
    でも、その格好で外に出たりしないでね?」


そう言ってペニサスは下に降りて言ってしまった。
ペニサスの言葉にまさかと思った僕は、慌てて鏡で自分の姿を確認する。

……そして、僕は言葉を失った。



110: ◆9d9cVF02x2 :2007/07/20(金) 21:49:29.36 ID:/0LgPqK+0
だって・・・


そこには・・・


フリフリの・・・


メイド服を着た・・・


見たくも無い姿の僕が・・・立っていたから・・・。



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